ダンジョンにねじれる者がいるのは間違っているだろうか 作:屈曲粘体
問題発生だよ!
いや、正確に言えば問題ってほどのことでもなくて、言うなれば不都合が生じたって感じかな。
誤解のないように言っておくと、ダンジョン探索は順風満帆の一言で、到達階層も五階層まで及び、1日に稼げる金額も順調に増えている。あれ以来私のマナは増えていないけど、それは急ぐ必要の無いものだから問題にはならない。
それでは、何が問題なのか、それは……
戦利品の運搬だよ!
今までは、迷宮の入り口まで私の分身に運ばせて、他の冒険者がいる場所では春姫ちゃんが運んでいた。
だけど、この方法では春姫ちゃんが一度に運べる量には限りがあって、それを越えた分の魔石は私が食べている。マナを溜めるには数よりも質の方が重要っぽいから、無駄ではないけど効率が悪い。まあ、余剰分の吸収した魔石を使ってマナ回復速度上昇なんて使い方もできなくはないけど、なんか勿体無い気もするんだよね。私の呪文が必要になる事態なんて滅多に無いし。
だから、できれば魔石は換金に回したいんだよね。
私にもスライムらしく収納能力はあるんだけど、魔石を入れると自動吸収しちゃうから取り出せないんだよね。魔石以外なら取り出せるんだけど、入れれば入れるほど私の身体が大きく重くなっちゃうから迷宮外ではあんまり意味ないんだよね。
こういう時、普通の冒険者ならサポーターっていうのを雇うらしいんだけど、ちょっと難しいんだよね。
私達の戦闘方法は特殊過ぎる。私の存在、私が召喚するクリーチャー、呪文など秘匿すべき要素が有りすぎる。
いっそのこと公開しちゃえば楽な気もするんだけど、そうしたら娯楽に餓えている神々に目をつけられるリスクがあるらしい。
それは避けなければならない!
娯楽に餓えている神々って、要するにあの男神どものことでしょ!あんなのに春姫ちゃんを付け狙われるリスクなんてとうてい看過できる物じゃない!
だから、雇うんだったら守秘義務を守れる信用できる人に限られてしまう。あと、女の子。これ重要。男は皆狼だから、いつ春姫ちゃんに牙を剥くのか分からない。
あ、ねじれる者ボーンスライムは別だよ。だって、無性生物だから。
「アヤカシ様、換金が終わりましたよ!」
ありがとう春姫ちゃん。それじゃあ、帰ろうか!
ま、今のところは差し迫った問題でもないしゆっくり考えていこうか。
◆◇◆◇
「たくさん買えました!アヤカシ様、今日もご馳走ですね!」
うん。今日は白菜らしき野菜が安かったから鍋か八宝菜かな?
春姫ちゃんはどっちが良い?
「どちらも魅力的です……ヘスティア様にお選び頂きましょう!」
了解。材料は揃ってるし手間もかかんないから問題ないよ。
何故かヘスティアファミリアのシェフに収まっている私。衛生観念って言葉に真っ向から喧嘩売ってるようなねじれる者ボーンスライムボディだけど、気にする人はいない。尤も、最初はヘスティアちゃんは少しだけ嫌そうな顔をしていたんだけど、一口食べたら綺麗に手のひら返ししたんだよね。それで良いのか女神様。
そう言うわけで、春姫ちゃんもヘスティアちゃんも料理できないらしいから、消去法で選ばれたのだった。
いや、独り暮らし長かったから料理はできるけど、消去法なら普通は真っ先に私を除外しない?
こういうところで、中世レベルの世界なんだなあって改めて実感する。本当の中世だったら悪魔認定されて迫害されそうだけどね。
そう思うとありがたいのかな?
……ん。なんか騒がしいな?
