魔法少女リリカルなのは√クロスハート   作:アルケテロス

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人物紹介
[ 天使(あまつか) 綺羅々(きらら) ]ver.2.5.070-RD
 次世代型人類を目指した違法研究により製作されたデザインド・チルドレン。紆余曲折を経て、火神陸将の元で御世話になっている。出自のせいか『特別』である事を望み、努力すべき方向性が分かり易い容姿に関しては髪を丁寧に編み込んだり可愛らしい服装で着飾るなど、『凡人』に成っていく恐怖心を押さえ込みながら生きて来た。



第70話:冷間始動

side:八神 シグナム

 

 7月15日、1300。依然として大気中の魔力濃度は最低値を維持したまま、原因究明も進まずに発生から24時間を迎えるかと思いきや……。始まった時と同様に予兆もなく魔力濃度が正常化し、それに併せて挑発染みた魔力反応が流れて来るとは嬉しい誤算であった。

 

「ほぉ……。これまた、斬り甲斐が有りそうな相手だな?」

(しか)し、此処まで潜伏していた相手だ。何かしらの罠を疑った方が良い」

「それもまた斬り捨てるのみ。やる事は変わらんよ」

 

 万全を期すなら、遠く離れたミッドチルダで勤務中のヴィータとシャマルを呼び戻したいものの、流石に《 次元間通信 》は阻害されているらしく音信不通で、この状態で《 次元転移 》を試したところで魔力を無駄にする可能性が高い。それよりも今ある戦力で事件解決を目指すなり、または情報収集をすべきだろう。

 

 そうやって(しばら)くザフィーラと語らっていると、クロノ支局長から出撃要請が出た。如何(どう)やら向こうも乗り気のようだが、可能な限り手札を伏せたいのか私とザフィーラだけの御指名とは……、青いな。相性を考慮せず、『守護騎士(ヴォルケンリッター)』という(くく)りと戦力だけを見ている。

 

 

 

 さりとて武勲を立てる機会なのだから、通せる無茶は通したい。

 

 

 

 我々『守護騎士』と【闇の書】が残した罪業は重く、主“はやて”の輝かしい未来の為にも清算せねばならん。成功すれば良し、失敗しても管理局への恭順を示せる。そんな打算から粛々と引き受け……。《 封時結界 》で覆われた東京タワーの直上で釣りをしている不審者に出会うとは、流石に予想の斜め上であったがな。

 

「……此方は時空管理局です。貴女には違法渡航と、非魔法文明圏で魔法を濫用した容疑が掛かっています。速やかに武装を解除し、同行して頂きたい」

「はて、とんと身に覚えが御座いません。一体どんな法律を根拠に、違法行為だと見做(みな)しているんですか?」

「大まかには、次元法となります」

 

 外見や声質の幼さから、恐らく13歳前後。然しながら堂々とした佇まいや、今にも溢れそうな魔力反応の出力からして可愛げの欠片も無く、芝居掛かった言動、場違いな釣竿、風変わりな形のバイザーが胡散臭さを助長させている。

 

「笑えない冗談です。此処は管理外世界で、日本政府から業務委託を受けている訳でもない非合法な武装集団にどれ程の権限が有るとでも? (ちな)みに私は管理世界の出身者ではなく、次元世界安定化条約の署名国にすら属しておりません」

「よく勉強していらっしゃる。ならば御存知かもしれませんが、我々はあらゆる次元世界に安寧と持続可能な発展を(もたら)すという理念に(もとづ)き行動しており、管理外世界だろうと其の理念は変わりません。不穏分子を取り除く。それは両国の大いなる平和へと寄与する事でしょう」

 

 そんな無味乾燥な回答をすると、少女は気分を害したのか周囲が熱を帯び始めた。変換資質持ちとは……。如何やら、私達は大当たりを引いたらしい。

 

「はぁ……。すっかり毒されましたね、『守護騎士』。残念に思います」

「其処までだ、シグナム。続きは捕らえてからすれば良い」

「それから御存知かもしれませんが――――」

 

 少女の形が崩れ、魔力残滓となって消え失せる。反射的に離脱を試みるが、この一瞬の間にバインドを仕掛けられたようで身動きが取れず、ならば叩き込まれるであろう攻撃魔法に備え《 騎士甲冑 》に魔力を回す。ザフィーラは……見逃された? (いな)、きっと庇うだろうと予見して手間を省いたのか?!

