だが、暗黒魔界の力で強化された神精樹の実の力は凄まじく、ダインがスラッグに押されて負傷してしまう。
今もなを本気の戦いを繰り広げている悟空とフリーザの決着も近い。
このままでは不味いと思ったジークが、ダインを助けに歴史へと入っていった。
いつの間にか空は暗闇に染まって稲妻が鳴り止まなくなっていた。
一定の間を開けてダインとスラッグの顔が紅く照らされる。
ダインは負傷した左腕を右手でがっちり掴みながらふらつくも立ち上がった。
そのまま目を細めて何処の空を見る。
遠くのほうで二つの大きい気が負けんとばかりにぶつかっている。
ダインはその気が今もなを死闘を繰り広げている悟空とフリーザだと分かる。
―――後、2分……持って後3分くらいか……
気の大きさからフリーザの方の気が低くなり始めている。
決着も近いと踏んだダインは瞬時に残りのタイムリミットを予想した。
何処の空を見ていたダインの目線は再びスラッグに向けられる。
左から来る激痛に顔を少し歪ませながらこの状況をどう打破するか考える。
―――まだ、体力は残っている。俺が本気の超サイヤ人で戦ってもすぐに体力切れになるだろう程度だが。しかし、このまま体力消費を気にして何が出来る……?
ダインの思考はそこまで進めた所で遮断された。
なぜなら、待ちくたびれたかのように、スラッグがダインに向かって突っ込んで来たからだ。
「チッ!!」
ダインが素早く構えるが、左腕は使えない、仕方なく右手だけで何とかしようとした刹那。
「うおおおァァァァッッ!!」
まだ人間の声をしているスラッグが全力で吠えた。
途端、全身から今まで纏わり付くように出ていた禍々しい気がスラッグを包み込む―――いや、侵食された。
スラッグを侵食した禍々しい気は激しさを増し、その色は漆黒の黒。
どこまでも続くように見える深淵の黒はスラッグが気に侵食されている密度を表していた。
体の輪郭が見えない為、目の辺りからギラギラと煌めいている紅蓮の両目が強調されている。
一瞬にして人としてにシルエットを失ったスラッグはそのまま恐らく右手だろうと思われる黒い気の塊はダインにパンチしてきた。
ダインの手のひらにスラッグの右ストレートが衝突した瞬間、ダインが弾かれるように飛ばされて後ろの岩盤に体を埋まらせた。
めり込ませた体を抜けることが出来たダインはさっきの途轍もない威力のパンチに驚愕の表情を隠しきれなかった。
「な、なんださっきのパワーは……飲み込まれる前よりも数倍は威力が上がっている……!」
ダインが自分の右手を見ながら言う。
衝撃からか右手から電撃が走っており、ブルブルと振動している。
だが、スラッグが敵に時間を与えるわけはなく、再びダインに全力で近づいて来ている。
それに気づいて瞬時にダインは瞬間移動で上空に退避した。
地面が揺れるほどの衝撃でダインがさっきまでいた岩盤に右ストレートしながら突っ込んだスラッグは数十メートルまでパンチの衝撃波が伸びていき、地面を深く削りながら山岳を破壊していく。
衝撃波がやっと収まった時には縦長に伸びる曲線のクレーター、そして瓦礫の山だけだった。
パンチ一つでこのパワー、まともに食らったら流石のサイヤ人でも怪我くらいじゃ済まないだろう。
少しでも空きが出来た内にダインは今この状況で最善な手を考えた。
負傷して血が下たれている左腕を何とか持ち上げ、手のひらに10個程度の小さい気弾を生成する。
そして右手にも同じく小さい気弾を生成。
その僅かな時間でもうスラッグは上空のダインに向かってきていた。
距離を置いているはずなのにスラッグからでる禍々しい気の威圧は相当なものだった。
