魔法少女リリカルなのは√クロスハート   作:アルケテロス

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人物紹介
《 すずか・コキュートス 》
古代ベルカ風に魔改造された“月村すずか”のような何か。此方も某有名ラノベの要素が混ざったらしく、“なのは”は考えるのを止めた。同じく魔改造された方のアリサと共に討伐の旅をしている為か、オリジナルよりもやや芯が強くて暴……アグレッシブである。
 


第57話:混沌たるヴィルデヤークト

side:フェイト

 

 ポイントD4。上海(シャンハイ)の空にて。渦巻く巨大な黒煙から出現するのは、(かつ)てドクター・プレシアが拠点防衛戦力として用いた多種多様な【傀儡兵】で、30体から先の撃破数は数えていないけれども延々と戦い、次々と補充されて行く追加分の底は知れず……。この(まま)、戦い続けるのは正解なのかと流石に迷いが生じた。

 

「あー、ちょうええかなフェイトちゃん……? 今どない感じなん?」

「……幾ら倒しても、キリがない感じです」

「ほーん、それは厄介やねぇ……」

 

 幸いな事に、黒煙から一定距離を取れば追って来ないので休息は取れるが、破壊し続けても上限と思われる5体まで補充され補充され補充されての繰り返し。

 

 攻撃パターンが単純で、連携も味方の【傀儡兵】に当てない程度の物だから独りでも如何にか対処できていたものの、“はやて”が増援で来たせいか更に追加されて10体編成になったので弾幕密度的に切り込むのは難しく、此処から先は射撃戦に移行せざるを得ないため撃破ペースは落ちてしまう。

 

 そもそも、高火力な砲撃魔法を連射しても涼しい顔をしている“なのは”や“はやて”が可笑しいだけで、近距離戦も混ぜて消費魔力量を減らす工夫をするのは努力の方向性として間違ってない……とは思いたい。

 

「なぁリインフォース、薙ぎ払ってみるのは如何やろか?」

[> 我が主の安全を考えますと、蜂の巣を(つつ)くかのような行為は賛成しかねます <]

「いやいやいや……。慢心とはちゃうけどな、暫定S+ランクが自衛できませんは過保護すぎるしアカンよって。いざとなったら高速移動魔法だの、短距離転移魔法で逃げればええ」

[> ……分かりました。戦術的後退をせずに済むよう、尽力致します <]

「まっ、そん時はそん時や。それに夜更かしはしとうないからな? ちゃちゃっと終わらせて、ぱぱっと帰宅するに限る――――」

 

 “なのは”にも劣らぬ魔力反応の出力。展開されたのはミッドチルダ式の魔法陣で、遠隔発動により【傀儡兵】の頭上にも環状魔法陣を伴うスフィアが10基配置される。確か、この魔法は……。

 

「せやから、借りるで“なのは”ちゃん? 《ディバイン・ハイロゥ》!」

 

 『盗人猛々しい』とは此の事なのだろうかと、冷ややかな思考が脳裏を過ぎる。“なのは”本人は“はやて”を受け入れており、そういった図々しさというか太々(ふてぶて)しさに苦言を呈するつもりは無い。“なのは”が許しているのに、私がそれを咎めるのも可笑しな話なのだから、多少気に食わなくとも道理は通すべきだ。

 

 そんな風に、発射から着弾そして爆発までの経過をぼんやり考えながら見ていると、魔力残滓の銀幕の奥から新たな【傀儡兵】が()()()の……計25体も現れた。やはり、まだまだ在庫は尽きないらしい。

 

「何でさっきより増えとんねんっ?!」

「多分……、誰かが増援で来たからだと思う」

「その通り! 風穴を開けに来たわよっ!」

 

 聞き慣れてしまった、明朗闊達な声がする。エイミィからの情報共有で概要は知っていたけれども、本当はこの場に居るはずのないアリサと“すずか”が魔導師として存在するとは奇妙な気分になる。偽者であると分かっていても、学校では私だけが知る“なのは”と共有している秘密が脅かされたようで、少なくとも歓迎しようとは思えなかった。

 

「知己の為なら、押っ取り刀で即制裁。『劫火灼然の討ち手』アリサ・スティクス!」

「大切な人の為に、今こそ冷徹なる意志を。『雪華の舞い手』すずか・コキュートス」

「守りたいモノの為、万難を排す。『弾幕の引き手』なのは・オードナンス」

「「「貴方の全てに善意をブチ込む! 【トリニティ・レイズ】、堂々顕現っ!」」」

 

 やや恥ずかしげに、それでも楽しそうにデバイスを構えてポーズを決める“なのは”。……羨ましい。仮令(たとえ)、偽者でもあの表情を引き出したアリサ達が羨ましくて、悔しくなる。もっと私が人らしく成れば、人らしさに慣れれば、叶うのだろうか?

