ダンジョンにねじれる者がいるのは間違っているだろうか   作:屈曲粘体

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懸念する者ボーンスライム

 という訳で、遂にたどり着きました迷宮都市オラリオ!

 デカイね!

 

 デスマーチ先生は、目立つからとか言って顕現を解いたけど、私はどうすればいいんだろう?

 身体を圧縮できると言っても、ゼロにできる訳じゃないし、そもそも隠す場所がない。

 話せば分かってくれる……訳ないよね。だって私、ねじれる者ボーンスライムだし。

 ヤバいですよってオーラ全面に出てるし。

 

 

「アヤカシ様、ここは私にお任せください!」

 

 

 およ?春姫ちゃん、何か考えがあんの?

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

「あの……オラリオに入りたいのですが……」

 

 

「お嬢ちゃん、一人かい?保護者の方は?」

 

 

 門番は少女に保護者が着いていない事を疑問に思う。

 パルゥムであれば、見た目通りの年齢でなく、既に成人している可能性もあるが、少女に生えている大きな獣耳がそれを否定する。

 少女はどう見ても獣人だ。

 

 

「お父様とお母様は、ここに来る前に……」

 

 

 俯いて口ごもる少女に、門番は迂闊な自分を責めた。

 少女が一人で門を通ろうとするのは、普通ではない。

 例えば、道中でモンスターに襲われた、などの事情があるはずだ。

 それを察せずに、少女を無用に悲しませた自分に門番は心底嫌になる。

 

 

「お嬢ちゃん、ゴメンね。通って良いよ。あっ、その前にその大きな風呂敷の中身を見せてくれるかな?」

 

 

 少女は、小さな身の丈に似合わぬ大きな風呂敷を担いでいた。

 その風呂敷には、何かが詰め込まれており、少女が身体を揺らす度に形を不規則に変えていた。

 

 

「だ……ダメです!」

 

 

 門番が手を伸ばして確認しようとすると、少女は身をよじり、後ずさり、差し出すのを拒否する。

 門番は少し警戒を強めて少女から風呂敷を取り上げる。

 

 

「ゴメンね。おじさんの仕事なんだ。中を見たらちゃんと返してあげるからね」

 

 

 少女はいやいやと首をふって風呂敷を取り返そうとするが、背丈が足りずにどうすることもできない。

 

 

 門番が取り上げた風呂敷の中身を確認すると、中には大量のキラキラ光る石が入っていた。

 

 

「これ……は、魔石?」

 

 

「ウグ…ごれ……があれば…ヒグ…じばらぐ、暮らじでいげるがらっで…エグ…お金に、ずるまで…グス…誰、にも見ぜだらダメだっで……ヒック…言われてだのに……」

 

 

 ハッとして門番が少女の方を向くと、目に涙を溜めてグズっていた。

 どうやら、少女の親が持たせたものだったらしい。

 門番の胸に、先程とは比べ物にならない罪悪感が突き刺さる。

 

 

「ゴメン!本当にゴメン!すぐ返すからね!ほら、大丈夫、おじさんは何も見なかった事にするから。はい、オラリオに入っていいよ。本当にゴメンね。あっ、アメあるけど食べる?」

 

 

 少女は小さく頷いてアメを受け取って口に入れた。

 

 

「……甘いです」

 

 

「そ、そう?それは良かった。じゃあ、お嬢ちゃんまたね。元気に暮らすんだよ!」

 

 

「……バイバイ」

 

 

 小さく手を振る少女を見送り、門番はため息をついた。

 

 

「はぁ。なにやってんだよ俺は。あんな良い娘に……それにしてもあの娘、年の割りに発育が良かったから、悪い人に絡まれなき良いがなぁ……」

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 ふぅ、問題なくオラリオに入れたよ。だけど、これだけは言わせて。

 

 春姫ちゃんの演技力怖えええええええええ!

 

 何、さっきの泣きの演技!?事情を知ってる私ですら心が痛くなったよ!

