バカとウチと恋心   作:mam

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僕とみんなと如月ハイランドpart04

 

 僕が美波と約束をしている間にも競技は進んでいた。

 そしてスタート地点で大きな赤い花が咲いた。

 

 …………ムッツリーニだった。

 そして工藤さんの悲鳴と係員の大声が聞こえてくる。

 

「しまったっ!翔子の事で手一杯で指示を出せなかったっ」

 そんな事を言っている雄二の方を見ると……

 

 

 …………上半身裸で地面にうつ伏せに寝っころがり、霧島さんにマウントポジションを取られている。

 どういう状況があったら、みんなが居る中でそんな状態になれるんだろう?

 

「木下姉妹っ。お前らは秀吉がお姫様だっ」

 そんな格好で指示を出しても誰も聞いてくれないと思うよ、雄二?

 

「雄二よ!今お主、木下姉『妹』と言わんかったかっ!?」

「坂本君っ!?アタシじゃなくて、なんで秀吉がお姫様なのよっ!?」

 それぞれの不満を口にする木下姉妹。

 でもカップルだらけの思わず赤面する大会の中で

 一際、異彩を放って恥ずかしい格好の雄二の言う事が正しいと言わざるを得ない。

 

「体力は秀吉より木下のほうがあるだろ?」

 こいつはこんな状況でも冷静なんだな……上半身裸のくせに。

 

「「たしかに……そうね(じゃな)」」

 渋々と言った感じで指示を聞く木下姉妹。

 そしてスタート地点の方へ移動していった。

 

 

 しばらくすると…………

 輸血パックを持った工藤さんとフラフラになりながら歩いてくるムッツリーニ。

 

「ゴメンね。負けちゃった…」

「…………申し訳ない」

 珍しく、かなりしょんぼりしている工藤さんとムッツリーニ。

 

「気にするな。しょせん遊びの大会だ」

 その遊びの大会で恥ずかしい格好をしている雄二は少しはしゃぎすぎだと思う。

 

「うん。ボクたちの分まで頑張ってね。美波ちゃん、吉井君」

「…………(コクコク)」

 グッと親指を立てるムッツリーニ。

 輸血パックと繋がっているムッツリーニがそんな事をしていると

 傍から見ると僕たちが死に際の友人の遺言を聞いてるように見えるかもしれない。

 

「もちろんよっ!愛子たちの分まで幸せになるわっ!!」

 美波の台詞で、ムッツリーニには明日が来ないような気がした。

 

 

 木下姉妹はぎりぎりで二位になってしまい

 結局一回戦を突破したのは僕と美波だけだった。

 

「みんな、ごめんね」

「面目ないのじゃ」

 しょんぼりしている秀吉と木下さん。

 でも女子なのに女子を抱えて男子の中で僅差の二位だったんだからすごいと思うけど……

 

「途中で秀吉をほおり投げれば良かったかな」

「あっ、姉上っ!?」

 そんな事をしたら失格だけど、秀吉は僕が責任もって拾いますよ?

 

 

 

 またクイズ大会の会場の方へ移動する。

 

「ではこれより二回戦を始めたいと思います」

「二回戦は……パフェの早食いで競って頂きます」

「ただし、自分で食べてはいけません」

「交互に食べさせて頂いても構いませんし、お一人がずっと食べさせてもらっても構いません」

「この競技は二組ずつ行い、制限時間内に早く食べ終わった方が三回戦へ進みます」

 

 

「どうせ、お前らの事だ。毎食、あーんをしてたんだろ?」

 ニヤニヤしながら聞いてくる雄二。

 くっ……こいつ、うちの中に隠しカメラでも仕掛けていたのかっ!?

 ムッツリーニも来てたし、可能性はあるな。

 

「……雄二とわたしもみんなにそう思われるように頑張らないと」

 雄二にくっ付いてくる霧島さん。

「ばっ、バカ、翔子っ、離れろっ。そして返せっ」

 霧島さんを引き剥がそうとする雄二。

 ……ん?雄二の格好が、なんか変だ。

 今度は、ちゃんと上着は着てるんだけど…………ズボンをはいていない。

 ねぇ、雄二?君が言ってた大の親友って嘘だよね?

 

 

「では早速競技を始めたいと思います」

「Aグループ、吉井君・島田さんペアと近藤君・大竹さんペア、前にどうぞ」

 

 

「ほれ、明久。呼ばれたぞ」

「うん、美波頑張ろうね」

「もちろんよっ。アキに何があっても絶対優勝するわっ」

 美波のやる気がすごい。

 きっと僕に何があっても手を抜いてくれないんだろうな……

 

 

 ステージに上がると……

 スポットライトが眩しくて、目の前にたくさんの人がいる。

 うわぁ、こんなたくさんの人の前で、あーんをしないといけないのか。

 

 ペアごとにテーブルがあり、その上には普通の大きさのパフェが一つとスプーンも一つ。

 これ、交互に食べたら間接キスになるのではっ!?

 

「最初はアキがずっと食べてね」

「うん」

 まぁ一人が食べ続けた方が早いよね。

 いくら美波が甘い物が好きだとは言え、僕が食べた方が早いだろう。

 

「最後の一口はウチが食べるわっ!これで文句ないわよねっ!?」

 状況次第では全然問題ないと思うけど…なんで最後の一口だけ?

 

「ではスタートっ!!」

 

 司会者の号令と共にスプーンに手を伸ばす美波。

 さっと上のクリームを掬って僕の口へ……

 

 舌の上に広がるクリームで…………舌が破壊されたかと思うくらいの衝撃っ!?

 

「かっ、かぁらぁぁぁぁぁぁぁぁっ」

 椅子から転げ落ちて、のたうちまわる僕。

 ヤバい、目から火花が出て息が止まるんじゃないかと思うくらい辛いっ!?

