[ キリエ・フローリアン ]
大望を胸に抱く16歳の少女。身体能力に優れたエルトリア人で在りながらも更に鍛え上げ、時期は不明だが【
side:ステラ・オードナンス
【機族】という未知の姿へと変身したキリエさんは、鈍重そうな甲冑姿にも
今はもう出力調整が済んだのか動きに躊躇いが無くなり、蹴り飛ばしたアミタさんに随行しながら殴打の嵐を浴びせ、
「やり過ぎには御注意を」
「“ステラ・オードナンス”……。貴女も、私達の計画を阻むのかしら?」
「そのつもりなら、地球へ墜落した時点で制圧していますよ」
「……じゃあ、姉妹喧嘩の仲裁にでも来たって訳?」
「『被害の極小化』という一側面に
より正確には『
「キリ…エ……、待って……うっ?!」
「怪我人は寝といて下さい」
「…………あの、増えたんだけど。被害」
「下手に動かれるよりはマシだと判断しました」
「優しくも苛烈な人なのね……。
「それは管理局の目的で、私の目的ではありません。あと、人は更生を促すよりも恐怖や罪悪感で心を折った方が早いですし、再犯率も低いです」
「ふぅん……。貴女とは敵対しない事を祈るわ、
「仲良くなりたいのなら、名前で呼ぶことから御勧めします」
「……“キリエ・フローリアン”よ。宜しくね、ステラちゃん♪」
ちゃん付けの推奨はしていないのですが……。まぁ、意表を突きたかったんでしょうね。思考が
[> 出番ですよ、『
試しに《 念話 》で呼び掛けてみれば、シグナムさんにヴィータさん、それからザフィーラさんの3人がビルの屋上から降って来て、私とアミタさんを囲みました。シャマルさんは恐らく“はやて”ちゃんの手当てをしているのか不在で、かなり離れた場所に居るようですね。少し待っていると、シグナムさんから話を切り出してくれました。
「……久しいな、オードナンス。
「あの程度の些事は御気になさらず。ところで其処の女性、保護してくれませんか?」
「元よりそのつもりだが、貴女からも話を伺いたい」
「敵に話す事なんて無いですけど、友軍なら口も軽くなると思います」
「ふむ……。
「吹き回しも何も、ただ変わらぬ善意で動いているだけです。別に私は、事態が悪化している最中に飛び入り参戦したって良いんですよ? 戦場は混乱し、大量の流れ弾が生じて、きっと貴女方は何の成果も得られない……。それで構わなければ、この場は御別れと致しましょう」
「少し待って欲しい。上に判断を仰ぐ」
それから40秒と経たずに許可が下りたらしく、彼等が拠点にしているリゾートホテルへ招待されました。此処までは想定通りだったんですよ。何で
挙句の果てに案内役はザフィーラさんのみで、ヴィータさんは方々で暴れている【機動外殻】を仕留める為にあの場で別れ、シグナムさんはアミタさんを本局医務室へ移送中。警備の手薄っぷりに呆れつつも、割り切りの良さには舌を巻きます。
この調子だと、隣部屋に御父さんと御母さんも居そうですね。レンちゃんと晶ちゃんの実在性が微塵も無いことだけが残念でなりません。
「初めましての方は初めまして。“ステラ・オードナンス”と申します。要請に応じ、事件解決のサポートをすべく参りました」
「ようこそ、ステラさん。本局総務部次長“リンディ・ハラオウン”です。
「宜しくないです」
相手の手札が分からない内に危機感を持つのは難しいものの、是非とも想像して頂きたい。
「不確定情報なので詳細は伏せますけど、管理局嫌いな私でも貴女方を憐れんで助力するんですよ? もう少し悲観的に、最悪を考えて動くべきかと」
「……それ程の戦力差が有るとして、何故キリエさんを逃したのか聞いても?」
「全部終われば考察できますよ。多分恐るらくは」
理想通りになるかは不明ですが、より善い未来を目指して努めたい所存。……では、会話を切り上げがてらアリサちゃん達へ絡みに行きましょう。待機時間を消費するなら、楽しく過ごした方が有意義です。
ゆっくり一歩踏み出しつつ、魔法で少しだけ浮いて滑走する不審者ムーブ。これで近付くと大抵の人は気味悪がってくれて面白いんですよね。現に、アリサちゃんが猫のように跳ねたかと思えば、私と“すずか”ちゃんの間に立ち塞がって威嚇するといった百点満点の反応を返してくれました。