深淵の黒の軌跡を残しながら高速でスラッグが近づいてくる。
ダインはそれを見るなり、後ろに振り向いて更に上空に飛んだ。
そのダインをスラッグが逃すまいと追う。
ある程度スラッグとの十分な距離が取れた所でダインは停止してスラッグに振り向く。
こちらに近づいてくるスラッグに向かってダインは生成しておいた小さい気弾を右手を横に振って放った。
左手に生成している気弾も同じように放つ。
すると拡散弾の様に広がりながらスラッグに近づいていく気弾はスラッグの周囲に留まった。
そんな事気にしないスラッグはダインに近づいて来ている。
ダインは右手のをクイっと少し閉じる動作をすると、スラッグの周囲に留まっていた気弾が膨張した。
刹那、ピカッと金色に煌めいた後、爆発の轟音が大気をビリビリと振動させた。
爆発と共に周囲に爆風が吹き荒れ、ダインのタイムパトロール戦闘服の裾が激しく揺れる。
ジーク戦にも使った小さい気弾を瞬時に膨張させて相手に一気に大ダメージを与える技。
今回はジークの時が十個に対し、両手で20個の気弾をスラッグに当てた。
威力も当然ジークの時より2倍、流石に生きてはいられまい。
しかし、ジークの時より2倍になった煙の中に獄炎の如く激しい気のシルエットが写っていた。
それをダインが確認した瞬間、顔を引きつらすより前に衝撃波で煙を消したスラッグの姿が在った。
さっきの攻撃を食らってもなを、何事もなかったかのように浮遊していた。
負傷しているかわ侵食している気の性で見えないが、それよりもジークでさえも10個で瀕死になっていた攻撃をスラッグは20個の気弾にも耐えた事は事実だ。
結果、ダインの決死の攻撃はスラッグを侵食している漆黒の気の密度を少し薄くする程度に終わった。
数秒後、少し薄くした密度は再び元の濃い密度に変わった。
決死で与えたダメージもその程度のものでしか無かったのだスラッグにとっては。
―――どうする、さっきのでだいぶ体力を使ってしまった。このまま全力で戦うか……いや、このまま戦っても俺は奴に敵うのか分からない。だが、だが! ここで俺が諦めたらどうする、俺は殺られるわけにはいかない! 今ここで諦めたらミラなんか程遠い。何としても、全力で奴を倒すッ!!
「う…ああああァァァァッッ!!」
ダインは全力で叫びながらターレスに突進した。
荒々しく全身から金色の気が溢れ出る。
先程よりも逆立つ髪、そして一瞬だが青い稲妻がビリッと発生した。
突進したと行っても決して理性を失ったわけではない。
スラッグがパンチをしようと腕を少し後ろに引いた。
それに合わせてダインは一瞬にしてスラッグの前から消える。
パンチの標的を失ったため、拳は空を殴る。
スラッグの後ろから現れたダインはスラッグのうなじを予想して漆黒の気を右足で蹴った。
確かな手応えを感じた、やはりうなじを無事に当てられたらしい、が。
スラッグは何事もなかったかのように振り向いてダインの首をガッと掴んだ。
そしてそのまま地面に垂直に落ちていく。
ダインが地面に衝突と同時に派手な爆音と煙、風が吹いた。
背中の衝撃を気にする事も忘れて必死にスラッグの右手を振りほどこうと暴れる。
だが、今まで通りの超パワーで当然振りほどけるわけもない。
足をジタバタさせながらダインが足掻く中、スラッグは開いている左腕を振り上げる。
途端、スラッグの手首から上だけ漆黒の気が晴れて手が露わになった。
そして、手を手刀ようにして手が薄い禍々しい気に包まれた。
間違いないあれでダインの首を斬るつもりなのだ。
そう悟ったダインはより一層足掻く。
―――やばい、速く離れなければ……ッ…ぐっ! とても振りほどけ無い!!
