魔法少女リリカルなのは√クロスハート   作:アルケテロス

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―――― 天光満つる処に我は在り ――――

 


第59話:弔いの砲声

side:なのは

 

 一人だけ意気消沈しながらも最低限の砲撃をしていると、何処からか聞き覚えのある声で、聞き覚えのある詠唱を耳にして、アリサちゃんと同様に『小夜啼鳥(ナハティガル)』へ切り込み中のフェイトちゃんを注視してしまいました。

 

 無論、同じ声帯を持つアリシアちゃんの方だなとは九分九厘ぐらい思ってますが、知らぬ間にゲームデビューを果たしたフェイトちゃんが、あの格好良い呪文詠唱を組み込んだ新魔法でも御披露目するのかと少しだけ期待したものの……。当然の如く違った為、距離を取るように呼びかけます。

 

[> 二人共、強力な攻撃魔法が来るから退避を! <]

[> 了解、“なのは” <]

[> ならこれは、フェイトの闇の方って訳ね。I copy. <]

 

 

 

―――― 黄泉の門、開く処に汝在り ――――

 

 

 

 『小夜啼鳥』の頭上では青白い魔力光を纏った(いかづち)が巨大な魔法陣を描き、集う魔力量は私の《 Starlight breaker 》にも劣らぬ程。流石は、フェイトちゃんの先行者とでも感嘆すべきでしょうか? 魔力をそこそこ集束させて撃つのはフェイトちゃんも出来ますが、一撃での高火力&広範囲の制圧を兼ねた魔法は苦手らしいんですよね。

 

 単発火力なら《 Plasma zamber breaker 》、制圧力なら《 Photon lancer・Execution shift 》があるので大体何とかなるものの、数百メートルの巨体を単独で沈めようとするならば、やはりコレぐらいは必要かなと感じます。……まぁ、普通そんな機会なんて滅多に無い筈なんですけど。

 

 

 

―――― 出でよ、神の雷! インディグネイション!! ――――

 

 

 

 憤怒を冠した雷撃の極致。(しか)しそれでも、『小夜啼鳥』の幾層にも及ぶ防御魔法を貫き、本体を少しばかり傷付けた程度で終わってしまいました。なるほど。イベント仕様の一撃必殺な方ではなく、戦闘で気軽に使える方だったようです。

 

 そして数秒と経たずに、真紅と紫紺の砲撃が二の矢・三の矢として突き刺さり、これが決定打になったのか『小夜啼鳥』の声が沈黙すると共に、その巨体は砂のように崩壊しては虚空へと消え失せます。ところで……。思わず呆然と眺めていましたが、如何して今になって彼女達が介入したのでしょうか? 同胞とも見做(みな)せる闇を撃つとは、意図が分かりません。

 

[> 聞こえますか、クライド提督? <]

 

 私の発言ではない、やや低い私の声。それが広域通信として流れて来ました。

 

[> 貴方の息子さん……。クロノが、執務官になったそうですよ? <]

[> ……そ…うか。帰っ…ら、褒めて……な…いとな…… <]

[> ええ。是非、そうしてあげて下さい <]

 

 『小夜啼鳥』が完全消滅するまでの短いやり取り。只、それでもクライド提督は満足そうな口振りで……。とても安らかに、眠りに就けたのだと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて……。お待たせしました、“高町なのは”」

「やっほー、マイ・シスター! 今日はちょっと御疲れモードかな?」

「感慨深いものよな……。まぁ、其処(そこ)の子鴉は要らぬが」

 

 夢の時と同じように、けれども今度は現実でドッペルゲンガーの如く、その三人は現れました。身体的な特徴は似通っていても表情や声音は異なり、アリシアちゃんに至ってはその顔に古傷が1つも無いからか、見比べると別人感が凄いですね。

 

 普通の生い立ちなら古傷なんて無くて、フェイトちゃんもアリシアちゃんのように在れたのかもしれませんけど、そうではなかったからこそ私達は出会えた訳でしてむむむ……。取り敢えず、無駄な妄想は遠くへ投げておきませう。

 

「私達が望むのはオリジナルとの決闘です。就きましては、部外者の退場を願います」

「待ってくれ。先程のやり取りは何だったんだ?! まさか本当に、あの状態でも父さんは……クライド提督は生きているのか?」

 

 如何もこうも、己が己である事を自認しているなら、後はオリジナルか否かの些細な違いでしかないと思うのですけどね。恐らく同意見なのか、紅蓮の私の方も不思議そうな表情でクロノさんを見つめています。

 

「はい…………? 随分と遅すぎる疑問ですね、クロノ執務官。誤解無きよう言語化するなら、あれは生まれ変わったクライド提督でした。彼は11年前に侵蝕され、生物的には終わりましたがデータとして残っていましたから、それを魔法生命体という形で再生し、今に至ります」

「同一でなければ、本人じゃないだろッ!!」

「同一ですよ。同じ記憶と自我を持ち、同じ仕様の魂から出力されるのはクライド提督らしい思考・反応・言葉です。そもそも貴方はクライド提督を、クライド提督以上に知悉(ちしつ)しているのですか? 貴方が本当に求めているのは、クライド提督らしさではありませんか? 例えば、リンディ提督は聡明で誇れる母親であって欲しい。エイミィは御茶目で頼りになる相方であって欲しい。――そんな風に、心の何処かで期待していますよね? つまり、貴方が(こだわ)っているのは『本物』ではなく『本物らしさ』でして、嗚呼…………。端的に結論を述べましょう。あれがクライド提督なのか如何かは、彼本人が決めることです。子供らしく反抗したいのであれば、どうぞ御勝手に」

 

