【ゼスト・グランガイツ】ver.2.043
時空管理局ミッドチルダ地上本部における首都防衛隊のエースで、近代ベルカ式による強襲戦を得意とする空戦魔導師でもある。しかし、主な任務は首都近郊の治安維持なので過剰戦力と見做されており、空戦が可能な二個小隊と引き換えに派遣されてしまうなど、少しばかり不遇な一面も……。槍働きと強者を好むため、現在進行形で“なのは”への評価が青天井で上昇している。
side:リンディ
巨大魔力反応を検知し、第一種戦闘配置を命じて早5分が経過した。現地観測情報から【闇の書】が暴走状態へと移行しており、現在その第一形態である『管制人格』との戦闘を見守っているけれども、ゼスト2尉と“なのは”さんの二人掛かりでも辛うじて互角といったところだろうか。
前回はまともに戦わず、時間経過で第二形態へ移行する瞬間に特殊封印魔法を叩き込んで封印したので実感する事は無かったが、やはりこの状態でもかなり手強い。滅びた世界から回収された映像資料で、その片鱗は見て取れても正しく恐れる事は出来なかった。……そもそも、第一形態との戦闘は必要最小限の予定だったのに、早くも変更せざるを得ない。
思えば11年振りの、2回目の対峙。
あの時と違うのは殲滅戦である事と、夫のクライドが居ない事。そして息子のクロノが出撃している事だろうか。無論、エイミィを始めとした船員も総替わりしている。何よりも、『管制人格』の方から交渉して来るなどあまりにも想定外だった。
「ランディ、グレアム提督に通信を」
「了解しました」
そしてグレアム提督は、あの日と変わらず……いや、あの日を悔いているからこそ同様に協力を申し出てくれた。数ヶ月前に全改修が終わった次元巡航船『ケストレル』に乗艦し、私ですら見知らぬ長距離狙撃用魔導砲《 ランドグリーズ 》ユニットの砲身を真下にある地球へと向けて静止軌道を航行している。
この他にも、クロノに託した戦術デバイス【デュランダル】。これも同じく、グレアム提督が私費を投じて完成させたと聞き及んでいる。ゼスト2尉の派遣に関する調整だってそうだ。彼の上司であり、武闘派と噂される“レジアス・ゲイズ”1等陸佐と直接交渉して頷かせたとは、如何なる話術を用いたのか……。だからこそ、この質問をするのは
[> ……顔が
[> グレアム提督こそ、何か複雑な感情を抱いてらっしゃるようで <]
[> 任務に私情は挟まんよ。それで……、何か用件でも? <]
[> ちょっとした確認です。その《 ランドグリーズ 》という新型ユニット、事前資料では分かりませんでしたが、質量兵器に酷似した砲身を未知の魔法式で構築するのを目視及び記録しました。
船体の側面に2基ずつ配備された砲身――古代ベルカ人が用いた馬上槍のようにも見えるソレは、展開前まで金属コンテナと
[> 心配せずとも違法ではない。よくある魔法技術検証用試作機の1つで、実戦データの収集を兼ねて持ち出している。威力的にも、あの《 アルカンシェル 》を前にすれば霞む程度だ <]
[> …………規制審査に通していない物を、管理外世界とはいえ人が住む惑星で試射すると? <]
[> かと言って、大気圏に降下して支援砲撃をするよりはマシだろう? リンディ提督、【闇の書】は滅ぼさねばならん。しかし、部下や仲間達を危険に晒す訳にも行かん。ならばこれしきの汚名や批判、甘んじて受け入れよう <]
必要だと判断したから準備した。……なかなか、嫌らしい真っ当な理由である。臨時会議で議題に取り上げたところで、第一級捜索指定ロストロギア【闇の書】を相手に少数精鋭で挑まねばならず、
其処まで予想し、性能を考慮した上で完成間近の《 ランドグリーズ 》ユニットを引っ張り出して来るとは何と
けれどその根底に有るのは、研ぎ澄まされた使命感だ。憎悪と復讐心で焼成された、私が宿すべきだった物だ。かつて幼かったクロノの育児や、提督という多忙な仕事へ逃げた私とは違い、グレアム提督は【闇の書】ごと《 アルカンシェル 》で蒸発させたクライドに対して今も悔いている。――――嗚呼、あまりにも熱量が違う。だからこそ私は、謝意を表する代わりに折れざるを得ないのだ。
[> 射撃による人的被害が生じた場合、『ケストレル』の指揮権を剥奪します。宜しいですね? <]
[> 同意しよう。それぐらいの覚悟は出来ている <]
~~
side:はやて
楽しい楽しいクリスマス・イヴを過ごし、気持ちよう眠りに就いて、覚醒したかと思えば異次元空間&囚われの姫&恐らく最終決戦とか、何の冗談やろなぁ……。寝起きドッキリの類にしては、あまりにも悪辣すぎて神経が苛立つ。
涙の海は干上がり、追憶すら色
こんな運命にキレるだけの強さが在れば、こうは成らなかったのだろうか?
