バカとウチと恋心   作:mam

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僕とみんなと如月ハイランドpart03

 

 

「さて午後からイベントだ。お前ら頑張れよ」

 雄二がみんなを励ましている。なんか試召戦争みたいだな。

 

「ボクたちも頑張ろうね」

「…………(コクコク)」

「わしは姉上と出場せねばならんのか……」

「それはアタシの台詞よ」

「ところで雄二?大会って何をするのさ?」

 僕の質問に、何をいまさらと言う顔をする雄二。

 

「出れば判る」

 こいつ、説明するのが面倒くさくなったな。

 

「雄二よ、知っておれば対策も打てるかもしれんぞ?」

 秀吉の言う通りだ。

 

「ほら、そろそろ始まるぞ。遅刻で失格なんて洒落にならんだろうが」

 雄二が無理矢理移動し始めた。

 

 僕と美波、ムッツリーニと工藤さん、秀吉と木下さんという組み合わせ。

 そして今回はウェディング体験のやり直しに来た霧島さんと役立たずの雄二。

 

「雄二はどんな種目があるか判ってるんでしょ?」

「葉書にある程度は書いてあったからな」

「じゃあ、教えてよ」

「ダメだ……知ったら、たぶんお前が不幸になる」

 訳の判らない事を……どうせ後でその種目をやるんだから判る事だろうに。

 

「じゃあ、僕たち途中で負けても良いの?」

「アキっ!?ウチにウェディングドレス着させてくれるんじゃなかったのっ!?」

「みっ、美波。それは誤解だと右足が踏み抜かれたように痛いぃぃぃっ」

「アキのバカッ!」

 知らなくても、こうなるから教えてくれても良いのに……

 

 

 小洒落たレストランが見えてきた。

 確か雄二たちのウェディング体験で使われていた建物だ。

 入り口の横には『【如月ハイランドウェディング体験】プレゼントクイズ高校生大会会場』と

 大きく書かれた看板が立っていた。

 中に入ると前回同様にクイズ会場みたいな造りになっている。今回は料理は無いみたいだけど。

 スタッフらしき人や僕たち同様、大会に参加するカップルが何組も居た。

 

「わぁ、こんなに居るんだ」

 大きな目を更に大きくして驚いている美波。

 ざっと見るだけでも20組以上居る。

 

「どうやら俺たちが最後だったみたいだな」

 雄二が言ってる間に僕たちが入ってきたドアが閉められた。

 そして司会者らしき人がステージの上に出てきて

 

「皆様、本日は当如月ハイランドへ足をお運び頂きまして誠に有難う御座います」

「ではただいまより【如月ハイランドウェディング体験】プレゼントクイズ高校生大会を始めさせて頂きます」

 

 そしてステージ上には僕たちの名前も入っている対戦表が出てきた。

 ふむふむ……A、B、Cの三つのグループに分かれていて、それぞれ12組ずつか。

 Aグループは……あれ?僕と美波の名前が一番上にあるよ?

 Bグループにはムッツリーニと工藤さん、Cグループには秀吉と木下さんか。

 

「それでは簡単にルールの説明をさせて頂きます」

「一回戦は二人二脚です」

 あれ?普通は二人三脚じゃないの?

 

「この競技は表の特設会場で行って頂きますが、お姫様抱っこで100メートルを走って頂きます」

「なお走者は男子、女子のどちらでも結構です」

「抱っこされているお姫様が地面に足を付いても負けとなりますのでご注意願います」

「この競技の一位のペアが二回戦進出となります」

「二回戦、三回戦は、この建物の中で行いますが、そちらは競技の前に御説明させて頂きます」

「それぞれのグループの三回戦を勝ったペア三組がプレゼントクイズ出場となります」

「プレゼントクイズで勝ったペア一組が優勝となります」

「大まかな説明は以上です」

「では表の特設会場の方へ移動お願い致します」

 

 さっき入ってきたドアが開いて腕に腕章を付けている係員が誘導を始めていた。

 

「ほれ、明久。とっとと行かないとお前らは第一組だろうが」

「あ、うん。美波行こうか」

「うん」

 

 

----特設会場

 

 僕と美波は名前が一番上にあったので第一組だった。

 一回の競技でカップルは三組ずつ走るようだ。

 

「頑張ろうね、真一君」

「もちろんさ、真美」

 仲睦まじいカップルと

 

「これなら俺たちの楽勝じゃね?」

「ソーダね、リュージ」

 揃って茶髪で顔にまでピアスをしてるような連中だった。

 まだこんな人たちが居るんだなぁ……って、雄二たちの邪魔をした連中に似てるような?

