魔法少女リリカルなのは√クロスハート   作:アルケテロス

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人物紹介
【ギル・グレアム】ver.2.050
L級次元巡航船『ケストレル』の艦長にして、衰えを感じさせぬ精力的な提督。50代を迎えてまで艦長勤務を続ける提督は非常に稀だが、それも全て復讐の為であった。双子の使い魔“リーゼロッテ”と“リーゼアリア”の主でもあり、普段は好々爺を体現したかのような人物として知られていた。

【火神 龍華】ver.2.050
一言で表すなら超人。女性自衛官では初の陸将であり、おまけに史上最年少記録も更新した妙齢の女傑。自称アラフィフらしいが容姿は若々しく、仕事面だけでなく剣道や徒手格闘の大会でも無双する様から官民問わずファンが多い。自宅では孫娘の“綺羅々”と、愛犬“リリ”の3名で暮らしている。



第50話:波及せし変化

side:なのは

 

 12月30日。本日を含めれば今年もあと2日ではありますが、あのクリスマスの事変によって世界中が自粛ムードに包まれており、アリサちゃんや“すずか”ちゃんからも御誘いが無くて要するに暇です。

 

 そんな訳で、本日はミッドチルダの演習場へと御邪魔しています。

 

 以前、クロノさんやリインフォースさんに長広舌(ちょうこうぜつ)(ふる)ったからには、大言壮語ではない事を実証する必要があるのでして、暇な私にとっても希少なオーバーSランクの戦闘データが欲しい管理局にとってもwin-winな機会です。更に地球では有り得ない程の近距離にある2つの惑星が、青空越しにくっきりと見える異世界情緒も新鮮さがあって素晴らしく、カメラを持って来なかった事を少し後悔しました。

 

[> 最終確認をする。初めは慣らしがてら5分間程の模擬戦を行い、それから本試験へと移る。試験内容は、“なのは”の対抗魔法による侵蝕変換魔法《 イルミンスール 》の無効化。模擬戦の相手はフェイトが担当し、本試験ではリインフォースと融合した“はやて”に代わる。……各員、準備は良いか? <]

[> 何時(いつ)でもどうぞ、です <]

[> 同じく、何時でも行けます <]

[> 私とリインフォースも、準備オーケーです <]

 

 ところで、何故に5分間程の模擬戦を挟むのかというと単にヤル気の問題です。平時でも展開は出来ますけど、出力も範囲もパッとしないんですよね……。やはり、魔法は想いを乗せてこそ魔法足り得るのでしょう。

 

 そう言った屁理屈を押し通した結果、仮想敵役にフェイトちゃん、侵蝕変換魔法を再現できる“はやて”ちゃんとリインフォースさん、責任者と監視者を兼ねたクロノさん、データ収集役のエイミィさんによって実現するに至りました。あとは何処からか聞きつけて来た『自称ファン1号』ことシャーリーも居ますが、最終的に【レイジングハート】の改良へと生かされるので気負わず頑張りたい所存です。

 

「“なのは”と模擬戦をするのは、久し振りだね……」

「うん。でも今回のは御遊びみたいなものだから、フェイトちゃんも遊ぼうよ」

「遊ぶって、どんな風に?」

「それは勿論――――」

 

 

 

 

 

 『弾幕ごっこ』風にですとも。

 

 

 

 

~~

side:はやて

 

 融合状態のリインフォースと視覚を共有し、よく晴れ渡った異世界の空を見上げる。其処には螺旋や波形、幾何学模様を描きながら飽和射撃されるカラフルな魔力弾に、流星群のように降り注ぐ魔力砲撃の数々。眺める分には、あの決戦の日と変わらない程の火力かなと思えるものの、些細な違和感がそれを否定する。

 

「何やろ……。攻撃は凄まじいのに、あんま怖くないよーな?」

[- あらゆる魔法の内包魔力量が少なく、主“はやて”の感覚的には脅威度が低いと判断しているのだと思います -]

「せやけど、ぺしぺし当たりたくはない物量やね」

[- あの程度の弾速と密度なら、回避するのは難しい事ではありません -]

「いや、あないな曲芸飛行したら、即行で気絶するか吐く自信があるんやけど……」

 

 “なのは”ちゃんが豪雨の如く弾幕を形成し、それに対してフェイトちゃんは飛んで跳んで回って落ちて昇って――と縦横無尽の機動で魅せる。これを遊びやと言ってのける領域に達するまで、元一般人である私は至れるのやろかと先行きに不安を抱いてしまう。特に“なのは”ちゃんなんて、あれで魔法少女歴が約8ヶ月らしいのでハードルが高いのなんの……。

 