 

 ううん……。そんな事よりも、今は戦闘に専念しなくては。悩みながら戦える程の余裕は無いし、どうせ彼女達は消える筈なのだから憂慮なんて無駄である。

 

「あら、『閃光の裂き手』に『夜天の継ぎ手』とはこれまた……。 ねぇ、“なのは”。此処って戦力多すぎなんじゃないの?」

「でも敵の出現傾向から察するに、大人数なら直ぐ終われると思うよ?」

「ふーん。まっ、それも一理有るわね」

 

 そして、アリサの偽者は此方を一瞥(いちべつ)した後に不敵な笑みを浮かべ、敵中へと臆さず突っ込んで行ったのだった。……嗚呼、感情がささくれ立つ。

 

 その眼差しに侮蔑の意思は含まれていなくとも、助けてあげるという上から目線が気に食わない。偽者のくせに、紛い物の実力のくせに、努力なんてしていないくせに“なのは”から認められて、自信に満ち溢れているサマが許せなかった。

 

「バルディッシュ」

[- Yes sir.《 Negatron catapult 》set up -]

 

 

 

 一緒に見返してやろう。私はまだまだ切り込めるし、速くなるのだと。

 

 

 

~~

side:なのは

 

 アリサちゃんが押し切り、フェイトちゃんが切り抜ける。――――バニングスの方のアリサちゃんともそうなのですが、互いに譲れない何かの為に冷戦染みた応酬が度々発生しており、今回は敵の撃破数や技術性の高(スタイリッシュ)さで競っているように見受けられます。

 

「んー……。やっぱり、殲滅速度的には射撃戦の方が早いような……」

 

 二人が敵中を飛び込んでいるため下手に撃つと誤射になりますし、そも誘導弾で手伝えば競争の邪魔になってしまいます。……や、さっさと終わらせるなら無視して武力介入すれば良いものの、また別の場所でやられるくらいなら此処で白黒付けて欲しいなとも思いまして、“すずか”ちゃん&“はやて”ちゃんと共に傍観を継続中です。

 

「理屈上はね……。“なのは”ちゃんみたいに大量の高威力誘導弾をぐねぐね曲げたり、砲撃魔法を連射していたら普通は魔力欠乏と知恵熱で倒れちゃうよ?」

「其処は、カートリッジとデバイスで補えば何とか」

「それでも、不規則に動く的に当てるのは大変な筈なんだけど……」

 

 被弾覚悟で肉迫せざるを得なかったり、ちょっとしたミスが敗北に繋がりかねない近接戦も大概だと思うのですが……。

 

 まぁ、得意&不得意は人それぞれですから、フェイトちゃんやアリサちゃん的に早いのなら「これは早い」のでしょう。そう割り切っていると、数メートルと離れていないのに“はやて”ちゃんから念話で話しかけられました。

 

[> ちょいちょい、“なのは”ちゃん。この“すずか”ちゃん当たり前のように居るけど、どんくらい普通に接したらええんか? <]

[> 同業者且つ、初対面のそっくりさんで良いと思うよ? 私も『灼眼のシャナ』っていう小説の設定が混じっているな~程度の理解度なので、正解かは分からないけれども <]

[> もう一人の方は明白(あからさま)やったけど……、ホンマに? <]

[> ホンマモンです <]

[> …………何でやろなぁ? <]

[> さあ……? 取り敢えず今は、空飛ぶ列車が出ないことを祈っています <]

 

 その場合、内側に入って破壊しに行くのはアリサちゃんの役目でしょうけど、毛虫爆弾が空中散布される恐れがあるので勘弁願いたいです。

 

………

……

 

 さて。5分ほど見守っている間に追加分が現れなくなり、最後の1機をアリサちゃんとフェイトちゃんで切り分けてもまだ黒煙は残っています。

 

 「ならば、次はボスのような何かと戦うのだろうか?」――と出て来るのを待っていたところ、黒煙から現れたのは赤と黒のフレームが目立つ巨大な人型兵器で、エアインテークの周囲や関節部には金色が差し色となっており、背中には垂直ミサイルを格納しているであろう大型ブースターユニットが2基、そして極め付けが左肩部に施された『 ⑨ 』(ナインボール)のペイント。

 

 

 

 それは(まさ)に、私が夏休み中に敗北を重ねたロボゲーのラスボスでした。

 

 

 