 

「オラッ、何見てんだっ、チビっ」

 この手のバカは関わらないのが一番だ。

 

「ビビッてんじゃねぇよ」

「リュージの迫力にビビッてるんだからイジメちゃかわいそーよ」

「違ぇねぇな」

 こんなのでも高校生なのが信じられない。

 

「では位置についてください」

 おっ、そろそろスタートかな。

 僕たちを含めて三組とも男子が走者みたいだ……普通はそうだよね。

 

「アキっ、頑張ろうねっ」

「うん、絶対美波にウェディングドレスを着させてあげるからねっ」

「うんっ」

 普通に駆けっこなら足には自信がある。

 美波を抱っこしてるとは言え、美波は軽いし、昨日姉さんの部屋まで練習もしたし……偶然だけど。

 

 ……パァーンッ

 

 ピストルの合図と共に軽快にスタートを切る。

 すると五秒も経たないうちに

 

「きゃぁっ」

 後ろで叫び声がした。振り返ってみると……

 

 真一君と真美さんが地面に転んでいた。

 

「ワリーワリー、スタート失敗しちまった」

「ゴメンねー、キンチョーしてたからぁー」

「まぁどーせ俺たちが勝つから一緒だけどなー」

「ソーね、運が無い方が悪いモンね」

 

 係員の人たちも故意に当たっていったのかスタートに失敗したのか判断が付かないみたいだ。

 人を見た目で判断しちゃいけないけど……

 

「アキっ」

「う、うん」

 美波に促されて前を向いた時に……

 

「きゃぁっ」

 美波のポニーテールを結わえているリボンが茶髪の女につかまれていた。

 

「ワリーワリー、またバランス崩しそうでよー」

「チョットくらい、つかまってもイイよね」

「ソーダよなー、助け合いってーの?大事じゃね?」

「ソーソー、どーせアンタら、アタシたちに勝てるワケナインだし」

 いい加減、顔も見たくないな、と思っていると……

 

「ナントカ言ったらどうナノヨー」

「きゃぁっ」

 

 美波のリボンが外れて、そのリボンを茶髪女が持ち上げていた。

 

 知らない人の手の中にある美波の黄色いリボンを見た時…………僕の中で、何かがトんだ。

 

 美波を抱えてる腕を少し身体に引き寄せて重心をなるべく下側にし

 身体の向きを変える振りをして軽く回すように足を払う。

 足の甲で相手のひざの裏を押し込むようにしてバランスを崩させる。

 

 ひざがうまく地面をついて倒れなかったか。

 でも前蹴りでもすれば簡単に後ろに倒れるだろう。

 先にあっちが手を上げたんだから僕たちの反則には、ならないはずだ。

 こんな奴等の顔を見ているのも飽き飽きだ……と思って重心を少し後ろに掛けた時

 

「明久ぁっ!!」

 

 まだスタート地点からそんなに離れていないから雄二の声も良く届くな。

 

「お前それで良いのかっ!?」

 

 それでも何も、先に手を上げてきた奴等が転んで終わりじゃないか……

 と、考えながら、ふと美波を見た。

 

「アキ……」

 僕と目が合うと小さく呟く美波……身体は小さく震えて、怯えるような目で僕を見ている。

 あれ?さっきまでのすごく嬉しそうな笑顔は……

 

 

 僕はバカだっ!!

 何の為に美波と一緒にここに居るんだっ!?

