コントン都の大階段を登った先。
コントン都で最重要とされる施設。時の巣がある。
生活するための建物や歴史保管庫があり、適度な自然が存在している。
そんな時の巣の中には緊迫した空気になっていた。
池の水を小鳥達が飲んだ後、翼を羽ばたかせて飛び立っていく。
ほのぼのとした空気の反面、緊迫していたのは歴史保管庫の方だった。
「昔にコントン都の前、歴史崩壊レベルの事件があったことは知っていますね?」
「ああ、当然」
トランクスの質問をダインは当たり前のようにさらっと答える。
魔神ドミグラの復活。ドミグラは歴史を崩壊させ魔神ドミグラの歴史を創造しようとしていた。
時を作る力をもつトキトキを自信に吸収し、歴史崩壊の危機だった時。
当時のジークと助っ人の孫悟空によって危機は免れた。
今ではジークは『英雄』と呼ばれる程の実力者でもあり、救世主でもある。
そんな事件を知らないことはありえない。タイムパトロール隊員も含めて、コントン都に住んでいる住民全員が知っているだろう。
「実はあの事件に関わっているのはドミグラだけではないです。殆どはドミグラの仕業によるものですが、ドミグラの復活を手助けしていたと言ってもいい人物がいるのです」
「復活を手助けした人物?」
「はい。ドミグラの復活の前、歴史を荒らす悪人が居ました。奴らは暗黒魔界の復活のため、色々な歴史から力を奪って居ました」
「ですが、その人達はジークさんによって倒されたと思っていました。ですが……再び復活したのです。ミラとトワが!」
「ミラだとっ!?」
「奴らがどうやって復活したのかはわかりませんが…ってどうしました?」
トランクスがいきなり叫んだダインに驚き、一旦説明を止める。
―――ミラだと……まさか、こんなにも速くいる場所が分かるとはな。
ダインの顔は笑っていた。
復讐ができる事による喜びからか不気味に笑みを浮かべている。
―――そして、歴史を荒らす悪人ときた。殺してしまい問題になることは心配していたが、それも解決した。
やっとだ、やっと、子供の頃の復讐をすることができる。お父さんの仇を取ることが……。
「え、どうしましたダインさん? 顔が怖いですよ?」
「ふむ。どうやミラに何らかの縁があるようじゃな」
「くっくっ……ああ、すまない。つい、俺としたことが。今奴は何処にいる? 俺は奴を絶対に倒さなくちゃいけないんだっ……!」
「……残念じゃが、今のお主の実力じゃミラには敵わないだろうな。ミラは歴史の改変のちからなんかよりも強い」
「それにトワが前回負けた事によって何らかの対策やミラがもっと強くなっている可能性だってある」
「今のお主じゃ敵わんじゃろう……」
「……っ」
ダインをそれは分かっていた。超サイヤ人になれる父をコケにして圧倒的に強かったミラを同じ超サイヤ人の実力しか持たない自分が勝てるのだろうかと。
―――せめて……あのくらいにまでならなければ…!
ダインの頭の中には特別任務決定試合のジークがあった。
ダインはジークの超サイヤ人2に圧倒的力の差を思い知らせれた。
あの圧倒的な実力があれば、ミラに対抗できる。
だが、超サイヤ人2は自分には到底なれないと。
―――なら、超えるしか無い。自分の限界を! 超サイヤ人の限界を!!
