魔法少女リリカルなのは√クロスハート   作:アルケテロス

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デバイス紹介
【バルディッシュ・テンペスト】
マッドエンジニア達に改造された『バルディッシュ』。フェイトの戦闘スタイルを確立させ、『バルディッシュ』の制作も行ったリニスにより更なる成長と発展を見据えた機能がプリインストールされていた為、魔が付かない程度の改造と調整が施された。装弾数6発、堅牢性重視の回転式シリンダー型カートリッジ・システムを採用。バリアジャケットも再調整され、全身の各所に装甲と一体化させた次世代型電磁カートリッジ・システム『ヘラウスフォルデルング』を配置し、防御力と継戦能力が上昇している。無論、予備装甲は被弾しやすい箇所を考慮し、必要な数量を量子格納済みである。



第45話:ラストダンスは盛大に【後編】

side:クロノ

 

 魔導師の治療で使われる『マジック・ポーション』という高価な劇薬がある。これは戦闘中に、急性魔力欠乏などの症状で倒れた魔導師に対して安全な後方へ移送できず、非常に止むを得ない状況下でのみ許可される薬だが、底を着いた筈の魔力が漲る代わりに、思考が好戦的になるデメリット……はまだ可愛い方だ。

 

 薬が切れた後は、頭痛や吐き気を始めとした豊富な副作用が49種類も控えている為、使いたがる人は漏れなく病院送りか墓石の下へと埋まるだろう。作用機序としては、リンカーコアを活性化させると同時に心肺機能も強化し、送られる魔力と血流によって興奮状態だと脳が錯覚してそうなるらしい。

 

 それで、だ……。

 

 “なのは”に帯状の魔法を刺され、リンカーコアに魔力が供給されたのは構わないとして調子も良くなるとはあまりにも予想外だった。膨大な魔力消費で疲弊していたリンカーコアが3秒程で回復とか、どんな副作用が有るか分かったものではない。仮に、“なのは”の固有技能で副作用が無ければ、それはそれで末恐ろしい事である。

 

 バッテリーを入れ替えるかの如く、長時間戦闘が可能な空戦魔導師部隊なんて成立したら既存の戦略概念が崩れてしまう。そも“なのは”自体、砲撃手として既に卓越しているのだから、今以上に悩みの種を抱えたくはない。そんなに強くなって何を為す? あらゆる次元世界から『蟲』共でも根絶するのか?

 

[> “なのは”、大丈夫? 血が出ているよ? <]

[> まだ大丈夫だよ。フェイトちゃんこそ、内出血が酷いけど大丈夫なの? <]

[> うん。無理に速度を出さなければ、支障は無いと思う <]

 

 他にも悩みの種と言えば、フェイトは慣れぬ高速機動魔法を連発したせいか、全身の古傷が赤黒い線となって浮かび上がっており、目立たなくなっていた額から左頬にかけて走る古傷もまた例外ではない。対して“なのは”は、その身に取り込んだ膨大な魔力流のせいか左手の傷痕が開き、今も血がぽたぽたと垂れていた。おまけに何故か瞳から桜色の魔力光が溢れていて、その影響も気になるところだ。

 

 また、連戦で最前線に立ち続けているゼスト2尉は明らかに精彩を欠いており、先の暴走状態であったリインフォースとの戦闘で負ったダメージが影響しているのか動きが鈍く、ロッテは近接攻撃で足を痛めたのか珍しく射撃魔法を多用している。

 

 

 

 想定よりも状況が悪い。

 

 

 

 否。数十年間隔でたったの2回、それもろくに交戦していない戦闘データから算出した推定戦力に賭けた僕達――――管理局が間抜けだったのだろう。慎重かつ過剰に見積もった筈なのに、それすら超えて来るとは古代ベルカ人共め……。後世の主が魔改造に失敗したツケが現在のコレらしいが、そうだとしても軽々しく高エネルギー結晶体を核に使うなとぼやきたい。御蔭で良い迷惑だ。

 

