バカとウチと恋心   作:mam

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バカとウチと看病part09

 

 

 …………あれ、いつの間に布団で寝てるんだろう。

 

 さっき何してたんだっけ……

 葉月ちゃんとDVD見てて…

 毛布を掛けてあげて…

 美波が帰ってきて…

 荷物を持たされて…

 …………

 

 前の時は僕が美波にメールを間違って送ったのがきっかけで

 結局清水さんを騙す為、と言う事で収まった……釈然とは、しなかったけど。

 

 今回は特にきっかけになるような事も理由も何一つ思いつかない。

 美波が僕に好意を持っているとしか考えられないんだけど……

 

 …………待て待て待て、何か他の可能性があるかもしれない。

 真実は一つじゃない可能性だってきっとある……あれ?

 

 たとえば……

 

== ケース1 『誰かに脅迫されている』

 

 学力強化合宿の前の僕みたいに、美波が誰かに脅迫を受けていて……

 

 でも僕と美波がキスする事によって誰が得をするんだろう?

 一番得をするのは…………僕しか居ないな。

 と言う事は脅迫犯は僕っ!?

 

== ケース2 『転んだ』

 

 たまたま美波が靴を脱ごうとしてバランスを崩し、正面に居る僕に……

 でも美波の運動神経だと有り得ないな。両手が塞がってた僕ならまだしも。

 むしろ美波なら回避しつつ僕に攻撃を加える事も出来るだろう。

 僕が何故攻撃を貰わなければいけないのかは判らないけど。

 

== ケース3 『僕の風邪が移った』

 

 昨日から、美波の言動が少しおかしくなってる時があったな。

 

 昨日からずっと……美波は……

 

 僕の傍に居てくれて……

 僕の面倒をみてくれて……

 僕の心配をしてくれて……

 僕を励ましてくれて……

 

 ……昨日からだけじゃないかもしれない。

 

 

 

 

 

 …………コンコン

 

「アキ?入るわよ」

 

 ……ガチャ

 

「寝てるのかな…」

 

 どっ、どっどどどうしよう!?

 美波の顔をまともに見れないし、僕の顔も見せられない。

 どんな顔をして良いのか判らないし、どんな顔をしているか見るのが怖い。

 

「そろそろ夕食だけど……御飯食べて、お薬飲むんでしょ?」

 

 美波が近づいてくる…どうしたらいいんだっ。

 美波の方に背を向けたまま考える。

 

「まだ熱があるのかな?」

 美波の手が僕のおでこに……触れる。

 

「わわっ」

「きゃっ!?あっ、アキっ。起きてるなら起きてるって言ってよねっ!!ビックリするじゃない」

「ごっ、ごめんなさい」

 布団を頭まで被り、美波に謝る。

 

「もぅ……葉月も待ってるんだから早く食べましょ」

「う、うん」

「アキ……具合悪いの?」

「ごめんね、今起きるよ」

 とりあえず夕飯は食べよう。

 美波や葉月ちゃんに心配かけたら悪いもんね。

 

「本当に大丈夫?無理しなくて良いのよ」

「ありがとう。大丈夫だよ」

 そう言って起き上がる。

 

「あっ、あの、美波?」

「どうしたの?」

「その…さっきのことなんだけど……」

 僕はきっと耳まで真っ赤になってる……風邪のせいじゃない。

 

「あっ、あれは……」

 美波も顔が真っ赤になってる。

 

「にっ、日本だと風邪は誰かに移した方が早く良くなるって言うんでしょっ!?」

「う、うん……でもそれは…」

「だっ、だから……その……キスしたらウチに移ってアキが早く治るかなって……」

「あ、ありがとう……」

「そっ、それにウチは……アキがくれるものなら何でも嬉しいの」(とっ、とくに……キスとかしてくれると)

 後ろの方が声が小さすぎて良く聞こえないな。

 

「あとっ、あとねっ……」

「うん」

「アキの方はお帰りとありがとうの意味の挨拶で」

「うん」

「ウチの方は、ただいまとこれからもよろしくの意味の挨拶よ」

「そっ、そうなの?」

「そうよ。ウチも素直になったんだからアキも素直になりなさい」

 僕の胸を突付きながら言う美波。

 前にも、こんな風に言われたな……一番がどうとかだったっけ。

 

「アキが、その……挨拶を変えたいって言うなら……ウチは喜んで変えるわっ」

「えぇっ!?いやいやいやいや、普通に言葉で良いです……やっぱり恥ずかしいよ」

「そっ、そう?それより葉月が待ってるわ。早く食べましょ?」

「そうだね、葉月ちゃん待たせちゃ悪いからね」

 

