対峙したくないモノを突き詰めると、6つに分けられます。
『悪意』、『厄介事』、『不運』、『やり直したい過去』、『非情なる現実』。
そして最後の1つが、『忌まわしき未来』であると私は思います。
然しながら……。
未来に関しましては、妄想または夢の中でしか疑似的に対峙できませんけどね。
地球的常識の、普通の範疇ならば――――
第53話:アサキユメにて
side:なのは
待てど暮らせど、日常は平穏を装ったまま過ぎて行く……。あの最終決戦では膨大な魔力が循環され、消費され、バラ撒かれたのですから、環境その物に変化が生じていても仕方無いとクロノさん達が述べていましたが、それとは別に怨念染みた嫌な気配を感じられるようになって参りました。
具体的には、大気中にある変な魔力素の割合が増えているんですよ。
誰かの干渉を受けた状態にも似た挙動をしており、まるで《イルミンスール》への対抗魔法にも似ていますが、こっちの遣り方が自分色に染めて制圧する方法だとしたら、現在進行形のやつは散っている何かが結び付こうとフワフワ飛んでいるような――――と言うかコレ、復元しないだろうと予想されていたコード【止
ただ残念な事に、次元巡航船に積んでいる程度のセンサーだとそういった微妙な変化は検知できないらしく、おまけに私とリインフォースさん以外は感知できてないので、全体的な危機感は欠如していると言わざるを得ません。
そも……。あんだけ切って潰して凍らせて撃ちまくり、
「幾ら光が射しても、闇は残るからこそ不滅なんですよ。“高町なのは”」
「済みません。招待状を御持ちでないなら、速やかに退場を」
記憶が正しければ、夜の10時に就寝してから目覚めた記憶は有りませんし、こんな希望も愛嬌もハイライトも無さそうな二重人格が内蔵されていたら、私の周囲はもっと殺伐していた事でしょう。あと初見です。つまり……、この紅蓮の2Pカラーさんは外部から来た『招かれざる客』だと推察してみます。
「ええ、勿論。私達からの挑戦状を叩き付けた後、速やかに帰還しますとも」
えへん、と胸を張るそっくりな誰か。髪色や目付きの鋭さ、そして視線の高さが僅かに異なるものの、声音や容姿は似通っていて不思議な気分ですね……。けど許容はしません。
「や、要らないです」
「知己よ。オリジナルよ。我が光よ。二つの月が交わりし日、凶鳥の帰還と共に始まる【大禍時】を越えた先にて、どちらが
そう言い残し、別の意味で闇墜ちしていそうなドッペルゲンガーさんは去って行きました。尚、面妖な台詞の翻訳内容が正しければ、「1月末の夕方5時から、ちょっとした肩慣らしがあるので生き抜いて下さい。そして月が綺麗な時間帯になったら仕合いましょう。とても楽しみです」との事。
我が闇ながら、案外良い子ですね。
てっきりグレていたり、放送禁止用語を連発するのではと身構えておりましたが、杞憂で何より。嗚呼でも……、あの子でも制御不能っぽい【大禍時】なる物を協力して片付けて、残り時間を有効活用しましょうとならない辺りは歪んでいるなーと感じます。
………
……
…
[- Good morning. Master. -]
「……おはよう、レイジングハート」
見慣れた自室。ベッドの上。就寝前の位置情報と大差無いことを確認した後、枕元に置いてある携帯電話を手に取りパカっと開いて見ますと、1月29日の5時55分と液晶画面に表示されていました。ところで、明後日に迫る1月末は平日なのでしてー……。まぁ、教えてくれただけでも良しとしませう。
「そう言えば、寝ている間に魔力反応とか有ったりしたかな?」
[- Sorry, Nothing detected. -]
「うんん、気にしないで。私の余剰魔力が出しているノイズも酷いだろうし、かなり微弱な干渉だったと思うから」
さて。折角の休日ですが、予告されたからには備えるのが順当という物。差し当たっては、家族会議の招集コールをして説明して……。その前に
それから、それから。
朝食後に、高町家・ハラオウン家・八神家・フィアッセ御姉ちゃん・那美さんと続く怒涛の説明パートを終わらせ、これだけ骨を折ったのですから来なければ全力全開の《 Meteorite breaker 》を撃ち込みに行こうと決意を固めたり、敵勢力の想定や対処法を検討する等々。私にしては珍しく、明後日を待ち遠しく思いながら備えていました。