[- あの機動は、切り込もうとするから速く激しくなるのです。主“はやて”が近距離戦をするなら目指すべき機動となりますが、何方(どちら)かと言えば“高町なのは”の方が理想に近いのでは? -]

「そやね。前衛ならシグナム達が居るし、私が後ろから支援攻撃をした方がバランスはええと思っとるよ」

 

 只、参考にするのは位置取りだとか偏差撃ちなどの常識的な部分であって、あの慣性を無視した出鱈目な機動ではない。フェイトちゃんやシグナム達も最速で飛ぶなら身体を水平にして飛ぶのに、“なのは”ちゃんだけは何処だろうと向いたまま最速で飛べて、何処へでも不可解に曲がれるのである。

 

 だから一対一では、相手がどれだけ背後を取ろうと向き合って撃てるし、その不毛さを嫌ってまともに対峙すれば“なのは”ちゃんが得意とする中遠距離戦へと持ち込まれ、圧倒的な保有魔力量と火力で墜とされる……かもしれないなと想像できるぐらいに確立された戦闘スタイルは、憧れこそすれ真似する気は皆無やった。

 

 そもそもの話、両足のポンコツ具合を解消せな姿勢制御すら難しく、飛ぶだけでも足がぶらつくとか戦闘機動なんて(もっ)ての(ほか)やろ。せやから今は、完治するまで大事にせにゃあかんちゅーわけです。

 

「ところで、私もあんな風に光る装飾みたいな魔法って使えへんかな?」

 

 決戦の時よりは控えめやけど、現在の“なのは”ちゃんの頭上には三重の光輪、背中には四対八枚の光翼が生えて、更には腕輪と足環も桜色に輝いていて見栄えが良く、魔法少女と言うよりは天使チックでありながらも最終兵器染みた火力を出せるギャップもまた素晴らしく、これだったら真似したいし真似できそうとも思える。

 

[- 可能ですが……、あれは余剰魔力の貯蔵と循環機能を備えた物であり、【闇の書】自体がそれを担っています。また被弾面積が増え、日常的に並列思考の負荷を要するので推奨はしません -]

「そんなら、写真を撮る時ぐらいにしとこかな?」

[- それが宜しいかと -]

 

 やがて予定の5分が過ぎ、桜色の暴風雨と金色の閃光が落ち着いた頃には気合十分になった“なのは”ちゃんと、汗だくに成りながらも好戦的な笑顔を浮かべるフェイトちゃんが空中で静止しており、名残惜しそうに見つめ合っていて――――

 

 

 

 あの二人だけの世界へ、割って入らんといかんの?

 

 フェイトちゃんに御首級(せきにん)()らされへん?

 

 せや、この場は責任者殿に進行を促してもらえば……。

 

 

 

 ――――瞬時に解を導き、クロノ執務官へ熱い眼差しを送ると虚空に十字架を切られてしまう。おーけい、突撃合図やね? 無論、権力的に逆らえないので任務を果たすべく飛行魔法を発動させ、そおっと静かに二人がいる空域まで近付いて行く。

 

「有り難う、フェイトちゃん。次の本試験はちょっと危ないから、地上で待っていた方が良いよ」

「……そんなに、凄い対抗魔法を使うの?」

「多分だけど、通常の飛行魔法だと出力不足になるから、保有魔力とカートリッジのみでの魔力供給に切り替えないと墜ちちゃうかもだね」

「それなら、休憩がてら地上で待機しておこうかな……」

「うん。それが無難だと思う」

 

 そう言い切った“なのは”ちゃんは、罰が悪そうな笑みを浮かべながら此方へと視線を向ける。きっとリインフォースなら、事前説明をしなくても瞬時に対応するだろうという信頼も有るんやろうけど、魔法初心者の心臓には悪いので勘弁して欲しい。いきなり落下しだすとか、高所恐怖症になるで普通……。

 

「……という訳なので、準備が出来たら何時でもどうぞです」

「リインフォース、高度維持は最優先で御願いな?」

 

 走馬灯を見るのは、交通事故ったあの一度だけで十分なんよ。

 

[- 飛行魔法を噴進式へと変更。魔力消費量の悪化と、高度微調整の為に多少上下しますが、これなら《 AMF 》環境下だろうと墜ちる事はありません -]

「その《 AMF 》環境がよー分からんけれども、墜ちなければ良しっ!」

[- ……では、侵蝕変換魔法を発動します -]

 

 慣れていない筈なのに、身体は覚えているかのように魔法が行使される。手を触れずとも【闇の書】の(ページ)がパラパラと(めく)られ、《 イルミンスール 》を内包する該当頁を抜き出す。その後は、該当頁にセットされている魔法陣を展開して魔力を流し込みつつ、対象を指定すれば発動…………せーへんな?

