ダンジョンにねじれる者がいるのは間違っているだろうか 作:屈曲粘体
迷宮だよ!
「はい!迷宮ですね!」
おっと、初めての迷宮への感動でつい出た呟きに返事があった。
初期装備の木製の杖を装備している春姫ちゃんは、まさに見習い魔法使いって感じで、初々しさの中に知的さがあって、普段とはまた違う趣深さがある。
和装魔法使いって素敵だね!新ジャンルだよ!
そんな、和風魔女っ娘春姫ちゃんは、迷宮をキラキラした目で見詰めて、耳と尻尾も忙しなく動いている。
春姫ちゃんもワクワクしてるんだね!
私も年甲斐もなくはしゃぎっぱなしだよ!
悪魔の契約を使ったせいで減ったマナを取り戻すために、ジャンジャン冒険しないとね!
あの後、ダンジョンに向かった私と春姫ちゃんは、ギルドで冒険者登録をした。
ギルド、日本語だと同業者組合だけど、英語にすると途端に異世界っぽくなるね!
で、登録したら、ミィシャちゃんって娘が春姫ちゃんの担当になったよ!
ミィシャちゃんは、いかにも新人ですって感じの初々しくて可愛い娘だったよ!
それにしても、春姫ちゃんの担当が女の子で良かったよ。オラリオにはロリコンが多いからね!
ヤツらに和風魔女っ娘の破壊力を知られなくて良かったよ。
それじゃあ、冒険開始だね!
まずは、効果の確認がてら、私に魔法をぶっk……ゲフンゲフン、かけて見てちょうだい!
「はい!――すくすく育て、大きくなーれ!歌う妖精。フェアリーいい曲。全部いい曲。たくさん聴いて、大きく育て【フェアリー・ライフ】」
うん。「1マナ溜まった」って感じだね!
それにしても、なんだか凄く馴染み深い魔法、というか呪文だった。……てか、フェアリー・ライフって言ったよね!?
なぜ春姫ちゃんが、初登場からマナブーストの最前線を走り続けている呪文を?
考えても仕方ないね。今はそれより迷宮探索だ!
春姫ちゃんも私もサポートタイプだから、誰かアタッカーを召喚しよう。
リビング・デッド、ヘドリアン、パラサイトワームは除外だ!女の子に見せていい外見じゃない!
まあ、それは私もなんだけど、それはおいといて、ニマナでデメリットが無しか軽いかでそこそこ強力な見た目が無難な闇……アイツだな。
―――2マナ消費して、光線人形ストリウムを召喚!
「シュワッチ!」
……あ、アウトーッ!
「シュワッ!?」
強制的に顕現を解いて、光線人形ストリウムにご帰還いただく。
ふぅ。これでよし。いやー、危ないところだった。
なんというか、スゴく危険だったね!
「どうして消してしまわれたのですか?ヒーローのような、お強そうな方でしたのに?」
うん。ヒーローのような感じがするからアウトだったんだよね。
ちょっと、光の国の戦士感がありすぎるんだよね。
色々と危険だ。
さて、気を取り直して召喚……あれ?感覚的に1マナしかない。
じゃあ、1マナの中から選ぶなら……コレだね!
―――1マナ消費して、孤独の影ロンリーウォーカー召喚!
孤独の影ロンリーウォーカー。
髑髏のような被り物に、羽のように伸びた髪。そして、獣のような手をした、二頭身の可愛いクリーチャーだ。
大きなお目々がギョロっとしてて、不気味だとか怖いだとか言う人もいるけれど、暴虐虫タイラントワームとか怨念怪人ギャスカよりはマシでしょ。
ちなみに私は、断然ロンリーウォーカー可愛い派だよ!
なんと言っても、ロンリーウォーカーの可愛いところは、見た目だけじゃなくて……
「マスター!」
どわっ!ッぶねぇ!
こっちに突進するなロンリーウォーカー!私のパワーは1000、お前のパワーは2000。下手したら死んでまうわ!
「一人にするなっ!」
か、可愛えー!……じゃなくて、貧弱なねじれる者ボーンスライムじゃあ、きみの突進を受け止めきれないから気を付けてね。私が死んだら、結果的に君は一人になるし。
「分かった!」
こんな風に、ロンリーウォーカーは極度の寂しがりやなのだ!
