魔法少女リリカルなのは√クロスハート   作:アルケテロス

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人物紹介
[ 八神 シグナム ]ver.2.5.071-RD
 明るい紫の魔力光と、電気の変換資質を持つ『守護騎士』の将。落雷を思わせる強烈な打ち下ろしや、連結刃による中距離斬撃などトップクラスの戦闘力を誇るが、今回ばかりは相手が悪かった。時々、高町家の面々やフェイトとも刃を交えている。



第71話:Fire and Forget

side:八神 はやて

 

 魔力反応を隠蔽した“なのは”ちゃんの奇襲が呆気無く迎撃され、フェイトちゃんは満身創痍、そして私は釘を刺されて動けない。……いや、このやたら強い御姉さんへ横槍を入れる覚悟が出来ずにいた。

 

 下手に攻撃すれば、“なのは”ちゃんの二の舞。何よりも事情聴取すら出来ずに敗北したら只のやられ損や。とは(いえど)も、フェイトちゃんを見捨てる訳には…………。別に乱入者を嫌っとるだけで、停戦を呼び掛ける程度なら許してくれるんとちゃうか?

 

 シグナムの時はザフィーラが戦意を示したから先手を打ち、フェイトちゃんは交戦モードだったので応じ、“なのは”ちゃんは逆鱗に触れたせいで無惨な姿へ。こうして振り返って見ると、理屈屋で筋は通すタイプのような気はする。

 

 大体、広域指名手配中の次元犯罪者でもない違法渡航者(※野生の裏ボス)に総力戦を仕掛けて全滅するよりも、懐柔した方が手っ取り早いやろ常識的に考えて。……あっ、思案しとる内に終わってもうた。怒髪衝天なフェイトちゃんが相手でも完全試合っちゅう事は、私だけではどーにもならんな。

 

「済みません、待たせて仕舞いました」

「御気になさらず。ところで……今更な話なんですけども、ステラさんの目的や要求を御伺いしても宜しいでしょうか?」

「目的は観光。要求としては魔法を気軽に使いたいので、一々噛みつかないで頂きたいなと。貴女達だって、日本の領空を飛ぶ際にミッドチルダでするような飛行計画の提出や、飛行許可を貰っている訳じゃないですよね? それなのに次元法を振りかざすとか、厚顔無恥にも程があるでしょうに」

 

 おぉ~、ぐうの音も出ない正論やね。でも首輪付きとしてはな、『それはそれ、これはこれ』と主張せなアカンのよ……。管理局が手広くやり過ぎているから、管理外世界との政治的折衝なんてしたくないんやろね。管理世界だけでも30は超えとって、だからこんな風に正しくない取り締まりをする羽目になる。

 

 次元法という物は、ロストロギアへの恐怖と警戒――――つまり、対岸の火事でも燃え移ることを知った先人達が作り上げた法律であり、それは火種と成り得る違法渡航者にも容赦が無い。せやから、管理局が武力でもって正しさを強いるように、ステラさんも武力で主張しとるんやろなぁ?

 

 (もっと)も、これはステラさんが悪巧みをしていない前提での擁護論であり、局員に被害が出とる時点で管理局側としても簡単には退()けんのよ。

 

 あと(から)め手が得意なだけで、努力すれば勝てそうに見えるのも嫌らしい。この段階ですらクロノ君が撤退命令を出さないっちゅー事は、言外に頑張れって言うとるのも同然の事。ほんなら、後々の円滑なる手続きを視野に入れた現場対応としましては、『奮闘虚しく勝利成らず。増援または方針変更を求む』とかいう茶番をせないかん訳で……。

 

[> あーあ、下っ端の辛いところやね~……。リインは無理せんといてええからな <]

[> そんな!? 頑張ればきっと勝てますよ、“はやて”ちゃん! <]

[> 意地を張る状況やないし、自分の実力は自分がよう知っとる。……まっ、折角の機会やから、胸を借りるつもりで挑ませて貰うわ <]

 

 完璧とすら思える中遠距離型の戦闘スタイル。私が目指すべき最先端にいる人。何たる奇遇、何たる幸運。同じ空を1秒でも長く飛んで、1つでも多くの魔法を撃ち合って学びたい所やけど……。さて、何処まで粘れるんやろか?

