魔法少女リリカルなのは√クロスハート   作:アルケテロス

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人物紹介
《 高町なのは 》ver.2.054
地球存亡の危機を“二度も”乗り越え、平凡である事を諦めた少女。アニメや漫画やゲーム等を参考にして様々な魔法を考案し、縦横無尽な戦闘機動を思い描き、尚且(なおか)つそれを実行できる程度には魔導資質と愛機たるデバイスに恵まれてしまった。(もっと)も、苦難にも恵まれているようで、今回は赤い他人さんに挑戦状を叩き付けられ骨を折る(※比喩表現)羽目に……。
 


第54話:闇より(こぼ)れ落ちた影

side:美由希

 

「レンちゃん、準備できてる?」

「火元良し、武器良し、避難経路も確認良し。あとは……、皆の無事を祈るぐらいやね」

「そうだね……。本当に、何も起こらないのが一番だけれど……」

 

 一昨日。“なのは”が夢の中で犯行予告をされて、その実行日と推測されるのが本日の夕方5時頃。そのため私とレンちゃんと晶ちゃんは学校が終わると同時に直帰、御母さんは『翠屋』を午後休にし、恭ちゃんは忍さんの所で待機するなど未知なる脅威に備え、残り30分程の時を待っていました。

 

 そして普通なら、守られる側であった筈の“なのは”は魔導師のエースとして対策本部である宇宙船の方へ行っており、連絡が取れないので状況の進展すら分かりません。

 

「ところで晶は、ほんまに武器無しでええんか? 如意棒(にょいぼう)は無くても(こん)なら有るで?」

「……拳の方が慣れているから、こっちで良い」

「おうおう、気ぃ張りすぎやろ。疲れんように待たな、夜まで持たへんよ?」

其処(そこ)まで器用じゃないし、ほっといてくれ」

「はぁ~……、さよか」

 

 レンが(さじ)を投げ、何度目かの沈黙が漂う。今まで“なのは”が関わった事件での戦闘は全て不定期的で、今回のように発生日時や規模を推測して備える事が出来たのは初めてなのもあり、こうして起こると分かっていても嵐のように過ぎ去るのを待つのは、晶だけでなく家族全員が心苦しく思っている。

 

 大切な人達を守るために鍛え上げてきた『御神流』の剣術でさえ、空を自在に飛ぶ相手と戦うのは難しく、私と恭ちゃんが補助魔法の支援を受けるよりかは“なのは”単独で暴れさせた方が対魔法戦では明らかに強い。故にこそ、内心では悔しがっているであろう恭ちゃんでさえ「無事に帰って来い」とだけ言って見送るのだ。

 

 

 

 嗚呼、そう言えば……。

 

 

 

 私の場合、8歳の時に剣を取って普通とは程遠い生活を選んで来たのだから、不破(ふわ)御神(みかみ)に連なる子ならば()()()()()()なのかもしれないなぁ…………。決して、手放しでは喜べないけれども。

 

「……まっ、“なのは”より私達がヤキモキしても仕方が無いし、折角だからトランプでもしましょうか?」

「えっ……。こんな剣呑(けんのん)な空気の中でやるの、御母さん?」

「剣呑だからこそよ。それにトランプなら、何時でも止めれるじゃないの」

「あー、うん……。そうだね」

 

 大黒柱による鶴の一声で、剣呑な空気を活かしたポーカーをする事になりました。御店で使う10円玉の棒金をばらし、擬似的なチップを賭けて争っていると剣呑な空気は駆け引きによるスリルにも思えて来て、意外と妙案だったなと関心しつつ周囲も警戒しつつ……。

 

 そんな感じで夕方の5時を超え、緊張が再度高まる最中。数分と経たぬ内にインターホンからチャイムの音が鳴り響き、その静寂は破られたのでした。

 

 

 

~~

side:なのは

 

 これが悪しき波動なのか、それとも単なる魔力のうねりなのかは定かならぬも、何かが起ころうとしているなーぐらいの気配を察知。如何(どう)やら、待ち(ぼう)けはせずに済みそうです。