喧嘩かもしれない。春姫ちゃん、引きかえ―――
「アァン?何見てんだテメー?……女か?」
チッ、見つかったか。
治安の悪さは分かってるけど面倒くさくていけないね。春姫ちゃんにこんな小汚ない集団と会話させるなんて一生の不覚だ。近道なんてしなきゃ良かった。
春姫ちゃん。こんなの相手にしないでさっさと帰ろう。
「す、すみませんでした。私はこれで……」
「待ちな、嬢ちゃん。一人かい?一人は危ねーぜ。」
「キヒヒ。そうだなァ。なにせ、こんなとこに一人でいると、」
「俺達みてぇな奴らに捕まって、娼館に売り飛ばされちまうからなァ。クッハ、こんな上玉、いくらで売れるか今から楽しみだぜ!」
……ブチッ。
そんな音が、私の中から聞こえた気がした。
駄目だ。これは駄目だ。こいつらは赦されない事を言った。
春姫ちゃんを娼館に売る?
なるほど。そうかそうか―――そんなに死にたいか。
春姫ちゃん。ちょっとの間、私を信じて目を閉じて耳を塞いでてくれないかな?私が良いって言うまで絶対に開けちゃだめだよ。
「は、はい!分かりました、アヤカシ様!」
すぐに目を閉じ、耳を塞ぐ春姫ちゃん。
うんうん。春姫ちゃんが素直な娘で良かったよ。
こんな奴等をこれ以上春姫ちゃんの視界に入れたくないし、今からすることはとても見せられるような物じゃない。
何よりも、これからの私の姿を春姫ちゃんに見せたくは無いからね。
さあ、準備は終わった。貴様らには闇の住人にすら耐えられない闇を見せてやろう。
「キヒッ。どうした嬢ちゃん。怖くて震えてんのか?」
―――2マナ消費して、うごめく者ボーン・グール召喚。
「な、なんなんだよこの化け物、どこから出やがった!?」
「怖じ気づいてんじゃねえ!やるぞ!」
―――1マナ消費して、ブラッディ・クロスを発動。
『◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!』
「ぐっ、この程度で―一―」
―――1マナ消費して、ブラッディ・クロスを発動。
―――1マナ消費して、ブラッディ・クロスを発動。
―――2マナ消費して、さまよう者ブレイン・イーターを召喚。
『■■■■■■■■■!』
「あ、あ、あ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「お、おい、逃げんじゃねえ!」
無駄だ。準備は終わったと言ったはずだ。
我が分身よ、「ブロック」だ。
「あ゛あ゛ああぁぁぁぁ、あぁ?これは、壁か……?」
『◼️■◼️■◼️■!』
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
―――1マナ消費して、ブラッディ・クロスを発動。
うごめく者ボーン・グール、さまよう者ブレイン・イーター、我が分身達…………やれ。
『◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!』
『■■■■■■■■■!』
『◼️■◼️■◼️■!』
「「「あ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」
◆◇◆◇
―――2マナ消費して、ゴースト・タッチを発動。
ふぅ。これでよし。後始末も完了だ。
先ほどの出来事はこいつらの記憶から永遠に消滅しただろう。
ボーン・グールもブレイン・イーターもおぞましい見た目に反してパワーはたった2000しかない。ブレイン・イーターは攻撃すらできない。
だから、ブラッディ・クロスでちまちま心を砕いてから一斉に威嚇させてSAN値直葬させるなんて迂遠な手段をとることになった。
報復に対策するために記憶を消去するなんて手間もあったし、超速マナ回復のために余剰分の魔石をけっこう消費しちゃったしね。あーあ、勿体無い。
今思うと、クエイク・スタッフを我が分身にクロスしてサクッと処理すれば良かった気がする。
さっきはかなり頭に血が上ってたね。気を付けないと。
まあ、この方法には良い点もあって、記憶は消しても感情は残るから、今回の事がトラウマになって、女の子と話したり、モンスターに対峙したりしたら震えが止まらなくなって体中からあらゆる体液をだだ漏れにして失神するだろう。これからどうやって生活するんだろうね。どうでもいいけど。
それじゃあ、こいつらは汚いからどっかに寄せて……あれ?こいつら下に何かある?デカイバッグ?
これは、…………女の子?
うごめく者ボーン・グール
文明 :闇
コスト:2
種族 :リビング・デッド
パワー:2000
さまよう者ブレイン・イーター
文明 :闇
コスト:2
種族 :リビング・デッド
パワー:2000
ブロッカー
このクリーチャーは攻撃することができない。
ゴースト・タッチ(呪文)
文明 :闇
コスト:2
S・トリガー
相手の手札を1枚見ないで選び、捨てさせる。