【ファリン・綺堂・エーアリヒカイト】
家事も戦闘も修行中の身ではあるものの、感情の豊かさではノエルを上回る元気な妹分。但し、フレンドリー過ぎるのとドジなところが一部の者を悩ませているが、本人は全く気にしていない。
Side:美由希
幼い頃から刀を手に取り、振るい続けて来たこの人生。数奇な別れと出会いを繰り返し、数々の戦いを経て守りきれた未来を享受しつつも、私と恭ちゃんはひたすら技を磨き、己を鍛え続けました。何時か襲い来るかもしれない脅威から、大切な人達を守るために。しかし
「魔法は門外漢だよね、私達」
「うむ」
テロで親を亡くしたり、銃弾の雨を掻い潜ったり、ボディーガード中に敵を切ったりもした私達ですが、私の妹はそれらに引けを取らない数奇な人生を歩もうとしていて、姉としてはかなり心配だったりします。既にジュエルシードという物のせいで死傷者が出ており、このまま手を
「という訳で、“ユーノ・スクライア”先生を特別講師として御呼びしました~」
「へ……? 相談があるってそういう事だったんですかっ?!」
「まぁ、そういう事だ。宜しく頼む」
なので私と恭ちゃんは、事態解決に向けてどんな協力が出来るのかを知る為に、ユーノ君に助言を求める事にしました。幸いにも切れる事は分かっているので、あとはどう立ち回って行くか。そこを上手く詰めれたらなと思っています。
「家族を独りで戦わす訳にはいかんからな」
「私も、恭ちゃんと同じく」
戦いとは無縁だったあの子が、あんなにも頑張っているのです。代わる事が出来ないのなら、せめて支えてあげたい。それが、私と恭ちゃんの偽らざる思いでした。
~~
Side:なのは
私が学校へ行っている間、ジュエルシードがありそうな候補地をスクライアさんが主体となって絞り込み、放課後はその候補地へと赴いてジュエルシードを捜索&回収。最近では、この方法で成果を上げつつありましたが、今日は珍しいことに空振りばかりです。
と言うのもそれは、月村邸で出遭ったあの少女が日中に回収しているからであって、義務教育で学校に拘束されている私や、単独での封印に難があるスクライアさんでは、その後塵を拝することしか出来ないのは当然の帰結ではありますが……。
さて。
ジュエルシードという地雷が放つ、微弱な固有魔力波を頼りに探すのが広域探索魔法で、地雷探知機のように特殊な魔力波を放出し、返って来た反応で場所を特定する私の魔法を探知魔法とするならば、ありそうな場所に魔力流を落として強制発動させる少女の凶行は、何と形容すれば良いのでしょうか?
火遊び? それとも自分で発動させて封印するので、マッチポンプ?――――どちらにせよ、安全性を考慮しない危険な方法だとは思います。
「取り敢えず、封時結界を……」
被害局限化のために結界を展開しつつ、そのついでに少女を外側へ弾こうとしましたが、難なく入られてしまいました。そして発動するジュエルシード。どうやら向こうは是が非でも回収する気のようで、既に臨戦態勢です。
私としては無用な争いは避けたいところですし、悪用せずに地球から持ち去ってくれるのならスクライアさんには悪いのですが、それとなく手伝うのも吝かではありません。しかし悪用をしないという確証が無い今、この場には私と危険物と危険人物のみで、平和と安全のためにも看過する訳にはいきません。
とにかく、まずは危険物に対処すべく《 Divine buster 》を照射。向こうも同様の選択をしたようで、お互いの封印砲が励起状態のジュエルシードへと突き刺さり、数秒とかからずあっさりと封印状態へと戻りました。あとは、危険人物が残るのみです。
「昨日振りですね」
「……また、私の邪魔をするんですか?」
「それは貴女次第、かな……?」
嫌悪、警戒、畏怖。どちらとも取れる返事でしたが、初めて出遭った時と比べてみると会話に応じてくれたのは良い兆候のように思えます。
「私は、ジュエルシードを回収して管理局へ預けたいという理由で動いているんだけど、貴女の行動は、その理由に沿うものなんですか?」
「……………………いいえ。違います」
長い沈黙の後。やっと出て来たのは、か細い否定の声でした。それはつまり、警察と軍隊と裁判所を兼ね備えたような組織に反する、真っ当な理由ではないという自白に他なりません。
「そうなんだ……。じゃあ、邪魔させてもらうね」