 最早、勝負が如何とかそんな余裕は有りません。明らかなイレギュラーである『熾天使(セラフ)』の脅威はゲーム中で散々思い知らされているのですから、私以外の皆が初見殺しをされる前に仕留めなくては。

 

「全員散開! 絶対に止まらず、距離を取って!」

[- WARNING. LOCK-ON ALERT -]

 

 大量に放出され、頭上から降り注いでくる垂直ミサイルと思しき半実体弾。流石に完全再現はされていないらしく、遠距離攻撃に関しては古代ベルカ式でよく見られる質量と耐久性を備えた魔力弾になっていましたが、真に警戒すべきは近距離攻撃のレーザーブレードです。

 

 実用範囲内の高耐久アセンでもほぼ四撃必殺で、更に距離が離れていても正面方向にダメージ判定がある光波を飛ばしてきます故、かなり厄介なんですよね。それが何処まで再現されているのやら……。

 

 曳光弾のように赤黒い魔力光を纏ったチェーンガンの弾幕、円形状で避けにくいパルスキャノンの連射、飛行形態への変形による高速離脱。再現不足とはいえ、10mを超える鋼鉄の巨体がそれらを対人用で使ってきて精度も良く、迂闊(うかつ)にレーザーブレードを振らない程度の戦術パターンを備えているとは、悪い意味で期待が持てます。

 

 因みに耐久性はゲーム通りなのか、《 Divine buster 》を直撃させても壊れる様子はありません。恐らく、耐久値(A P)がゼロにならない限り破損描写すら生じないのでしょう。

 

「ちゃんとダメージ通ってんの、これ?! “なのは”、切っちゃ駄目?」

「高火力で刃渡り5m程度のレーザーブレードを(かわ)せるのなら、どうぞなの」

「あ~……。やれなくもないけど、賭け時ではないわね」

 

 そう言いつつも、何度か接近する素振りを見せて反応を窺うアリサちゃんでしたが、『熾天使』の両手首から延びるレーザーブレードの素早い迎撃動作や、その振り払いで生じた光波――攻撃判定がある飛ぶ斬撃を観察して眉をひそめた後は、淡々と射撃戦に努めていました。

 

 尚、5人掛かりなのでターゲットが散るのと、ゲームとは違って此方の当たり判定が小さいのもあってか危な気なく撃ち据え、やがて耐久値が尽きたらしい『熾天使』は墜落しながら爆発四散。……如何やら、この場はこれで最後みたいですね。黒煙もすっかり消え失せ、月光に照らされた叢雲しか見当たりません。

 

「ふー……。Good job、“なのは”。それにしても、あんな物と交戦経験が有るなんてアンタの周り大丈夫? 『闘争の渦』*1ってない?」

「絶賛ぐるぐるしているから、この状況なんじゃないかなと推察する次第です」

 

 要するに、物騒な負のスパイラルに(おちい)っているのではと指摘された訳ですが、【ジュエルシード】に【闇の書】と続いてこの事件ともなれば偶然で片付けるのは無理が有ろうと思われます。まぁ、確率論的には偶然が続くことも否定できませんけどね。流石にちょっと御勘弁を……って感じですよ。

 

 そんな風に、並列思考で温まった脳を冷ましがてら愚考しておりますと、別のポイントへ移動中のクロノさんから通信が入って来ました。

 

[> 話の途中で済まないが、巨大な魔力反応を新たに検知した。増援を頼みたい <]

「あのねぇ、御役人様……。アレは近寄らなければ暫く留まっているんだし、ちょっとぐらい休憩させなさいな。只でさえ人材・人手不足なんだから、無理して死んじゃったら如何しようもないわよ」

 

 大太刀型デバイスの峰で肩を叩きながら、呆れたように話すアリサちゃん。恐らく同年代の筈なのですが歴戦の古強者みたいな風格が漂っており、()しかすると原作――フレイムヘイズの不老設定が流用されているのかもですね。

 

[> 君は、こういった事象の経験は多いのか? <]

「専門家のつもりではあるんだけどねー……。広範囲に点在して、多種多様な亡骸が湧くような『夢現の狭間』(ナイトメア)なんて史上初じゃないかしら? ロボットが出て来るなら、次は怪獣が出ても可笑しくはないとだけ言っておくわ」

[> なるほど。それ故の慎重策と…… <]

「 Exactly. その通りで御座います」

 

 おっと、トゲトゲしてきました。闇の方の『守護騎士』(ヴォルケンリッター)と戦う時にも、時空管理局を嫌っているような発言をしておりましたから、相手が執務官ともなれば尚更……といった所でしょうか。

 

[> ……随分、剽軽(ひょうきん)な物言いをするものだな? <]

