バカとウチと恋心   作:mam

13 / 35
バカとウチと看病part02

 

 

 つんつん

 

 ………ん?誰か僕の頬を突っついてる。

 

「アキ起きちゃった?」

「美波、おはよう…」

「ふふっ、もぅお昼過ぎよ。お腹すかない?」

「そういえば少しすいたかも…昨日の夜から何も食べてないからかな」

「ちょっと待っててね」

 僕の部屋から出て行く美波。

 美波が居なくなっただけでいつもの自分の部屋の広さが何倍にもなった気がする。

 

 しばらくするとドアが開いて美波が湯気の立っているお椀が一つ載ったお盆を持って来た。

 

「アキの口に合うか判らないけど…おじやって言うのを作ってみたの」

「ありがとう。美波のお昼御飯は?」

「これよ」

 お盆を軽く持ち上げて見せる美波。

 お椀の中のおじやの量は少し多いかなって気はするけど…

 お盆の上には取り分けるお椀が見当たらず、スプーンも一つしかない。

 

「これって…僕と美波の分が一緒?」

「そうよ。ほらっ、そのっ、アキがお仕置き用だとか心配しないようにウチも同じの食べるのっ」

 お盆を布団の上に置いて手をばたばたさせながら説明する美波。

 そしてスプーンを手に取り、おじやを掬ってふーふーしながら少し冷まして

 

「アキ。ほら、あーん」

「じっ、自分で食べられるよ」

「いいからウチに甘えなさい」

 素直に甘えることにしよう。

 

 もむもむ…

 うん、ほんのりと昆布の良い匂いがして塩味が少し控え目なのが今の僕にはちょうど良いかな。

 味とか匂いがきついと、今の状態だとお腹が受け付けないからね。

 

「すごく美味しいよ」

「良かった。ちょっと薄いかなと思ったんだけど…無理して食べないで良いからね」

 僕と美波で交互におじやを食べる。

 この光景、前にも見たような…何処だったかな。

 

 そうだ。クレープを食べた時か。

 確か葉月ちゃんと三人でクレープを交互に食べたんだっけ。

 ん?…あの時って気が付かなかったけど、それって間接キスだったのでは?

 横で美味しそうにおじやを食べている美波と目が合う。

 

「どうしたの?顔が真っ赤よ…また熱が上がったの?」

 食べていたスプーンを置いて僕のおでこに、美波が自分のおでこを近づけてきた。

 

 仄かに香るシャンプーの良い匂い。

 長く揃った睫毛に大きな瞳が近づいてきて…

 美波と超至近距離で見つめ合う。

 

 ヤバい…おでこに血液が集中してる気がする。

 美波が火傷するんじゃないかって言うくらい体温が上がってるのが判る。

 

「アキっ、大丈夫!?すごい熱よ」

「たっ、たぶん大丈夫…」

「たぶんって…病院に行く?」

 すごく不安そうな美波。

 美波に心配掛けちゃいけないな。

 

「そろそろお腹一杯かな。たぶんお腹一杯食べたから少し熱が出たのかも」

「そっ、そう?具合悪くなったら、すぐ言ってね」

 まだ少し不安そうな美波。少しでも安心させるため何か話題を変えよう。

 

「そういえばさ、美波がうちに泊まることはお母さんとか葉月ちゃんは知ってるの?」

 考えたら年頃の女の子がクラスメートとはいえ男の子の家に二人っきり。

 よく母親が許可したなって思う。

 

「知ってるわよ。ウチがアキの家に来た時、まだアキが寝てて玲さんに居ない間の看病頼まれたのよ」

「そうなんだ。面倒なこと頼んでごめんね」

「ちっとも面倒じゃないわ。むしろウチに頼んでくれてありがとうってお礼言いたいくらいよ」

 嬉しそうに言う美波。本当に面倒見が良いなぁ。

 

「それでね、玲さんがウチのお母さんに話をしてくれて、お母さんからも頑張れって」

「葉月ちゃんは?」

 休みの間、美波が居ないとすごく寂しがるんじゃないかな。

 

「お母さんが連休の間はお休みだから葉月の相手をしてくれるわ」

「そっか…なんか皆に迷惑掛けちゃってるな」

「ふふっ、悪いと思ってるなら早く治しなさい」

 そう言って僕の鼻をちょん、と突付く美波。

 

「だいぶアキには貸しが溜まってるのよ」

 そういえば膝枕とか料理を作るって約束してたっけ。

「ごめんなさい」

「そうね…膝枕してもらいながらアキの作った料理を食べさせてもらうってのも良いかも」

 混ぜすぎではっ!?

