僕とみんなと如月ハイランドpart01
…………ん?
……朝か。
…………身体が痛い。
全身の骨を砕かれたような気がしてたけど……一応動くから気のせいかな。
時間は……6時40分!?
そう言えば雄二たちの分までお昼御飯作るんだったっけ。
すぐ起きなきゃ。
そしてキッチンへ行くと……
「おはよう、アキ」
サンドイッチを紙パックに詰めながら笑顔で挨拶してくれる美波。
「美波、おはよう。ごめんね、すぐ手伝うから」
「まだ時間はあるから大丈夫よ。それより顔洗って来たら?」
「うん、すぐ行ってくるね」
出来るだけ急がないと。
僕がキッチンへ戻るとサンドイッチやおかずはほとんど出来ていて
紙パックなどに詰めるだけの状態だった。
「じゃあ、アキ。詰めるの手伝ってくれる?」
「う、うん」
昨日の夜に仕込みをやっていたとはいえ、結局ほとんど美波に作ってもらっちゃったな。
「出来たっと」
「美波、お疲れ様」
「ありがと……じゃあ、朝御飯にしましょ」
「うん」
今回は本当に僕、役に立ってないな。
お弁当用に作ったサンドイッチとおかずの残りを食べながら
「でも、なんで如月ハイランドなんだろう」
「そうね。ウチらは、この間行ったばかりだし」
「うん、それもあるけど確か雄二と霧島さんってプレミアムチケットでちょっとした有名人なんだけど」
「そう言えば、そうね」
雄二と霧島さんは以前プレミアムチケットで如月グループから
結婚するまで目を付けられているはずなんだけど……
「ウチは何でも良いわ。アキとお出掛け出来るんだし」
「そうだね。雄二たちは雄二たちで僕たちは僕たちで楽しめば良いか」
「そうよ。絶対翔子には負けないわっ。アキっ、頑張るわよっ」
今日の美波は気合の入り方が違う。
そんなにお弁当対決で負けたくないのだろうか。
いつの間に対決する事になったのか判らないけど。
「じゃあ、後片付けして出掛けようか」
「そうね」
たぶん後片付けしてたら8時をちょっと過ぎるくらいだろう。
時間的には、ちょうど良いかな。
----如月ハイランド エントランスゲート前
思ってたより電車とバスの接続が良かったのか10時くらいには着いた。
さすがに休みというだけあって、かなりの人が来ている。
「あれ、雄二たちまだ来てないね」
「そうね。まだ時間もあるし待ちましょ」
「うん」
それから5分ほど待ってると……
「よぅ、ずいぶん早いな。明久、島田」
後ろを振り返ると雄二と霧島さん。
「遅いよ、雄二……」
二人お揃いのシャツにジャケット、同じ色のズボンにスカートだった。
「明久、お前らは制服だけだから良いな……」
雄二が遠い目をして呟いた。
「ゆっ、雄二と霧島さんもお揃いの服で似合ってるじゃないか」
「お前が望まないなら女子の制服で島田とペアルックをさせてやる」
「いらないよっ!?」
前みたいに女装癖で脅迫されるのは嫌だ。
それ以前に望まないんだから、そんな事しないで欲しい。
「しっ、仕方ないわね。アキも女子の制服着るしかないわねっ」
「美波っ!?僕、望んでないんだけどっ!?」
「大丈夫よ。アキなら、きっと可愛いわっ」
そういう問題じゃない。
「それなら美波が男子の制服来た方が良いんじゃ……」
美波の胸を見ながら言う……あ、僕、死んだかも。
「どこ見て言ってんのよーーっ!?」
美波に両目を突かれて、あごに衝撃が……
視力が回復し、立てるようになるまでしばらくかかった。
「ところで雄二?」
「なんだ?」
「どうして如月ハイランドにしたの?」
「いろいろあってな……もう少し待ってろ」
そういえば僕と美波、雄二と霧島さんが揃ったのに入場しようとしないな。
「……吉井、これ」
そう言って葉書を一枚、僕に見せてくれる霧島さん。
「あっ、バカ、翔子、いつの間にっ!?」
なんか雄二が慌ててるけど、ほっとこう。
どれどれ……
「なになに?」
美波も興味津々といった風に覗き込む。
葉書は表が雄二と霧島さんの連名で届いており、裏に書かれている内容はと言うと……
『【如月ハイランドウェディング体験】プレゼントクイズ高校生大会』
の文字が上に大きく書かれており、細かい内容が下に書かれている。
内容を見るまでも無く、物凄くヤバい予感しかしない。
「ねぇ、雄二?これ、いつ送られてきたのさ?」
「先週だ。隠していたんだが昨日翔子に見つかっちまってな」
「僕には全然関係ないと思うけど……一応聞いとくけど優勝するとどうなるの?」
「安心しろ。お前と島田がもっと仲良くなれるぞ……一生な」
あれ?美波のリボンがピコピコ動いてる気がする。
「これって、もちろん雄二と霧島さんだけの御指名だよね?」
「安心しろ。俺たちは優遇されてるらしくてな。俺の友人なら何組でも参加出来るそうだ」
「僕たち、いつ友達になったのさ?君、どこのバカ?」
間違いない……このバカ、僕も人生の墓場に引きずり込む気だ。
「いい加減に観念したらどうだ?優勝候補」
「ごめん。僕、なんか風邪とバカの調子が悪いみたいだからっ」
この際、周りの目なんか気にしてられないっ。
逃げようとした時……グッと襟首をつかまれた。
