惰弱で、哀れで、救いようが無い。
けれども、見捨てるのは目覚めが悪い。
通底している理念なぞ、その程度のモノですよ。
side:なのは
桜色と緋色。既に幾百にも及ぶ魔力弾や砲撃が交わされ、されど混ざらず、流れ弾かれ相殺を繰り返しながら魔力残滓が飽和して行く。通常なら魔力残滓を回収したり、周辺の魔力素に干渉して押さえ付けたりする事で相手の
魔力残滓のみならず、周辺の魔力素も熱を帯びていて回収できません。
でもそれは、ステラさんが放出した魔力残滓とその周辺の魔力素だけであり、私が放出した分の魔力残滓と周辺の魔力素はきっちり押さえている為、御相子様というやつです。
ところで何時もは頼りがちな
[> やはり、中距離では
[> 私としては、このまま続けて欲しいくらいなんだけど…… <]
コード【止
故に、この戦いは体力の続く限り延長戦をしたって構わないものの、如何しても最終的には欲しくなるのでしょう。――――明確なる勝利を。御兄ちゃんのように、御姉ちゃんのように、そして御父さんのように『戦えば勝つ』。私の闇であるなら、先行者ならば同じように思う筈です。
[> それで次は、『御神流』の技でも見せてくれるの? <]
[> 面白い冗談ですね、“なのは”。貴女も私も、あんなスタイリッシュな近接戦闘を成す運動神経はありません。故に……、もっと単純な事をします <]
そう《念話》で宣言すると同時に、ステラさんの飛行魔法の推力が過剰なまでに増大し、全方位から魔力弾や砲撃や網状のバインドのみならず、大剣状に変形した大型浮遊ユニットすらも驟雨の如く投射して来ました。後先を考えぬ全力全開の暴力。防御の上からでも潰そうとする意志。猶予を与えようとしない切り替えの早さ。
嗚呼……、本当に私らしいです。
有るモノだけで、自分の魔法と知恵とデバイスだけで何とかしようとして、全力全開と思いながらもやり過ぎないように手加減をする。そんな私自身でもあった相手に勝とうとするなら、それはもう一時の優しさを捨てるしかないのでは?――と、安直的思考が脳裏を過ぎります。
[-《 Distortion field 》-]
「バースト!」
斥力場による難攻不落の防御魔法。それを急速に膨張させる事で絶対不可侵の聖域を築き、あらゆる魔法を弾き逸らしては引き裂きます。尚、この応用の仕方は《 AMF 》*1以上に消費魔力量が酷く、大気中の魔力素や魔力残滓も押し退けるので回収率の面でも多用は控えたい所存。
只それでも防御性能以外でも良いところが1つだけ有り、砲撃の間合いに潜り込んだ素早い相手を目視せずとも迎撃可能というのは《 AMF 》には無い利点です。
[> ぐっ……?! 何て出鱈目な魔法を…… <]
そう言いつつも、私が習得を後回しにしていた幻影魔法による分身をシレっと数十体も繰り出してくる方だって、かなり出鱈目だと思うのですが……。探査魔法すら誤魔化せる精度で、本物と見紛う自然な動作をさせないと意味が無い魔法というのもあり、結構難しいんですよね。
[> 多分、其処かな? <]
[- 《 Quick buster 》 -]
……まぁ、実際に使われた側の感想としましては、魔力の発生源を辿れるような相手には悪手である事を学べたので、弾幕を過剰に見せる等の演出目的以外では習熟しないでおこうと思います。因みに、答え合わせがてら放った砲撃はしっかり受け止められ、物理的に投げ返されました。我ながら器用ですね。無論、レシーブする意味は無いのできっちり避けますが。
[> これは困りました……。最早、殺し合うことでしか勝ちは拾えそうになく、かと言って身命を賭すべき状況でもない。…………認めましょう、挑戦者としての敗北を <]
