魔法少女リリカルなのは√クロスハート   作:アルケテロス

82 / 83
人物紹介
[ 八神 ヴィータ ]ver.2.5.078.5-RD
 『炎熱』の変換資質を持っているハンマー・オブ・ナイツ。見た目は小学生ぐらいの少女だが中身は大人で、御酒とアイスクリームの組み合わせを研究するぐらいには大人。困難な役回りを買って出る嫌いがあり、ステラへの監視や挑発じみた言動で反応を探るといった汚れ役も(いと)わない。
 


第78.5話:Reminiscence

side:月村 すずか

 

「あーもう、運命の女神様は気紛れったらありゃしない! わざわざ夏休み初日にぶつけた挙句、また大事件っぽいのがヤキモキするわね……」

「うん。これ以上、悪い事が起こらなければ良いんだけど……」

「……まっ、あの温厚な“はやて”が『鬼・悪魔・御星様!』って罵倒(ぜっさん)する程のステラさんが協力してくれるみたいだし、案外何とか()るんじゃないかしら?」

 

 宿泊予定だったリゾートホテルが作戦領域に含まれるとの事で、避難すべく帰宅準備を進める最中。作戦に臨む“なのは”ちゃん達の前では出さなかったアリサちゃんの愚痴が、此処ぞとばかりに降り積もる。会話という劇場では華やかに、自由自在に振る舞える愛らしさ……。その魅力は同性から見ても羨ましい反面、演じきる自信が無くて憧憬のみに留めています。

 

 

 

 だから私は、尊敬の念を抱きながらも(いつく)しむ。

 

 それを望み望まれ、喜ばれて喜ぶ。

 

 御互いの有限なる時間を持ち寄り、溶かし合う多幸感は甘露の如し。

 

 

 

 

 そんな局所的関係性へ、するりと入って来たのがステラさんです。御互い初対面の筈なのに、アリサちゃんと軽妙かつ不思議な応答を楽しむ光景は不可解で、何となく一歩引いた距離から観察に徹してしまいました。見ている此方が面映(おもは)ゆく感じる程の(むつ)まじさは『水魚の交わり』を連想させ、()しもアリサちゃんじゃなくて私だったら……。どんな風に満たされ、満たしてあげられたんでしょうか?

 

「何とか()るとしても、やっぱり“なのは”ちゃん達とは違うゴールなのかな……」

「ゴールと言うか、ビジョンと言うか……。そもそもの話、私や“すずか”では如何(どう)しようも無いことが如何為(どうな)ろうと、私達は結果を受け入れるしか無い。なら、信じて待つのも友達の役目だと思うわよ?」

「…………因みに、アリサちゃんはどっちを信じているの?」

「それは勿論、私達の夏休みはこれからだ!っていう感じのエンディングね」

 

 私が問い掛けたのは終わり方ではなく陣営なのに、こうやって律動(リズム)を変えて来るところが(ずる)くて意地らしくて()()()()。……予定変更。見込み分を大きく下回った交友度を補うべく、今夜はアリサちゃんの家へ御邪魔したいと思います。

 

 

 

~~

side:アミティエ・フローリアン

 

 一体、如何すれば良かったんでしょうか……? 残り僅かな自然すら滅び行く惑星エルトリアに、40年前の事故以前から縮小されて打ち切られた惑星再生計画。それを数十年越しに両親が再開させ、その合間に私とキリエが産まれて……。もうこの時点で悪足掻きですらなく、()()()()()()()()()()()()()()両親は研究を頑張っていました。

 

 私とキリエは幼い頃から両親の研究を手伝い、過酷な環境でも生存できる家畜や植物の世話をしたり家事の一部を担っていましたが、いよいよ動植物の生存すら厳しくなって家畜を手放した後は、余った時間を《 フォーミュラ 》や【ヴァリアント・ユニット】の習熟に努め、エルトリア星府に依頼せずとも『大型機獣』を仕留めたり、環境データの収集に出掛けたりと、3年前までは辛うじてキリエとの仲は良好だったと思います。

 

 然し2年前、エルトリアに巣食う【死蝕】の悪影響による不治の病を(わずら)った御父さんが衰弱し、介助を始めてからはキリエと一緒に居る時間が少なくなって疎遠気味に……。私も御母さんも、悪化するばかりの現状に抗っては悲観的な思考が(つの)るばかりで、キリエを気に掛ける余裕は有りませんでした。

 

 

 

 その結果が、キリエの凶行を許してしまうとは…………。

 

 

 

 地下倉庫で長らく気絶した状態から目覚めた私は、何とか立ち上がって1階の居間へと戻り、御母さんの助けを得て御父さんの予備透析装置によるナノマシンの入れ替えで応急処置を済ませ、そして再び地下倉庫に戻って主にキリエが使っていた遺跡板をハッキングする事で情報収集し、装備を整えて未知の惑星『地球』へ飛ぶまで半日以上の遅れが生じました。

 

 それから後の出来事に関しては心身の疲労だけでなく、【機族(ギアーズ)】になったキリエが抜きん出た武力を振り(かざ)し、此処最近は(ろく)に鍛錬すらしてなかった私では止められずに完封負け。他にもエルトリア星府で例えるなら、星府警備隊に該当する『時空管理局』という組織が本格的に動き出して若気の至りでは済まない流れへと変わりつつある中、(むし)ろキリエの成功を願うべきか否か……。己の無力さを悔やむばかりです。

 

 好転する唯一の可能性が有るとすれば、遺跡板に残されたデータからでも警戒している様子が窺えたステラさんの動向。それ次第では……。いえ、(やす)きに流れては変われないし変わらない。けれども、敬愛する『伝説の渡り鳥(ヴァージニア)』みたいな活躍が出来なかったからこその現状であり、全身全霊を尽くさねば理想の輪郭にすら――――

 

「失礼します、アミティエさん。ちょっと御時間宜しいでしょうか?」

[- Excuse me. -]

 

 思考は行き詰まり、更に違法渡航者として『時空管理局』から軟禁されて動けずにいた私の元へ訪ねてくれたのは“シャリオ・フィニーノ”と名乗る技術官に、人工知能を宿した魔導演算機【レイジングハート】。彼女達は如何やら、《 フォーミュラ 》と【ヴァリアント・システム】の技術を取り入れてキリエへの対抗策を増やしたい心積もりのようですが、即席で作った装備が上手く機能するかは未知数です。只、これは交渉材料で使えますね……。

 

 御免なさい、キリエ……。()しかしたら、貴女の方が正しくて幸福を掴めるかもしれません。(しか)し、間違っていて不幸に為るのかもしれません。だから私は、何方へ転んでも良いように貴女と敵対して…………何時か、仲直りが出来ることを願っています。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。