バカとウチと恋心   作:mam

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バカとわたしとウチと誕生日プレゼント

 

 そういえば姫路さんのお父さんって以前うちに挨拶に来た時、スーツをきちっと着こなしていたっけ。

 ネクタイとかはどうなんだろう?

 

「お父さんってスーツ姿がビシッとしてたよね」

 あれ?姫路さんの顔が赤いうえに頬に手を当てて何か恥ずかしがってるような…

 

「明久君…お義父さんだなんて早すぎます…(ポッ)」

 なんか誤解されてるようだ。

 

「あの、姫路さん?」

「確かに父の誕生日に娘の最高の幸せをプレゼントするというのも良いかも…」

 

 霧島さんを彷彿とさせるリアクションだ。

 頭の良い人って、どこか思考がずれてる気がする。

 

「えっと姫路さん?ネクタイはどうかな?」

 無理やり本題に戻ることにする。

「あっ、はい。たしか母が今年はネクタイをプレゼントするって言ってました」

「そっか。同じ物をプレゼントしてもしょうがないね」

 

 ネクタイはたくさんあっても困らないと思うけど誕生日に何本も貰ってもね。

 そうすると後は実用品というと鞄とか靴、時計や携帯電話くらいかな。

 携帯電話は契約があるから僕らには無理だし、時計や鞄、靴は良い物は高いし…

 

「明久君は何を貰ったら嬉しいですか?」

 考え込んでいたら覗き込むようにして聞いてくる姫時さん。

「僕なら…」

 考え込んでしまう。ゲームは今は欲しい新作が出てるわけでもないし…うーん。

 

 そういえば姉さんが帰ってくる前は良かったなぁ。好きなだけゲームが出来て好きな物が買えて…

 あと今年に入ってから女装やら同性愛疑惑やら変な噂が増えた気がする。

 なんか泣きたくなってきた。

 

「あっ明久君っ!?どうしていきなり泣き出してるんですかっ!?」

「ごめんね、姫路さん。ちょっと悲しいことを考えちゃって…」

「また壮絶に明後日の方向のことを考えていたんですね…」

 はあっ、と姫路さんがため息をついていた。

 

 このままではいけない。せっかく姫路さんとお出かけしてるのに…

 気分を変えるためにも今年あった楽しいことを考えよう。

 

 楽しかったこと…嬉しかったこと…

 

 ……仄かにシャンプーの香りがして

 ……長く揃った睫毛に大きな瞳が近づいてきて

 ……柔らかくて温かい感触があって

 

 不意打ちでも誤解でも…たとえ清水さんを騙す為だったとしてもやっぱり嬉しかった。

 

「あっ明久君っ!?今度は顔が真っ赤にっ!?」

「ごめんね、姫路さん。ちょっと待っててもらってもいいかな」

「それは構いませんが…本当に明久君は何を考えているのでしょうか…」

 

 そういえば明日は休みだけど美波と葉月ちゃんと三人で出かけるんだった。寝坊しないようにしないとね。

 ん?寝坊?…ああ、そうだっ。

 

「姫路さん。目覚まし時計はどうかな?」

「目覚まし時計ですか。一応、お父さんも持ってますが…」

「うん。録音式の目覚まし時計にして姫路さんがお祝いのメッセージを吹き込むのはどうかな」

「なるほど、良い考えですね。携帯出来るのにすれば出張でも持っていけますね」

「じゃあ早速見に行こうか」

「そうですね」

 

 そして姫路さんは無事目覚まし時計を購入。

 普通に声の録音やパソコンと接続すれば音楽も録音できる物だ。

 

「プレゼント買えて良かったね」

「はいっ。明久君のおかげです。ありがとうございました」

 ぺこりとお辞儀してくれる姫路さん。

 

 姫路さんの買い物は無事終わったし、これで何の憂いもなく姫路さんと腕が組める。

 万が一、クラスの連中に見つかったとしても、どうせ明日は休みで会うこともないだろう。

 

「あ、あの姫路さん」

「なんですか、明久君?」

「よかったらだけど、さっきの…その、う…腕を…」

 

「アキっ、瑞希っ」

 

「あ、美波ちゃん」

「えっ、美波?」

 後ろを見ると攻撃色全開の美波の姿が…

 

「アキ、腕がどうしたのカシラ?」

「いえ、その…組んでもらえたら嬉しいかな、と…」

 咄嗟に嘘がつけない僕のバカッ。

 

「お望み通りにしてあげるわっ」

「みぎゃぁぁぁぁぁっ。みっ美波っ、腕を反対に曲げるのは組むとは言わないっ」

 本日四回目の美波との触れ合いだった。

 

「アキってば、こんな人の多いところで叫ぶなんて恥ずかしいわね」

 おもに美波のせいだと思うんだけど、言うと五回目になるのでやめておこう。

 

「美波ちゃんはどうしてここに?」

「ちょっと欲しい物が近所のスーパーに無くて、ここに買いに来たのよ」

 小さい紙袋を持ち上げて見せる美波。中身は何だろう?

 

「瑞希は欲しい物が買えたの?」

「はい。明久君のおかげで」

「よかったじゃない」

 

 うんうん。女の子二人が話してる姿って華やかでいいなぁ。

 と、考えながら二人を見ていると、美波の口元を見て…

 ふと、さっきの嬉しかったことを思い出してしまった。

 

「あっ、明久君っ!?」

「アキっ!?」

 たぶん耳まで真っ赤になってるんだろうな。

 

 僕が落ち着く頃にはショッピングモールに設置されている時計の針は午後6時を過ぎていた。

 

「じゃあ、ウチそろそろ帰るわね」

「僕たちも帰ろうか」

「そうですね」

 

「じゃあね、アキ、瑞希」

「美波ちゃん、さようなら」

「またね、美波」

 

 なんか美波が寂しそうな顔をしていたような…気のせいかな。

 

 

 姫路さんと一緒に帰る途中で

 

「明久君は連休中はどこか行くんですか?」

「うん。一応明日だけ出かける予定があるかな。姫路さんは?」

「わたしは親戚の結婚式があるので明日から連休中ずっとお出かけですね」

「ほぇ?確か明後日だけ学校あったと思うんだけど…」

「はい。一応、先生には事情を説明して休みを頂いてきました」

「いいなぁ。僕だったら多分休ませてもらえないな」

 常日頃の生活態度がモノを言うんだろうな。

 

「明日のお出かけってやっぱり、あの…」

「ん?なに?」

「いえ、やっぱりいいです…」

「?」

 

(明久君。明日はきっと美波ちゃんとお出かけなんですね…美波ちゃんもさっき楽しそうでしたし…)

 

姫路さんが何か呟いていたけど…やっぱり聞こえなかった。

 

 

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