魔法少女リリカルなのは√クロスハート   作:アルケテロス

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人物紹介
《 アリサ・スティクス 》
古代ベルカ風に魔改造された“アリサ・バニングス”のような何か。更に某有名ライトノベルの要素も混入しており、その全容については“なのは”も考察を投げ捨てている。性格は本人その物だが、使命感を持って【空世の亡骸】――コード【止まらぬ破壊機(U・D)構】の残滓(ざんし)から復元された闇を討伐している模様。



第56話:討てども晴れず

side:恭也

 

 約1時間前、美由希から「こっちに、アリサちゃんと“すずか”ちゃんが来たんだけど……」と困惑しながら確認電話をされ、“なのは”の懸念が当たってしまった事を理解した。

 

 “なのは”が夢の中で出会ったのは“なのは”自身とフェイト、そして“はやて”という新しい友人のドッペルゲンガーのような者達で、()しかしたら人だけでなく生物も模倣されて現れる可能性すら予想していたが、まさか魔法有りきとはいえ現実に成るとは思わなんだ。

 

 (ちな)みに、その当時の“すずか”は忍と一緒に夕食を食べており、仮に此方(こちら)が偽者だとすれば忍やファリンやノエルも気付けぬ精巧さである。彼女達よりも遥かに付き合いが短い己では看破も同定も難しく、故に此方を本物と見做して四周警戒を続けるしかなかった。

 

 そうしている間に、何度か魔力反応の高まりを感じては失せて行く。

 

 日頃、余剰魔力を貯め込んでは循環させているらしい“なのは”と同じ屋根の下で過ごし、補助魔法による強化などの体験も有ってか最近では魔力反応を感じられるようになったものの、殺気とは違い常時発生している電磁波みたいなモノであるからして、ずっと位置情報や出力を知れる感覚は慣れそうにない。

 

 取り分け、保有魔力量が凄まじい我が妹は数百メートル先でも薄っすらと分かる程で、それ以外の魔導師なら判別は出来なくとも接近ぐらいは察せる。

 

「ふむ……。次に切り合うのは2週間後だぞ、シグナム?」

 

 “なのは”から人探しの依頼を受けた際、見せてくれた資料に写っていた騎士甲冑を纏ったシグナム。――その姿の(まま)、空から月村邸の中庭へと侵入して来るとは珍しいどころか異常である。少なくとも、本物なら今回の事件対応に駆り出されており、とても忙しい筈だ。

 

「それについては理解している。だがこの身は、この私は、今宵限りの命である事もまた理解して貰いたい。何を莫迦なと思うかもしれないが……。如何か(はなむけ)に、全力で切り合ってはくれないか? 私が使うのは、この剣【レヴァンティン】と鞘の【レーギャルン】のみで魔法は使わない」

 

 

 

 成程。それは少し残念だが、ならば盛大に送り出さねばな。

 

 

 

「…………1つ、条件を変えて欲しい」

「可能な範囲ならば、叶えよう」

「確か、瞬間移動魔法だったか? それも有りとする」

「ほう……。それを恭也は対処できるのか?」

「まだ見せていない技が幾つか有ってな。楽しみにしてくれ」

 

 御神の剣士は弱くない。勝たねば命を落とすような世界を生き抜くために技を磨き、強靭な肉体を目指して研究を重ね、世代を重ねて来た。だからこそ、戦えば勝つのだ。本来、対魔法使い戦を想定していない剣術だろうと、攻撃魔法や飛行魔法さえ無ければ勝機は掴める。

 

「『御神流』師範代、“高町恭也”。推して参る!」

「ふっ……。『守護騎士』(ヴォルケンリッター)が将、“八神シグナム”。さあ、来いッ!!」

 

………

……

 

 尚、戦いは白熱こそすれ1時間と持たずにシグナムは散ってしまい、本人は満足そうにしていたが俺個人としては消化不良感が否めなかった。……まぁ、それは再来週の楽しみに取って置くとして、2階のバルコニーから半眼で手招きをする忍に対しては何と説明したものか?