手刀がゆっくり着実にダインの首に近づいていく。
そして手刀がダインの首に掠れた。
「ぐっ……」
ダインが掠れた声を漏らした瞬間。
スラッグに金色の気弾が放たれた。
水平に飛ばされたスラッグは転がりながら地面にうつ伏せにして停止する。
ダインが閉じていた瞼を開けるとそこにはゆっくり地上に降り立ってくるジークの姿があった。
その姿は超サイヤ人になっており濃さと気の激しさから超サイヤ人の本気を出している。
ジークがスラッグを睨みながら地上に降り立つと同時に呟いた。
「まったく、後輩のピンチは先輩が助けてやらんとなぁ……?」
ダインはゆっくり立ち上がると少し来たれた首からツーと血が流れた。
それを右手の甲で拭うとダインはジークに言った。
「まさか、さっきまで戦っていた奴に助けられるとはな……屈辱だ」
「助けなきゃ死んでただろ? 無理するなよ……」
「……今だけ協力してやる」
いつも通りのダインにジークは笑みを浮かべる。
その目と鼻の先でスラッグがゆらりと立ち上がった。
そして二人同時に構えると、
「行くぞッ!」
ジークの声と同時に二人は地を蹴る。
そして近づく途中でジークがダインに呟く。
「奴は恐らくあの気で全身がガードされているんだ。あの気をどうにかしないとろくなダメージも与えられないぞ」
「なるほど、どうりで攻撃が全く効かない訳だ。しかしどうやってアレを破壊するんだ?」
「今からどうにかするんだろッ!」
「当てずっぽうかよ……」
ダインがスラッグの腹部辺りを捉えると同時にジークが速さを上げると素早くスラッグの後ろに回り込んだ。
ダインは腹部をジークは背中を同時に右ストレートでパンチした。
両方からの衝撃波でお互いが弾き返そうになるのを必死に耐えながら拳をめり込ませる。
しかし、禍々しい気のせいなのかスラッグはびくともしない。
―――なんだ、拳が何かに塞き止められてるのを感じる。なるほど、禍々しい気が壁のようになっているんだ。どうにかこれを破壊できれば……!
「ぐあああァァァッ!!」
突如スラッグが叫んだ。
途端、爆風と気の衝撃波が生まれ、今度こそ二人は弾き返された。
飛ばされそうになるのを足を地面に埋めて引きずりながらスピードを殺す。
やっと止まったダインにジークが瞬間移動でダインの隣に現れた。
「どうやら物理ではどうにも出来ないらしいな……」
「ならどうする?」
「少し賭けだが俺とダインの全力の気功波で気ごと消すしかない」
「……わかった」
「俺が何とか空きを作るからダインは少しでも気を集中しててくれ! ただでさえ片手しか使えないからな」
ダインが黙って頷くのを確認すると、ジークはスラッグに突撃、ダインはバックステップして右手に気を集中させる。
この作戦はジークの言ったとおり少しの賭けだ。
まずスラッグから出ている威圧と侵食している禍々しい気、そして二人がかりでも全く通じなかったタフさ。
それを考えても生半可な気功波ではスラッグは倒せない。
つまり二人で全力を出して気功波を打つしか無いのだ。
それは失敗したら二人共体力が無くなって太刀打ちできなくなる可能性もある。
失敗は許されない、何とかジークが空きを作ってそれに賭けて全力で打つしか無い。
ジークが突撃してスラッグに右ストレートを放つが、やはり気の壁のせいでビクともしない。
「アアアァァッ!!」
続けて左ストレート、右とボクシングの様に左右の拳を必死に放つ。
―――手応えは感じる……だが、まるで殴ってるんじゃ無くて壁と叩いてるみたいな感じだぜ、たしかに人間を殴ってるはずなのによぉ!!