 女の子って怖いなぁ……

 

 あ、さっきの魔石は道中でデスマーチ先生が倒してた魔物達の魔石だよ。

 最初は私が食べてたんだけど、効果が薄すぎて、生活費の方にまわそうって決まったんだ。

 魔石って売れるらしいね。質が高い方が高価買い取りしてくれるらしいから、これから手に入れる魔石は、食べるか売るか悩み所だね。

 

 それで、私がどこにいるのかと言うと……まあ……大部分は春姫ちゃんの胸に擬態してる訳だね。

 

 ヘイヘイ落ち着けよ!びーくーるだ!これは、春姫ちゃんが提案した事なんだぜ。

 それに、私はねじれる者ボーンスライムだ。性別とか存在しないから、性犯罪で通報しようとするのは止めてくれ。

 そもそも私が春姫ちゃんみたいな少女に劣情を抱くわけがないじゃないか。私は変態が付かない紳士だ。春姫ちゃんに欲望を向ける訳がない。さっきまで必死に般若心経をヘビーローテーションしてたのも、別に煩悩を退散しようとしていた訳じゃない。

 

 

「アヤカシ様、この路地裏に入りましょう」

 

 

 お、自分に向けて言い訳してたら、春姫ちゃんに進展があったみたい。

 人目に付かない路地裏なら、とりあえず私をパージできるからね。

 それでは、周りを確認して、トウッ!

 

 

「アヤカシ様、窮屈な思いをさせて申し訳ありませんでした」

 

 

 いえいえ、こちらこそご馳走さまでした。あ、ご馳走さまっつっちゃった。

 

 

「ご馳走さまですか?……あっ!身体から垢が無くなってキレイになってます!アヤカシ様、スゴいです!」

 

 

 そんなぴょんぴょん跳ねてないで、すぐお風呂入ってね、と言いたい所だけど、風呂がどこにあるか分からんしなあ……

 

 

「キレイになったのに、お風呂ですか?」

 

 

 いや、キレイになってないからね。私の身体がさっきまで接触してたからね。

 私の身体って、「汚」の象徴みたいな物だからね。へドリアンと良い勝負だからね。すっごく汚れてるから。てか、穢れてるから。

 

……あれ?さっきからなんか、会話通じてない?通じてるよね?もしかして、春姫ちゃんをシモベにしちゃった!?

 

 

『イエ、そうでハありまセンよ』

 

 

 その声は、デスマーチ先生!?どうして!?

 

 

『ハイ。ワタクシデス。お嬢サマのオ耳を御覧下サイ』

 

 

 春姫ちゃんの耳?あー、何か金具みたいなのついてるけど何これ?

 

 

『ワタクシデス。身体を最小化シテ、装飾品ニ同化シ、逐次翻訳シテおりまシタ』

 

 

 ええ?顕現解いてた訳じゃなかったのかよ!?にしても便利だなデスマーチ先生の身体!超羨ましいんだけど!

 

……ん? 耳に取り付いてた?

 

 もしかして、さっきの春姫ちゃんの案って……

 

 

『ハイ。ワタクシメがご提案サセていただきまシタ』

 

 

 やっぱ、アンタかよぉぉぉぉぉぉ!?

 ふざけんなよ!なんだよアレ!悪意しか感じねぇよ!

 

 

『イエ、滅相もございまセン。ワタクシはマスターとお嬢サマの安全、ソシテ、マスターにお喜ビいたダク事を一心ニ考エ』

 

 

 はあ?ちげーし!意味分かんねーし!私はロリっ娘の裸体に密着して興奮する変態紳士じゃねーし!

 そんな誤解されるのは、私も不本意っていうかー。

 

 

『ハテ?ワタクシの記憶デハ、マスターがお読みにナッテいた書物ニこのようなモノがあったハズなのデスが……タシか、タイトルは、ロウk――』

 

 

 シャァァァァルァァァァァップウゥゥゥ!!!

 何故それを知ってんだデスマーチ先生!?

 そのタイトルはいけない!すごく危険だ!

 つーか、アンタはプライバシーの概念知ってたろ!どこ行ったんだ私のプライバシー!?

 

 

『オオ!ヤハリ、ワタクシの記憶に間違イは無かっタようデスね。シカらば、差しアタリ、マスターに百人ホドの少女を献上シ――』

 

 

 せんでいいわ!!

 こちとら、見た目は邪悪でも中身は清廉でやってんだ!なにを名実ともに邪悪にしようしとんじゃワレェ!

 お巡りさんが駆けつけてくるわ!

 私を社会的にデスパペットするつもりか!?