 

 “なのは”が魔法に関する事を明かしていれば簡単に済むんだがな……。取り敢えず、悪霊の類で誤魔化しておこう。隠し事を秘めているのは月村家も同様なのだから、御相子様というやつである。

 

 

 

~~

side:クロノ

 

 初めに“なのは”から話を聞いて、リインフォースからも確認が取れて補足されても、今一つ現実味が湧かなかった。

 

 現存している【夜天の書】から自動防衛運用システム【ナハトヴァール】が復元され、その最終段階であるコード【止まらぬ破壊機(U・D)構】が出現するのなら話は分かる。だが、微粒子レベル以下まで分解されたコード【止まらぬ破壊機(U・D)構】の残滓と思われるモノが復元され、何かしらの事件を起こすかもしれないと警告されても「まぁ、ロストロギアだから有り得なくも無いが……」と濁しつつも、一応の備えはした。

 

 その結果がコレである。――――地球全体で急速に魔力反応が上昇し、其処に現れた黒煙に近付けば蒐集されたデータを元にした魔法生命体へと姿を変え、様々な理由によって敵対行動を取る。

 

 

 

 何とも無茶苦茶だった。

 

 

 

 常識が通用せず、魔導の奥深さと恐ろしさを再認識したところで、黒煙の中から出て来たリンディ提督の……“闇”と仮称しておこう。コレを如何したものかと苦々しく思い、現実逃避がてら疑問の追求へと並列思考を()く。

 

 ()ず、リンディ提督は【闇の書】に蒐集されてない。可能性としては、本人以外の記憶から再現されたという線が濃厚だが、“なのは”が担当するポイントでは非魔導師である筈の“アリサ・バニングス”と“月村すずか”が援軍として現れ、事件解決を手伝ってくれているという事例を鑑みれば、もう地球周辺に居たのなら誰でも対象になるのだろう。

 

 本当に無茶苦茶である。この調子なら、フェイトの所に“プレシア・テスタロッサ”が出現していても可笑しくは無く、リーゼ姉妹とかゼスト2尉とか、リインフォースの闇も出現する可能性を思うと頭が痛い。

 

「あら、クロノ。折角だし、御母さんの相手をしてくれないかしら?」

「何の……、相手でしょうか?」

「それは勿論、模擬戦に決まっているじゃないの。対人戦闘なんて随分久しいけれど、御父さんが――まるで妖精のようだ――って褒めてくれたから、錆び付かせる訳にもね?」

 

 実際は如何なのか? 空間モニターに映る本物のリンディ提督に視線を向けると、慈愛に満ちた表情を浮かべつつ首を掻き切るようなジェスチャーを返された。詰まる所、余計なことを喋る前に口封じをして貰いたいらしい。

 

「了解しました。(ただ)し、手加減は致しかねます」

「ええ、構わないわ」

 

 そう言って、リンディ提督は見覚えがあるカード状の待機形態であるデバイスを取り出し、【デュランダル】とリフレクター・ユニットを4基展開させて構えたのだった。

 

 

 

 待ってくれ……。何故、リンディ提督がそれを持っているんだ?

 

 

 

 支給品だとスペック不足で、そもそも前線で戦う機会は皆無だろうからとデバイスを用いない所謂(いわゆる)『結界魔導師』として技能を磨いた――と本人が語っていた記憶も有るのに、(しか)も既製品をカスタマイズした【S2U】ではなく戦術デバイスの【デュランダル】が選ばれる辺り、偶然を通り越して悪意すら感じる。

 

「じゃあ、始めましょうか? 親子水入らず、初めての模擬戦を」

[> クロノ。即行で捻り潰すことを許可します <]

「……リンディ提督、任務中に私情を挟まないで下さい」

 

 指示に従う訳ではないが、なるべく最速で終わらせてしまおう。笑顔が怖い人は、一人で充分なのだから。

 

 

 

~~

side:はやて

 

「ほーらほらほら、姿勢制御が成ってない! もっと綺麗に飛ぶか、“なのは”ちゃんみたく滅茶苦茶に飛ぶかの二択よ!」

「んな御無体なっ?! てか私、まだ魔法少女になって一月なんですけど!」

「それが何? 個人の事情なんて、敵は考慮してくれないわよ?」

「そーですね! 《クラウ・ソラス》!」

「飛行速度が落ちている。誘導も甘くて弾速も遅い。20点」

 

 “なのは”ちゃんによる威力偵察の結果、如何やら各ポイントに湧いた黒煙に近付けば誰かの姿を模した魔法生命体が敵対勢力として出て来る。――という事が分かった後に人騎一体(ユニゾン)をした私とリインフォースは、オーストラリアのニューサウスウェールズ州上空へと投入されておりました。

 