 断言出来る……これは食べ物の形をした兵器だ。

 まさか姫路さんが作ってるんじゃ……

 

 対戦相手の方も一口、口に入れた瞬間に動きが止まっていた……呼吸しているんだろうか?

 これ食べきらなくても生きてるだけで勝てるんじゃないだろうか?

 

「ギネス公認、世界最強の唐辛子、トリニダード・スコーピオン・ブッチ・テイラーを使用しています」

 これは本当にヤバい……今まで美波の激辛料理で少しは辛い物に耐性が出来たかと思っていたけど

 破壊力で言えば姫路さんの料理並みだ。

 

「適量の筈なので多分気分が悪くなる程度で死なないと思いますが……無理はしない方が良いですよ?」

 そんな危険な物を使わないで欲しい。

 そもそも適量って誰が決めたんだっ!?

 

「なお、弊社のスタッフが食べた所、顔色一つ変えずに食べた人間がおりますが……」

 思い当たる人間が一人いる……きっとカタコトの日本語を話す人だろう。

 あんな規格外の人間が、この兵器の使用許可を出したのだろうか。

 

「アキ?美味しい?」

 美波が笑顔で聞いてくる。

 今の僕と対戦相手の近藤君が美味しいと思えるリアクションは絶対取っていない。

 しかも近藤君は、まだピクリとも動かない……本当に生きているんだろうか?

 

「どんどん行って良い?」

「ちょっ、ちょっと待って、美波っ!?」

「アキがこんなに嫌がるなんて…今度使ってみようかな?」

 美波、それだけはやめてっ!!

 姫路さんと姉さんに続いて美波の料理まで安心して食べられなくなったら……

 また塩と砂糖と水だけの生活に戻りたくなっちゃうじゃないかっ。

 

「アキ行くわよ?覚悟しなさい」

 なんでパフェを食べるのに覚悟がいるのっ!?

 

 そんな僕の心の叫びも美波には届かず

 情け容赦なく次々とスプーンがパフェを掬い、僕の口に運ばれた。

 二口目からは衝撃が来るのが判っていたので椅子から転げ落ちずに済んではいたけど

 それでも僕の意識を少しずつ削っていった。僕がそろそろ倒れそうになった頃、制限時間が来た。

 結局、制限時間内にパフェの半分くらいを食べた僕たちの勝ちとなった。

 対戦相手の方はカップの上のクリームの部分しか減っていなかった。

 

 ステージから降りる時、美波が少し残念そうな顔をしていた気がした。

 

 

 

 みんなの所に戻り……

 

「「「お疲れ様っ」」」

 みんなのねぎらいの言葉が心に染みる。

 

「「「(島田)美波(ちゃん)」」」

 美波なのっ!?

 確かにずっと僕に食べさせてくれてたから

 美波の方が疲れてるように見えるかもしれないけど……

 命を賭けて戦ったのは僕なのにっ!!

 

 一人さめざめと泣いていると……

 

「よぅ、明久。お疲れ様」

 僕を大親友だと勘違いしている雄二がやってきた。

 今はちゃんとした格好をしているけど雄二の事だ。

 トランクスをはいてないかもしれない。

 

「雄二の言ってた不幸って、これだったんだね」

「終わったとは言ってないぞ」

「えっ、まだ何かあるのっ!?」

 いい加減、勘弁して欲しい。これ以上、命に関わる事があったら

 美波のウェディングドレス姿を見る前に死んじゃうよ。

 

「安心しろ。次の競技は命に関わる事はない。しかも、お前の得意分野だ」

 僕の得意分野?ゲームとかだろうか。

 

「でも島田の為とは言え、よく頑張ったな……俺も嬉しい」

 この顔で言われると気持ち悪いな。

 雄二のために、これっぽっちも頑張る気は無いんだけど。

 

「俺は確信している……」

 僕と美波が優勝する事だろうか?

 そりゃ僕もそのために頑張っているんだし……

 こいつがここまで言うんだ。かなり勝算があるのだろう。

 

「お前が俺と同じ人生の墓場に足を突っ込むのをっ!!」

「そっちかよっ!?」

 良く考えたら僕と美波が優勝した時のこいつのメリットって

 僕が雄二と同じ立場になる事だけだった。

 

「お前の見舞いに行ったとき言っただろ?」

 はて?なんだっけ?

 

「俺より先に結婚しろって……翔子に葉書が見つかった時はどうしようかと思ったが」

「まさか……それを僕のせいにっ!?」

「全部お前のせいだろうがーーーーっ!」

 くっ、まさか僕に仕返しをするために……

 ムッツリーニや秀吉まで巻き込んで……

 ……とりあえず秀吉を呼んでくれてありがとうと言っておくよ。

 

「ア~キ~~」

「……雄二」

 あれ?なんか物凄い殺気が背後からする……しかもダブルで。

 

「「なっ、なにかな?」」

 僕と雄二が恐る恐る後ろを振り向くと、そこには……

 

 ポニーテールを結わえてるリボンが角みたいになっていて鬼のように見える美波と

 黒髪を振り乱し、般若のような形相になっている霧島さんが立っていた。

 

「アキっ!?そんなにウチより坂本が良いのっ!?」

「……雄二。そんなに吉井と浮気をしたいの?」

「「しかもみんなが見てる前でっ!!」」

「「ちょっと待てっ!僕(俺)達は男だと何度も、げふっ!!」」

 

 僕の鳩尾には美波の肘打ちが、雄二の鳩尾には霧島さんの掌底打ちが決まっていた。

 浮気相手がこいつなんて勘弁して欲しい……と、雄二も思っているだろう。

 

 

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