ダンジョンにねじれる者がいるのは間違っているだろうか   作:屈曲粘体

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看病する者ボーンスライム

―――と言うわけで、この娘は大変な目に遭ってて、ここでしばらく預かりたいなと……いや、危ない事してるのは分かってますよ。他のファミリアの事情に首を突っ込み過ぎるのは良くないって事も。

 だけど、何もせずにはいられないんです。なんとか助けたいんです。

 どうか、私にこの娘を、リリルカちゃんを助けさせて頂けませんか?

 

 

「アヤカシ君……」

 

 

 神妙な面持ちで、私を一点に見詰めてヘスティアちゃん、いや、ヘスティア様が私に声をかける。

 普段の様子から忘れそうになるけど、やっぱりヘスティア様は女神様で、真剣になったヘスティア様からは圧倒されるようなプレッシャーを感じる。

 思わず人間だった頃の癖で唾をのみ込む。

 許可がもらえるかどうか、どっちだ!?

 

 

「……ゴメン。一生懸命なのは伝わるけど、何言ってるのか全然分かんない」

 

 

 ……え?

 

 え、えええええぇぇぇぇ!?

 いや、確かに春姫ちゃんにしか言葉が通じないの忘れて直接話しちゃったけど、それ今言うの!?もっと早く言ってよ!私、かなりの時間喋ってたよ!?

 と言うか、よくこの流れでそれ言えたねヘスティアちゃん!?

 

 

「うう……そんなに怒らないでおくれアヤカシ君。話はじめで分かんないことは思い出したけど、君があまりにも真剣だったから、どう言い出そうか考えてるうちにこうなっちゃったんだよ」

 

 

 さっきの真剣な顔って、話かけ方考えてた顔だったの!?

 ……うん。分かってるよ。面倒事を持ち込んだのは私だし、言葉が通じないことを失念していたのも私だ。全面的に私が悪いのは確かなんだけど、何て言うか、ヘスティアちゃん残念過ぎない?

 ちょっと空気がダレた気もするけど、気を取り直して事情説明をしよう。後回しにできるような内容じゃないしね。

 それじゃあ……

 

 ええと、春姫ちゃん。悪いけどさ、通訳してくれないかな?

 

 

「お任せください!」

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

「なるほどね」

 

 

 ふう。やっと説明し終えたけど……ヘスティアちゃん、あんまり驚いてない?

 

 春姫ちゃん。ヘスティアちゃんに聞いて頂戴。

 

 

「あの、ヘスティア様。アヤカシ様が驚かれないのかとご質問です」

 

 

「あー……うん。驚いてはいるよ。他のファミリアの団員を誘拐してるようなものだから、あんまり危ない事をしてほしくないしね」

 

 

 う。自覚してます……

 

 

「でも、ボクは君達を応援するよ。なんせボクは君達の主神だからね。子供達を信じて応援するのがボクの役目さ」

 

 

 へ、ヘスティアちゃん!

 

 笑顔で私達を応援すると言い切ったヘスティアちゃんは、さっきの真剣な表情だった時よりも一層神々しくて、大きくて……

 これは、慈愛、慈愛だよ!ヘスティアちゃんからとてつもない量の慈愛が滲み出てるよ!

 

 

「ヘスティア様、ありがとうございます!良かったですね、アヤカシ様!」

 

 

 春姫ちゃんも協力してくれてありがとう!

 

 

「ところで、アヤカシ君。ボクはすっかりお腹が減ってしまったのだけれど、夕食を作ってくれないかい?」

 

 

 了解したよヘスティアちゃん!

 急いで、かつ丁寧に夕食を作るよ!調理時間的に考えて鍋が最適だね!

 栄養失調のリリルカちゃんのためにお粥も用意しよう!オラリオは極東と貿易してるから米もある!元日本人には嬉しいポイントだね!

 さあ、厨房に着いたら調理開始だ!

 密かに練習していた、多数の触手を利用しての同時調理が火を吹くぜ!