[> ええ~……。もうちょっとだけ撃ち合わない? <]
先程の《 Distortion field 》の応用魔法により、ステラさんの干渉下にある魔力素や魔力残滓を9割方吹き飛ばせたので仕込みは終わっておりまして、向こうも幾つか切り札を用意しているんでしょうけど、このまま順当に戦えば順当に勝てる所まで来ている……とは思うのですよ。
[> それはまた、次回の楽しみに取って置いて下さい。さて……。私が貴女に決闘を挑んだ理由の1つに、どれだけ変わり果てたか確認したかったというのも有るのですが……。残念ながら、予想通り手遅れでしたね <]
[> 具体的には? <]
[> その貯めに貯めた余剰魔力、脆弱な人の身で耐えれるモノだとでも? <]
脆弱な人の身で【神速】を越えた先の【閃】という領域まで至り、瞬間移動しながら切り合うような人達を知っている身からしますと、やれなくもない気はします。
[> はぁ……。付いて来て下さい <]
そう言って、バリアジャケットを解除したステラさんが手を叩くと転移魔法が発動し、次の瞬間には見慣れた臨海公園の敷地内へと座標が変わっていました。急に勝敗が決まって不完全燃焼気味ではあるものの、先行者として色々教えてくれるのなら大人しく拝聴したい所存です。ところで、バリアジャケットを解除しても変身魔法は解かないんですね?
適当な服を思い付かなかったのか聖祥大附属中学校の冬服を纏っており、少なくとも4年分ぐらいは先行しているのだなと気付きを得ました。
「先ず始めに、私という意識が覚醒しました。コード【止
まさかとは思いますが、自分の精神ごと撃ち捨てていたとでも……?
「やっと気付きましたか? あの日あの時、貴女は私を撃ち捨てたのです。死の恐怖と、嘆きと、怒りで揺らいだ私を即座に切り離せてしまった。……まぁ、当時は世界規模で《イルミンスール》が発動していたので、『
「えーと……、了解です」
「ともあれ、不幸にも自我を自認できてしまった私が
はて? 利用するにしては、随分と無駄が多かった気がします。決闘が目的なら、前座となる【
「最終的に何が完成するかは定かならぬも、今までの所業を鑑みれば好意的に見守れませんよね? 故に監視して、妨害工作を行い、浪費させる役目が必要です。そして貴女に求めるのは、その副産物を撃ち破れる純粋な暴力……。だから、ええ、その調子で人道を踏み外して行って下さい」
「やっぱり、割り切っているように見えて恨んでいるよね?」
「これは異な事を。道無き道を行く先進性に、心の底から敬意を表しているのです」
ほぼ私の
「そう言えば……。ステラさんが先行者なら、アリサちゃんや“すずか”ちゃんは?」
「彼女達は引率者です。アリシアや王さまとはまた別の、特別仕様でした」
成程。振り返ってみますと、確かに引率者の役目を全うしていましたね。フェイトちゃんや“はやて”ちゃんの内心はさて置き、不謹慎かもしれませんが楽しい一時を過ごせました。クライド提督については……。ハラオウン家の問題なので円満なる解決を願うばかりです。
「ふむ、月も傾いて来ましたね……。幕引きには善い頃合いです」
「…………終わらせた後は、如何するの?」
「次を見据え、闇の中で更なる調査を行う予定です。貴女は学業に、青春に、
満面のアルカイックスマイル。まるで遠回しな善意だと錯覚しそうになりますが、本当ならステラさんも経験する筈だった事で、私の立ち位置から弾かれてしまったが故の皮肉である……という解釈も出来て、曖昧な笑みしか返せません。
「さ、戻りましょう。“高町なのは”」
憎悪を閉ざす、重くて厚い諦観の情。何処となく御兄ちゃん達の精神性――『確固たる意思』のようなモノにも似ていて、少しだけ羨ましいなと感じたのでした。