[> “なのは”、フェイト、“はやて”。三人の最大火力で消し飛ばせないか、試して欲しい <]

[> 了解。2分ぐらい稼いでくれると助かります <]

[> 了解。こっちは直ぐにでも撃てます <]

[> 了解しました。うちも大丈夫です <]

[> ……言っておくが、地球を壊すんじゃないぞ“なのは”? <]

[> や、流石にそんな火力は出ないと思います <]

 

 如何だかな……。15秒も掛からずに、都市を廃墟群へと変貌させる事も可能な《 Starlight breaker 》の8倍も時間を要する魔法なんて、己の常識が激しく警鐘を鳴らすも黙らせる。とにかく今は、決め手となる強力な切り札が欲しかった。

 

[> ゼスト2尉、外周部の掃討へと移って下さい。遊撃は自分がやります <]

[> 恩に……、着る… <]

[> エイミィ、『ケストレル』に支援砲撃要請を。弾着は1分30秒後 <]

[> おっけー! ……リクエスト承認、カウント表示するね! <]

[> 総員、傾注! 弾着5秒前には安全圏へ退避するように。以上だ <]

 

 矢継ぎ早に指示を出しながら【デュランダル】を構え、リフレクター・ユニットを引き連れて加速する。“なのは”のように長距離から砲撃と魔力弾を垂れ流す事も、フェイトのように近中距離での高速機動戦が得意な訳ではないが、中距離戦での立ち回りはみっちりと鍛え上げてきた。

 

 それに的当ては、候補生時代に散々やらされたので慣れている。恐れなくて良い。自分がよく知っている(クロノ)なら、適度な戦意を保ち、感覚を研ぎ澄まして対処すれば勝てる相手の筈だ。

 

[- 《 Frost cannon 》 -]

「ッ、弾け!」

 

 “なのは”の砲撃と比べれば数段劣る砲撃魔法で足を止めると、直ぐにコード【止まらぬ破壊(U・D)機構】から射撃魔法が飛んで来る。それをリフレクター・ユニットで偏向させて逸らし、次弾を待たずに移動する事で回避しておく。誘導弾はあれども、偏差射撃をしてこないとは何と有情だろうか。あと約1分、この調子で頑張って貰いたいものである。

 

 

 

~~

side:なのは

 

 未だ残留感がある胸中のナニカを、『邪念』と形容するのは些か失礼かもしれません。今も尚、生命力を魔力に変換されている人や生物達は苦しんでいるのだから、恨みたくなる気持ちは仕方が無いことです。

 

 ただアレを抱えるには重過ぎて、《 Starlight breaker 》に込めて撃ち出してしまったのはどうか許して頂きたい。私は神様ではないのだから、恐らく限界がある……とは思います。いや、此処は正直に「気持ち悪かったので捨てました」と開き直っておきませう。

 

 悪をもって悪を征す。

 

 それよりかは、『怒り』や救いを求める『祈り』の“力”で倒した方が悪には相応しい最後です。機械的に、意志も無いのに悪を為すだけの不良品を恨んだところで意味はありません。だからこそ『怒り』で壊し、『祈り』で善き方向へと捻じ曲げなくては。

 

[> 弾着10秒前! <]

[> 総員退避! 巻き込まれるぞ! <]

 

 ふと視線を上げると、遥か上空から流星のように真っ赤な尾を引く無数の飛翔体が、コード【止まらぬ破壊(U・D)機構】を目掛けて斜めに落ちて来ます。ベルカ式で見られるような半実体弾にしては、あまりにも硬い構造体……。ひょっとしたら、本物の質量弾かもしれない其れは容易く防御魔法や外殻を貫き、変形しながらコード【止まらぬ破壊(U・D)機構】を(えぐ)り飛ばしました。

 

 凄まじいソニックブームが発生する程の超音速で、防御魔法へぶつかった際に弾頭から溶けて放射状に広がっていましたから、原理としては装弾筒付翼安定徹甲(A P F S D S)弾の浸徹作用と、ダムダム弾の拡張弾頭が合わさった物に近いんでしょうね。嗚呼、可哀想に。