「急に何しているんですか?!」
「見ての通り、つるっと足が滑りました」
「その言い分が通るなら、今頃スケートリンクの氷がタイルカーペットになっているわよ……」
「では実証の
「……あんた、ベランダから外に向けてスローイングジャンプされたいの?」
「おお、怖や怖や」
13階分の高さについては問題無くとも、アリサちゃんの低音ヴォイスが怖いです。
「アリサちゃん。其処まで強く当たらなくても……」
「あのね、“すずか”。こんなのは言葉遊びの一環だから、適当に聞き流して頂戴……」
「ええ、御心配なく。これは
「…………本当に殴るわよ?」
「いけません、御嬢様。そんな事をすれば拳を痛めてしまいます」
「だったらもう、あらゆる
その後もぐだぐだと、アリサちゃんを主軸とした内容が無いような会話が続きました。余程コミュニケーションに飢えていたんでしょうね。私の場合は
まぁ、誰かさんが下手に乙らなければ大人びて落ち着く……可能性が高い為、今後の健闘次第かもしれません。
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side:高町 なのは
エイミィさんからの通信により、自称『ちょっと戦える観光客』ことステラさんが事件解決の協力者に成ってくれると聞いた時は、嬉しさと戸惑いが半々でした。
オーバーSランクを複数相手にしても、危な気なく一蹴する卓越した魔導と戦闘技術。そんな物を有した人物と再び敵対せずに済むことは喜ばしくも、何で? という疑問が尽きません。管理局を嫌っているようですし、これまで通り自由気儘に動いたほうが利点も多い筈なのに……。あと戦闘中は別として、謀略を巡らせて背後から撃つような人柄とも考え難く、分からない事だけが降り積もります。
ただ実行されるかはさて置き、「友軍なら口も軽くなると思います」とステラさんが発言していたらしいので、仲良くなれば話を聞けるかもしれないなーと考えつつ各地の【機動外殻】を掃討してリゾートホテルへ戻ってみれば、衆人環視の中でアリサちゃん&“すずか”ちゃん&ファリンさんと仲良く『ババ抜き』をやっているステラさんの姿が其処に在りました。
「御帰り、“なのは”」
「ただいま、御兄ちゃん。これって如何いう状況なの……?」
「ステラさんがアリサと意気投合した結果、空気を
「空気?」
「突発的な事件で“はやて”もリインも負傷して、戦況を聞きながら皆の無事を祈るしかない……。そんな暗い雰囲気を変えたんだ。意図的にせよ
「色々凄かったよ~、アリサちゃんとステラさんの掛け合い。記憶に残らないけど心地良いみたいな、水の流れを見ている感じだったなぁ……」
「ふーん…………」
存外、良い人そうなのは良い事ですが……。親友というモノは、専属契約ではないと分かっていても御姉ちゃんの補足は茨のように絡み付き、私の心をチクチクと刺して
ステラさんが敵だったから。次元法に楯突く悪人だから。確固たる信念の下に異なる正義を示し、決して折れぬ強さで全てを貫いたから……。立場的に相容れなくても凄い人だなと認めながら警戒すれば済んだのに、味方としてアリサちゃん達と
「
楽しい時間が終わる事への当て付けか、ちっとも心配の色を含まない無機質な言葉が神経を逆撫でし、怒りめいた反骨心のスイッチが入りました。公共施設や一般市民への被害はゼロを目指して尽力すべきなのに、彼女からは気負いや熱意も感じられません。
頑張るのは管理局側であり、ステラさんにとっては他人事。バイザーで隠れて見えなくとも、値踏みをするような目付きである事は態度から察せます。それと此方を向きながら魔法で『ババ抜き』を続けているのは
片手間で行われる会話は悲しみさえ覚える程に
「……協力して頂けると聞きました。本日は宜しく御願いします」
「これは丁寧にどうも……。草場の陰から応援していますよ、高町さん」
「草場……? あと何で、名字呼びなんですか?」
「別に、私の事も“オードナンス”と呼んで構いませんけど?」
「そうじゃなくて、あの……」
やっぱり、この人とは仲良く成れそうに無いです。