―――ここは、何処だ?
―――自分は誰だ?
何もない闇の空間に浮遊する青白い物体。
人体の形は既になく、右腕と左足が無くなり、右胸にはありえない程の大穴が開いている。
顔は焼けたように崩れ、少しずつ破片となって削れていく。
闇の空間に輝くクリスタルが浮遊している。
この闇の空間で何日、何時間したのかはもう分からない。
余りにも傷の深さからか、もう自分が誰なのかを忘れ、なぜここに居るのかも分からない。
ただ、永遠にも続く苦痛を受けている事しか分からない。
―――力を……圧倒的な力を……っ
何もかも分からないのに頭の中にはいつも同じ欲求。
力がほしい。誰にも負けない、何もかも超越する圧倒的力が。
こうしている間にも体が崩れていく。
すると、不意に何者かの意志のように左腕が伸ばされた。
手首がなくなっている左腕が示す方向は青く輝くクリスタル。
「……あ……ア……」
言葉を話す口などもう使い物にならない。
だが、新たなる欲求が頭の中に浮かぶ。
―――入りたい。あの綺麗な……いや、憎たらしいあの中に。
なぜ憎たらしいのかは分からない。
ただ、そう思ったのだ。
入りたい。その欲求が強くなっていく。
そしてどうにかして体を動かし、クリスタルに腕が触れた。
途端、視界がフェードアウトし、意識が無くなった。
そして浮遊した謎の物体は《時の狭間》から姿を消した。
広場に衝突音と空を斬る音が鳴り響く。
瞬間移動しながら攻撃を畳み掛ける。
凄い速さのため、肉眼では拳同士が衝突する衝撃波しか見ることが出来ない。
空中に何個もの衝撃波が発生し、消えていく。
そして、衝突音とは違う音がなり、人影が地面に激突する。
土煙で見えない中、新しい人影が煙の中に入る。
そして衝突音が鳴り響き、煙が晴れる。
そこには修行中のダインとトランクスの姿があった。
一回叩きつけられたトランクスはダインの拳をあっさりと右手で受け止める。
二人共超サイヤ人だが、トランクスはスパークが散り、オーラが激しい。
「その調子ですダインさん。その調子で超サイヤ人の壁を超えてくださいっ!」
トランクスが左手をダインの腹に添え、気弾を形成する。
「しまっ!?」
腹に気弾が貫通する。気弾の線が空に伸びて消える。
衝撃でダインは大きく飛ばされる。
「くっ! クソッ!}
立ち上がり、トランクスを睨みつける。
「超サイヤ人2…俺もあれになれれば!」
まだまだ未熟な自分に怒りさえ湧いてくる。
超サイヤ人2には何としてもならなくてはならない。
ミラに対抗するためにも。
「はぁぁぁぁ!!」
全身から超サイヤ人のオーラが溢れ、大きくなる。
髪の毛が更に逆だっていき、周りから少数だが気のスパークが散り始める。
「その調子です! そのまま気を集中してください」
「ああああ!!」
これから留められるよう、気を集中しようとした時、
「「っ!?」」
二人が同時に歴史保管庫に視線を動かす。
集中がそっちに行ったからか、荒ぶる超サイヤ人のオーラが消え、超サイヤ人が解ける。
だが、二人にはそれよりも重大な事があった。
「これが……邪悪な気が現れた場合か」
二人が走って歴史保管庫に向かう。
歴史を見つけるのは簡単だった。
見つけた巻物からは邪悪な気が溢れ出ている。
「いつもこんな簡単に見つけられればいいんですけど…」
トランクスが愚痴を呟いた後、時の界王神と老界王神が保管庫に入ってくる。
「どうやら、今までとは違って大きな気じゃのう」
「はい、ミラかもしれません」
「とりあえず見てみない事にはわからないわよ」
そうして、四人は改変された歴史を鑑賞する。
そこにはいつもどおり改変された歴史とあと一つ。
「これは……」
「ターレスじゃ! なぜこんな歴史に居るんじゃ!?」
「まさか、トワ達と手を組んでいるのかしら」
そして、話に余りついていけてない人も一人。
「ターレス? 誰だそいつは」
「ターレスは過去に地球を侵略しに来た極悪人よ。トワもまさか手を組んでくるとはね……」
「とにかく、この歴史になる前に止めなきゃいけないわ。早速行ってきて」
「気をつけるんじゃぞ。ターレスはクラッシャー軍団と呼ばれる集団のリーダーじゃ。それに界王神のみ食べることが許されない神精樹の実を食べておうから強敵じゃぞ!」
「それではお願いします。今まで通りこの時代では超サイヤ人にならないでください」
「分かった。行ってくる」
ダインは巻物を握り、強く念じる。
~エイジ762~
「ヤムチャも死んで……チャオズまで」
「くそ……」
「さっきの自爆は予想外だったが、所詮こんなもんだ」
サイヤ人襲来からサイバイマンと戦い、ヤムチャとチャオズが自爆により死亡。
だが、それでもサイヤ人ナッパは倒せなかった。
「チャオズ……お前の仇は取ってやるぞっ!」
「喰らえーー!! コレが最後の気功法だ――!!」
「なにっ?」
ナッパが気功砲に気づくのが遅れ、まともに食らう。
だが――
「チッ! 小癪な真似しやがって…」
途端、ナッパから禍々しい気が滲み出る。
瞳が紅く煌めく。
しかし、それはスカウターには現れない。
「―――っ! 死ねーーー!!」
ナッパがいきなり天津飯に気弾を放った!