一触即発の空気――――ではありましたが、私は構えを解いてジュエルシードに被弾防止の為の防御結界《 Round guarder 》を展開し、そして少女が呆気に取られている内に然り気無くバインドも仕掛けてみたところ、何故か緊急回避されてしまいました。勘付いたのか、それとも対策によって感知したのか。どちらにせよ、一筋縄ではいかなくなったようです。
[-《 Photon lancer 》-]
[-《 Divine shooter 》-]
応戦と、それに対する応酬の数々。こうして、戦いは激化の一途を辿るのでした。
~~
Side:■■■
"このままではジリ貧である"と思考は訴えるものの、空を埋め尽くすように設置された拘束魔法の層は厚く、幾ら何でもバインド破壊効果を付与した魔力刃だけで簡単に切り抜けれるとは思えないし、隙を見せればあの白い魔導師が直接バインドを仕掛けて来る始末。おそらく、バルディッシュにインストールしたばかりのバインド検知機能の警告音は、鳴り止むこと無く響き続けているのだろうと容易に想像することが出来た。
「全く、なんて恐ろしい子なんだい……」
思わず、ぼやいてしまう。これだけの圧を掛けているにも
~~
Side:なのは
近距離戦を諦めたのか、それとも何かを企んでいるのか。バインドの機雷原を遠巻きにしつつ中距離戦へと切り替えた少女に対応すべく、私も拘束魔法から射撃魔法主体の戦い方へと切り替えることにしました。
用いる弾種は近接信管機能付きの炸裂誘導弾と、ただの誘導弾。それを上手く織り交ぜ、少女を目標としてひたすら追わせているのですが、巧みな空戦機動と精確な迎撃により決定打を欠き、早くも根競べの様相を
嫌らしくもあり、参考にもなり。これがゲームであれば感嘆するだけで済みますが、残念ながらこれは現実で、私は痛む良心を押し殺して冷徹に対処し続けるしかありませんでした。
「もう、諦めたらどうですか?」
そして炸裂誘導弾と誘導弾だけでなく、高速散弾も射かけるようになってどれ程の時間が経ったのでしょうか。
[-《 Blitz action 》-]
幾度目となる単調な強襲。高速移動魔法で死角へ飛び込んで来るものの、攻撃の瞬間には加速が途切れるので、その凶刃は実のところあまり速くはありません。
[-《 Flash move 》-]
こちらも同様に幾度目かの回避行動を取り、バインドを仕掛けるという作業を焼き直しのように行いますが、今までは高速移動魔法で回避され、更に切り込んで来るなり離脱するなりしていたのに、魔力が底を突き始めたのか飛行魔法だけで離脱しようとしていた為、今度はあっさりと捕まえることが出来ました。簡単に抜け出せぬよう、十重二十重とバインドを重ねつつ、砲撃魔法のチャージへと移ります。
「降参か敗北か。どちらか選んで下さい」
「くっ……」
前者には慈悲を。後者には《 Divine buster 》を。そういった暗喩をしてみたのですが悲しいかな、上手く伝わらなかったようです。未だに抵抗の意思を見せるあたり、何がそこまで駆り立てるのか疑問ではありますが、考えるのは終わってからでも遅くはないと判断し、躊躇いがちにトリガーを引こうとしたその瞬間、思わぬ横槍が入ってしまいました。
「フェイトを離せ!」
そう言って襲い掛かって来たのは、私と同じくらいの背格好をした赤毛の少女でした。言動から察するに、彼の少女ことフェイトさんの仲間だと思うのですが、砲撃魔法のチャージ中に来られては、まともな対応など出来るはずがありません。ですので、回避がてら赤毛の少女をバインドで拘束し、二人が射線上へ重なるように移動した後、そのまま《 Divine buster 》で二枚抜きをさせてもらいました。
「これで終わり、なのかな……?」
辺りに響くのは、【レイジングハート】による圧縮魔力残滓の排出音のみで、魔力ダメージで気絶して墜落した二人をキャッチした音が微かに聞こえたような気もしましたが、それぐらい静かなものでした。一応、周囲をサーチャーで探ってみますが特にこれといった反応は無く、未知なるステルス魔法でも使われていない限り、脅威は排除されたと見て良いように思えました。
「一先ずお疲れ様。レイジングハート」
[- No problem. My master. -]
そしてジュエルシードを回収し、これにて一件落着。しかしまだ、フェイトさんと赤毛の少女の処遇を決めるという問題が残っています。選択肢としては、対話か放置か監禁かのどちらかになるでしょうけれども、取り敢えずそれは休憩を挟んでから決めたいと思います。長時間に渡る魔力行使と、慣れぬ戦闘。それによって肉体も精神も疲労していては、良い考えなど浮かばないでしょうから。