魔法少女リリカルなのは√クロスハート   作:アルケテロス

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人物紹介
[ 高町 なのは ]ver.2.5.072-RD
 ツインテールで双剣を振っている方の“なのは”。『御神流』の剣士見習いという事もあり近接戦闘を好むが、膨大な保有魔力量と集束技能を有しているのに魔力刃の生成や高速移動魔法など負荷が少ない魔法ばかり使っており、ある意味では勿体なく、ある意味では長時間戦闘が可能な魔導師とも見做せる。



第72話:Epidermal Burn

side:クロノ・ハラオウン

 

 結局のところ、僕達は慢心していたのだろう……。通常、管理局ではエリートに分類されるAAAランク以上の魔導師と敵対する機会は少なく、シグナムとザフィーラはSとAAA+。これで如何(どう)にかなる筈だったし、初動対処にしては過剰とすら言える戦力だ。

 

 (しか)し、魔力濃度が観測できない程に低下した未知の現象や、敵が複数人いる可能性を考慮すれば全戦力を出撃させて分散配置することも出来たのに、一部を出撃待機させた結果が戦力の逐次投入という下策を誘発させ、相手もそれに乗じて分断工作と疑似的な個人戦で優勢を保ち、良いように蹂躙(じゅうりん)されてしまった。

 

 あれから約2時間が過ぎた現在、自称“ステラ・オードナンス”が手加減をしていた御蔭で重傷者は居らず、魔力ダメージの倦怠感こそ残るものの全員復帰済みだが……。今度は組織の(しがらみ)によって、新たな問題が生じてしまうとは厄日にも程がある。

 

……

………

 

[> 誠に残念ながら、追加人員の派遣は出来ません <]

「理由を聞いても宜しいでしょうか、レティ本部長? 彼女は強力な魔導師で、危険な個人主義者です。此処で逃せば、更なる犯罪行為を起こしかねません」

 

 空間モニター越しに力説するも、反応は(かんば)しくない。まさか違法渡航対策部門を兼任しているレティ本部長が、違法渡航者の逮捕に後ろ向きとは理解に苦しむ。

 

[> 緊急性・公共性・非代替性。所謂(いわゆる)、三要件を満たしておらず、取り分け非代替性については『AAAランク以上が5人も居たのに、何やってるんですか?』と分析官からの指摘が有りました。そもそも初犯で、排他的経済宙域からも遠い管理外世界で、結界と非殺傷設定を使ってくれる善良な違法渡航者に対し、人・金・時間を掛ける優先順位は低いんですよ。故にこそ……、『より一層の努力を見せて頂きたい』と人事部本部長である私はそう考えています <]

 

 つまり、【ジュエルシード】や【闇の書】の時とは違って取るに足らない事件なのだから、此方で解決しろという事か……。あとは部隊指揮で直面するであろう壁として、“ステラ・オードナンス”は適任だと思われたのかもしれない。

 

 (かつ)て戦った【自動防衛運用システム(ナハトヴァール)】よりかはマシとはいえ、あの戦闘巧者はまた別の意味で脅威である。異常な装填数のカートリッジ・システムや、恐らく慣性制御のみで成立させている空中戦闘機動、炎熱の変換資質にも似た未知の『稀少技能(レアスキル)』に、習熟が難しい幻影魔法を得意とする中距離戦の申し子……。挑み甲斐が有って、頭が痛いな?

 

「……要請を取り下げます。御手数を御掛けして、申し訳ありませんでした」

[> やれやれ……。クロノ君、彼女の目的が本当の事なのかは分からなくても、重傷者や殉職者が出なかったのは1つの意思表示でもあるの。その幸運を噛み締め、今後の対応をリンディともよく相談するように。私からは以上です <]

 

………

……

 

 今でも、“ステラ・オードナンス”は裁かれるべきだとは思う。だが正義を貫き通すための強さが足りず、人倫に(もと)る凶悪犯罪者でもないのなら見逃して、限られたリソースを他に当てた方が有意義だという意見も一理ある。

 

 ともあれ、暫くは準備期間だな……。彼女に墜とされた前線メンバー達は再戦するつもりで意見交換を行っており、明日から負荷強度を上げた模擬戦や訓練を始めるらしい。『東京臨時支局』としても動画解析や情報収集を進める予定ではあるものの、此方から戦闘を仕掛けるかは悩ましい。

 

 勝ち目以前に、暫定SSランクの魔導師なら結界へ閉じ込めても容易く壊すだろうし、言動から察するに報復戦として夜討ち&朝駆けをする様が目に浮かぶ為、極力避けたいところだ。無論、彼女の気紛れで襲撃されたら抵抗を試みるが……。

 

 

 

 全く……。改めて、『特異点』の恐ろしさを実感させられる。

 

 

 

 この惑星に訪れてから犯罪史に残るような事件が続き、功績も同期より倍以上の速度で積み上がる始末。()い加減にしてくれ本当に……。殉職した父さんと同じく何時かは“提督”にと考えてはいても、最年少での就任を狙っている訳じゃない。此処1年は『東京臨時支局』の立ち上げで忙しく、やっと軌道に乗って落ち着いたかと思えばコレとは恵まれ過ぎて胸焼けすら覚える。

 

「エイミィ、胃薬と水を頼む…………」

「おおぅ、御労(おいた)わしやクロノ君。膝枕も貸そっか?」

「風紀に反するから却下だ。大体、それは恋人や家族とすべき行為だろうに……」

「ん~、御堅い事で……。じゃあ、ちゃちゃっと持って来るね」

 

 それなりに長い付き合いとはいえ、何時(いつ)までも弟みたいな扱いは勘弁して欲しいんだがな……。やはり、母さんが『提督』で上司だった頃と比べたら威厳が足りてないのか? それとも女性局員の扱いは、女性局員がよく知っているというヤツなのか?