怒りをぶつけるかのようにジークの右ストレートがスラッグの顔面辺りを捉えて放たれる。
だが、今まで壁に守られて微動だにしていなかったスラッグが今度は左手で受け止めた。
「―――ッ」
ジークが息を呑んで離れようとするがもう遅い。
すぐさまスラッグの右手が滑るように動いてジークの首を掴む―――よりも先にジークの右手が手首を掴んで抑えた。
「同じ方法が二度通じると思うなよ……ッ」
歯を噛み締めながらジークはスラッグの腹部に膝蹴りをする。
響いた音は鈍い音ではなく何かに弾かれたような音だった。
やはり壁に阻まれてダメージを与えることが出来ない。
ジークは何度もグリグリと力を入れるも壁―――気がそれを妨げるように密度を上げていく。
これ以上頑丈にされるのは不味い。
そう思ったジークは衝動のまま叫んだ。
「オオラァッッ!!」
対抗するようにジークから溢れ出る気の濃さも上がっていく、それと同時にジークから出るオーラの範囲も広がっていく。
ジークの体から蒼白の稲妻がビリビリと現れてそれが体に凝縮されていく。
そして体の内部から溢れんばかりの輝きを放ちながら膝に力を込めた。
何かが割れたような音が鳴り、ジークの膝にやっと元の手応えを感じた。
破壊できたのは膝蹴りをした部分だけ、なので同時にでる衝撃波も背中にもある壁に挟まれて内部に凝縮されているはずだ。
途端、ジークには目だけが真紅に煌めく漆黒の気の奥でスラッグの顔が歪んだ気がした。
衝撃で動きを停止している空きを逃さずジークはスラッグの右腕を両手で掴んで真上に投げた。
上空に投げ出されたスラッグを確認するよりも先にジークはダインの所に瞬間移動した。
「今だ!!」
ジークが叫ぶと同時に両手を左右に付けて全力の気功波が放たれようとしている。
ダインの今までずっと貯めてきた気功波を放つために右手を腰のあたりに持っていく。
「ファイナルッ―――」
「―――かめはめッ」
「「波―――ッッ!!!」」
同時に放たれた気功波はすぐに混ざり合い、一つの《合体技》となっていく。
青い気功波を軸に渦の様に混ざった金色の気功波が一直線に上空にいるスラッグに近づいて一瞬で飲み込んだ。
その余りの威力に周囲の地形が一瞬にして平らになっていった。
やがてスラッグを飲み込んだ気功波は宇宙に飛び出してどこか遠くで爆発してピカッと煌めいた。
その爆発音と煌めきはダインとジークにも見えるほどの物だった。
当然飲み込まれたスラッグの姿は上空には無く、全力を出した二人は疲労し地面に座り込む―――のと同時に通信機から大音量の声が聞こえた。
『なにへたり込んでるの! 今転送するから!』
瞬間、ダインとジークの意識が一旦途切れた。
それと同時にナメック星は限界に達しついに爆発した。
銀河に煌めく惑星の爆発。
幾つもの色とりどりの波紋が広がって爆発した直前を示している。
それは星座を作る遠くの星を風景に一つの芸術作品のように神々しかった。
それを間近に見ている人が居た。
髪の毛は黒、瞳も黒であり灰色のシャツのような服の上に黒い界王神の服を着こなしているが、正真正銘のサイヤ人である。
そして指にはめている指輪、《時の指輪》をしていた。
星の爆発を見て目を細めたサイヤ人は呟いた。
「……なぜだ。さっきまでこの星にサイヤ人の気が在ったはず……」
「……まぁいい、メインディッシュはこれからだ。いずれは宇宙全てのサイヤ人を殺すことになるんだからな……」
そして謎のサイヤ人は不気味に笑みを浮かべながら右拳を握り込んだ。
「……弱者のサイヤ人に死を!」
そう言いながら右手の指輪が白銀に煌めいた。
そして白い縦線を残して謎のサイヤ人は何処かへ消えた。
最後までお読み頂きありがとうございます。
だいぶ空いてしまいましたが、超不定期投稿な作者ですので久しぶりに読みに行って見るか―程度に見ていただければと思います。