 

 

『ウウム?浮浪者や孤児ヲ狙エバ足はツカないノデ、安全デスが……ヤハリ、そのよウなモノらはマスターへの献上品ニ相応シクありまセンね。浅慮でシタ』

 

 

 いや、そういうこと言いたいんじゃないからね。

 デスマーチ先生、ちょいちょいブラックだよね。闇文明だから仕方ないんだろうけどね。

 

 それはそうと、もう一つ気になることがあるんだけど……

 

 

『何でショウか?』

 

 

 さっきの春姫ちゃんの涙ってさ、もしかして演技じゃなくて……

 

 

『ハイ。ワタクシが事前ニ、誰ニモ見せテはいけまセン、と言い含メテおきまシタ。イヤー、自然サを演出すルタめ、ワタクシは苦心シ――』

 

 

 デスマーチ先生。

 

 

『ハイ?』

 

 

 反省。

 

 

『ナナッ。ワタクシ、マスターとお嬢サマの事ヲ一心ニ――』

 

 

 うっさい黙れ!春姫ちゃんの純真さに付け込むなんて言語道断だ!春姫ちゃん、本気で泣いてたからな!

 これなら、私が思い付いてた、「春姫ちゃんとは別行動で無理やり進入した後、分身を使って死を偽装し、ほとぼりが冷めたら春姫ちゃんと合流する」っていう案の方がまだマシだったよ!

 

 

「いけまセン!それデハ、マスターの御身ニ危険が!」

 

 

 うっさい!うっさい!

 春姫ちゃんを泣かせるよりは数倍マシだ!

 こういう汚い物を見て、子供達は擦れていくんだ!

 キレイな春姫ちゃんを私は全力で守るんだ!

 

 

「むぅ。またアヤカシ様は道化師さんとばかりお話を。私もお話したいのです!」

 

 

 あっ、ゴメンね春姫ちゃん。またやっちゃったよ。

 頬を膨らませてプリプリしてる姿もとっても可愛いね!

 そんな春姫ちゃんを私は絶対に守るよ。具体的には、悪い大人(デスマーチ先生)から。

 

 

「そんな……可愛いだなんて……それに、絶対に守るんだなんて……」

 

 

 デスマーチ先生は全然反省してねぇな!

 毎回、毎回、どうしてそういうとこだけ訳すんだよ!

 純粋な春姫ちゃんの反応を楽しむんじゃねぇよ!

 確かに可愛いけど!凄く可愛いけど!眼福ですよコンチクショー!

 

 

「ひゃ、ひゃあ。しょろしょろ神様(かみしゃま)(しゃが)しに行きまひょう」

 

 

 くそぅ……春姫ちゃん、あんなに顔を真っ赤にしてカミカミに!

 デスマーチ先生は今度は何を吹き込んだんだ?

 

 今すぐデスマーチ先生に制裁を与えたいけど、パワー1000の私では、バトル中の相手のパワーを-4000の能力を持っているデスマーチ先生には触れることすらできない。

 無力な私ですまない……いつか必ず、君を守れるようになるから……!

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 あれから何軒のファミリアを回っただろうか?

 30軒回った辺りから数えるのを止めてしまった。

 

 いや、入れてくれるってファミリアが無かったわけじゃないよ。

 確かに、春姫ちゃんの外見を見て、子供はちょっと……って、断ってきたファミリアも多かったけど、半分くらいは歓迎してくれていた。

 

 じゃあ、何でまだファミリア探しを続けているのかって?

 それは……

 

 そいつらが欲望に塗れた目を春姫ちゃんに向けて来るからだよ!

 間違いない。あれは青い花を蹂躙しようと滾るケダモノの目だった。私には分かる。

 くそっ!春姫ちゃんの幼い肢体に欲情するとは、なんてヤツらだ!あのロリコンどもめ!私にマナがもっとあったら、インビンシブル・アビスを詠唱してたところだ!

 若い花は見守って愛でるものだろう。私はそう主張するよ。日本国紳士としてはね。

 

 まあ、その他にも問題はあったんだけどね。

 物凄く雰囲気の悪いファミリアとか、神様が突き抜けた変態のファミリアとか……名前は聞いてないけど、ゾウみたいな仮面付けてたから、ギリノメアイルかギリトラワンガのファミリアだと思う。

 建物の入り口が股関とかいう変態性の高さだったので、よく覚えてる。

 

 

「はぁ……なかなか見つかりませんね……」

 

 

 ゴメンね。春姫ちゃん。疲れちゃったよね。

 でも、所属ファミリアは大きな問題だから、妥協したくないんだ。付き合わせちゃって悪いね。

 

 

「いえ、アヤカシ様は私のためにお悩みになって下さっているのですから……ありがとうございます!」

 

 

 ツラい……春姫ちゃんの曇りのない笑顔がツラい……

 くそぅ、オラリオめ!何で春姫ちゃんみたいな良い娘に優しいファミリアがないんだ!