 早く約束を実行しないと、どんどん追加されそうだ。

 

「アキ、少し落ち着いた?」

「うん、美波のおかげでだいぶ落ち着いたよ。ありがとう」

「どういたしまして。じゃあウチお皿洗ったら、ちょっと出掛けてくるわね」

「ふぇ?何処行くの?」

「そんな寂しそうな顔しないでよ。アキの家に来ていきなり看病頼まれたから着替えとか持ってきてないのよ」

 そういえば、うちに来て姉さんに頼まれたって言ってたっけ。

「お皿洗ってくるね」

 そう言って美波は部屋を出て行った。

 

 約束はきちんと守るとして、ちゃんと美波にお礼しないとな。お礼と言うより美波に何かしてあげたい。

 僕に出来る事で美波が喜びそうなことって何だろう…と、考えていると美波が戻ってきた。

 

「ついでに買い物もしてくるわ。何か食べたい物とかある?」

「うーん…そうだ、前に美波が作ってくれたミックスジュースが飲みたいかな」

「判ったわ」

「大丈夫だと思うけど…タバスコは入れないでね」

「大丈夫よ。あ、アキの家の鍵、貸してもらえる?アキが寝てたら起こすの可哀相だし」

「うん」

 制服のズボンについているキーホルダーから家の鍵を外して美波に渡す。

 

「じゃあ、ちょっと行ってくるわね。ゲームとかしてないで大人しく寝てるのよ」

「は、はい。大人しくしてます」

 

 美波は軽く手を振ると部屋から出て行った。

 お腹も膨れたし病人らしく少し寝るかな。

 早く治して美波と遊びにも行きたいし……

 

 

 

 

 …………ん?携帯が鳴ってる気がする。

 

  PiPiPiPiPi……  PiPiPiPiPi……

 

 もぅ早く風邪治そうと思って寝てるのに…仕方ない。

 

「よぅ明久」

 OFFのボタンを押した。

 まったく人が病気だというのに電話してくるなんて…

 雄二の声を聞いて症状が悪化したらどうするんだ。

 

  PiPiPiPiPi……  PiPiPiPiPi……

 

 あのバカ、しつこいな。

 せっかくの休みなんだから僕に構ってないで霧島さんの相手してやれば良いのに…

 でも、このままだと携帯の電源が切れるまで鳴ってそうなので仕方なく電話を取った。

 

「明久、てめぇいきなり切るとはどういうことだ」

「僕は病人なんだよ。雄二の声を聞いて具合が悪くなったらどうするのさ」

「いまさらバカは病気に入らないだろ。付ける薬も無いし」

「風邪引いてるんだよっ」

「世界を代表するバカのお前が風邪を引いただと?」

「声を聞けば判るだろっ」

 本当に友達なら第一声で判るだろう。判らないということはやっぱりあいつは友達じゃない。

 

「そうか、それはすまなかったな。ところで島田は風邪の事、知ってるのか?」

「知ってるも何もさっきまでうちにお見舞いに来てくれてたよ」

 とりあえず看病してもらってたことは伏せておこう。何言われるか判らないし。

 

「さっきまで?ということは、もぅ帰ったのか?」

「うん」

「そうか、そうか。そしたら明久も寂しくて仕方ないよな?」

「そうでもないよ。ちゃんと寝て早く治したいし」

 早く治して美波にきちんとお礼したいし。

 

「遠慮するな。俺とお前の間じゃないか…って浮気じゃないぞ、翔子。勘違いするなっ」

 なんだ、やっぱり霧島さん居るじゃないか。

 さては雄二のヤツ、霧島さんと二人っきりで間が持たないから僕を巻き込もうとしてるな。

 

「あー、明久も一人で寂しいだろうからお見舞いに行ってやる。秀吉とムッツリーニにも声を掛けておく」

 雄二もムッツリーニも忙しいだろうから秀吉だけ来てくれれば良いんだけど。

「島田はさっき帰ったんなら今日は呼ぶのも悪いしな」

 後で、うちに来るんだけどね。

 

「じゃあ他にも来そうなヤツが居たら声を掛けてみる。大人しく家に居ろよ、じゃあな」

 それより大人しく寝かせる気は無いのか。

 一方的に用件だけ言って切っちゃった。

 

 皆が来たら大人しく寝てられないから今のうちに寝ておくかな。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。