魔法少女リリカルなのは√クロスハート   作:アルケテロス

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用語解説
[ 機族 (ギアーズ)]
 その起源は太古の時代まで(さかのぼ)る。他の惑星からエルトリアに侵略した人類種が持ち込んだ、ナノマシンによる人体改造技術で生じた支配階級の事を指し、過酷な環境や戦場だろうと耐え得る心身は“半生体半機械融合構造体”とも呼ばれる。上級の【機族】であれば、“水銀”を代替血液として用いていたらしいが……。現在のエルトリア人は【機族】への適合資格すら無かった兵士階級の末裔(まつえい)で、他の【機族】は新たな狩場を求めて去ったのだと記録されている。



第78話:Second Phase

side:ステラ・オードナンス

 

 (たわむ)れも程々に、数分遅れで帰還したヴィータさんに合わせて対策会議が始まったものの、かな~り手緩いです。エイミィさんが見せてくれた映像でイリスさんらしき人物を確認した為、一連の戦闘はイリスさんとキリエさんによる陽動&奇襲攻撃と見做(みな)しますが、ちゃんと連携を取れて奥の手も隠せているっぽいので完璧なんですよね……。

 

 まぁ、キリエさんの【機族】も奥の手でしたけど、人柄的に最後まで敵対するとは思えませんし、速いだけ固いだけの相手なら如何(どう)にでも成るので無視しませう。

 

 問題なのはイリスさんの性能であり、私以外はキリエさんを最大の脅威だと思い込んでいる点について。……とは(いえど)も、キリエさんがそうだった様にイリスさんも色々違うでしょうから注意喚起できたのは【機動外殻】の生産速度くらいで、後は臨機応変に動かざるを得ません。取り敢えず、物理的に固くて魔法耐性も備えている【機動外殻】については、そっち方面で強い『カレドヴルフ社』製の装備や技術を融通して貰って対処するそうです。

 

 あの会社、個人の魔導資質に頼らない装備を生み出そうとする理念は素晴らしくも、独自規格の電磁カートリッジが非常に宜しくないのでして……。数年保管できる従来のカートリッジとは異なり半年置きの再充電だの、コネクタ部に(ほこり)や血が掛かったら駄目で、使用しても残弾が減る訳でもないから重たい(まま)とか、再利用すればするほど充電率が下がり続け、そもそも独自規格だから既存のカートリッジ・システムとの互換性が皆無、充電する際に電気を食う=電力供給の負担が増すのも許せません。

 

 他にも従来品なら最悪の場合は魔導師が手込めできるのに、変換ロスを生じさせてまで魔力から電気へと変換しないと充電できない&調達コストが高い&コンセントから充電するにせよ専用アダプターが必須&充電時に発熱するせいで暑くなる&大出力の魔力運用をすると劣化具合が(いちじる)しい&破損時に発火する可能性が高い等々……。

 

 単なるバッテリーとして見るなら良い性能だったんですが文句の付け所も多く、最終的に極一部の電気への変換資質持ちや、一定出力の魔力運用に重きを置く魔導師――主にAAランク以下の魔導師や『近接組』の皆様が使っている感じでした。

 

 (しか)しそれでも、この時代に『時空管理局』と共同で対物特化装備を作れるのは『カレドヴルフ社』ぐらいでしょうから、如何か皆さんは初期テスターとして頑張って下さい。私は使いませんので。

 

………

……

 

 そんな風に並列思考(マルチタスク)でつらつら(うれ)いていると対策会議は(まと)めに入っていて、主力メンバーのデバイスを突貫で強化改修し、結界魔導師による広域封鎖と、武装局員を中隊規模で投入する人海戦術でどーにかこーにかする無難な方針で決まったみたいです。実はイリスさんだけでなく、ユーリさんという古代ベルカの遺児が出て来る可能性なんて普通考えませんよね。他にも巨大ロボットやマッド・サイエンティスト、マテリアルor猫ちゃんが居たり居なかったり。

 

「……何か、懸念事項でも?」

「いいえ。貴女方の判断を尊重しますよ、リンディ次長」

 

 悪くは無く、ただ相手が悪いだけです。この辺の見極めは勘とか未来予知でやる領域なので、とやかくは…………。これって()しかしなくても、本当に私を戦力として数えてらっしゃる? 相変わらず現地採用が得意ですね。背中を斬り付けられないように祈っておきます。