 瞬く間に野菜と肉を食べやすいサイズに切り分けて、魔道具のコンロらしきものの上にだし汁を入れた鍋を用意する。

 主食の米は時短のために冷凍していたものを解凍する。

 たくさんの物が揃うオラリオにも冷凍食品は流石になかったけど、思い付きで光線人形ストリウムに頼んでみたら成功したのだ。ストリウムの冷凍光線は出力を調節できるらしい。便利だね!

 正直、これを販売するだけで安定した生活が送れる気がしないでもない。春姫ちゃんとヘスティアちゃんが売り子をしてくれたら繁盛間違いなしだね!

 

 おっと、もしもの生活に思いを馳せていたら、解凍が終わったよ。

 レンジが無いとちょっと面倒くさいけど、ここの文明レベルだと電子レンジはオーパーツすぎるよね。

 

 さあ、盛り付けが終わったからヘスティアちゃんと一緒に先に食べてて頂戴。私はリリルカちゃんの分を作ってるよ。

 

 

「そんな!アヤカシ様より先に頂くなんてできません!お待ちしています!」

 

 

 気持ちは嬉しいけどね春姫ちゃん。それなりに時間がかかるから先に食べてて。お腹すいてるでしょ?

 それに、これ以上食べる時間が遅くなると…………太るよ。

 

 

「……!アヤカシ様、申し訳ありません。お先に頂きます」

 

 

 ちゃんと煮えてるのを確認してから食べるんだよ。

 

 ふふふ。やっぱり春姫ちゃんも女の子だね。

 必勝ワード「太るよ」は、異世界でも凄まじい威力を発揮するみたいだよ。女の子限定でね。

 美容はどこの世界の女の子にとっても無視できない存在なんだね。

 それじゃあ、リリルカちゃんの食事の調理を始めよう!

 ここ最近の食事状況が分かんないから、胃腸に優しくがメインテーマだね!

 

 

―――some time later…

 

 

 完成したよ!

 栄養たっぷりの野菜粥だ。野菜はしっかり煮込んで歯で潰せるくらいにしてあるから胃に負担はかからないだろう。

 

 さて、リリルカちゃんの様子を見にいくとしようか。とはいえ、事情説明や食事なんかは春姫ちゃんに手伝って貰わなきゃいけないんだけどね。

 人間に戻りたいって思ったことはあんまりないけど、こういう時は人間じゃないと不便だね。

 

 

「……ん、うぅ……」

 

 

 お!リリルカちゃんが起きそうな感じ!

 とりあえずはご飯だけ置いてそっとしてた方がいいかな?

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 リリルカ・アーデは、微睡みの中で身を捩る。

 フカフカして暖かい何かに包まれた身体は、今までにない安らぎと気力が満ちていた。

 経験したことのない至福の空間に身を委ねていると、なにやら美味しそうな香りが鼻孔をくすぐってくる。

 そこで、リリルカは自分が空腹であることに気が付く。

 リリルカは誘われるように布団から這い出て香りのもとを探し、テーブルの上におかれた野菜粥を見つけた。

 最後にまともなものを食べたのはいつだっただろうか?そもそもまともなものを食べたことなどあっただろうか?

 いつの間にかリリルカは目の前の野菜粥を一心不乱にかきこんでいた。

 

 

「お水は如何ですか?」

 

 

「いただきます!」

 

 

 椀の中身を一通り食べきり、水を飲んで一息ついたリリルカは、ふと疑問に思う。

 

 

(ここはどこでしょう?)

 

 

 ソーマファミリアのホームではない。あそこにこんな暖かい場所はない。それ以前に、あそこに自分の居場所なと存在しない。

 最後の記憶は確か、冒険者から金を奪うときに失敗し、報復された。とまで思い出したリリルカは身を翻す。

 

 

(油断しましたッ!リリは何を呑気していたのでしょうか!?)