 

「…………来ました」

「っ、地球各地で魔力反応増大! この発生箇所は……、《イルミンスール》の被害箇所と一致します! その場合、最終的な発生数は72箇所になると推測。魔力反応から脅威度を算定後、優先順位をマップに反映させます!」

「総員、第一種戦闘配置へと移行。ランディ、アレックス、武装局員を脅威度が低いエリアに割り当て、敵勢力の排除を」

「「了解っ!」」

「エイミィは、主力メンバーの割り当ても並行して行うように」

「ううっ……、了解しました!」

 

 今頃、自宅がある藤見町では(レイヴン)と一緒に帰りたくなるような童謡が町内スピーカーから流れているでしょうけど、此方(こちら)『アースラ』管制室の皆様&現場組である私やフェイトちゃんや“はやて”ちゃん等の面々は、暫く帰れそうにありません。何せ、始まってしまいましたからね……。紅蓮の誰かさん曰く、【大禍時(オオマガトキ)】なるモノが。

 

 それにしても、想定通りに始まってくれて嬉しいような嬉しくないような……。まぁ、このモヤモヤは主犯格っぽい例の3人へと投射します。

 

「取り敢えず、“なのは”ちゃんは脅威度が高いポイントA1を威力偵察で。倒せそうなら倒しちゃって良いよ!」

「ラジャーです」

「行ってらっしゃい、“なのは”」

「気ぃ付けてな、“なのは”ちゃん」

「うん。二人共、行って来ます」

 

 (ちな)みに、フェイトちゃんや“はやて”ちゃん以外にも、主力メンバーとして『守護騎士』(ヴォルケンリッター)とリインフォースさんを含む八神家の面々に、クロノさんとアルフさんは勿論、【闇の書】絡みならばとリーゼロッテさん&リーゼアリアさんも来てくれて、あの最終決戦と違うのはゼスト2尉が居ないぐらいですね。

 

 尚、ユーノさんは漏れなく招聘(しょうへい)されておりますが、補助の方が得意なので武装局員を支援すべく別グループでの行動です。一応、新しいデバイスを手に入れて強くなったみたいですけれども、無茶は控えたいとの事。

 

 そういった諸々の人員確保やら打ち合わせを重ね、私はこうして待機場所であった『アースラ』の転送ポートから東京都上空へとエントリーするに至ったものの……。指定座標へ近付くに連れて黒煙のような物が収束し、その中から見慣れた人物が出て来ました。恐らく、相手が誰なのかを認識しているんだろうなと思えるぐらいには、かなり絶妙な選択です。

 

「ミス高町……。今日こそ、勝たせて貰います」

「んー……、フェイトさんで良いのかな? 悪いけど、また御邪魔するので悪しからず」

 

 傷痕と包帯だらけの身体、血走った瞳、異常な発汗。――――(かつ)て、私の左手を切り落とす寸前まで暴れていた頃のフェイトちゃんにそっくりですが、何故か【バルディッシュ】には当時付いてなかったカートリッジ・システムが付いています。

 

 アレがちゃんと機能するなら、少し厄介ですね。

 

 (しか)し、私もあの頃から随分と強くなって、()してや深夜スクランブルによる寝起き&寝不足状態でもない為、それほど苦労せずに勝て……るかもしれませんが、折角の偵察なので暫く様子見をしたい所存です。それでは()ず、結界を展開して関係者のみを隔離。あとは御互いの空気を読んで、いざ尋常に勝負へと洒落込みませう。

 

[-《 Blitz action 》-]

[-《 Flash move 》-]

 

 高速移動魔法から始まった、強襲と迎撃の応酬戦にして再現戦。カートリッジ・システムの恩恵か、あの頃の記憶と比較しても魔力チャージの溜めがほぼ無く、また恒常的に使う飛行魔法を除くあらゆる魔法の使用頻度も増えています。やはり、こんな者は模造品ではなく魔改造品ですよって。