家族ごっこに
シグナムやシャマルを姉のように頼り、ヴィータを実妹の如く可愛がり、ザフィーラを存分にもふり、穏やかで楽しい家庭を築く。たったそれだけの、他愛のない日常を望むことすらも「駄目なのだ」とケチ付けられてしもうたら、
「なぁなぁなぁ、『管制人格』はん。この際、隠れてコソコソやっとったことは横に置いとおて、こっから脱出して大団円を迎えるには如何すればえーかな?」
『管制人格』。【闇の書】と、主の補助機能にして代行者。昔の主によって変なシステムを後付けされたせいで深刻な不具合が生じているのに黙っていた挙句、記録を参照できないようにした無垢な騎士達に嘘を教えて扇動した。――要するに、事態を複雑化させて悪化させた元凶の1つである。かと言って、端折られた説明を聞く分には善意の塊だったので恨み難い。
これまで何十年も、解決の糸口を掴めなかった? ほうほう。
下手に希望を持たせて、絶望させたくはない? なるほど。
全ての
最終的に、現状へ誘導するのが一番だと確信した? へー、水臭いやっちゃな。
当事者達を関与させず、華麗なウルトラC難度の決め技して満点着地を狙える程度の最悪なら、私は朝までぐっすりやったろうに……。好い加減、一人では限界がある事を認知してどうぞとは思う。てか、只の怪しい本状態を含めたら9年間も付き合いがあるんやから、此処で遠慮されても困るっちゅーねん。
「初めに、主“はやて”の権限で【闇の書】の核たる『永遠結晶エグザミア』との接続を解除し、主“はやて”のリンカーコアと私を接続します。この接続は物理的なモノではなく、オンラインで繋ぐような処置だと認識して下さい。その際、私の外殻たる躯体は自動防衛運用システム『ナハトヴァール』に侵蝕されているので―――ー」
「ごめん。もうちょい簡潔な説明で御願いします……」
「外に出れたら騎士を再召喚して、暴力で全てを終わらせる予定です」
「よっしゃ、任された!」
何とかバールを「ちちんぷいぷい」でやっつければ、悲しみの連鎖を断ち切れる。それさえ分かれば、俄然と未知への苦手意識も薄れていった。
「……我が主。事を進める前に、1つだけ御願いが有ります」
「そう改めてこられると身構えてしまうんやけど……。で、何なん?」
「私に、名を御与え下さい。それで契約は完了致します」
「せやなぁ…………」
【闇の書】は外側の容れ物である本の方の名前やし、中身のAIみたいな子には別の名前が必要になるのは当たり前の事で、銀のロングストレートに理想的な戦乙女のよーな別嬪さんに“闇子ちゃん”とか安直な名前を授けてしもーたら、彼岸から助走を付けたおかんにド突かれかねないので此処は慎重に……。
「……輪廻転生のリインカーネーションに、『前へ』っていう意味がある
「有り難う御座います。再誕の比翼“リインフォース”。しかと胸に刻みました」
そんなけったいな称号、授けた覚えが無いんやけどどどどどぉ! まっ、そういう国と時代に創られたそういう子なんやろね……。ええ仕事するやん開発者。その熱意を安全性にも注いでくれはったら、こないな怒りを抱かずに清楚で居れたのに。あーあ、明るく楽しい再†家族計画が台無しやわ。
~~
side:なのは
戦闘開始から約10分程でしょうか。それなりに弾幕や砲撃をぶつけ合い、グランガイツさんが切ったり蹴ったり蹴られ、突き突かれ殴られておりますが優勢に傾くことは無く、辛うじて膠着状態が続いていました。
「そこっ!」
[- 《 Divine buster : Peril point 》 -]
通常よりも2倍程――約8秒の時間を掛けて、魔力が結晶化する寸前までチャージした高圧縮魔力砲を照射。光が迸り、瞬時に着弾を確認。その後は騎士甲冑への徹甲作用だの、リンカーコアへの侵蝕負荷で良い感じにダメージが入っていると思うのですが、片っ端から修復されて実質ノーダメのように見えます。
単純にタフなのと、やはり物理的に攻略するのは蛮勇だったんでしょうね。そも、資料に
やはり、時間切れによる形態移行を待つのが無難かな? と思い、攻勢を少しでも緩めるとグランガイツさんが
[> ステラ1。30秒稼ぐので、態勢を整えて下さい <]
[> 済まない、感謝する! <]
[- 《 Divine buster : Vanishing shift 》 -]
「ファイエル!」
ヘイトを集める為に、カートリッジを毎秒1発消費しながら《 Divine buster 》と《 Divine shooter 》の強化版である《 Axel shooter 》を組み合わせた複合魔法を垂れ流します。奔流と
綺麗に《 Axel shooter 》だけを防ぎつつ飛行し、《 Divine buster 》はきっちり回避しておりまする。あの叢雨って、フェイトちゃんやクロノさんでも4発ぐらい受ければ防御魔法が砕ける威力なのに……。いと可笑しい。