 前は騙す為で、今回は迷信。

 そんな理由で僕と二回もキスしちゃって……美波は本当にそれで良かったのだろうか。

 

 

「お兄ちゃんとお姉ちゃん、遅いですっ」

 ぷぅっと頬を膨らませて可愛く怒る葉月ちゃん。

 

「ごめんね、葉月ちゃん」

「葉月、ごめんね」

 二人揃って葉月ちゃんに謝る。

 

「お腹ペコペコですっ。早く食べたいです」

「ちょっと待っててね。すぐ温めてくるから」

 キッチンの方へ向かう美波。

 

「葉月ちゃんごめんね。僕のせいで」

「お兄ちゃん、風邪の具合はどうですか?」

 こんな時でも僕の心配をしてくれるのか。葉月ちゃんの優しさが嬉しい。

 

「ありがとう、だいぶ良くなってきたよ。明日には治ると思うよ」

「良かったです」

 ぱぁっと笑顔になる葉月ちゃん。

 

「ありがとう、葉月ちゃん」

 頭を撫でてあげると

「んにゅ~」

 目を細めて喜んでくれた。

 風邪が治ったら葉月ちゃんにもお礼しないとね。

 

「お待たせ」

 美波が鍋を両手で持って戻ってきた。

 

「今日はアイントプフにしてみたの」

「アイントプフ?」

「そうよ。日本で言えば…そうね、具の多い味噌汁みたいな感じ?」

「へぇ。じゃあ美波の作ってくれた家庭料理ってこと?」

「そうなるのかな?今日はソーセージの変わりに鶏肉を使ってみたけど」

「美味しそうだね、早く食べようよ」

 

「「「いただきまーす」」」

 

「うん、美味しい」

「ありがと」

「いつもお姉ちゃんが作るのより少し味が薄いけど美味しいです」

「そうなんだ」

「普段だとソーセージを使うから、もう少し濃い目に味付けをするんだけど」

「今日は鶏肉だね…ささみかな」

「そうよ。味付けが濃いとアキが食べにくいかなって……」

「ありがとう」

 作ってくれる料理にまで僕のためにそこまで気を使ってくれるなんて……

 

「この料理も美味しいけど、美波が普段作るのも食べてみたいな」

「そう?言ってくれれば、いつでも作りに来るわよ」

「その時はよろしくね」

「葉月もお手伝いに来ますっ」

「よろしくね」

 葉月ちゃんもスプーンを上げて手伝いを申し出てくれる。

 

「「「ごちそうさまでした」」」

 

「アキ、お風呂どうするの?」

 テーブルを片付けながら美波が訊ねてきた。

 

「結構食べたから、もうちょっとしてから入ろうかな」

 今日美波が作ってくれたのは食べた事の無い料理だったから食べ過ぎてしまった。

 少し腹ごなししてからの方が良いかな。

 

「じゃあ、お兄ちゃん?葉月と一緒に入るですっ」

 僕の手を引っ張る葉月ちゃん。

 えぇっ!?それって確か、前に断ってなかったっけっ!?

 

 …………あの時は葉月ちゃんに一緒に入るって論破されたんだっけ。

 恐る恐る美波の方を見てみる。

 

 まだテーブルの上を片付けてる最中だったらしく

 右手にスプーン、左手にフォークを持ってワナワナ震えている。

 ヤバい。あれを投げ付けられたら今の僕だと、かわせない。

 

 …………あれ?

 スプーンとフォークの頭が取れたよ!?

 美波の握力で握り潰されたのかな。

 まだ超能力で捻じ切られたと言う方が信じられるんだけど……

 

「ア~~キ~~~、最後の晩餐は楽しんで頂けたカシラ?」

 あと八十年くらいは最後の晩餐はしたくないですっ!?

 

「お姉ちゃんも一緒に三人で入るですっ」

 両手を上げて提案する葉月ちゃん。

 

「なっなっ、ななななに言ってんのよっ、葉月っ!?」

 葉月ちゃんの言葉でいきなり真っ赤になる美波。

 

 ずっと美波を見ていた僕は葉月ちゃんの言葉でお風呂場を想像してしまった。

 

 ブババババッ……僕程度の想像力でこんなに鼻血が出るのなら

 あれだけ大量出血しているムッツリーニはきっとブルーレイ並の画質なんだろう。

 

「アキのバカッ!!何想像してるのよーーーーっ!?」

 

 さっきの美味しかったアイントプフの入ってた鍋が飛んできた。

 鉄鍋だったから割れなかったけど、たぶん僕の頭が割れたかもしれない。

 

 

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