 

[> 此処は戦場ですよ? <]

「貴様!!」

「シグナムっ!!」

 

 火砕流の如く、紅蓮の砲撃魔法が正面から迫り来る。直撃する寸前に割り込んでくれたザフィーラの背中に安堵を覚えると共に、せめて一矢報いるべくバインドの破壊へと意識を傾けた。

 

 

 

~~

side:ステラ・オードナンス

 

 ふむ。一石二鳥のつもりで仕掛けたのに、ザフィーラさんの盾っぷりを甘く見ていました。砲撃魔法を当てつつ、魔力が過剰に詰まった幻影魔法――その魔力残滓にも【焔】を伝播(でんぱ)させて焼くという奇策でしたから、やり過ぎないようにカートリッジを使わずにいた優しさが仇になった形です。

 

 その分、明るい紫の魔力光&電気の変換資質を有している珍しいシグナムさんを拝見する事が出来たので、ある意味では結果オーライだったりしますが……。という事は、ヴィータさん辺りが炎熱の変換資質持ちなんでしょうかね?

 

「紫電、一閃ッ!!」

[- 《 Flash move 》 -]

 

 名実共に、紫電の一閃となりて振り下ろされる斬撃に感動しつつ、高速移動魔法できっちり回避します。消費魔力量からして防御するのも避けるのも大差無かろうと、ベルカ騎士を相手に見合っても不毛なので(はな)から相手にしてはいけません。

 

 嗚呼(ああ)、これだから近接組と戦いたくないんですよ……。遊びだったら、弾幕を迎撃したり避けたりと付き合ってくれますけど、今回は戦闘なので向こうは肉迫するしか勝機は無く、此方はそれを延々と拒否してパーフェクトを目指す作業ゲーが始まります。まぁ、釣りたいのは小学生組の方ですし、其処まで長引かせる予定は無いんですけどね。

 

 ()ずは適当に引き撃ちしながら、リボン状の拘束魔法を複数発動してシグナムさんを囲みます。当然、(やわ)そうに見えても得体の知れない魔法に捕まりたくはないでしょうから、ベルカ式とんでも変形機構による連結刃で寸断されますが無問題(モーマンタイ)です。爆発物として機能すれば良く、そういう訳でレッツ・デトネーション。

 

 

 

 ……今度は、上手に焼けたようです。

 

 

 

 此処暫く、化物を相手に殲滅戦ばかりしていたので火力調整が今一さんになってますねぇ……。リンカーコアに負荷を与えて気絶させ、()つ肉体へのダメージは最小限に留める。その匙加減が下手っぴです。少し練習不足感が否めないものの、増援として来るであろう小学生組の到着を待ちませう。

 

 それにしても、ヴィータさんとシャマルさんが不在らしいのは幸運でした。『守護騎士』の皆さんは高ランクの騎士なのに、1対4だろうと平気な顔で挑んで来やがりますから現れなかったという事はつまり……多分そういう事かと。尚、暇だったのでミディアムな感じに出来上がった御両名を回収し、ビルの屋上に転がしておきました。彼等は魔法生命体なのでバイタルサインの確認なぞ無意味ですが、胸は上下しているので大丈夫だと思います。

 

………

……

 

 さて。体感的には3分程待った頃、小学生組が結界内に侵入して来ました。只、若干1名は想定外の武装をしていて期待外れでしたけれども表情には出さず、問答無用で発動された拘束魔法を振り解きつつ大仰な身振り口振りで煽っておきます。某ドクター(いわ)く、こうしておくと相手方の冷静な思考を削ぎ落とし、意表を突きやすくなるのだとか。

 

「おやおやおや、挨拶も無しにバインドとは穏やかじゃないですね? 今なら正当防衛を主張できそうな気がします」

「時空管理局です。貴女を局員への傷害罪で現行犯逮捕します」

「これ以上、抵抗しないで下さい」

「貴女には黙秘権と、弁護の機会が有ります」

[- 大人しくするですよー! -]

 

 “高町なのは”、“フェイト・T・ハラオウン”、“八神はやて”。あと、おまけで融合中のリインちゃん。軽く事前調査した際には、フェイトちゃんの“T”が『高町』なのか『テスタロッサ』かは分かりませんでしたが、そんな些末事より高町さんが刀剣型デバイスを二振り構えているのが不思議でなりません。

