魔法少女リリカルなのは√クロスハート   作:アルケテロス

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人物紹介
【クロノ・ハラオウン】
若くして時空管理局執務官を務める少年。そしてリンディ提督の息子でもある。真面目で堅実な性格だが、師匠であるリーゼ姉妹に可愛がられ、自由奔放なリンディ提督と執務官補佐のエイミィに翻弄された結果、角は取れたものの女性への接し方は残念……、もとい大雑把な対応となってしまっている。



第14話:淡紅色が照らすモノ【中編】

Side:■■

 

 今度こそ、後悔したくはなかった。あの人の様に、あの子が信念に従って真っ直ぐ進むことになったとしても、何も知らず、関わらず、蚊帳の外のまま終わってしまうことだけは如何してもしたくはなかった。煩わしく思われても、嫌われても良い。もう二度と、目を逸らすような事だけは絶対に――――

 

 

 

~~

Side:フェイト

 

 幾つも失くしてしまった、大切なモノ。それは色()せても尚、大切で。温かみが残っていて。仮令(たとえ)、その瞬間に戻れなくとも手にしていたかったモノ。だから頑張らなくちゃいけない筈なのに、如何してだろう……?

 

 私はまた、“何かを失おうとしている”。

 

 欲しいのに、何かが抜け落ちそうになっていて、それがさっぱりと思い出せずに居る。分からない。何が分からないのか分からない。ぐるぐると思考が停滞し、マルチタスクも絶不調。図らずとも閉ざされてしまい、単一の、思考だけと、なってしまって……。一体、このぽっかりと空いた心は、何なのだろう。このフラフラとした気分は、黒に、冷たさに沈み行くような、この……、コレは……何?

 

 

 

 

 ………………光を見たい。

 

 

 

 

 暗いからこそ、きらきらと輝いて、明るくて、温かい、そんな色の光が見たい。……そうだ。どうせなら、最近見たあの色が良い。可愛らしくて、華やかで、奇麗で、それでいて優しそうな、あの淡紅色を……。

 

「――――っ?!」

 

 ちょっと痛かったけれども、ずっと見ていたいと、何となくそう思えたんだ。

 

「しっ―――て、フェ――!!」

 

 そう思えた。だけど、なんといって、つたえたら――――

 

「今、――室に――――、だか―――――――れよ―――ト!」

 

………

……

 

 目が覚める。それはすっきりとした自然な覚醒ではなく、身体中に纏わり付いた熱に耐えかねてしまったが故の、嫌な目覚め……。(うず)きはするけれども、動けなくはなさそうだった。

 

「くっ……」

 

 珍しくもない。(たま)にある事。それだけに、身体を起こすのも億劫(おっくう)に感じてしまう。鈍く、重く、錆付いてしまったかのように自由が利かない私の身体。包帯の下が酷く痺れ、更なる熱を持ち始めるも、寝惚けた思考を覚ますのには丁度良い痛みで、気分はともかくゆっくりとベッドから立ち上がる事は出来た。

 

 身体を見回し、チェックしてみる。

 

 何となく察してはいたけれど、全身が包帯だらけで、まさに満身創痍といった体ではあるものの同時にこれはアルフによる手当ての成果でもあり、見た目に反して治りが早いのは経験済みなので、心配は無さそうだと判断する。――――これもまた、何時もの事。

 

 そして何時も通りに御礼を言おうとして周囲へ視線を走らせると、手当てや治癒魔法の行使で疲れ切ってしまったのか、アルフは人型のまま床へ横たわり静かに寝息を立てていた。これまで昼夜不規則なジュエルシード回収に付き合わせ、更には慣れぬ対魔導師戦に巻き込んでしまう等の無理が、積もりに積もってしまったのだろう。

 

 本当に、申し訳無いと思う。しかしそれでも頼らざるを得ない私の弱さは、これからもアルフを苦しめるに違いなかった。

 

 そう、だから……。そんな有り様だから、罰が当たるのだ。幾度となく無能の証を刻まれ、罪業は際限なく積み重なるばかり。されど足掻こうともしなければ、おそらく全てが駄目なままで終わってしまう。

 

「頑張らなくちゃ…………」

 

 ミス高町を打倒して、管理局を出し抜き、ジュエルシードを可能な限り集めなくては……。それが私の為すべきこと。私に託されたことなのだから、もっともっと頑張らないと――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 きっと、リニスが悲しむんだ。

 

 

 

~~

Side:なのは

 

 さて、大変な事になりました。クロノさんとの模擬戦を終えた後、お兄ちゃん達とはその場で別れて通学鞄や外履きを取りに学校へと戻り、結界&転移でスニーキングを済ませて帰宅した際の時刻は、午後7時をとっくに過ぎていました。

 

 これから御風呂や歯磨き、宿題に睡眠等とすべき事は沢山あるのですが、如何やらその前に、出来上がっているお母さんの相手をしなければいけないみたいです。

 