「直截的に嫌味って言わなきゃ分からないかしら、『管理局(シェリフ)』さん? この場は現実を基底とし再構築された【星幽複層世界】(アストラル・レコード)で、此処での被害は現実への不審死や事故になって反映されるのに、あんた達の秘匿主義のせいで避難誘導計画もシェルターの確保も遅々として進まないッ!! 世に平穏のあらんことを……? 信条は御立派ですけどね、そんな幻想で騙くらかすのも限界が有るのよ!」

 

 ふむ……。このアリサちゃんが語る世界観とは微妙に噛み合ってませんが、確かに時空管理局の秘匿主義なところもあって、大勢の地球人は予備知識もなく魔法関連の脅威に晒され続けたので少なからず共感を覚えます。

 

 私も、本物のアリサちゃんや“すずか”ちゃん達に魔法少女であることを秘匿してはいますけど、例えるなら私は警察官なのを隠しているだけで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。だからと言って、魔法少女代表みたく矢面(やおもて)に立ちたくもありませんが。

 

「恐怖と混乱から立ち直れる余裕が残っている内に、この世の本当のことを知らしめる。それが成れば討滅者(ブレイザー)も増えて、行く行くは未来に繋がると私達は信じているわ……」

[> …………其方の言い分は理解した。仲良くなれそうになくて残念だ <]

「模範回答をどうも。じゃ、あと10分程度は休みたいから、先走らないで頂けると助かります」

 

 通信終わり。とばかりに空間モニターを斬撃で消滅させたアリサちゃんは、「また詰まらぬ物を斬ってしまった……」と言って元ネタが分からないフェイトちゃん以外を苦笑させたものの、次も戦闘が確定しているので依然として空気はピリついており、休憩場所を高層ビルの屋上へと移しても沈黙が漂っていました。

 

 

 

 えぇ、はい。

 

 

 

 体力や魔力は仕方無いとして、気力を減らしたままボスラッシュをしたくはないのでブレイクしませう。会話デッキから無難そうな話題をサーチし、会話文へと昇華させながら口頭出力を開始。

 

「そう言えば……。“すずか”ちゃんは『雪華の舞い手』っていう異名の割りには、あんまり凍結魔法は使ってないよね?」

「うん。昔と違って、意識的に変換をオン・オフ出来るようになったのもあるけど、弱い敵なら拘束して爆破したり、魔力弾だけで終わっちゃうからそうしているの」

「あとは、私の変換資質が《 炎 》なのもあって微妙でね……。“すずか”が敵を凍らせて、私がぶった切るのも有りっちゃ有りなんだけどさ。普通に攻撃したら勝てる場合が殆どだし、“すずか”も格好付ける性分じゃないのもあって最近だと『爆殺姫』の方が通りは良かったりするわよ?」

「ふむふむ、参考になります」

 

 アリサちゃんからの補足も入り、悩みが1つ解決しました。私の場合は、バインドからの砲撃による一撃必倒を狙いがちで、そういう使用方法は目から鱗の発想でした。都合が宜しければ、何処かしらで試してみたいところ……。

 

「あ~……、“なのは”ちゃん。何でこっち見とるん?」

「“はやて”ちゃんなら拘束しやすそうだなと思ったものの、フェイトちゃんの《 Gale-form 》を蒐集している筈だし、試すならヴィータさんにしようかなとか考えてました」

 

 御礼参り――――リベンジもまだなので、丁度良いかもしれません。

 

「せや、その手が有った……!」

「リインフォースさん、教えてなかったんですか?」

[> あの魔法は、バリアジャケットの表面にバインド爆砕用の薄い装甲を纏わせる魔法のため、爆砕をする場合に自身もダメージを負う可能性があります。応用するにしても、もう少し魔法への習熟を待たねば危険なので保留中です <]

 

 模擬戦をする度に、バインド対策をしてはいけない試練でも課せられているのではと疑ってましたが、道理で成程。

 

「ふーん……。あの魔法ってそれぐらい難しいんだね、フェイトちゃん」

「流石に、恒常的な余剰魔力の貯蓄よりは簡単だと思うよ……?」

「リンディ提督もやっているから、結局は勘と慣れなんじゃないかな……?」

 

 私からしてみれば、無意識的に電気へと魔力変換しているフェイトちゃんも凄いとは思うのですが、まぁ隣の芝は青々しく()える物。その後も、適当な話題をドローして会話フェイズを通した団結力の醸成と、気力のチャージに努めるのでした。

 

 

 

*1
強大な“力”を持つ存在が集い、武力衝突などによって新たな因果を引き寄せては激化する事象のこと。

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