 てか、ほとんど神様の問題だったろ!なんだよここの神は!変態か大きいお友達しかいないじゃねぇか!

 

 

「「わっ!」」

 

 

 春姫ちゃん大丈夫!?なんか、誰かとぶつかって、ギャグみたいにキレイに転んだけど!?

 

 

「イタタ……ご、ゴメンよ!余所見してた。大丈夫かい?」

 

 

「こちらこそ、申し訳ありませんでした。お怪我はありませんか?」

 

 

 春姫ちゃんにぶつかったのは、春姫ちゃんと同じくらいの年っぼい女の子だったよ。黒髪ツインテールが似合う可愛い娘だね

 それにしても、腕の辺りの青い紐はどうなってんの?重力に逆ってるようになってるけど、どういう縫い方をしてるの?

 

 

「ボクは大丈夫だよ。君、とっても良い娘だね。……そうだ!ボクのファミリアに入らないかい?……なんてね!冗談だよ」

 

 

 この娘は神様だったらしいよ!驚きだね!

 紐が特徴的な神様だから、紐神ちゃんって呼ぼうか。

 

……ん、神様?

 

 あっ、この娘のファミリアが良いんじゃない!?ちょっと詳しく聞いてみてよ!

 

 

「はい!……どのようなファミリアなのですか?」

 

 

「おっ、君は信じてくれるんだね!初対面の子はいつもボクを子供扱いするからね……で、ファミリアだっけ?良いよ、教えてあげるぜ……と言っても、まだ一人もいないんだけどね。アハハ」

 

 

 なんでも、ファミリアが無いせいで、収入は無いけど、友達のお陰で暮らせてるらしいよ。……うん。ヒモだね!

 紐神ちゃんはヒモ神ちゃんだったらしい。

 

 ここの神様ってどうしてこんなのばっかなんだろう……神様って言うよりも、チャットの向こうの友達って感じがするんだよね。大きいお友達とか、特に。

 

 でも、これはこれで好都合だ。一人もいないって事は、春姫ちゃんに邪な感情を向ける輩もいないって事だし、私の事も隠しやすい。

 たくさんの秘密や事情をを抱える私達は零細な方が何かと都合が良いからね。

 

 それに、なんだか紐神ちゃんもほっとけないしね。見た目通りの年の娘みたいに屈託なく笑う紐神ちゃんを見てると、悪い男に騙されちゃうんじゃ無いかって、心配になってくるんだよね。

 

 という訳で、OKだよ春姫ちゃん。そのファミリアに決めよう!

 

 

「はい!神様、私をファミリアに入れてください!」

 

 

「え?自分で言うのもアレだけど、ボクの説明に入りたくなる要素なんてあったかい?……い、いいのかい?ボクのファミリアなんかで!?本当に!?」

 

 

「はい!入れていただけますか?」

 

 

「や、やったー!ついにボクにもファミリアが!これで、ヘファイストスやロキに自慢できるぞ!夢じゃないよね!?」

 

 

 ぴょんぴょん跳ねて喜びを全身で表現する紐神ちゃん。

 うん。春姫ちゃんと同年代の友達にしか見えないね。落ち着いてる分、春姫ちゃんの方が年上にさえ見えるよ。

 

 

「よっしゃあ!さっそくファミリア入団の儀を……あっ!」

 

 

 急にダラダラと冷や汗を流して固まる紐神ちゃん。

 場所がないとかボソボソ呟いてる。……そう言えば君って、友達のヒモだったね。

 

 

「よし!明日には場所を用意しておくから、今日は宿でもとってくれ!それじゃあ、またね!」

 

 

 何かを思い付いたように顔を輝かせて猛スピードで走り去っていく紐神ちゃん。……不安だ。

 

 

 紐神ちゃんの様子に不安を感じながらも、その日はとりあえず宿をとった。

 よほど疲れてたのか、春姫ちゃんはベッドに入るなり、すぐに寝ちゃったよ。

 今日は本当にゴメンね、春姫ちゃん。




本日は午後にもう一話投稿する予定です。
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