(※1)【止まらぬ破壊機構】/ Unstoppable Disruptor
第一級捜索指定ロストロギア【闇の書】が、捜索指定される由縁。歴代の主によって、改悪または調整ミスによるプログラムの暴走が切っ掛けとされており、起動や再生を繰り返すに連れて凶悪さを増していった。特に、あらゆる物や生命を魔力へと変換して取り込む侵蝕変換魔法《 イルミンスール 》は脅威的で、その干渉力を跳ね除けるほどの“力”が無ければバリアジャケットすら容易に侵蝕し、やがて死に至らしめる。決まった形状は無く、全てを殲滅するまで場当たり的な破壊行為を続け、戦略魔導砲《 アルカンシェル 》を含む既存の手段による破壊や封印処置は
side:アルフ
全くもって、昨日は素晴らしくも酷い一日だった。第97管理外世界『地球』の日本という国では12月24日の夜を楽しむとの事で、クリスマス・ツリーを飾り付けたり、ちょっと贅沢な食事やケーキを食べたりと楽しかったけれども……。まぁ、あの突発的な最終決戦のせいで、かなり苦い思い出になってしまった。
飛び交う高ランクの魔法。
膨大な魔力を制御しきる技能。
『使い魔』という存在のデメリット。
単なる力不足よりも、特に最後の理由が恨めしかった。『使い魔』は、魔導師から供給される魔力によって存在している魔法生命体であり、私の場合はフェイトから魔力を貰い続けないと消滅するようになっている。
つまり私が存在する以上、フェイトは全力全開の魔法が使えないのだ。
確かにフェイトは優れていて、そこら辺にいる魔導師よりも数段上の空戦Sランク相当らしいけれども、敵だった頃の“なのは”や今回みたいなやたら硬くて強い相手と戦うには、私の存在なんて足手纏いでしかなかった。デバイスを
少なくとも、胸を張れるほどの貢献が出来たとは思えなかった。無限に湧いてくる触手だの爪牙だの、砲台付きの何かをちまちま倒したところで大局に影響は無かっただろうし、それよりもフェイトが魔力を気にせずに奮闘できていた方が余程頼もしかったに違いない。
一応、“なのは”を見習ってカートリッジを惜しまずに使ったりしていたけど、速さも無ければ狙撃を可能にするような精密さも無いのだから、本当に消えてしまいたい程の情けなさが心中を焦がす。
「全体的に身体強化が甘い。そんなんだから、速度を威力に乗せられないんだよ」
「魔力付与打撃は、打ち込むと同時に魔力で撃ち抜くべし。大型目標が相手なら、威力は過剰気味なぐらいが丁度良かったりするわ」
「あいよっ!!」
――――そして現在。あの激戦の翌日に、たった一人でシミュレーター・ルームを使って黙々と鍛錬していたのを憐れんだのか、クロノが教官役としてリーゼ姉妹を紹介してくれた御蔭で短時間ではあるものの、専門的な指導を受けていた。基本はリニスから学んだけれども、彼女が居なくなってからはずっと我流で頑張ってきたせいか私の格闘術はどうも
対人用としては愚直であり、対大型生物用としては威力に欠ける。……なら、工夫して威力も増し増しにしてしまえば良い。今は弱くて力不足でも、次こそはきっと活躍してみせるんだと意気込み、拳を振り抜く。
私は、まだ折れちゃいない。あの
今回は大丈夫でも、次なんて誰にも分からないからね……。
~~
side:ユーノ
事件が終結しても尚、事情聴取やら事件の全容を纏めた資料の作成とか、裁判に向けた手続きなどやる事は多く残っている。そして僕は、【闇の書】の来歴をこれまで以上に詳細な物とする為に、管理局の『無限書庫』と呼ばれる迷宮めいた資料窟にて潜行調査を行っていた。
クロノに依頼されたから。
という理由も有るけれど、正しくは逃避と形容すべき後ろ向きな理由から資料捜索に没頭していた。なまじ空戦A+ランク程度の実力が有ったので、助けになるならという理由で今回の事件にも戦闘補助要員として参加してしまったのだが、はっきり言って無力だった。
そもそも『守護騎士』の全員がオーバーAAA+ランクで、シグナムに至っては推定S+ランクなのだから盾にすらなれる気がしないし、最終決戦で対峙したコード【止
仕方無い。相手があまりにも悪過ぎる。
