バカとウチと恋心   作:mam

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「……雄二」
「何だ?」
「……今日は帰りたくない」
「ばっ、お前いきなり何言ってやがるっ。学校から帰るだけだろうが」
「……雄二、私の分まで照れなくても良い」
「ばっ、バカッ違う」
「……私の分までデレても良い」
「何故そうなる?」
「……雄二は私がいつもそばに居なくても大丈夫?」
「そうだな。どっちかというと居ない方が楽…うぎゃぁぁぁ」
「……雄二は愛しい人がいつもそばに居る嬉しさを知らないといけない」
「何処から突っ込んで良いか判らねぇ」
「……雄二と私はそろそろ次のステップに進んでも良いと思う」
「次のステップって交換日記か?」
「……やはり一緒に暮らすしかないと思う」
「お前というヤツは…」
「……惚れ直した?」
「なんで今の会話でそうなるんだっ」
「……とにかく今夜から一緒に寝る」
「ちょっと待てっ。間、飛ばしすぎだろっ!?」
「……どうして?愛し合ってる二人なら問題は何も無い」
「どうして、のところから問題しかねぇっ」
「……雄二、そこまで言うなら賭けをする」
「賭け?」
「……そう、私達の学校に同棲してる人が居たら一緒に暮らす」
「ちょっと待て、まさか明久がまた何かやってるのか?」
「……吉井のことは知らない」
「ちょっと確認してみてからでも良いか?」
「……うん」



「よし、その賭け乗ろうじゃないか」
「……約束」
「ああ、ちゃんと約束は守る。だがその前にズボンを返してもらって起きても良いか?」






バカとウチと突風

 

「あっ、おにいちゃんとおねえちゃん」

 

 先ほどの工事中の橋まで戻って来た時に舞佳ちゃんとお母さんに出会った。

 小さい買い物袋を持っている舞佳ちゃん。

 

「舞佳ちゃんは何をしてるのかな」

「まいか、おかあさんのおかいものの、おてつだいしてるのっ」

「舞佳ちゃんは、えらいわね」

「ありがとう」

 にこにこしてお礼を言ってくれる舞佳ちゃん。本当に素直で良い子だなぁ。

 

「おにいちゃんとおねえちゃんもなかよしさんになったんですね」

 

 そういえば手を繋いだままだった。ちょっと照れるな。

 

「舞佳ちゃんのおかげよ。ありがとう」

「ありがとうね、舞佳ちゃん」

 

「舞佳、早くしないとお姉ちゃん待ってるわよ」

 お母さんが舞佳ちゃんを促すように言ってきた。

 ひょっとして気を使ってくれたのかな。

 

「じゃあね、おにいちゃん、おねえちゃん」

「「バイバイ、舞佳ちゃん」」

 軽く頭を下げるお母さん。

 

 

「葉月といい、あの子といい…ウチの心配は尽きないわ」

「ふぇ?」

「アキって小さい子に限らず女の子に…きゃぁっ」

 

 いきなり突風が襲ってきた。

 美波は僕と手を繋いでいたから片手で必死にスカートを抑えていた。

 僕は、悲鳴をあげる前の美波に目潰しをされて目を開けていられない状態だった。

 

 そして僕たちの後ろの方でも……

 

「きゃっ」

「きゃぁっ、舞佳っ」

 という叫び声と………何かが水面に落ちる音だった。

 それも片手で持てる物が落ちる程度の小さい音ではなかった。

 もっと大きな…自転車とか人間などの…人間っ!?

 

 とにかく目を擦りながら舞佳ちゃん達が居た方を見る。

 うっすらと戻ってきた視界に見えた物は…

 舞佳ちゃんのお母さんの足元一帯を覆っているおそらく工事で使っていたブルーシート。

 でもお母さんの傍には舞佳ちゃんが居ないっ!?

 

「美波っ、ごめんっ」

 僕は美波と繋いでいた手を離し、すかさず反対側の工事中の歩道へ行った。

 こっち側は工事をしていて手すりが無い。

 舞佳ちゃん軽かったから、ひょっとして風に飛ばされて落ちちゃったのでは!?

 

 恐る恐る下を見てみると…まだ、ぼやーっとしている視界に見えたのは

 水面には何か落ちたであろう波紋と人影っぽいのが一つ。

 

「美波っ、上着を頼むねっ!」

「アキっ!!」

 

 制服の上着を脱いで橋から下に飛んだ。

 

「舞佳ちゃんっ!!」

 

 川はさほど深くなく、僕でも腰くらいの深さだった。

 これなら溺れる事は無いだろうけど、さすがにこの時期だと結構水は冷たい。

 まだ視界がぼやーっとしてるので、とりあえずさっき人影らしきものが見えた方へ歩いていく。

 

「アキっ!!」

「美波っ、舞佳ちゃん見える?」

「見えるも何もここに居るわよ?」

「へっ!?」

「おにいちゃんだいじょうぶ?」

 

 僕の心配をしてくれる舞佳ちゃん…無事で本当に良かった。

 

 …………ん?僕は誰を助けようとして川に飛び込んだんだ?