 途中から分かり合えないと判断したらしく、バッサリと切り上げた後は反論を封じるためか魔力反応が高まり、炎熱変換で生じた熱気によって揺らぐ空間は怒りを表しているかのようでした。

 

「では、場所を移しましょう。“なのは”とフェイトと“はやて”、そしてリインフォースは付いて来て下さい」

 

 望まれたのは決闘。なら暫くの間、アリサちゃんと“すずか”ちゃんとは別行動になりますね。(もっと)も、ラスボス戦後の裏ボス戦みたいな感じでしょうから、これが最後になるのかもしれませんけれど……。そう思うと、少し寂しさを感じます。

 

「行ってらっしゃい、“なのは”。アレに関して教えられる事は少ないけどね、貴女の灯火を信じなさいな。そうすればきっと、海霧も貫けるわよ!」

「頑張ってね、“なのは”ちゃん。他の皆様も、どうか御武運を」

「うん、行って来ます」

 

 アリサちゃんからは意味深長な、“すずか”ちゃんからは模範的な声援で送り出され、集団転移した先の座標は海鳴市近海でした。然し、不思議な事にフェイトちゃんや“はやて”ちゃんの姿は無く、アリシアちゃんや王さまの姿もまた見当たりません。

 

「転移先をずらしました。これで、御互いに流れ弾を気にせず戦えます」

「へぇー、転移魔法も色々と詳細設定が出来るものなんだね。ところで……、そろそろ御芳名を(うかが)っても宜しいでしょうか?」

「アリシアや王さまとは違い、私は私のつもりですけれども……。では便宜上、“ステラ”と名乗っておきましょう」

 

 以前、一度だけ使ったコールサイン『ステラ2』。それを知るとは、この私は何なのでしょうか? 私が【闇の書】に蒐集されたのは11月の末頃で、そのコールサインを使ったのは12月24日の夜。【闇の書】を介して知ったのかもしれませんが、はて……。

 

 そも蒐集したデータは情報の塊でしかないのに、何かしらの理由で芽生えた自我によって情報収集をするような事なんて有り得るや否や?

 

「不思議そうですね? もう少し、振り返ってみては如何ですか? あの日あの時あの場所で、貴女は抱えきれずに捨てたモノがあった筈です」

「…………若しかして、凶星に織り交ぜて撃ったアレだったり?」

 

 当時、コード【止まらぬ破壊機(U・D)構】による侵蝕変換魔法《イルミンスール》の効果で円柱状に吹き上がる魔力流を拝借したものの、其処に含まれていた生命の感情――苦しみや怒りや恐怖といった(よど)みを受け止めきれず、《 SLB 》へと集束させて撃った覚えがあります。

 

 只その場合、このステラさんは不特定多数の誰かになっている可能性の方が高いような……。いえ、そもそも人格を保てているかも怪しく、私であるという自認をした上でステラを名乗る現状からして、この予想は当たらずとも遠いんでしょうね。(かろ)うじて方向だけは合っているみたいな。

 

「浅い解答をどうも。差し詰め、私という現象は『禍津星(マレフィクス)』のステラなる淡い照明に過ぎませんが、文字通り客観視することで見直せました。ですから先行者として、貴女へ引導を渡そうと思います」

「それは勿論、教え導くという意味で合っているよね……?」

「貴女の腑抜け具合によっては、それもまた(やぶさ)かではありません」

 

 真っ赤な余剰魔力を貯め込んだ四対八枚の翼と、三重の円環。そして少しばかり興味を持っていたリフレクター・ユニットの派生品と思われる大型浮遊ユニットが二基、直方体の金属らしき物から砲身状へと変形した小型浮遊ユニットが五基、更なる駄目押しとばかりにデバイスの形状も見慣れた杖型からベルカイズムを感じる篭手型に変わり果てた辺りで、何となく察しました。

 

 攻防だけでなく、一人で遠近同時対応すべく割り切ったのだなと。

 

 それから何故か等身も伸びて大人っぽくなり、髪型もショートボブと(うなじ)で纏めたポニーテールの合わせ技とは、御洒落指数でも侮れぬ戦闘力を有しています。

 

「【紅蓮聖衣(イグニス)】、炎着。……これが、万事において(つつが)なく勝利を納めんと欲し、闇の中で研鑽した集大成です」

「…………本気で戦う時の、御兄ちゃんや御姉ちゃんみたいだね。貴女と戦うのは楽しみにしていたけれど、そう来るのなら真っ直ぐに応えるよ」

 

 決闘を挑まれ、たったの2日しか準備時間が残されてなかったので、取り敢えず貯めておける余剰魔力を普段よりも貯蔵しておきました。翼が四対十六枚、円環が九重。手首や足首にも小型円環が1つずつ。

 

 只、此処まで貯めこんだ余剰魔力を展開させると魔力濃度のせいで空間が揺らいだり、瞳の色が魔力光の桜色になったりとか健康面で色々ヤバそうな感じがしますし、フェイトちゃんに見せた時なんて脱兎の如き《 Blitz Action 》による逐電をされた為、この戦いが終われば封印する予定です。

 

「はぁ……。撃ち直し甲斐があり過ぎて、感動すら覚えます」

「や、これは準備時間が無かった故の、非常なる手段だと反論してみます」

「それを躊躇(ためら)いなく選び、何とかなってしまうのが問題なんですけどね……。まぁ、事此処に至っては仕方無し。あとは砲火を交えて語らいましょう」

 

 直後、弾速も誘導性能もゆるゆるな誘導弾を6発撃たれ、此方も仕方無く距離を取りつつ迎撃すれば性能と数を増し、やがて砲撃も差し込まれるようになって、徐々に撃ち合いの応酬が激化して行くのでした。

 

 

 

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