 

 

 

 でも自業自得です。

 

 

 

 更に言及するなら、侵蝕変換魔法《 イルミンスール 》もそうです。あの魔法は確かに恐ろしいのですが、発動した後は自動的に周辺にある生命を魔力変換しつつ発動者に供給するだけの魔法らしく、少し頑張って干渉すれば供給先を私の方へと変えることが出来てしまいました。……だから、これから発動しようと思う魔法で撃ち上げられるのもまた、自業自得と言えます。

 

「苦痛の咆哮、悲嘆の涙。束ね紡ぐは憤怒の意思」

 

 コード【止まらぬ破壊(U・D)機構】がすっぽりと入る程の巨大魔法陣を海底に敷き詰め、手当たり次第に集めた魔力を注いで行きます。すると流石に危険を感じたのか移動を試みますが、再生途中の手も足も翼もあらゆる魔法で壊されるのですから、逃げることは叶いません。

 

「今此処に、奇蹟を刻み給う……。ファールバウティ」

[> 雷光一閃! プラズマザンバー! <]

[> 響け、終焉の笛。ラグナロク! <]

 

 

 

 全力全開、聖裁代行。

 

 

 

「ディザスター」

[> ブレイカーーーーッ!! <]

[> インパクトっ!! <]

 

 三者三様の魔法が混ざり合う。平穏を、事態の解決を願って放たれた魔法はコード【止まらぬ破壊(U・D)機構】へと食らい付き、その醜悪な神秘を砕いていきます。

 

 ぼろぼろの触手、装甲、光輪、翼、浮遊ユニット、本体。全ての虚飾は消失し、やがて剥き出しになったリンカーコアらしき物がユーノさんとシャマルさんによる強制転移魔法で静止軌道上へと送られ、数十秒後には極彩色の閃光となって弾けました。

 

 戦略魔導砲《 アルカンシェル 》による空間歪曲と対消滅反応。

 

 やはり、映像資料と実物では迫力が違いますね。しかし遠からず、(ささ)やかなる副作用として暴風や磁気嵐などの影響が生じるかもしれませんが、やれる事はやった……と思います。神ならぬ身で、人として、小学3年生でありながらも果たしました。只それでも、侵蝕変換魔法《 イルミンスール 》の被害だとか身内の安否とか考え出したら、とてもとても気が重いです。

 

 桜吹雪に粉雪。私の魔力残滓やら、クロノさんの凍結魔法による人工雪が降りしきる中、現世の不条理さをぼんやりと恨みつつ、そう言えば左手から出血していたよねと解を導きながら虚空へ意識を溶かし――――

 

………

……

 

 

 

 

 

 

 

 

 はい。ぎりぎりセーフです。貧血でフラっと来たところをフェイトちゃんが高速移動魔法で駆け付けてくれた為、落下せずに済みました。そして状況終了なので、じゃあ解散という訳にも行かず……。

 

 八神さん達を含む全員で次元巡航船『アースラ』へと場所を移し、『管制人格』ことリインフォースさん及び『守護騎士』の皆さんには魔力封印をした上で軟禁措置。八神さんの体調も考慮して、聞き取りや事情説明は翌朝に。――という事が有ったのだとフェイトちゃんが話してくれました。

 

 

 

 約16時間後に。

 

 

 

 ええ。激戦の最中に、少なくない血がちょろちょろ流れてましたからね。ぐっすりと病床に伏していた次第です。因みに、私の家族には連絡済みで安否確認は取れているようですが、アリサちゃんや“すずか”ちゃんは未だに不明だったりします。これは単に、フェイトちゃんがその二人と仲良くないだけなので仕方ありません。

 

 私だって、友達の友達なんて気にしません故、これに関してはどうこう言える筈も無く……。取り敢えず、御見舞いで貰った栄養ゼリーのパックを吸いながら、無事に退院許可を貰って帰れますようにと願うのでした。

 

 

 

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