 

 

 美波を抱えている両手に少し力を入れて……

 僕は美波を見ながら……

 

「ごめん、美波……本当にごめんね」

「うん」

 美波は昨日みたいに僕の首に両手を回してくる。

 これは、たぶん僕が大きく動いても落ちないようにするためだろう。

 ……と、思わないと、また顔が真っ赤になりそうだ。

 

 さてと……僕の大切な人の物は返してもらわなきゃ。

 相手の男がまだ地面に膝を付けているから、ちょうどいい高さに……

 

 …………カプッ

 

 僕が美波のリボンに食い付くと

 

「きゃぁっ」

 茶髪女がビックリして手を離してくれた。

 そしてその反動で茶髪男の方が耐え切れずに転んだ。

 

 同じ悲鳴でも美波と全然可愛さが違うな、と思いながら

 リボンを口にくわえたまま僕は一直線に駆け出した。

 

 

 

 ……スタート地点に向かって。

 

 僕たちが走ってくるのをビックリして見ていた係員の人の前に行き

 

「ふぁふぉふひはふぇんふぁ……」

「アキ、それじゃ通じないわよ……ウチが代わりに言ってあげる」

「…………(コクコク)」

 ムッツリーニの真似じゃないですよ?

 

「もう一度全員スタートからやり直しさせてくれませんか?」

「…………(コクコク)」

 良かった……美波には僕が言いたかった事がちゃんと通じていたんだ。

 そして美波が僕のほうを向いて……

 

「愛してるよ、美波……で、良いのよね?」

 ものすごい恥ずかしい言葉が勝手に通じていたみたいだ。

 

「アキっ、頷きなさいよっ!!」

 美波に強引に頭をガクガク頷かされた。

 

 

 

 さすがに第一組目から仕切り直しは大変だったと思うけど

 いきなりペア二組転んでのスタートも縁起が悪いと思ったのか

 やり直しさせてくれた。

 

 

 結果は……僕と美波が一位、真一君と真美さんが二位

 茶髪カップルは途中で男が転んで結局失格となった。

 

 

 

 みんなのところに戻り……

 

「一時はどうなるかと冷や冷やしたぞい」

「吉井君、格好良かったよ」

「…………男らしい」

「島田さん大丈夫?」

「……美波、怪我はない?」

 みんな心配してくれてたのか…申し訳ない事しちゃったな。

 

「雄二、ありがとう」

「貸しイチ、だからな」

 雄二の一言がなかったら、取り返しの付かない事になっていた気がする。

 そう言えば、美波にちゃんと謝らないと……

 

「美波」

「なぁに、アキ?」

 ポニーテールを結わえ直している最中だった。

 

「あの……さっきはごめん。僕、ついカッとなっちゃって……怖い思いさせて本当にごめんなさい」

「いいのよ……それにアキが怒ったのってウチのためでしょ?」

「う、うん……リボンを取られて美波が傷付けられた気がして」

「バカね。リボンも、こうして替えを持ってるから大丈夫よ」

 そっか、リボンを交換してたのか。そりゃそうだよね、僕がさっきまでくわえてたんだし。

 あ、それなら……

 

「さっきのリボン、傷付いちゃったよね?」

「少しね。でも使えない事もないと思うわ」

「僕、新しいの買ってくるよ」

「大丈夫よ。たくさん持ってるし」

「美波のトレードマークなんだから、やっぱり悪いよ」

「アキがそこまで言うなら、何かお願い聞いてもらおうかな」

「お願い?」

「うん……じゃあ、アキがウチにウェディングドレスを着させてくれて……」

 思いっきり、目一杯、最大限、これ以上ないくらい頑張ります。

 

「その時、アキがウチの事をどう想ってるか聞かせてくれる?」

「ほぇ?」

 予想外のお願いが来たので変な返事しか出なかった。

 

「ふふっ、約束よ。頑張ってウチにウェディングドレス着させてね」

「うんっ。頑張るよ」

 約束って……美波にウェディングドレスを着させてあげて、その感想を言えば良いのかな?

 それなら簡単だ。きっと綺麗に決まってる。

 

「別に今日じゃなくても良いわ……ずっと待ってるから……約束よ?」

 何かを期待するような表情の美波。

 

「う、うん。判ったよ」

 今日じゃなくても良いって……

 この大会の二回目とか三回目も出場するつもりなんだろうか。

 

 

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