「ねぇ、アキ?もちろん優勝するために頑張るわよね?」
「あははっ、やだなぁ、美波。目が物凄く怖いよ?」
美波の大きな吊り目が、いつもより吊り上っている。
「アキがウチと幸せになりたいって言うなら、ウチも頑張っても良いけどっ!?」
「そっ、そうだね。頑張ろうね……でも雄二たちが出るなら優勝は難しいんじゃないかな?」
「俺と翔子は、この大会には出ない……と言うか、出れない」
「なんで?」
「すでに結婚を前提に付き合ってる事になってるらしくてな」
「じゃあ、なんで雄二たちの所に葉書が来たのさ?」
「その葉書の目的は俺たちじゃない。お前らだ」
「僕と美波?」
「ああ……文月学園にプレミアムチケットが来た経緯は覚えているか?」
「なんとなく……」
たしか企業の宣伝に使うから話題性のある学校の生徒が良いとか何とか……
「葉書には書いてないけどな。優勝したら、おそらくプレミアムチケットと同じだ」
「ウェディング体験から本当の結婚まで?」
「ああ。要するに一組より二組成功した方が宣伝効果は何倍にもなるからな」
僕たちを参加させるために雄二の所に葉書が行ったのは判った。
「でも雄二たちがここに来る必要ってあるの?」
それなら雄二は葉書を僕たちに渡して、ここまで来させれば良いだけの気がする。
まぁ僕が逃げ出すだろうけど。
「俺たちの時はどっかのバカップルのせいで途中で終わってるからな」
「そういえばそうだったね」
「お前らのついでにやり直ししてくれるんだそうだ」
「それって僕らが優勝するって決め付けてない?」
霧島さんが嬉しそうに、ここに来た理由が判った。
そして雄二が暗い顔をして来た理由も……ペアルックのせいじゃなかったんだ。
「俺たちの時と違って今日来るカップルは何組でも登録出来るみたいだから出来レースは無理だけどな」
「じゃあ、僕たちの優勝も無理なんじゃ……」
「だから、ささやかな保険をかけておいた」
「保険?」
僕が頭に『?』を何個か並べていると……
「代表、おまたせ~」
「…………待たせた」
「代表、遅くなってすみません」
「遅くなったのじゃ」
ムッツリーニと工藤さんと秀吉と木下さん!?
「この葉書一枚で俺の友人なら何人でも一日フリーパスがもらえるみたいなんでな」
「そうなんだ」
「ああ。だったら、たくさん呼ばない手はないだろ?」
「それはそうだけど……じゃあ、僕と美波じゃなくても良いのでは……」
「俺の読みでは、お前と島田以外で優勝の可能性は無いんだよ」
「そうなの?」
「出場すれば判る」
まぁ雄二がそこまで言うなら……って、やっぱり出ないとダメなの?
美波が花嫁に憧れるのは判るけど、これは如月グループの陰謀があるからなぁ。
僕と本当に結婚する事になっちゃったら美波はそれで良いんだろうか。
とりあえず雄二の所に来た葉書一枚で
僕たち全員分の一日フリーパスをもらい、入場した。
もちろん全員イベントに参加するのが前提だったけど。
「なんじゃ、今日は一日ただで遊べるというから来てみれば……」
「…………(コクコク)」
「ははっ、悪いな。秀吉、ムッツリーニ。そのかわり昼飯は俺と明久で用意しといたから」
それで僕たちにも四人分用意させたのか……素直にみんな来るって言ってくれれば良いのに。
「じゃあ、イベントは午後1時からだから12時ちょうどに昼飯にしよう」
「場所は?」
「そうだな……時間が判り易い、あの時計台の下辺りでどうだ?」
結局お昼御飯食べるまで自由行動となった。一時間くらいしかないけど。
「美波、どうする?」
「この前来た時、アキすぐ気を失ってたからジェットコースターにしない?」
すぐ気を失ったのは美波のせいだった気がする。
「何だ、明久。ジェットコースター苦手なのか」
信じられないといった顔で僕を見る雄二。
「別に苦手って訳でもないけど……ちょっと体調が悪かっただけだよ」
「……雄二、わたしたちもジェットコースターにしよう」
「ほぅ、翔子はああいう乗り物が好きなのか?」
「……ううん、雄二にしがみつければいいだけ」
「ばっ、バカっ。道の真ん中で、いきなりしがみついてくるなっ」
霧島さんも雄二なんか好きになったばかりに気の毒に……
「アキっ」
「なっ、なに?」
なんか美波のやる気がすごい。
特にウェディング体験の話を聞いた時はトレードマークのポニーテールを結わえているリボンが
ピコピコ動いてるかと錯覚したほどだった。
「ウチらも負けてられないわっ」
「うっ、うん」
ガシッ……見事に右ひじ関節に技が決まっている。
「あっ、あの、美波?」
「アキっ、今日はウチらずっと腕を組んでいくわよっ」
「あっ、あの……関節が…」
「御飯もあーんして食べてもらうわっ。もちろん、アキもウチに食べさせてよねっ」
「そっ、そろそろ、おかしな方向に……」
「さあっ、行くわよ、アキっ。優勝以外考えちゃダメよっ」
「ああっ、関節から先の手の感覚がっ!!」
「馬の尻尾に念仏だな」
「……?」
「言っても聞いてくれない」
確かに雄二の言う通りなんだけど、それは雄二たちも一緒なのでは?