 

 ……折角の機会だ。今後も女性局員の部下を持つことは多々有るだろうし、“ステラ・オードナンス”の件で相談する際に聞いてみるとしよう。

 

 

 

~~

side:火神 龍華

 

 昨日、遠足に出掛けるような気軽さで襲撃予定を立てていたステラ先生の姿は覚えているが、昼過ぎにひょっこりと我が家へ訪れ、持参したケーキを振る舞いながら戦闘記録映像を見せられると、この程度の対人戦は遊びなのだと否が応でも理解させられた。

 

 卓越した戦術性に、圧倒的な火力。その両方を持ち合わせているのなら場当たり的な行動をしたとて、彼女は赫々(かくかく)たる戦果を収めるだろう。

 

「凄まじいな……。都市の一区画が積み木のように壊されては修復され、それなのに死者はゼロで、魔法の才能が無ければ気付けない。あまりにも理不尽が過ぎる……」

「その代わり戦力の均等化が難しい上に、管理局では魔法以外の攻撃手段を厳しく制限している為、魔導師が幾ら居ても足りない状況だったりします」

「だから、子供を採用して戦わせていると?」

「『才能が有る人は早めに自立して、格好良い大人に成ろう!』みたいな文化が根付いているのも原因の1つなんですけどねー……。(ちな)みに問題である日本人の子供は、双剣を振っていた“高町なのは”と、最後に撃墜した“はやて”ちゃんの2人です。金髪のフェイトちゃんは日本国籍のミッドチルダ人なので、この件では無視して下さい」

「…………君、彼等と仲間割れでもしたのかね?」

「まさか? 一方的によく知っているだけの間柄です」

 

 非常に疑わしく、ちゃん付けの定義もまた気になるものの、彼女が謎めいているのは今に始まった事ではないので保留にしておく。ともあれ……、『現地採用された日本人の子供を確認する』という作戦目標は達成されており、名前や顔も把握する事が出来た。取っ掛かりとしては十分である。

 

「此処までの協力に感謝する。後はゆるりと過ごして頂きたいのだが……。管理局から反撃される可能性について、考えを聞かせて欲しい」

「ほぼ0%かと。失態を認めるかのような増援は避けたい筈ですし、優秀な魔導師もたった2週間では強くなれません。それから保険も掛けています」

 

 そう言ってステラ先生は、『翠屋』という屋号が描かれたケーキ箱を魔法で持ち上げて見せた。()しや、関わりが有るとでも?

 

「この喫茶店、“高町なのは”の両親が切り盛りしている大事な御店なんですよ。伝言を残したので、暫くは不安になって動けないでしょうね」

「要するに脅迫では?」

「勝手に深読みして、自縄自縛するのは自己責任です」

「少しばかり、同情したくなって来たな……」

「嗚呼そう言えば……。あの3人に共通する友人で、“アリサ・バニングス”と“月村すずか”っていう子が居ることを思い出しました」

「…………何故、今その情報を?」

 

 恐らく、名字からして『バニングス建設』と『月村重工』経営者一族の御息女で、その筋から繋がっているとしたら……。面倒だな。特に『月村重工』は我が国の防衛産業を担う大企業であり、防衛装備品等の情報漏洩やら外患援助をしていようが切り捨てる事は出来ず、下手に脅せば頭を()げ替えられ真相は闇の中へ……といった展開も予想される。

 

「友軍で有れば、埋まっている地雷への注意喚起ぐらいはしますとも。火神陸将閣下殿」

「ふむ……。留意しておこう」

 

 如何やら、彼等には同情の余地すら与えたく無いらしい。まぁ他国どころか、他の惑星でも「次元法ガー」と(うそぶ)いている傲慢な組織のことだ。きっと盛大にステラ先生の地雷を踏み抜いたが故に、こうも恨まれているのだろう。桑原桑原(くわばらくわばら)。我々の組織もまた、身の振り方には気を付けなくては……。

 

「時に綺羅々(きらら)ちゃん」

「あっ、はい。何でしょうか……?」

「こんな戦闘映像を見せといて何ですけど、明日からの授業では『楽しい魔法』を教えるので覚悟とか遺書は要りません。どうぞ気楽に御臨(おのぞ)み下さい」

「……その『楽しい魔法』でも、ビームみたいな物は撃てますか?」

「バンバン撃てます」

「不束者ですが、宜しく御願い致します」

「此方こそ、宜しく(そうろ)うです」

 

 一瞬、宜しくない趣味に目覚めそうな綺羅々を止めるべきかと案ずるも、射的や花火のように楽しむ分には大丈夫……と思いたい。スポーツも出来る方とはいえ趣味はインドア系に偏っており、それが解消されるのなら喜ばしい事である。別にあの前時代的で、役にも立たぬ忌々しい銃剣道ではないのなら、ちょっとぐらいトリガー・ハッピーに成ろうとも目を(つむ)るべきだ。

 

 …………それはそれとして、撮影係で桐咲くんを連れて行って貰うとしよう。人の目が有れば、ある程度の自制心は働くだろうしな。

 

 

 

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