 

 嗚呼(ああ)、でも……。飛び方も使用する魔法も、凶暴だった頃のままでチグハグですね。カートリッジを火力の上乗せではなく消費魔力のカバー目的だけで使うとは、全然怖くもありません。

 

[> “なのは”ちゃん、援軍は必要そう? フェイトちゃんが行きたそうにしているんだけど? <]

「不要です。それよりも、他のポイント制圧を急がせて下さい」

 

 ずっと黒煙の状態で待ってくれるのなら良いのですが、時間経過でドラゴンみたいな異世界生物が出現しちゃったり、《イルミンスール》が発動したら目も当てられませんからね。拙速ではなく、速戦即決が大事です。

 

「結構、ハァ…余裕そうですね……!」

「うん。最近の私が知るフェイトちゃんなら、もっと雷みたいに飛んで跳ねているし、弾幕の雨でも楽しそうに切り込む魔導師キラーになっているから、今日は不調のように見えるよ?」

「そんな記憶、私にはありません……。貴女(あなた)は夢でも見たんですか?」

「……そう、かもだね」

 

 だからフェイトさんには、こんな悪夢から目覚めて欲しいと願っています。

 

[- Lock -]

「このっ、何時の間に!?」

「では御大事に」

 

 何時ものフェイトちゃんなら、バインド対策の要である《 Gale-form 》の装甲が欠けたら直ぐに修復するのに、使い慣れぬカートリッジや戦闘経験が不足または欠落しているフェイトさんはあまりにも無防備すぎました。またしても《SLB》を撃ち込むのも有りですが、本日は長丁場が予想されるので省エネな新魔法を試しましょう。

 

「《ストライク・スターズ》!」

[- Fire -]

 

 カートリッジを6発消費し、自分の周囲に遠隔発動させた4つの魔法陣から《 Divine buster 》を撃ちながら、《SLB》こと《 Starlight breaker 》の小型版で撃ち切り可能な巨大炸裂弾《 Fireworks 》で追撃。隙を生じぬ二段構えのコンビネーション魔法です。

 

 防御魔法の有無とか硬さにも因りますが、AAA+ランク程度の魔導師に当てれば大体は防御の上からでも落とせると【レイジングハート】が申しておりました。

 

「…………嫌だ。……私、は……まだ…」

 

 本物の人間であれば、魔力ダメージのみで致命傷は受けません。けれども、このフェイトさんは『守護騎士』みたいな魔法生命体に近い構造らしく、身体を構成する魔力すら防御で使い果たしたのか全身に亀裂が入り、実体化されたテクスチャーが崩れては虚空へと消えて行きます。

 

「と…届かない……。魔力も、速度も、経験も。……独りじゃ、届かないッ!!」

「わぁー……。もしもしエイミィさん。今、人手は余ってますか?」

[> ……えー、此方HQ。艦長がやる気です <]

「席に座らせて、本局へ増援要請をさせて下さい。現場は何とかします。オーバー」

[> ごめんねっ、誰か手が空いたら送るから! <]

 

 何処(どこ)からか黒煙が湧いて、フェイトさんが1人、フェイトさんが2人、フェイトさんが3人……。最終的には13人まで増えたものの、全身が漆黒に染まっており更に劣化している印象を受けます。仮に弱くなっていたとしても、この人数は脅威なのですよ。

 

 取り敢えず、先手必勝の《 Axel shooter : Barrage 》でも撃とうと決心したところ、この場に居るはずが無いし、居てもいけない人の声が聞こえて来て、流石に思考がフリーズしました。

 

梃子摺(てこず)っているようね? 手を貸してあげるわ!」

「こんばんは、“なのは”ちゃん。微力ながら御手伝いするね」

「…………ねぇ、レイジングハート。若しかして、これって夢?」

[- Unfortunately , it's a reality. -]

 

 如何やら、頬を(つね)ってもこの現実は覚めないようです。嗚呼、もう……。訳が分かりません。

 

 

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