孤独の影ロンリーウォーカーの能力は、「自分のターンの終わりに、バトルゾーンにある自分のクリーチャーがこのクリーチャーだけであれば、破壊する」つまり、ロンリーウォーカーは兎みたいに、寂しいと死んじゃうんだ!
ロンリーウォーカーって名前なのに全然ロンリーでウォークしない。むしろ、日本語と英語を組み合わせた独自言語を使いこなすあのお方ばりにトゥギャザーしてるのだ!
あと、ねじれる者ボーンスライムと同じく墓地の肥やし要員なところに親近感を感じる。
「か、可愛いです!私もお友達になりたいです!」
「……プイッ」
「はうぅ……」
ロンリーウォーカーに冷たく対応されて落ち込む春姫ちゃん。
春姫ちゃんとも仲良くしてくれたら嬉しいんだけど……
「マスターがいい!」
さいですか。
繰り返すけど、孤独の影ロンリーウォーカーの能力は、「自分のターンの終わりに、バトルゾーンにある自分の『クリーチャー』がこのクリーチャーだけであれば、破壊する」だ。つまり、孤独の影ロンリーウォーカーが愛着を感じるのは、同じクリーチャーに限られるんだ。
考えてみれば、バトルゾーンにクリーチャーがいなかろうと、プレイヤーは傍にいるわけだからね。
春姫ちゃん元気出して。一緒に冒険してるうちに、少しずつ仲良くなれるはずだからさ!
「アヤカシ様……はい!私、頑張ります!」
うんうん。気合い十分だね春姫ちゃん!
それじゃあ、記念すべき迷宮最初のモンスター探しとしゃれこもうか!
迷宮を進み、前方に見えるのは二足歩行の犬。大冒犬ヤッタルワン……ではなく、コボルトだ。
小さく震えた背中と杖を握る手の力みから春姫ちゃんの緊張が伝わってくる。
春姫ちゃん、大丈夫だよ。私がついてるからね。
「はい!アヤカシ様、ありがとうございます!」
まあ、ねじれる者ボーンスライムに守られたって気休めにしかなんないけどね。
私が風撃の求道者ラ・バイルとか天海の精霊シリウスとか聖電機ターコイズ・クラーケンとかだったらよかったんだけど、ねじれる者ボーンスライムだからねぇ……
緊急時に一撃防ぐくらいが関の山な気がする。
純粋に私を信じてくれる春姫ちゃんには、口が裂けても言えないね。既に裂けてるけど。
「いきます!まばゆい閃光が視界を埋め尽くす【ソーラー・レイ】!」
閃光が迸り、油断しきっていたコボルトの網膜を焼く。コボルトは不意に塗りつぶされた視界と目を襲った激しい痛みに恐慌状態に陥った。
よし、今がチャンスだ!
―――孤独の影ロンリーウォーカー、コボルトに攻撃!
「分かった!」
飛び出したロンリーウォーカーは瞬く間に無防備なコボルトを爪で斬り刻んだ。
一瞬のうちに肉塊と成り果てたコボルトは魔石だけを残して消滅した。
完全勝利だね!
私は、「ほめろ!」と叫んで突進してきたロンリーウォーカーを撫でながら思う。
ところで、ねじれる者ボーンスライムの触手に撫でられる感触ってどうなんだろうか?
汚そうだし、不快な手触りとかしそうだから、私だったら御免蒙るけど、気持ち良さそうに目を細めてるって事は、ロンリーウォーカー的にはアリなのだろう。
私の周りって特殊な感性の人多いね。
普通なのってヘスティアちゃんくらいかな?
「アヤカシ様!初めての魔石ですよ!お納め下さい!」
えっ、初めての魔石だよ。私が食べちゃっていいの?
「はい!初めての魔石だからこそ、売ってしまうのではなく、アヤカシ様にお召し上がり頂きたいのです!」
春姫ちゃん!嬉しいこと言ってくれるね!
それじゃあ遠慮なく、いただきまーす!
……おっ、キタキタ!体の内側から力が湧いてくる感じだ!外の魔石とは質が段違いだね!古古古米と新米くらいの差があるよ!
今回は、1マナ溜まるのには届かなかったみたいだけど、これならすぐに溜められそうだ!