何が起こるのかが少しだけ明らかになったのと、
一応、当日になれば御兄ちゃんは恋人である忍さんがいる月村家を。御姉ちゃんは高町家を。アリサちゃんのところは……、不在気味な両親の代わりに執事兼ドライバーをやっている鮫島さんが居ますが、駄目そうなら私が《転移魔法》で跳べば何か有っても対処可能な気はします。まぁ、その時は魔法少女である秘密がバレますけどね。仕方無し。
…
……
………
「ふーん、これがフェイトの御気に入りかぁ……」
「人の身でありながら、七面倒な魔力制御をしておるな……。
「…………あの、熟睡したいので夢から出て行ってくれませんか?」
昨夜みたく、明晰夢にしては実際に身体を動かせる妙な空間で起き上がってみますと、今回はフェイトちゃん
例えば、“はやて”ちゃん擬きの場合は髪が白金のロング&毛先だけ紫紺になっており、恐らくリインフォースさんの要素が混じっているでしょうし、何なら
「くくっ、異なことを抜かしおる。鮮明な夢を見る状態とは、睡眠が浅く覚醒にも近い。大体、うぬは13分後に目覚める予定であるのなら、これぐらい大差は無かろう」
「や、私の時間は私のモノで、使いどころは私が決めます」
「ほぉ……。王たる我に楯突くとは、流石は【辰星の魔導師】よ。だが、こうしている間にも1分の時が流れようとしておるぞ?」
「いきなり攻撃してきたり、時限爆弾の時間稼ぎでもないのなら、誰にでも優しく在りたいと思うぐらいの善性は備えておりますれば」
「なら、引き続き居座ろうと問題はあるまいて」
なんたる悪辣非道な誘導尋問。やはり、“はやて”ちゃんとは似ても似つかぬ別人だなと思うと共に、嫌いには為れないが好きでもないなという感情が満ちて参りました。
「王さま、王さま~。そろそろ僕にも御話しさせてよ?」
「そうさな……。3分間だけ待ってやろう」
「それ言いたいだけでしょ?! せめて4分!」
「ふっ、冗談だ。好きに話せば良い」
「サンキュー、王さま。よっ、太っ腹!」
「太っておらぬわっ!!」
んー、カオスカオス。声もフェイトちゃんと“はやて”ちゃんに似ているので、本人達の幻影が重なります。将来的に、こんな元気な僕っ子と王さまに成った場合、私は紅蓮の誰かさんみたいな性格に成るのでしょうか? ……まぁ、多分成るんでしょうね。その方がバランスは良さげです。
「それじゃ、初めまして“高町なのは”。僕はフェイトの闇にして先行者。即ち……、御姉ちゃんって奴だね。個体識別名は“アリシア・テスタロッサ”。深い友愛を示したいのなら、“アーちゃん”って呼んでも良いよ?」
ふむふむ。
今のところフェイトちゃんの反応が予想できない為、最も会わせたくない相手第1位です。因みに2位は紅蓮の私、3位は王さまとなっております。
「初めまして、アリシアさん。私の事は、“ミス高町”とでも御呼び下さい」
「え~……。時間が無いのに好感度そこからなの? 仲良くしようよ、“なのは”ちゃん」
「うわ…………」
「“なのは”ちゃん、なのちゃん、なーちゃん、なっちゃん、ちゃん」
「済みません。せめて“なのは”で御願いします……」
「うん。宜しくね、“なのは”!」
圧倒的陽キャぱわーが溢るるフェイトちゃんボイスは、思っていたよりも心に来るモノが有りました。コード【止
「……ところで、王さまの御尊名を伺っても宜しいでしょうか?」
「我は王ぞ? 矮小な名前など、持ち合わせてはおらぬ」
「王さまはね~。唯一無二な『夜天の王』だから、“王さま”なんだよ」
「なるほど。解説、有り難う御座います。アリシアちゃん」
「ふふんっ! 君との仲だもん。これぐらい御安い御用ってものさ」
何となくですが、この子達が如何いった存在なのかが分かって来たような気がします。単純なコピーとか
そう割り切って、追いやって。
残り少ない時間ですが、この奇妙な3人組による会談をそれなりに楽しんだ後は寝起き感がない覚醒を果たし、取り敢えずフェイトちゃんと“はやて”ちゃんに会って話したいなーと、ぼんやり思ったのでした。