そして“なのは”はあまりにも強く、その輝きは増していく一方だと感じてしまった。才能以前に、比較にすらならないという事実を改めて突き付けられた僕は一抹の悔しさを投げ捨て、複数の本型ストレージを《 検索魔法 》で読み込んでは頭痛に耐え、精査した情報を時系列順に組み直していく作業を自虐的に行っていた。これを元に報告書へと纏める必要もあるのだが、それはもう何日か後になるだろう。
ともあれ僕は、『
…………大人に成ろう。
『ジュエルシード』発掘後の
「今からでも、足掻けば変われる……のかな?」
魔法の習熟には、それなりの努力はした。皆が普通に使っている飛行魔法だって、本来は高等魔法の1つとして数えられており、スクライア一族の中でも数人しか使えないくらい難しい魔法である。
けれど所詮、それなり程度でしかない。クロノみたく執務官になれる程の知識や戦闘技能も身に付けず、“なのは”みたいな常識破りの発想なんてした事が無いし、
改善する余地が残っている。それに保有魔力が少なくても、カートリッジで補える。つまり僕は、まだ強くなれる可能性が有った。
………
……
…
気分転換がてら、少し身体を動かした方が良いかもしれない。恭也さんや美由希さんのように
~~
side:なのは
未知の現象による死傷者多数。――――魔法という概念が知られていない地球では、コード【止
結界すら魔力へと変換して取り込み、隔絶も秘匿もできなくなった脅威が世界中に被害を
「如何すれば良かったのか?」と考えるよりかは、「如何にもならなかった」と諦めた方が良いんでしょうね。極論、私がもっと強ければ解決したのかもしれませんが、神様でも頭脳明晰な超人でもないので無理があろうかと思います。
更に仮定の話ですけれど、アレの破壊に失敗していた場合は地球が滅びていたでしょうし、その後に転移されたら別の次元世界でも惨劇が繰り返されていた筈なので、たった数万人程度の死傷者に留められたのは不幸中の幸い……なのかもしれません。
いえ。幸いなのは私の主観だからこそ、ですね。
家族も親友も知人も、私が大切だと思う範囲内ではたまたま被害に遭ってないだけですし、例えば親しくないクラスメイトの家族が亡くなったらしいとか、御兄ちゃんの友人である勇吾さんの門下生が衰弱状態になって入院したとか、御母さんの友人が侵蝕された際に転倒して骨折したとか、ちょっと範囲を広げれば不幸だらけです。
他にも、動物や植物も見境なく侵蝕されており、場所によっては動物園や自然保護区に壊滅的な被害が生じたところも有るとの事。海の方でも、
「散歩に行こっか、レイジングハート」
[- I got it. -]
さてさて。現状、ゼスト2尉よりは軽傷だった事もあり、早々と自宅療養を言い渡されて要するに暇です。されど冬休みの宿題をやる程の勤勉さも元気も無いため、御兄ちゃんを見倣って時間潰しを図ります。
尚、空の散歩はしません。昨夜はゼスト2尉が墜とされないように神経を擦り減らしながら飛びました故、暫く良いかなと思う次第です。それに空を飛ぶと砲撃の余波による津波で荒れた沿岸部やら、魔力流の噴出によって地面に大穴が空いている地区が見えてしまうので、取り敢えず今日は普通に歩きませう。
家を出て、
幾つか路地を抜け、
そこそこ長い石段を登り、
10分も掛からず八束神社に到着しました。
はい。何で空よりも低いとはいえ、見晴らしが良い場所を選んだんでしょうね? どのみちインドア派なのでこれといった選択肢は思い付きませんが、荒れ果てた臨海公園を薄暮のヴェール越しに眺めたところで気分は
そう言えば……。以前なら此処でくーちゃんをモフモフ出来たけれど、憑き物を祓うために魔砲を直撃させてからは避けられている現実もあったような…………。
悔恨。かと言って、今の状態でアリサちゃんや“すずか”ちゃんに会ってまで犬や猫を触りたい訳ではありませんし、傷痕がまたしても色々酷いことになってます故、当分の間は見せられません。それに御姉ちゃん曰く、雰囲気が悲しそうやら辛そうな感じで痛々しいらしいですよ? 私。
確かに、悲痛や怨嗟に
[> 暇そうだな、“なのは” <]
[> そっちは忙しそうですね、クロノさん。お疲れ様です <]
さて。逢魔が時に黄昏ておりましたら、丁度良いタイミングで通信が入って来ました。多分、暇そうなのを見計らっての通信でしょうけど、あまりの監視網の凄まじさには驚愕を通り越して呆れます。プライバシーには配慮しているかもですが、孤独に浸り辛いのはちょっと息苦しいなーと思うのですよ。