[> フェイトちゃん。ちょっと御願いしても良いかな? <]
[> ……如何したの、“なのは”? <]
先程から、魔力変換資質によって変異した荷電魔力流を集めてバチバチしていたので、私が危機的状況になれば勝手に切り込みそうだなと予期し、念話で声を掛けてみました。ええ、案の定です。気力十分といった雰囲気が伝わって来ます。
[> 20秒くらい、『管制人格』さんの気を引いて欲しいんだけど…… <]
[> それだけで良いの? <]
[> 有視界戦闘中に、隙が多い魔法はあまり使いたくないなーと思うのですよ <]
かつてフェイトちゃんに撃ち込んだ《 Starlight breaker 》だって、対象を拘束後に防御魔法と砲撃魔法を兼ねた魔法陣を展開した上で、約9秒の高速チャージに発射・着弾まで約3秒と遅いのですから、それ以上の手間暇が掛かる魔法なんてぞっとします。まぁどちらかと言えば、アレ以上の火力を早々と使いたくはない気持ちの方が強いですけどね。
[> 分かった。じゃあ、ちょっと行って来ます <]
[> うん。行ってらっしゃい <]
言い終わった瞬間、残像と衝撃波だけを残してフェイトちゃんがカッ飛んで行きました。準備時間さえあればこれ程までに速くなるとは、よもやよもや……。次に模擬戦をする際には、警戒したい所存です。
さて、フェイトちゃんと仕切り直せたグランガイツさんが共闘している間に準備しませう。【レイジングハート】を構え、カートリッジロード×10。防御魔法の応用による延長バレルを増設。質量情報を付与した半実体弾ではなく、過剰魔力圧縮による人工魔力結晶弾を延長バレル内に作成。そして並列思考上で拘束魔法を発動待機させ、ついでにカートリッジが残り6発なので撃ち切り、抽出された純粋魔力をリザーバーへと流し込んでから新しいヘリカルマガジンに交換しておきます。
1つのヘリカルマガジンに60発も入っておりますが、撃ちまくる戦闘スタイルなので交換頻度はフェイトちゃんと大差無いんですよね実は。まぁ、だらだらと戦闘しても無意味なので、早く終わらせる分と考えれば必要経費かもしれません。
[> 各員に通達。射線上から至急退去して下さい <]
とはいえ、今から撃つ《 Starlight breaker 》よりも無駄に洗練された無駄の無いこの魔法は効果範囲が狭く、長大な射程と副次的な飛散物にさえ気を付ければ大丈夫だろうとシミュレートされていますので、対物用であることを除けば撃つ方としては非常に気楽です。
「ロック」
[- 《 Multiple bind:Unlimited 》 -]
一度の拘束魔法が不安なら、多種多様な拘束魔法を複数且つランダムに掛け続ければ良い。――ミッドチルダにおいて神聖化された活火山『ウルカヌス』の名を冠したカートリッジ・システムの恩恵は凄まじく、貪欲にカートリッジを食らいつつ『管制人格』さんの四肢と頭部を集中的に拘束します。
おまけに延長バレルの砲身内へ捕らえてしまえば、後は狙うまでもありません。味方の退避確認良し。射線上は《 封時結界 》が張ってあるので、流れ弾の心配無し。願わくば、これで第一形態が終わりますように……。
「メテオライト、ブレイカーーーー!!」
[- 《 Meteorite breaker 》 -]
尚、物理的に四散ではなく五散し、結晶弾と延長バレルの狭間で擦り下ろされてしまった『管制人格』さんの躯体ですが、粉々に壊れながらも銀色の光みたいな物が分離し、見覚えのない人型を形作りました。恐らく、【闇の書】の主さんなんでしょうね。多分きっと。
「聖なる夜に、白銀の再誕を。リインフォース、ユニゾン・イン!」
取り敢えず色々とツッコミたい事が多々有れども、元気そうで何よりです。
「『守護騎士』達よ、我が聖杖の下に集え。闇を砕き、未来を切り開く為に!」
暫し見守っていると、少女が融合騎らしき光源を取り込んで髪やら背中の羽が白くなった後、『守護騎士』の皆さんが再召喚されました。無論、その合間にフレームを自動換装したり、ドラムマガジンを取り換えたりと警戒は緩めません。
「……【烈火の将】シグナム。馳せ参じました」
「【鉄槌の騎士】ヴィータ。馳せ参じました」
「【湖の騎士】シャマル。馳せ参じました」
「【盾の守護獣】ザフィーラ。馳せ参じました」
「何やよー分からん事になっとるけど、
「「「「はっ、御心のままに!」」」」
そんな訳で感動的黒歴史を観測しましたが、これから如何したものでしょうか? 現行の作戦上、『守護騎士』とその主が味方になってくれる――会話の流れ的に、そうだと信じたいです。――なんてアウト・オブ・眼中でしたけど、司令部の判断を仰ぎたいところ。と言うか、先程から不思議と反応が無いんですよね。
はて……?