 

 

 この空間には自分以外に人がいただろう。

 見ず知らずの場所で寛ぐだけでなく、素性の知れぬ相手から差し出された水を飲んでのほほんとしているなどお粗末が過ぎるだろうと自らを貶す。

 リリルカは精一杯の虚勢を張って目の前のルナールに声をあげた。

 

 

「あなたは何者ですか!リリをどうするつもりですか!」

 

 

「リリさんというお名前なのですね!私は春姫と申します!今後については、アヤカシ様のお食事が終わり次第ご連絡いたします!」

 

 

 リリルカは、無邪気な笑顔でそうのたまう春姫と名乗る少女に脱力しかける自分を叱咤する。

 優しく気さくな人に見えようと、簡単に侮蔑を込めた冷やかな目で見てくるような人に変わることをリリルカは知っている。それに、アヤカシなる人物という未知の脅威だって残っている。

 世界はいつだって自分に優しくない。気を抜いている暇は無いんだとリリルカは自分に言い聞かせる。

 

 

(ハルヒメ、アヤカシ、名称の響きからして極東の方でしょうか?)

 

 

 リリルカの中で極東の資産家のアヤカシとそれに雇われている使用人の春姫という構図ができあがる。

 そして疑問は最初に遡る。すなわち、資産家アヤカシは自分をどうするつもりなのか、と。

 

 

(奴隷商、とするとリリをこんな上等な寝床に寝かせるのは不自然です。それでは……まさかッ!)

 

 

 リリルカの頭に最悪の可能性が浮かぶ。資産家アヤカシは売る側ではなく、買う側ではないかと。

 自分は今から慰みものにされてしまうのではいかと。

 

 

(そう考えると辻褄が合います!春姫さんが使用人にしては年齢が低いこと、傷だらけで商品価値の低そうなリリを連れ込んだこと、リリが上等な寝具に寝かされていたこと)

 

 

 リリルカの中で資産家アヤカシが更に明確な輪郭を持ち始める。おまけにそこには特殊性癖まで追加されている。

 このままではマズイと逃げ道を探す。

 

 

(窓は……位置が高すぎて届きません。扉は……入り口の一つしかありません。ほかには……ありません!大変です!逃げ道がありません!)

 

 

 退路が見つからずに絶望するリリルカに追い討ちをかけるように扉がノックされる。

 

 

「アヤカシ様がいらっしゃいました!」

 

 

(マズイですマズイですマズイですマズイですマズイです)

 

 

 ガチャリ、と扉が開いてナニカが入ってきた。

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 皿洗い完了!

 

 食べた後はすぐに洗わないとこびりついちゃうから後回しにはできない。ささっと洗ってリリルカちゃんの看病に戻る。

 私の身体の方が汚い気もするけど、料理してるのは私だし、かなり今更な気がする。実際に皿はキレイになってるから、気持ちの問題でしかないっぽいんだけどね。解せぬ。

 

 さて、リリルカちゃんを寝かせてる部屋に来たわけだけど、話し声が聞こえるね。と言うことは、リリルカちゃんはもう意識を取り戻したみたいだね。

 リリルカちゃんを助けるって決めたからには遅かれ早かれ私の姿は見せなきゃいけないからね。思いきって、今行っちゃおう!

 それじゃあ、扉をノックしてと。四回扉を叩いたら部屋にイン!

 第一印象は大事だ!出来る限り友好的な感じを醸し出すように、

 

 ぷるぷる。わたし、悪いスライムじゃないよ。

 

 

「……」

 

 

 あれ、反応なし?…………あ、リリルカちゃん。立ったまま気絶してる。




久しぶりの投稿なのに、新規でカードを出せてないのが寂しいので、本作の春姫ちゃんをデュエマ風にしてみました。


小さな冒険者ハルヒメ


文明 :光/自然
コスト:3
種族 :エンジェル・コマンド/ドリームメイト
パワー:1000


 マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
 このクリーチャーが攻撃する時、バトルゾーンに≪ねじれる者ボーンスライム≫がいれば、次の能力から一つを選んで使用してもよい。
▶︎自分の山札の上から1枚目を、自分のマナゾーンに置く。
▶︎バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選び、タップする。
 バトルゾーンに≪ねじれる者ボーンスライム≫がいて、このクリーチャーが≪邪扇エアロ・フウゲツ≫をクロスしている時、このクリーチャーはバトルの結果によってバトルゾーンを離れない。

フレーバーテキスト
 私もアヤカシ様とお話がしたいです!――小さな冒険者ハルヒメ
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