 

 

 

 まさかの双剣スタイル。

 

 

 

 まさかの【永全不動八門一派・御神(みかみ)真刀流 小太刀二刀術】。

 

 

 

 接近戦も強いフェイトちゃんと、接近戦が得意な『守護騎士』やリインフォースさんを相手に勝ち抜いたとでも……? かなり珍しい、運が良い個体だなと思うものの何処まで続くのやら? や、私には関係も無ければ詮も無し。取り敢えず、1対1以外は手加減しかねるので分断工作を仕掛けます。

 

「大切な御仲間が転がっているのに、此処で戦うんですか? へぇ、幼いのに随分と仕事熱心なことで……。感服致しましたよ」

[> “なのは”、“はやて”、リイン。私が相手するから、皆はシグナム達を安全な場所へ <]

[> 了解。無茶はしないでね、フェイトちゃん <]

[> ごめんな、フェイトちゃん。すぐ戻って来るから! <]

[> 合点承知なのです <]

 

 んー、情報保全隊が発狂するぐらいには《 念話 》が筒抜けで、思わず失笑しそうになりました。デバイスを介した暗号化通信が徹底されていないとは、なんと平和な……。ともあれ、この小学生組の中では総合力が高そうなフェイトちゃんが残り、他はシグナムさんとザフィーラさんを連れて離脱しました。きっと数分足らずで戻って来るでしょうし、速戦即決を目指さねば。

 

「それでは改めまして、“ステラ・オードナンス”と申します」

「……嘱託魔導師、“フェイト・テスタロッサ・ハラオウン”です」

「成程。道理で…………」

 

 似ても似つかぬ訳ですよ。私が知っている方のフェイトちゃんは、敵対者には苛烈な子でしたから……。開戦の合図代わりに、カートリッジを8発消費して浮遊砲台ことスフィアを4基生成。当然、警戒されて距離を開けられますが、遠退(とおの)く分には結構です。

 

 恐らく先程の戦闘を空間モニター越しに見て、近距離戦は危険だと判断したんでしょうね。ある意味では正しいです。近距離戦は私怨の分だけ火力を上乗せしており、まだ中距離戦の方が自重できているかと。

 

 そんな自重心の発露たる《 Scarlet roar 》――【焔】を付与した高速誘導弾がスフィアから連射され、空を赤い軌跡で埋め尽くします。フェイトちゃんの必殺技その1と違って緩い誘導性能があり、片手間に使えるのが最大のメリットです。反面、消費魔力が多くともその為のカートリッジ・システムな訳でして、おまけに補給係の苦情を気にしなくて良い現状ですから実質デメリットも無かったりします。

 

 

 

 ところで……、意外とフェイトちゃんが善戦してて墜ちません。

 

 

 

 よく避け、よく迎撃しているので、榴弾用の《 Scarlet Howitzer 》も2基追加して難易度を上げてみたところ、流石(さすが)に被弾が増えてきて苦しそうに見えます。でも切り込んで来ない辺り、時間稼ぎに徹しているのでしょう。通常、これだけ盛大に魔法を使っていれば魔力運用に集中せざるを得ず、隙だらけに為るというのが魔導師戦の常識です。

 

 然し、私は魔法少女なので問題は無く、不意討ちによる苦い経験から対策も十重二十重と用意しております。例えば、天頂方向より近接攻撃で強襲された場合は入れ替わっておいたデコイを爆破して吹き飛ばすとか、追加砲撃で念入りに焼くとかとか。

 

[> “なのは”!? ぐっ…… <]

[> フェイトちゃん、今は余所見したらあかんよ! <]

「嗚呼、済みません。警告を忘れていました。邪魔者は徹底排除するので、その気が有るなら覚悟を決めてからどうぞ」

 

 きっとこれまで、狡猾な高ランク魔導師と戦った事がないのでしょう。そういう動きでした。彼女達の身近な人物だと、やたら縛るのが得意なクロノ執務官が候補に挙がるものの、私見で参考にして頂きたいのはルーテシアちゃんの方だったりします。……(もっと)も、この並行世界ではまだ赤ちゃんの筈ですし、叶いそうに有りませんけどね。

 

 

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