「老界王神様の言うとおりです。当時のジークさんはかなりの強さを持っていましたが、ミラはそれでも圧倒的な強さを持っていました。ですから、奴らの居場所が掴めない今、時の界王神さんが調べた歴史の軌跡を辿って、地道に居場所を突き止めるしかありません」
「なので今、ジークさんがその任務を行っている最中なんです」
「そうゆうことか……。だが、なぜ俺にも行かせないんだ? 奴らが歴史を荒らしている元凶なんだろう? 効率的に速く倒したほうがいいだろう」
「それは、奴らは歴史を荒らしています。ですが、荒らしている本来の歴史を反響するように他の歴史も改変し始めるのです。反響する歴史の改変を放っておくわけにもいきません。なので、ダインさんにはその歴史の改変の修正をしてもらいたいんです」
「じゃあ、俺の任務は歴史の改変が起きたら修正か。なら、改変が起きるまで暇なわけだ」
「そうなりますが、歴史の改変が現れるのはそう遠くないと思いますが、その間は休むなりしていても構いません」
「修行でもしてるか…」
まだ、トランクス達は知らない。ミラとトワ以外の戦力が動いている事に。
~エイジXXX~
無残に壊れた街の上空。
漆黒の雲の上、紅が印象的な姿の二人組がいた。
そこの後ろに全体的に灰色な格好のジークが現れる。
「やっと追いついたぜ…ミラ、トワ!」
「あら、追いつかれちゃったわね」
トワがわざとらしく手の甲を顎に当てる。
「余裕だな、ここまで歴史に大きな事をしなかった分、しつこく逃げるもんだからもうこの時代が何処だかわからなくなる」
「逃げてばっかでいいのか? お前らの目的はいろんな時代から力を集めることだろう。まぁ追いついちまったから今頃そんな事どうでもいいがな」
「別に私達が歴史を荒らさなくとも勝手に歴史を荒らしてくれるわよ」
「何っ!? 貴様ら、まさか他の時代から協力者を雇ったな…」
「そんな事より速く退散して歴史を荒らしてる方をどうにかするべきじゃないかしら?」
「ああ、そうだな。さっさと貴様らを倒して、この事を皆に伝えないとな」
「随分と簡単に言ってくれるじゃない」
「今頃貴様らに遅れをとる俺じゃない!!」
「ハァァァアア!!」
ジークの全身から気のスパークが走る。
段々と髪が金色に変色していく。
「くっぐっくっ! ああああああ!」
だが、変化はそこで終わらなかった。
金色の髪は数センチずつ確実に伸びていく。
周りの雲がジークの元に吸い込まれ、余りの気の強さに消えていく。
全身から稲妻のような気のスパークが発生し、気を限界まで集中していく。
「あああああああ!」
周囲に金色の気で構成された衝撃波が放ち始め、髪の長さももう腰に着く辺りにまでなる。
そこにジークが一気に気を開放した。
「うわあああああああああああ!!」
オーラは2とは比にならない程濃く、激しくビリビリとはなっている。
気の激しいスパークを放ち、体の表面が自ら発光しているかのように輝いている。
眉毛が消え、表情はより厳しい。
「はぁ、はぁ。超サイヤ人3……これが、俺の全力だ。さぁ、今度こそ貴様らを…!!」
「超サイヤ人3、ねぇ。随分とパワーアップしてくれた物だわ」
「ハァっ!」
超サイヤ人3になり、ミラへ突進するジーク。
「今度こそ細胞一つ残さず消してくれる!」
ジークのパンチがミラの顔面を捉える。大きく振りかぶり、当たろうとした刹那。
何者かがそれを止めた。
「……でも、私達も何も対策してないわけが無いでしょう?」
一旦、距離をおき、拳を受け止めた人物を確認する。
「なっ!?」
驚愕の声を漏らすジーク。
なぜならミラの目の前にいる仮面を被るサイヤ人は不規則に髪が伸びているからだ。
それは、たった一人ジークが尊敬している……
「悟空……? まさか、そんなはずは!?」
―――悟空は悪の心を持たない為、洗脳出来ないはず。なら、今目の前にいる仮面のサイヤ人は一体?
「さぁミラ。ここは任せて行くわよ。まだ私たちにはやらなきゃいけない事があるんだから」
「ま、待て!」
「――――――っ!!」
「ぐっ!」
追いかけようとした直後、ジークの目の前に仮面のサイヤ人が邪魔をし、気を開放する。
余りの強さに後ろに押されるジーク。
―――くっ!? ここまで純粋な悪の気を持っているとは……。
距離を取ったジークに向けて、仮面のサイヤ人が手の平に気弾を生成し、大きくなっていく。
その気弾を勢い良く放った!
―――はやっ!?
間一髪で避けるジーク。そこにすかさず、気弾に気を取られている空きに仮面のサイヤ人はジークに距離をつめる。
防御をしようと思ったときにはもう遅く、まともに蹴りを喰らい、飛ばされる。
風をきる音を鳴らしながら高層ビルに突っ込む。
派手な音を鳴らし、クレーターと一緒に体がめり込む。
意識がもうろうとする中、衝撃で超サイヤ人3がきれてしまう。
「なんて並外れたパワーだ……一発でここまでふっ飛ばされるとはな」
「――っ!」
仮面のサイヤ人がジークに高速で近づいてくる。
「そう、何回も食らうかよっ!」
仮面のサイヤ人が膝蹴りを当てようとした刹那。
ビッ!