「ねぇ、“なのは”~。お母さんね、ちゃんとお母さんやれていると思う?」

「んー……。うん、ちゃんとやれていると思うよ」

 

 THE絡み酒。レンちゃんに体よく世話を押し付けられた晶ちゃん曰く、早上がりして帰ってきたかと思えば、貴腐ワインを1時間もしない内に1本空けてこうなったのだとか。こんな事になるのなら魔力をけちらず、先にお兄ちゃん達を自宅へ転移させた方が良かったのかもしれません。

 

「ほんとにー?」

「話で聞いた限りだけど、アリサちゃんや“すずか”ちゃんの御両親よりは余程かなと」

 

 比較対象がおかしいですが、多忙な大企業の社長をやっている親友の御母堂・御尊父方と比べれば、授業参観や運動会にもきちんと来てくれるお母さんは、ちゃんとお母さんをやれているような気がします。

 

 そう思いつつ、御飯を咀嚼(そしゃく)して飲み込みます。ええ、そうなのです。酔っ払ったお母さんによる粋な計らいにより、食事と並行しての一家団欒(?)なのでして、逃げる事が出来ません。ちなみに、晶ちゃんは洗濯物を畳むと言う大儀名分で戦線離脱をしており、暫くの間は孤軍奮闘の見込みです。

 

「ふーん……。ところで、“なのは”。最近帰りが遅いみたいだけど、探し物は順調? 無理はしてない?」

「うん、順調だよ。目処も付いて来たし、無理の方もしていない筈……です」

 

 時速100キロ前後で空中戦闘機動を描き、ハルバードの刃や魔力弾が(きらめ)く戦闘にも慣れつつある。だから無理ではありません。ただ時折、なんで私が戦っているんだろうと振り返って見ては、不思議に思いますが。

 

「じゃあ……、辛いと思ったりは?」

 

 それは…………、如何でしょうか? ほんの数日前は、ジュエルシードによる被害へ胸を痛めた事もありましたが、今となってはジュエルシードを集めていけば被害も無くなり、フェイトさんにも会えるという一石二鳥のような甘い考えが、日に日に増しているのです。

 

 なんと楽観的で、都合が良いのでしょう。

 

 きっと、私は困惑しているんだと思います。おそらく夢でも見ているのかもしれません。だってそうでなくては、探索を行いつつも通学する等の非効率的な選択肢を、選び続ける筈が無いのですから。

 

 つまり、現状の私は“少し変”なのかもと判断を下したところで、「お兄ちゃん達も手伝ってくれているから、それほどでも……」と無難な返事をしておきました。嘘ではありません。しかし本当でもありません。それでも、私自身が前向きになれるのなら。お母さんが心配せずに微笑んでいてくれるのなら、誤魔化し甲斐も有るというものです。

 

「ところでね、お母さん。最近、気になる子が出来たの」

「なになに? もしかして、男の子とか?」

「や、それはないです。フェイトって言う名前の女の子なんだけど、――――」

 

 関連性を持たせつつ、辛気臭い話題から話を遠ざけては逸らし続けて。こうして私は、お兄ちゃん達が帰って来るまでの間、楽しい一時を過ごす事が出来ました。

 

 

 

 宿題という、最大の宿命すらも忘れて。

 

 

 

 あれから、約10時間後でしょうか。睡眠時間としては正味5時間程で、寝たりないと訴える本能を無視して目を開き、携帯電話のアラーム機能を止めて起床します。体調は微妙な感じですが、魔力に関しては好調のようで、昨日消費した分の回復は出来たように思えます。

 

 部屋を出て、階下へと降りて、顔を洗い、短くなった髪を()いて、匂いに釣られるようにリビングへと向かって。なんだか、今日はやけに静かだなと思っていると、そこに居たのは晶ちゃんだけでした。

 

「おはよー、“なのは”ちゃん」

「おはよう、晶ちゃん。レンちゃんや、他の皆は?」

 

 何時もは、カウンターキッチン越しにレンちゃんと“ど突き合い”をしている光景が見られるのですが、本日はその限りではないみたいです。

 

「レンのやつは、『今日は朝市があるから、あとは頼むでー』とか抜かしながら出て行って、桃子さんは仕込みの確認がてら早めに出勤。師匠や美由希ちゃん達は、何時も通り鍛錬にでも行っているんじゃないかな? まだ、戻っては来ていないみたいだけど……」

 

 なるほど。と一頻り納得した後、晶ちゃんと一緒に朝食を済ませ、自室で宿題を終わらせたり、【レイジングハート】のシミュレーター機能で遊んだりして時間を潰し、通学バスが来る時間帯に間に合うよう家を出て、一路バス停へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかしながら、今日この日。私が学校へ辿り着くことは無かったのでした。

 

 

 




Side:■■■■

 今度こそ、失敗する訳にはいかなかった。あの時の様に、あの子を二度ならず三度も失う事など有ってはならず、そしてその失敗を挽回するだけの時間は、私にはもう残されていない……。だからこの一度に全てを賭けて、そして――――

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