 

 僕の横に居たのは工事現場で赤色棒を持って誘導しているおじさんだった。

 こんなことがあったにも関わらず、にこにことしているおじさんの笑顔が印象的だった。

 

 

「うぅ…酷い目にあった」

「ちゃんと確認しないアキが悪いんでしょ」

 

 さすがに寒いので、すぐ川から上がり、舞佳ちゃん達と別れた。

 おじさんは僕たちで引き上げるのは無理なので、まだ川の中に居る。

 風邪を引かなきゃ良いけど。

 

「だっていきなり風が吹いてきたと思ったら急に目が見えなくなって…」

 

 美波がいきなり真っ赤になって

 

「あっ、アキはウチが恥ずかしい目にあっても平気なのっ!?」

「あんまり平気じゃないけど…」

 僕だけ見えないのは、なんか不公平だと思う。

 こんな時ムッツリーニがいたら写真で残るんだろうけど…

 美波の恥ずかしいところを他の人が見るのは、なんか悔しいな。

 とりあえず、心のムッツリーニにデコピンをしておいた。

 

 PiPiPiPiPi……

 

 ん?僕の携帯かな。

 

「もしもし、明久か」

「この番号に掛けて僕以外の誰が出るのさ?」

「島田」

 

 なっ、なんてことをっ!?美波に聞かれたら、どうするんだ。

 きっと携帯は捻り潰されて、僕の腕も同じ目に…

 

「用件は何?今ちょっと寒いんだけど」

 ううっ、濡れたズボンが冷たい。

 

「お前の財布とギャグセンスと下半身のドレが寒いんだ?」

 むっ…雄二のヤツ、携帯の向こうでいつもの気持ち悪い顔でニヤついてるな。

 でも今は雄二に構ってる場合じゃないな。早く帰って着替えないと。

 

「雄二良く判ったね。下半身がすごく寒いんだよ」

 美波も待ってるんだから早く電話を切らないと。

 

「アキー、早くー」

 ほら、待ちくたびれてるよ。

 

「その声、島田か?まだ一緒に居たのか」

「とにかく早くズボン脱ぎたいんだけど」

 このままだと本当に風邪引いちゃうよ。

 

「ずっ、ズボンだとっ!?島田の前でかっ!?…って翔子っ。ズボンを脱ぐのは俺じゃないっ」

 何をやってるんだ、霧島さん。

 

「お前たちがそこまで進んでいたとは…正直驚いた」

「驚いてるのはこっちだよっ!何勘違いしてるのさっ!?」

 何を勘違いしてるんだ、このバカはっ。

 

「あー、お楽しみのところ申し訳ないんだが一つ確認しておきたくてな」

「確認?」

「ああ、お前は前科があるからな」

 ありすぎて、どれのことやらさっぱりです。

 

「前科?」

「お前、姫路と一緒に暮らしていたことがあっただろ」

「あ、あれは…」

 

 姫路さんの両親が日本に帰れなくなって女の子一人だと危ないからって

 姉さん公認でしばらく一緒に暮らしていたんだよね。

 嬉しい反面、その間の食事が非常に怖かったけど。

 

「まさか今度は島田と同棲してるとか言わないだろうな?」

「あっ、あるわけないだろっ!!」

「それなら良いが…もう一度確認するが同棲はしてないし、する予定も無いな?」

「姉さんが居るのに出来るわけ無いだろっ」

 姉さんと代わってくれるなら相手は誰でも…出来れば秀吉あたりで。

 

 いきなり美波が携帯を持っている反対の腕を捻り上げた。

 

「いだぁぁぁぁっ、みっ、美波っ。いきなり何するのさっ!?」

「なんか、いやらしいこと考えてたでしょっ!?」

 なんて恐ろしい直感…それとも顔に出てたのかな。

 

「連休中は、また島田とどこか行くのか?」

「いや、特に出かける予定は…膝枕をするくらいで」

 そういえば昼休みに美波が言ってたっけ。

 

「何だ、島田に膝枕をさせるとは随分仲が良いみたいだな」

「いや、膝枕をするのは僕」

「はぁ?普通、膝枕をするのは女の方じゃないのか?」

 僕もそう思う。

 

「まぁいい。島田と仲良くやってるようで何よりだ」

 電話の向こうのニヤついてる雄二を殴ってやりたい。

 

「しょっ、翔子っ。膝枕をするのは明久であって、おっ、俺はして欲しいとは…うぎゃぁぁ」

 どうやら雄二は向こうで僕に頭を下げてくれたらしい。ありがとう霧島さん。

 

「まっ、まぁ長々と悪かったな。島田によろしく言っといてくれ。じゃあな」

 なんだったんだ、この電話。全く雄二のすることは判らない。

 

「電話終わった?」

「美波、待たせてごめん」

「いいのよ。それより早く着替えないと風邪引くわよ?」

「そうだね。これで風邪引いたら間違いなく雄二のせいだ」

「そもそもの原因はアンタじゃ…」

「うぅ…否定できない」

「ウチの家、すぐそこだから、お風呂入って行く?」

「ありがとう。気持ちだけ貰っとくよ。着替えとか無いし、走って帰るよ」

 

「アキ。明日の約束忘れたら、どうなるか判ってるでしょうね?」

「大丈夫だよ。膝枕でしょ」

「そうよ。ウチの家に来る?」

 たしか姉さんは今夜から一週間くらい母さんのところへ行くって言ってたな。

 

「僕の家でも大丈夫だけど」

「じゃあ、アキの家でも良い?うちだと葉月も甘えるかもしれないし」

「うん。じゃあ、また明日」

「出かけるとき電話するねっ」

 

 手を振りながら見送ってくれる美波。

 なんか連休中は毎日美波と会ってるな。

 

 

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