「天津飯ーーっ!!」
周りに煙が出てきて視界を遮る。
ナッパは禍々しい気をそのままに地上へ降り立った。
「へっ次はどいつを殺してやろうか?」
「あわわわわ……化けもんだぜ…こいつ」
クリリンが恐怖から音を上げ、悟飯の足が竦んでいる。
煙が消えていき、人影が姿を表す。
「!? 天津飯か!?」
「ばかなっ!」
だが、それは天津飯を庇ったダインだった。
ダインの後ろで横たわっている天津飯にもう気は感じない。
ダインの手がビリビリとしびれるが、所詮この程度。
「クソッいつも俺の登場はこんなんなのか‥」
『仕方がないです。ここで天津飯さんを粉々にさせたら歴史が変わってしまいます』
「なんだと…俺の攻撃を片手で受けただと」
驚くナッパの後ろでベジータ。
―――ヤツにスカウターを使ってもやはり戦闘力はそんなに高くはない。やはり地球人は戦闘力を自由自在に変えられるのか……。
「誰だか知らないが、助けに来てくれたみたいだぞっ」
クリリンが言うのにダインは頷き、ナッパに振り向く。
そして、指を小さく曲げかかって来いのジェスチャーをする。
「舐めやがってっ!!」
『良いですか? スカウターがあるので目立つ事をしないでください』
「わかってる」
ナッパのパンチをダインが受け止める。
そして、ナッパの左拳の足のラッシュ攻撃。
「おらおらおらっ!!」
ナッパが必死に当てようとするも、ダインにはかすりもしない。
―――今は所詮時間稼ぎ。悟空がくるまで時間を稼いでれば歴史は正しくなる。ただ、
ダインが顔面に来たパンチを右に避ける。
その拍子に右手を手刀のようにして、スカウターだけを壊す。
「この野郎っ!!」
ナッパがすきにダインの横腹に蹴りをいれる。
派手な音とともにダインは山岳の壁に突っ込む。
「くっ今のは少し聞いたぜ……」
「はぁ!」
ダインが戦闘力を抑え、めり込まれた山岳の壁の周囲に穴を開ける。
衝撃波が広がり、壁にぽっかり穴が開けられる。
すたすたとナッパの方に歩いて行くダイン。
ナッパがそろそろ怒りが爆発しそうなのか、怒りに任せてダインに突っ込んでいく。
『ダインさん、そろそろ時間です』
「ああ、分かった」
ダインは突っ込んでくるナッパに腹に拳をめり込ませた。
ナッパの背中から衝撃波が広がる。
「がはっ!?」
ナッパがその場に倒れ込む。
―――なんだとっ!? 奴の戦闘力が一瞬だけ急激に上昇した!?
「コレでしばらくは動けないだろう」
ベジータに気づかれたとも知らずにダインは飛び去っていく。
『ダインさん! なんて事してるんですか!』
「これが一番手っ取り早い方法だ。奴が復活する前に悟空をあっちに向かわせる」
『それでも多分、とう……ベジータさんには気づかれてましたよ』
「知らん。それはそれだ」
そう、さっきのはあくまで時間稼ぎ。
本命は孫悟空がサイヤ人の所に向かう途中にターレスが足止めするのを防ぐためなのだ。
「さっきから中々大きな気がこちらに向かってくる。あれが悟空の気か……」
「―――っ!? いきなり更に大きい気が現れたぞ!」
『ターレスです! 急いで下さい」
ダインは速度を上げてターレスが出てきた場所に向かった。
サイヤ人が襲来した所から離れた場所。
「おい、そこをどいてくんねぇか? オラ速くいかなきゃなんねぇんだ」
空中で孫悟空とターレスが対立していた。
そして、悟空の視線がターレスの腰へと行き、そこに尻尾があることに気づく。
「その尻尾、オメェもサイヤ人かっ!? 地球に来たサイヤ人がオメェか!」
「少し違う。だが、此処で貴様を殺すことに関しては同じだ」
ターレスが悟空に向けて右腕を伸ばし、右手を五本伸ばす。
それに悟空が腰を引き構える。
「待て――!!」
「なにっ!?」
何処からともなくターレスに気弾が降りかかる。
腕をクロスして防御するターレスに休む隙もなく気弾がぶつかり、直ぐに煙で見えなくなる。
気弾を打っているのは当然、ダインだ。
「だっ! だっ! だだだだだだぁ!!」
「何か分かんねぇけど、助かった! サンキュー」
そう言うと急ぐように悟空は高速でダインが来た方向に飛んでいく。
白色のオーラが軌跡を作って遠ざかっていき直ぐに見えなくなる。
悟空が言ったことを確認し、一旦気弾を打つのを止めるダイン。
気弾から開放され、煙の中から防御態勢のターレスが姿を表し、やがて解くと、ダインと同じ高さまで上がっていく。
「案外速かったじゃないか。タイムパトロール隊員」
ダインを睨むターレス。だが、やがて表情を変えてニヤリと笑う。
「どうだ? 同じサイヤ人同士、仲良くしようや…」
「なんだと?」
「ああ、俺に付いていく気はないか? 毎日適当な星を侵略して美味い飯を食い、美味い酒に酔う。こんな生活はないぜぇ?」
「ふんっ興味もないな。興味があるのはここで貴様を倒すことだけだ」
「和解できないならしょうがない。殺すしか無いな」
二人共一定の距離を保ち、お互い構える。
ダインが何をしてくるか警戒する中、ターレスは思いも寄らない行動に出る。
パンッ!