 

 

 

 さて。

 

 

 

 強化改修に伴う代用デバイスの受け取りや、結界魔導師や武装局員の部隊展開など足並みを揃える都合により待機時間が出来ました。高町さんはベランダで内省に勤しみ、リンディ次長とフェイトちゃんは気分転換しに散歩へ出掛け、復活した“はやて”ちゃんが“すずか”ちゃんと雑談する程度には猶予が有り、そう言えば久しく使ってない『カレドヴルフ社』の装備が有ったなと懐古しつつ、量子格納領域から取り出してみました。

 

 花のように咲く5つの矛先を持った槍。……何度見ても奇妙な形状です。

 

 開発コードネームは【ブリューナク】。電磁カートリッジで(つちか)った電磁エネルギーから魔力へと変換するシステムを応用し、流し込んだ魔力から電磁エネルギーを生成する『追加装備(アクセサリー)』の先駆け。集束させてプラズマ砲として撃つも良し、指向拡散モードで感電させるも良し、溶接機やバーナー代わりに使うも良し。当時、開発チームを正座させながら御話しした結果、通常カートリッジが使える素晴らしい装備に仕上がっております。

 

 あとは名付けのセンスさえ有れば……。まぁ、【ルミナス・プラント】へ変更済みなので問題は御座いません。念の為、魔力を流すと金色の電磁エネルギーがバチバチ生成されて動作は良好。今回はフェイトちゃんが居るので自重しますが、複数並べて雷神ごっこするのも楽しいんですよね。

 

 

 

 更に10分程。

 

 

 

 管理局と地球の次元的(へだ)たりを思えば迅速な対応なんでしょうけど、結構待たされて(ようや)くキリエさんとイリスさんの捜索指示が出されました。……(ちな)みに、本局医務室へ搬送されたアミタさんはエルトリア人特有の超回復を果たし、元気に事情聴取を受けているとの事。

 

 只、空を飛びながら《 空間モニター 》越しの聴取内容に耳を傾けても、「惑星エルトリアと父親が危篤で、キリエさんは独善的に動いている」という経緯が知れたところで、【機族】に関しては御伽噺の内容のみとか、イリスさんの事も遺跡板に宿る人工知能だと推測している等、戦力評価には役立ちそうにありません。流石に、エネルギー干渉術式《 フォーミュラ 》や【ヴァリアント・システム】については詳しかったものの、そっちは既知の仕様と変わらぬ感じでした。

 

 ところで、イリスさんは手早く【夜天の書】から例の三人組を実体化させて欲しいです。飛ぶのは好きでも探す素振りが面倒でして、かと言って戦場候補の1つである『オールストン・シー』の上空で待つのも不自然ですから……。

 

 あまりにも暇過ぎる為、無駄にバレルロールやシザーズ機動を織り交ぜて飛んでいると堪忍袋の緒が限界なのか、勝手に付いて来たヴィータさんからクレーム《 念話 》を頂いたので処理します。

 

[> 協力するとか言っといて、探す気ねーのかよ…… <]

[> 誰かさんが私を監視する(つい)でに探しているように、曲芸飛行しながら探しているだけですし、そもそもエネルギー反応頼りの受動的な捜索であるが故に、飛ぶ必要性すら皆無だと思いますが? <]

[> ……じゃあ本腰入れて探すとしたら、あんたは如何する? <]

[> ()ず最初に、キリエさんの御母さんを任意同行させて軟禁します <]

[> 却下だ <]

[> 冗談です。けれどキリエさん達はそんな懸念を拭えないので、管理局に痛手を与えて時間を稼ぎたい筈……。特に家族の具合が宜しくないともなれば、一分一秒すら惜しくなるのが人情ですよね? <]

[> ハッ……。だったら、直ぐにでも動きてぇよな…… <]

 

 (もっと)も、それはキリエさんの都合であり、イリスさんの都合だと如何動くのかは読めません。例えば今回の事件は、キリエさんの決意を促すだけなら彼女の御父さんが倒れてから3日後に行動を起こしても良かったのに、アミタさんの話によれば病床に伏したのは地球時間に換算すると約半年前らしく、()()()()()()という印象です。

 