 時差によって日本よりも早めに日没する寸前で、眼下には有名なオペラハウスが白亜の巨体を横たえているものの、観光する余裕はありません。何せ、黒煙から出て来たのはクロノ執務官の師匠であり、本局の方でも教官をやっているらしい“リーゼアリア”さんの闇。そして目と目が合った瞬間に「全く、こんなのがねぇ……。構えなさい、撃ち直してあげる」やからなぁ……。

 

 予測不能な機動をする訳でも、やたら速い訳でもないのに飛び方は洗練されていて位置取りが上手いし、魔力弾の偏差射撃や誘導は嫌らしく、当たれば防御魔法越しでも地味に痛い。

 

 どの道、魔法初心者にとっては誰が出て来ようと厳しいけれども、言葉でも攻め立てられるのはまた別の辛さが蓄積されて行く。……いや、私も努力はしとるんやけどね? 両足がブラ付かないように騎士甲冑を変更してハイソックス型の拘束具で固定したり、リインフォースと一緒に魔法練習を毎日やったりとかとか。

 

 それでもな、どんなに足掻いても習熟に掛けた歳月の差は埋められんのよ……。

 

 数ヶ月サボるなり療養してくれるなら別なんやけど、周りの人みーんな真面目で健康やから、頭打ちにならん限りは縮まる気がせーへんな! アッハッハッはぁ…………。ところでリインフォースさんや、そろそろ手詰まり感MAXなんで少しだけでも支援を何卒ぉ……。

 

[> ……分かりました。私が飛行全般及び防御を行うので、攻撃魔法の運用は御任せします。余裕が有れば、バインドも試してみて下さい <]

[> な、なるたけ頑張ります…… <]

 

 何故か此方も教官モードで厳しく、視界が上下左右に荒ぶるのを感じながらもシューティングゲームのように当て……当て……なかなか当てられずに9割くらい回避されるか防御される泥試合を繰り広げていると時間切れなのか、リーゼアリアさんの動きが止まりました。

 

「はぁー……。貴女、本当に八つ当たりのし甲斐が無いぐらいに弱いわね?」

「ぞ……っ、それは……それは、申し訳……けほっ」

「黙って聞きなさい。其処の忌々しい本のせいで、私やロッテが鍛えた部下や弟子達が大勢傷付いたし殺されたりもした。同朋も、その家族も、クロノの御父さんだったクライド君もそう。此方の不手際も重なったけれど、【闇の書】さえ無ければ死なずに済んだのよ……。私は貴女を許さない。被害者の分まで、それ以上に大成して正義を為す覚悟…が無いなら……、そんな物、さっさ…壊し……て楽に…………」

 

 ぼろぼろと散って行く。その言葉には恨みと憐れみが宿っていて、普段はあまり言葉を交わす機会は無くても優しい人なのだと気付いてしまえば、胸が(かす)かに傷んだ。

 

「ごめんなぁ……。けど、壊しただけで手打ちなんて生温いやろ?」

 

 血濡れた道具とは(おぞ)ましく、憎まれるのは当然の事。それでも、そんな物だろうと人を救って笑顔に出来るのなら、末永く壊れるまで正しく使えばええ。私も最後の主として可能な限り奉公もするし、色々な問題に挑んで解決したりして、幸福の(いしずえ)ぐらいには成ろうとは思っとるよ。……まっ、【闇の書】が私の大切な人達に危害を加えとった場合、また別の答えやったのかもしれへんけどな?

 

[> 我が主……。どうか、あまり耳を傾けないように。アレは紛い物の言葉です <]

「そうやとしても、参考には為るんちゃう?」

[> その度に傷付いては、戦闘に支障が出てしまいます <]

「大丈夫やって。“なのは”ちゃんにス……っ《 SLB 》される程やない」

[> …………そのようですね <]

 

 名前を言ってはいけない魔法を危うく口にしかけて、恐怖が背筋を撫で上げた。幾ら非殺傷設定ゆーてもな、か弱い少女(9歳)に撃って許される火力じゃ――――止めよっか、この並列思考(マルチタスク)

 

「エイミィさん、次のポイント指示を御願いします」

[> オッケー。じゃあ……、フェイトちゃんが居るポイントD4で! <]

「了解です」

 

 ところで、フェイトちゃん居るのに追加戦力ということは若しや激戦区なのでは? ん~~、何処へ行っても大変やね。

 

 

 

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