「はぁぁぁ!」
両手を叩き、気を集中させて段々手を離していく。
すると、間から円形の気弾が形成されていく。
「喰らえ! ギルドライバー!!」
「しまった!?」
ターレスがダインに向けてギルドライバーを放つ。
ダインは思いもよらない行動に回避するのが遅れてしまう。
ギルドライバーはダインの腹部辺りに巻き付き、ダインの体を締め付ける。
「がっ、ああああっ」
「クックッ油断したな……このまま絞め殺してやる」
『ああっ!!』
『あの馬鹿ッ! 油断しおって!』
時の巣でもダインが捕まってしまったことに驚き、老界王神が後ろで罵声をいっている。
「聞こえてるぞこの野郎。くっこんな物で俺が殺られるかーー!!」
叫んだダインは体から気を放出させ、ギルドライバーごと破壊しようとする。
「破壊するつもりかっ!? だが、無駄だ、ハァ!!」
ハァ! の声と共にターレスの両手が叩かれて音を鳴らした。
今にも壊しそうなダインの抵抗は虚しく、ギルドライバーが光を増していき、やがて。
ドカァンッ!
ダインも道連れに爆発した。
「ぐわああああっ!?」
爆発するも、それでサイヤ人のダインが死ぬはずもない。
それはターレスも分かっているようで、右腕を伸ばし、右手に気弾を生成していく。
やがて、ダインが煙の中から姿を表した。
ダインは奥歯を噛み締め、
「超サイヤ人になれないからって舐めるなよォ! ハァァァァ!!」
『ダインさん、落ち着いてください!』
トランクスの警告を知るよしもなしにターレスに突撃していく。
ターレスは冷静にダインに生成しておいた気弾を放つ。
「こんな物っ!!」
ダインが両手気弾を生成し握る。
そして、近づいていくる気弾に両手に生成した気弾をぶつける。
途端、両者の気弾が爆発し、煙に変わる。
『何をしてるんじゃ、あやつは』
ダインの勢いの行動に呆れる老界王神。
煙に中からダインが飛び出し、再びターレスに向かって突撃する。
「おっと」
「だだだだだだ!!」
勢いを付けるパンチをターレスに放つも、気軽に避ける。
その後のラッシュも避け続けるターレス。
「どうやらお前は頭に血がのぼると、相手をよく見ずに攻撃してしまう傾向にあるようだ」
「俺だって日々強くなっている。これじゃあ超サイヤ人になっても余裕そうだな?」
「黙れ―――!!」
ダインが渾身のパンチを放つもターレスは片手で受け止める。
やがて、ニヤリと笑い、ダインの拳を掴みながら腕を捻った。
拍子に体も傾き、がら空きになった胴体に左膝蹴りを叩き込んだ。
「がはぁ!?」
背中から衝撃波が出て来るにそれが重い一撃だったことを示している。
体を抑え、動けないダインに即座に後ろに回ったターレスは両手をハンマーのようにし、背中を殴った。
鈍い音と共にダインは地上に高速で近づいていく。それをターレスが追う。
追いついたターレスがダインに。
「俺は元下級戦士だ。下級戦士はエリート戦士よりも弱い。だから強くなるために戦略を磨き続ける」
「戦闘民族としての強さを見せつけるために!」
「今のお前は戦略など露知らず、勢いで突っ走るのみ」
話しながらも、背中をパンチし続けるターレス。
やがて、パンチするのを止め、両手を広げ気弾を生成する。
「戦略など眼中にない貴様は、下級戦士以下だ!!」
そう言うと共にターレスは気弾を放った。
ダインは気弾に押され、地面に叩きつけられて、その後気弾が爆発した。
爆発を見たターレスは一息吐くと、
「役目は果たした。今の貴様に戦闘民族を名乗る資格などない」
そう言い、ペッと唾を吐いた後、ターレスは別の時代に消えていった。