 

 

 

~~

side:ステラ・オードナンス

 

「御不満の点については理解しました。……ですが、貴女のような優れた魔導師が野放図に振る舞えば、要らぬ混乱や問題が生じます。せめて魔導師情報の登録や、渡航者講習を受けて頂けないでしょうか?」

「要らぬ混乱や問題? 地球という他人の庭で自警団ごっこなんてしているから、こんな面倒な事になるんですよ。御断りです。そっちが折れて下さい」

「交渉決裂……。ほんなら、本局人事部所属“八神はやて”。推して参ります」

 

 そう言い放ち、意味深なウィンクを1つ飛ばされては閉口せざるを得ません。『長い物には巻かれろ』とは言いますが、人間の形を保ったままだと痛々しいですねー。多分遠からず、腹黒狸に成ることでせう。

 

穿(うが)て、《 バルムンク 》!」

「ふむ……、悠長な弾速と機動性ですね。欠伸(あくび)が出ますよ」

 

 (いづ)れ来たるかもしれない未来ではデバイスの高性能化、カートリッジ・システムの普及、浮遊防壁を始めとする【戦術支援兵装(フォートレス)】によって戦闘力のインフレ化が進み、末期にもなると【半自律式魔導兵器群(ワルキューレ)】を用いた疑似集団戦だの、小型魔力炉と多重弾殻生成機能と電子戦装備を標準搭載した【大型個人艤装(レトヴィザン)】等々、それらの影響で対魔導師戦に要求される魔法もまた発展・深化しました。

 

 だから酷評こそすれ、この時代の魔法は血が通っているような感じがしてホッとしますね。慣性制御も自前でする程度には余裕が有るので、中距離戦しかしないであろう“はやて”ちゃんが相手なら、暫く踊ってあげても良い気分です。

 

 そして都合が良い事に、近接信管機能がない刃付きの魔力弾――実質、弓矢の(やじり)のような物でしたから飛びながら直角にスライド回避し、一瞬だけ静止して宙返りする事で見送ったり、不規則な弧を描くように跳ねて(まど)わせ、右に旋回する途中で左方向へ落ちて行く。

 

 

 

 やはり、これが空を飛ぶ醍醐味(だいごみ)ですよ。

 

 

 

 身体とデバイス1つ、音速以下の魔力弾を視覚や勘に頼って回避していく。当たり判定は最小限、身軽で、甲高い駆動音も無くて快適その物。惜しむらくは……、模擬戦ではありませんから“はやて”ちゃんも攻め方を変え、着弾地点に爆発のような範囲攻撃が発生するタイプの砲撃魔法も交ざって来ました。

 

 数百にも及ぶ破片を撒き散らさないだけ有情というか、平和ですねって感じなのですが大きく避ける必要が生じ、また“はやて”ちゃんのデバイスにはカートリッジ・システムが付いてない&サポート役のリインちゃんが未熟なのもあって弾幕密度は薄くなる一方で、これ以上は楽しめそうにないですね。

 

 まぁ、敗北は強化フラグでもあります故、後は『マリー&シャーリーの技術部(アトリエ)』での魔改造に期待しつつ、サクっと撃墜しましょう。

 

[> 少しばかり気晴らしにはなったので、1つ耳寄りな情報を <]

[> はっ、はぁ……。なん…でしょうか? <]

[> 私のカートリッジ・システム、このマガジン1つで汎用カートリッジが60発装填されていて、残り34発有るんですよ <]

[> あー……。あと4発使えば、丁度半分でキリも(よろ)しゅうかと…… <]

[> 全部使います <]

[> リインっ! 全力退避や!! <]

 

 ところで魔導師も騎士も、何故(なにゆえ)に飛行魔法だけで移動しようとするんですかね? 隙が少ない短距離転移を連続で使えば、燃費は最悪でも速度換算でマッハ2くらいは出せるというのに……。

 

「カートリッジ・ロード。オールイン」

[- 《 Bright cascade 》, Full drive. -]

 

 【焔】のせせらぎが無数の支流に別れ、時には合流しながら空を走る。この魔法は距離が開けば開くほどに包囲網と成って行きますし、そもそも此処は私の結界内なので脱出するには破壊するしかなく、つまり詰みです。……や、()しかしたらクロノ執務官が飛び入り参戦して窮地を救い、ドラマティックな『クロ×はや』が始まる可能性も残されています。