◆◇◆◇
問題が発生した。
いや、モンスター討伐は順調だよ。
まだマナは溜まってないけど、魔石はメインの収入元だから全てをマナチャージに使える訳じゃないことくらい、理解してるしね。
問題は、順調過ぎる事なんだ。
それの何がいけないかって言うと、孤独の影ロンリーウォーカーが強すぎて、春姫ちゃんがサポートする暇もなくすぐにバトルが終わっちゃうんだ。
まあ、コボルトだって抵抗するから一瞬って訳でもないんだけど、春姫ちゃんの呪文詠唱が終わるまでにはだいたい決着がついている。
さっきなんて、春姫ちゃんはなんとか一緒に戦おうと杖でコボルトに殴りかかってたし。健気だよね。方向性間違ってる気もするけど。
私の個人的な意見だけど、その杖の使い方ってそうじゃないと思うよ。
ロンリーウォーカーに自重するよう言えば解決するんだろうけど、魔物を倒す度にキラキラした目で褒めるようにせがんでくるロンリーウォーカーにそんな事を言えるはずもない。
くっ、可愛いクリーチャーを選んだ事が裏目に出るとは……!
とは言え、春姫ちゃんをピンポイントで強化するのは、闇文明のそれも1マナしかない私には難しい。
そういうのって光とか自然の分野だよね。
そもそも私は、孤独の影ロンリーウォーカーと緊急時の保険用の私の分身でクリーチャー召喚用のリソースは使いきっちゃってるし……ん、クリーチャー?
あ、クリーチャー以外なら大丈夫じゃん!
春姫ちゃん!春姫ちゃん!
「どういたしましたかアヤカシ様?」
私が春姫ちゃんにロンリーウォーカーと一緒に戦える力をあげるよ!いくよ!
―――1マナ消費して、邪扇エアロ・フウゲツをジェネレート!
「扇、でごさいますか?」
イエス!クロスギアなら、召喚数制限の対象にならないみたいだからね!
1マナの闇のクロスギアで、クエイク・スタッフと迷ったけど、あっちは使用者が死ぬ前提の能力だし、デザインが春姫ちゃんに合わないしね!
その点、エアロ・フウゲツなら、和装の春姫ちゃんにピッタリだ。
さて、そろそろマナも自然回復したことだし、
―――1マナ消費して、邪扇エアロ・フウゲツを春姫ちゃんにクロス!
うん。やっぱり似合ってるね!
さっきまでの和風魔法少女スタイルもよかったけど、今の正統派和装も最高だね!
ところで、エアロ・フウゲツってどうやって攻撃するんだろう?
パワーは1000上がるはずだから、無駄にはならないはずなんだけど、扇ってどうやって攻撃するの?
殴る、としたらリーチ短すぎない?
「えいっ!……はわっ!」
は、春姫ちゃん大丈夫!?
春姫ちゃんがエアロ・フウゲツを素振りしたら、黒い刃が前方に飛んでいったよ。
なるほど。エアロ・フウゲツは遠距離武器だったんだね!これなら、サポート型の春姫ちゃんにピッタリだ。
おっ、今の音でコボルトが寄ってきたよ。好都合だね!
それじゃあ、コボルトに飛びかかりそうなロンリーウォーカーをナデナデストップしてと。
さあ、やっちゃって春姫ちゃん!
「はい!」
エアロ・フウゲツを振って闇の刃を次々にコボルトに浴びせる春姫ちゃん。
その姿は舞い踊るように優美だ。
コボルトは刃を4発ほど受けると動かなくなった。
なるほど。コボルトを倒すスピード自体はロンリーウォーカーに及ばないけど、刃を受けたコボルトはのけ反っていたから、牽制には使えるだろう。
複数のモンスターが同時に発生した時は、春姫ちゃんが一体を足止めして、もう一体にロンリーウォーカーが専念するようにすれば効率が上がるだろう。
春姫ちゃん、グッドだよ!これならロンリーウォーカーと連携してますますモンスターを倒せそうできそうだね!
「はい!アヤカシ様、ありがとうございます!この扇、大切にします!」
クリーチャーは時間制限あるけどクロスギアはどうなんだろう?