 

 魔法陣が出ていて魔力も吸われとるから不発とはちゃうんやけど、何時まで経っても“なのは”ちゃんは侵蝕されずに輝いている。

 

[- ふむ……。干渉済みの魔力素で空間を満たし、自身もそれで覆うとは力業だが効果的でもある -]

「その代わり、滅多に使わない《 AMF 》が併用できないのと、周囲の味方も魔力素を取り込めないので苦しくなっちゃうんですが、そこは適宜ブスっと刺せば解決します」

 

 嗚呼、あの帯状の3秒魔力チャージ……。アレをやられると疲労感みたいな魔力不足感がポンっと無くなるので、感覚おかしゅうなるんよ。出来れば、やらずに済ませたい処やねぇ……。

 

「……で、結局のところ《 AMF 》って何なん?」

[- 《 Anti Magi-link Field 》の略称です。古代ベルカ語だと、《 騎士殺しの風(ヴィン・デス・リタートゥーエンス) 》。効果範囲内におけるAAAランク以下の魔力結合や魔力効果を阻害するだけでなく、出力によっては魔法の発動すら困難になります。元から戦乱の時代が長かったのもありますが、この魔法の登場によって古代ベルカは覇権を失い、現在は小国の1つにまで衰退しました -]

「ほーん……。聞いた分やと、今の対抗魔法よりも《 AMF 》の方が強そうな気もするけど、ちゃうんか?」

「それに就きましては、“高町なのは”の方へ」

 

 

 

~~

side:なのは

 

 空間モニター越しも含めて6人分の期待の視線を向けられてしまいますが、まぁ普通は《 AMF 》で十分な気がしなくもないですよね……。デメリットにさえ目を(つむ)れば。

 

「仕様上、敵味方の区別なく魔法を減衰または不発にするのと、広範囲かつ高濃度の《 AMF 》は燃費が悪いので使いたくないです」

[> 一応、管理局の装備で《 AMF 》対策も出来なくはないが、対抗魔法が有るなら必要性は低下するな <]

「そしてこの対抗魔法……というか対抗手段は、周辺の魔力素に干渉していれば良いので、個人的には負荷が少ないのもメリットだったりします」

 

 時に、クロノさんの補足により無用の閃きが脳裏を(よぎ)りました。古代ベルカを衰退させた一翼を担う《 AMF 》を対策できて、数多の次元世界を管理しているのも管理局。あと何時だったかユーノさんが歴史解説をしてくれた記憶が確かなら、ミサイルや大砲のような質量兵器も禁じているんでしたっけ? おやおやおや。しかし、本題とは関係無いのでスルーしておきませう。

 

[> だが()しも、コード【止まらぬ破壊機(U・D)構】が君の干渉力を上回ったり、中断せざるを得ない場合は如何する? <]

「アレはそんな面倒な事をするぐらいなら、力押しで攻撃して来ると思いますよ? あと中断するのは、私が死にかける時なので考慮しません」

[> いや……、それはあまりにも………… <]

 

 二度も左手をバイバイしかけて、『守護騎士』(ヴォルケンリッター)の前衛3人掛かりで墜とされた時なんて臨死体験をしました故、もう何も怖くないのですよ。

 

「クロノさん。まさか、百戦百勝する見込みが無いと戦えないんですか?」

[> 断じて違う。運否天賦(うんぷてんぷ)を試すなら、先ず人事を尽くしたいだけだ <]

「その人事を尽くした結果が、あの決戦だと?」

[> あれは………… <]

「ミッドチルダで暴走していれば、もっと戦力が投入されていたでしょうね。遠いから、管理外世界だから、でも無視できないから、あの程度だった。……そんな風に、あの程度で良いと見くびる程度なら別に良いではありませんか。仮令(たとえ)、この程度でも。きっと私達はやれますし、そもそも活動周期を加味するなら御別れを一ヶ月どころか一年延ばしても大丈夫な気もしますけど」

 

 

 

 だから、どうか折れて下さい。

 

 

 

[> ……前向きに検討する。それと僕達は、辺境だからと見捨てたりはしない <]

「ええ、クロノさん達はそうですね。有り難う御座います」

 

 その後は特に検証する事も無かったので、“はやて”ちゃんの魔法練習がてら標的役をやったり、体験学習として普通の《 Divine buster 》を防いでもらったりと色々やりました。(しか)し分かってはいましたが、堅固ですね古代ベルカ式。単純に、私の戦闘データを蒐集済みなので対策しているんでしょうけど、初弾限定とはいえ耐えられてしまうと少し悔しい思いがあります。

 

 もっとカートリッジを使って火力を上げるか、魔力弾を交えて総合火力で押し切るか、それとも上位互換の魔法を編み出すか。はてさて、どっちの方が良いのやら? 近い内にやってみたいものですね。無制限で自由な模擬戦を。

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