 

………

……

 

 残っていませんでした。私が《 バリアジャケット 》や《 騎士甲冑 》を撃ち抜くような外道であればまだしも、演習レベルだと向こうも様子見を選びたくなったのでしょう。仕方無いので、広域通信で呼び出します。

 

[> テステス。最高責任者の方、居れば応答を願います <]

[> ……此方は『時空管理局・東京臨時支局』、“クロノ・ハラオウン”支局長だ <]

[> 残存戦力の撃破を確認、これにて状況終了です。御疲れ様でした。私は休暇に入りますから、デブリーフィングは副官となさって下さい。(ちな)みに……、休暇の邪魔をしたら夜間演習の追加も辞さないので、くれぐれも急用など無きように。以上、通信終わり <]

[> おい、ちょ…… <]

 

 この一芝居に乗るかはさて置き、被害を受けた建築物の修復も片手間で終わらせ、周辺の魔力素を(あぶ)った後に結界から出ます。こうしておくと広域探査魔法を遠隔で使えなくなり、更に結界が残ったままだと同座標なのに内外が生じ、捜索範囲も実質2倍ですから凄く困るとの事。

 

 

 

 エイミィさんの嘆きを聞けないのが残念ですね。合掌。

 

 

 

 その後、魔力反応を隠蔽した状態での移動に嫌気が差し、追加で加熱しながら海鳴市へ転移しました。一応、《 バリアジャケット 》から適当なスポーツウェアへと着替えたので身バレ防止用のバイザーを付けていても違和感が薄く、何かのコスプレイヤーだとは思われない筈です。

 

 それにしても、デザートが美味しい名店を幾つか知っていようと、食べ慣れた味は何度でも恋しくなるから不思議です。勝手知ったる『翠屋』の小洒落た外観、見慣れた店内、御兄ちゃん以外の珍しい男性店員、ショーケースに並んだ懐かしいデザートの数々。

 

 …………シレっと流しそうになったものの、こっちの世界の御父さんでした。ふむ、小学生に戦闘力を求めるなんて酷な話ですけど、御父さんが居てもあの程度の仕上がりとは一抹(いちまつ)の不安を覚えます。

 

「……いらっしゃいませ。店内での食事、または持ち帰りでしょうか?」

「持ち帰りで。特シューを1箱、チョコとショートを3個ずつ。保冷剤は不要です」

「有り難う御座います。少々、御待ち下さい」

 

 御兄ちゃんよりも分厚い筋肉質な身体付きで、てきぱきと器用にケーキを詰めていく他人の御父さん。剣を振るには両腕の傷痕が痛むかもしれませんが、全身に刀傷を作りながら10時間以上も斬り合って鍛錬する人種の人なので、恐らく大丈夫かと。

 

 そうやって並列思考(マルチタスク)徒然(つれづれ)考えている内に会計が終わり、手元にはテイクアウト用のケーキ箱が2つ。……折角ですし、此処でも釘を刺して行きましょうか。反応を見たくなりました。

 

「嗚呼、そう言えば……。“高町なのは”に、『素晴らしい喫茶店と家族ですね。どうか御大事に』と御伝え下さい」

「名前を伺っても?」

「“ステラ・オードナンス”。ちょっと戦える観光客です」

「ほう……。うちの“なのは”は如何でしたか?」

「初見殺しに弱いですね。デコイ――人型爆弾に突っ込んで、お星さまになりました」

 

 対魔導師戦は、取り敢えず撃っておくのが無難な行動ですよって。

 

「そんな悪縁まで似なくて良いんだがなぁ……。ま、帰って来たら伝えておきます」

「あまり、心配していないんですね?」

「伝言を聞ける程度には手加減されている。そう判断しました」

 

 成程。悪役が下手すぎて、望んだ物とは異なる反応が返って来ました。(しか)し、高町さんからすれば脅迫にも聞こえ、管理局側へ伝われば此方を警戒して動きが鈍る……かは未知数ですが、どのみち支障は有りません。

 

 さてさて。これより先は、楽しい砲火後ティータイムが待っているので長居は無用。生クリームが溶ける前に火神家へ向かいませう。

 

 

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