まっ、時間制限があったらあったでジェネレートし直せばいいか。どうせ形は扇なんだから、ホームで出しても問題ないでしょ。
その後もしばらく私達は第一層でモンスター狩りを続けた。
昼食は事前に買っておいたサンドイッチだ。冒険者が多い街だけあって需要が高いのか携帯食のバリエーションは意外と多かったよ。当然ながら、10秒チャージのゼリーみたいなのは無かったけどね。
本当は私やロンリーウォーカーは食事の必要は無いんだけど、春姫ちゃんが自分だけ食べるなんてできないって主張したから全員一緒の昼食タイムとなった。
常々思うけどいい娘だよね。
そのお陰かどうかは知らないけど、春姫ちゃんとロンリーウォーカーの仲がちょっと縮まったみたいでほっこりした。
さて、そろそろポーションもなくなってきたし、次くらいで終わりにして今日は帰ろうか。
「了解しました」
出口に向かって進んでいると、前方からコボルトの集団がやって来た。
1、2、3、4……うへぇ、8匹もいる。コボルトってこんなに群れるもんなんだね。今までは1匹2匹くらいが普通だったけど、最後にがっつり来たね。
まあ、初日の締めにはちょうどいいんじゃない?
さあ、戦うのなら囲まれる前になるべく数は減らしたいね。と、言うわけで、
―――孤独の影ロンリーウォーカー、コボルトに攻撃!
「行くよ!」
「援護します!―――舞い踊るは、雄雄しき生命の輪舞【獣達の輪舞】!」
春姫ちゃんが唱えた呪文による力強い光を浴びたロンリーウォーカーは、一体のコボルトを切り裂くや否や、即座に体勢を立て直して返す爪でもう一体を撃破した。
その後に生まれた隙を突こうとしたコボルトは、春姫ちゃんが飛ばした闇の刃によって阻まれる。
何て言うか、連携が凄まじいね!
特に、春姫ちゃんは初めての戦闘のはずなのに、歴戦の魔導師並の慣れと安定性を感じるよ!女の子の成長って速いね!
私も頑張るよ!
―――1マナ消費して、ブラッディ・クロスを発動!
緋色の刃がコボルトを切り刻む。
刃を受けたコボルトに傷は無いが。
ブラッディ・クロスの効果は山札破壊。フレーバーテキストにおいて、山札が暗示するのは「心」や「資産」、心に刻み込まれた傷は致命的な隙を生む。
「がら空きだ!」
ロンリーウォーカーの攻撃でコボルトが散る。
同時に、春姫ちゃんの攻撃でもう1匹コボルトが消滅したから、これで残りは半分だ。
残りのコボルトは、次々に死んでいく同胞や春姫ちゃんの攻撃で及び腰になっている。
さあ、後半戦も気張っていこう!
光線人形ストリウム、最初見たときはとてつもない衝撃を受けました。
ところで、ロンリーウォーカーの絵がだまし絵とかで実は怖いって噂を聞いたのですが、作者はなんのことかわかりません。知ってる人っていますか?
・孤独の影ロンリー・ウォーカー
文明 :闇
コスト:1
種族 :ゴースト
パワー:2000
自分のターンの終わりに、バトルゾーンにある自分のクリーチャーがこのクリーチャーだけであれば、破壊する。
・光線人形ストリウム
文明 :闇
コスト:2
種族 :デスパペット
パワー:4000
このクリーチャーが攻撃する時、そのターン、自分の他のクリーチャーは攻撃することができない。
・フェアリー・ライフ(呪文)
文明 :自然
コスト:2
S・トリガー
自分の山札の上から1枚目を、自分のマナゾーンに置く。
・ソーラー・レイ(呪文)
文明 :光
コスト:2
S・トリガー
バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選び、タップする。
獣達の輪舞(呪文)
文明 :自然
コスト:1
このターン、バトルゾーンにある自分のクリーチャー1体のパワーは+2000される。そのクリーチャーがこのターン、はじめてバトルに勝った時、そのクリーチャーをアンタップしてもよい。
・ブラッディ・クロス(呪文)
文明 :闇
コスト:1
自分の山札の上から2枚を墓地に置く。その後、相手は自身の山札の上から2枚を墓地に置く。
・邪扇 エアロ・フウゲツ(クロスギア)
文明 :闇
コスト:1
種族 :サムライ
これをクロスしたクリーチャーのパワーは+1000される。
これをクロスしたクリーチャーが攻撃する時、相手の手札が3枚以上あれば、相手はその中から1枚選んで捨てる。