 やれやれ……。全てを砲撃で解決し、グッド・ゲーム・エンドな『GGE』を迎えて楽しい夏休みパートへ戻りたいのですが、ふむ…………。

 

 

 

~~

side:キリエ・フローリアン

 

 私は強くなった……と信じていた。《 フォーミュラ 》と【ヴァリアント・システム】を用いた戦闘技術の研鑽(けんさん)に努め、私達の生活圏を守るために『大型機獣』を幾度となく間引き、ちょっと死に掛けて【機族】への適合処置で生まれ変わった後はもう誰にも負ける気がしなかった。

 

 そして不安要素だった魔法は避けれるし、防げる。火力が高いと流石に無効化は難しいけど、間断無く攻めれば“はやて”ちゃん程度なら押し通せて、最後に模擬戦をした2年前では勝てなかった御姉ちゃんにも圧勝したのだから、イリスを悩ませていたあの“ステラ・オードナンス”が相手だろうと――――

 

 

 

 

 

 けれども、たった一度の《 拘束魔法 》が解けなくて、心に畏怖の感情が芽生えた。

 

 

 

 

 

 純然たる魔法なのに、“はやて”ちゃんの魔法と同じ魔力素(マナ)から生成された改変現象(フェノメナ)なのに、積み木のように崩せない。ステラちゃんの魔法だけは鉄塔の如く、この強度の魔法が降り注いだら果たして勝てるのか……?

 

 気楽に挑める模擬戦や、戦うべき状況でも無いのなら交戦は避けた方が良いに決まっている……。全力で距離を取り、十分に離れてからは《 フォーミュラ 》のエネルギー反応を探知されないように通常形態へと戻って、遠回りをしながら仮拠点に帰還したものの安堵は出来ない。イリスに危険性を伝え、もっと強力な【機動外殻】の生産を訴えてみるも、彼女は動揺すら見せずに淡々と答えてくれた。

 

「安心して、キリエ。私達の計画は、ユーリさえ叩き起こせれば勝ったも同然なの。それに“ステラ・オードナンス”は、積極的な妨害行為をしようとはしない……。多分、彼女もユーリに用が有るんでしょうね? だから心配しなくても大丈夫だと思うわ」

「なら計画を早めて、さっさと終わらせるのは如何?」

 

 幸いな事に、事前調査でユーリが封印されている【永遠結晶】の保管場所は判明しており、あとはイリスの本体が入った遺跡板と、【夜天の書】を持ち込んでハッキングすれば起動できる筈……というのが計画の前段階で、此処を(つまづ)けば全てが終わってしまう。また同様にエルトリアや御父さんが先に死んじゃったら、私達は何のために頑張って来たのか……。その意味を失う恐ろしさが、今になって纏わり付いて離れない。

 

「焦りは禁物よ。無茶をしたら如何なるかなんて事は、キリエの御父さんや貴女が身を()って――――。へぇ……、こんな所に居たんだ?」

「……何か見付けたの?」

 

 私が預けた“はやて”ちゃんのペンダントから【夜天の書】を取り出し、片手間で解析していたイリスの様子が変わった。懐古というには冷め切った声音、無機質な微笑……。これほど寂寥(せきりょう)感に満ちたイリスは初めてで、どんな風に気遣えば良いのか分からずに返事を待つしか無かった。

 

「ちょっと懐かしい物をね……。加工すれば陽動戦力の手駒に使えそうだから、後で《 マテリアライズ 》してキリエにも見せてあげる」

「うん、分かった。それじゃあ、私は休憩しとくから……」

「現地時刻で、24分後の20時。壁に掛かっている時計の針が、真上に来たら始めるわよ?」

「りょーかい」

 

 出撃前に止まっていた機械式時計が、何時の間にか動き出している……。エルトリアでは手慰(てなぐさ)みに整理整頓やガラクタ(いじ)りをやっているのは知っていたけど、地球に訪れてもやるなんて案外イリスも緊張しているのかしら?

 

 ケースから取り出した携行保存食の封を切り、ブロック状の塊を咀嚼する。久々に食べたせいか、風味が質素で美味しくない。また昔みたいに、農場で育てた野菜や家畜を使った御母さんの料理が食べたいなぁ……。それが叶うように頑張らなくっちゃ、私…………。

 

 

 

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