[> 嗚呼全くだ。因みに要件だが、ゼスト2尉が離艦する前に挨拶をしたいらしくてな。繋いでも良いか? <]
[> はい、何時でもどうぞ <]
あの激戦を共に乗り越えたのですから、親子程の年齢差こそあれ戦友と呼んでも差し支えない間柄と言えませう。……が、疲労により思考が巡らぬ頭で退院許可を貰ってから即帰宅してしまった為、見舞いに行けていないのが心残りでした。程無くして空間モニターが切り替わり、
[> 昨夜は世話になったな、“高町なのは”。改めて感謝する <]
[> いえいえ。ゼスト2尉がタゲを――じゃなくて、『管制人格』さんを抑えてくれた御蔭で何とかなりました。此方こそ、有り難う御座いました <]
あの重くて鋭く、そして精確な近接攻撃を得意とする相手なんて、フェイトちゃんに前衛を御願いしていたらなんて思うとぞっとします。防御力がどうこうよりも身体能力や経験差による一撃が恐ろしく、まだ御兄ちゃんを何とか飛ばした方が勝負になるような気がするぐらいには、とてもとても手強い敵でした。
[> あの程度の
それはまぁ、戦闘力53万を目指してます故、遠くで在りたいものですよ。
[> そんなに褒めても、砲撃しか出ませんよ? <]
[> それで良い。君の
[> や、そこまで有名になる予定は無いのですが…… <]
[> ……二度も広域次元犯罪を解決へと導いた立役者が、目立たずに済むと思うか? そして君は、既にオーバーSランクであるにも
デスヨネー。戦えてしまったから戦い続け、そしてより良い未来を得るために脅威へ立ち向かった結果が現在なのですが、はて……。 如何した事か、御母さんのようなパティシエールになる夢が遠退きつつあります。
別に、医者の子が医者を目指すみたいな漠然とした将来の夢ですし、副業とか趣味としてのパティシエールでも良いとは思うものの、かと言って素質があるからと警察官や軍人染みた武闘派職種をしたい訳ではないです。それなりに「やれるかもっぽい」とは思いますけど、実戦が日常茶飯事になれば左手がバイバイする可能性も高まるので、現場は避けたい所存。
[> ともあれ私は私なりに頑張るだけでして、将来が如何なるかは分かりません。今は気長に、生温かい目で見守って頂けると幸いです <]
[> ……承知した。また何時か、共に戦える日を楽しみにしている <]
[> 模擬戦でしたら、何時でも楽しみに待っております <]
[> さてな? 将来が如何なるかは、誰にも分からないものだ <]
そう言い残すと映像が途切れ、保留中のクロノさんの方へと再接続されました。……あれは、ゼスト2尉なりのユーモアだったのやもしれませぬが、無骨で真面目一辺倒な印象の人が言うとフラグにしか聞こえませんね?
[> 少しは、気分転換になったみたいだな <]
[> はい。
昨夜に共闘したばかりの相手ですが、何処となくレンちゃんに似ている容姿なので実はかなり気になっています。あとは数少ない同年代っぽい魔法少女ですから、お知り合いになれたらなー等と思ったりも。
[> 君が望むなら、今からでも会えるぞ? <]
[> 良いんですか? <]
[> 彼女自身は、あまり事情を知らされていないらしく聴取する意義は少ないし、艦内に留め置いているのも『守護騎士』やリインフォースへの配慮でしかない。どのみち、あと数日もすれば帰宅させる予定だ <]
[> んー……。今日はもう遅いので、日を改めまして明日の14時頃に
訪問(訪艦?)するなら色々と準備してからしたいですし、昔のフェイトちゃんみたく危うい感じはしない為、拙速よりも巧遅な方針で良い気がします。
その後、二言三言と話を詰めてから通信を終えました。
星と月が浮かぶ紫黒の空に、
「割り切って切り替えなきゃ、前に進めないよね……」
膝を抱えて、独りで悩んだところで何も変わりません。自らの足で、立ち向かって行動する人だけが変われるのです。後悔を原動力に、理想を推進剤に、身を粉にして成り果てる。目標が高ければ高い程、その必要性が生じます。
「果て行かば、『大魔導師』でも『魔王』でも」
だから、私は――――平凡である事を諦めたのでした。