ジークが瞬間移動で避ける。
仮面のサイヤ人はジークがいなくなったビルの側面に突っ込んだ。
ビルは2つに分裂するように派手な音と共に崩れ落ちる。
「―――っっ!!」
仮面のサイヤ人が声にならない叫び声を上げる。
崩れたビルの破片から衝撃波が現れ、円形に広がっていく。
衝撃波に飲まれた破片や地面が無に変わっていく。
「……なんてやつだ……」
仮面のサイヤ人は上空に上がっていき、やがてジークと同じ高さで止まる。
「っっっ!!」
左拳を握り込み、力を入れる。
周囲一帯を無に変えた衝撃波がどんどん小さくなっていき、やがて右手に収まっていく。
右手を強く握り、それを解き放った。
「おいおい、まじかよ……」
仮面のサイヤ人の右手から解き放たれた衝撃波の気弾は膨張しながらジークに高速で近づいていく。
―――速い! 避ける時間はないか……!
ジークは超サイヤ人2に変身し、それを両手で受け止める。
「ぐぅう!!」
パワーで後ろに押し込まれそうになるのを必死に耐える。
膨張した衝撃波の気弾はジークよりを大きくなり、ジークを飲み込んでしまいそうだ。
―――これを食らったら間違いなくさっきやった様に俺も無に変えられてしまう!
必死になって耐えているジークを嘲笑うかのように仮面のサイヤ人は―――右手で同じ気弾を作って見せた。
声は無い。聞こえない。だが、ジークの心の中には聞こえたような気がした。
「終わりだ」
と。
ドォォォン!!
何もかもを無へと変える邪悪な気弾が衝突する。
「ぐわああああ!?」
耐えられなくなったジークはどんどん押し込まれていく。
抑えきれなくなり、腕が押されていく。
「終わり」と。
―――聞こえた。妄想かもしれないが、確かに。
仮面のサイヤ人は決着は着いたと思い腕を組んで光景を見守っている。
―――ここで、死ぬわけにはいかない。
「お前の思い通りにさせてたまるかーーー!!」
ジークの全身から稲妻が溢れ出る。
「あああああーーー!!」
金色の髪が急激に成長し、全身から気が溢れ出る。
それは炎の様に激しい。
超サイヤ人3。
その姿は次元を超える威圧を放ち、金色の光沢が体中に煌めく。
「はぁぁぁぁ!!」
ジークが手の平に気弾を放つ。
「ファイ…ナル! アターーク!!」
ジークが放った気弾が衝撃波の気弾を押していく。
やがて、衝撃波は飲み込まれて、仮面のサイヤ人に近づいていく。
「返すぜ! 倍にしてなぁ!!」
「っ!?」
想定外だったのか、仮面のサイヤ人は明らかに動揺した素振りを見せる。
だが、先程腕を組んでいたため、今頃何かしようとしても間に合うわけがない。
ジークの気弾が仮面のサイヤ人を飲み込む。
瞬間。
黒く染まる空に輝く軌跡と共に仮面のサイヤ人は彼方へ消えていった。
再び光が無くなった空を見渡す。
何処を見ても仮面のサイヤ人の姿は見えない。
安心した途端ジークはふらついて落ちそうになるのを抑える。
―――まだ気を抜いてはダメだ。まずは時の巣に帰って別戦力の事を伝えて、今あったことも報告しなければ。にしても。
「……本当に終わったのか?」
あの時はなぜが死闘だったはずなのに呆気なさすぎると思ったのはなぜだろう―――?
冷たい風が空いた頬を撫でるように通過する。
飛ばされてから何時目覚めたのかは分からない。
乾いた大地に仰向けで寝そべる人物がいた。
その者は空いた頬を手で触る。
そして不気味に笑い、
「おもしれぇじゃねぇか……」
仮面に覆われていた顔は左半分だけ壊れ、目の付近だけ剥き出しになっている。
その目は純粋な悪の目。その色は血のように濃かった。
瞬間、歴史の歯車が大きく狂う――――――