バカとウチと恋心   作:mam

30 / 35
僕とみんなと如月ハイランドpart05

 

 万が一優勝しちゃったら、どうなるんだろう?

 

 でも優勝しないと美波にウェディングドレスなんて着せて上げられる機会なんて無いし。

 優勝して美波に喜んでもらってウェディングドレスを着させてあげて

 僕がその感想を言った所で終わり、と言うのが一番良い結果かな?

 

 その後まで続いて本当に結婚まで行っちゃうと

 美波にも迷惑が掛かると思うし……

 

 そう言えば雄二はどうするんだろう?

 あいつがここまで来て無策って事は無いと思うんだけど……

 

「ねぇ、雄二?」

「なんだ?」

 お腹の辺りをさすりながら返事をする雄二。

 

「どうしたの?妊娠でもしたの?」

 たぶん、さっきの霧島さんの打撃のせいだと思うけど、一応確認しておこう。

「お前のせいだろうがっ!?」

 

 …………ざわっ

 

「あ…アキ……アンタ、ついに坂本と……」

 あれ?美波が泣き出しちゃったよ?

 

「……しょうゆ、こんなお父さんを許してあげてね」

 お腹をさすりながら涙ぐむ霧島さん。

 

 

「あの、美波?」

「なによっ!アキはどうせウチより坂本の方が良いんでしょっ!?」

 うーん、誤解は解いておきたいけど……

 以前、雄二より好きってメールを送って大騒動になったからなぁ。

 ……そうだ、ウェディングドレスで話をしてみよう。

 

「誤解してるみたいだけど僕は美波のウェディングドレス姿は見たいけど雄二のは見たくないよ」

「アキと坂本が結婚するとしたらアキがウェディングドレス着るんじゃないの?」

 真顔でそう言われた……毎晩、枕を涙で濡らすほどのショックだ。

 

「あのね……いくら僕でもウェディングドレスを着る事がある訳無いじゃないか」

 メイド服や女子高生の制服は着る事はあっても……決して好きで着てたんじゃないよっ!?

 

「じゃあ、もしアキがウェディングドレスを着る事があったらウチの言う事何でも聞いてくれる?」

「いいよ。その時は美波の言う事をなんでも一つ聞いてあげるよ」

「わかったわ。じゃあ許してあげる」

「ありがとう」

 なんか変な約束しちゃったけど、まぁ男の僕がウェディングドレス着る機会なんて

 普通に生きてたら有り得ないから良いか。

 

 

「翔子、その名前は止めろと何度も……」

「……じゃあ雄二が一緒に考えてくれる?…布団の中で」

「ばっ、バカっ。何言ってんだお前?」

「……じゃあ、お風呂の中」

「もっとマズいだろうがっ!」

「……じゃあ、何処なら一緒に考えてくれるの?」

「それ以前に子供なんか出来ないから心配するな」

「……こんなお父さんを許してね、こしょう」

「俺は認知しないとかじゃないからなっ!?後、その名前も止めろっ!」

 

「おぬしらは何をやっておるのじゃ……そろそろ三回戦が始まるぞい」

 呆れ顔の秀吉も可愛いな。

 

 ……木下さんがすごく興味津々といった表情で僕と雄二を交互に見ていたのが少し気になった。

 

 

「さて、予選もいよいよ最終ラウンドです。三回戦の説明をさせて頂きます」

「三回戦は……実際にウェディングドレスとタキシードを着て頂いて会場の皆さんに審査して頂きます」

「現在各グループ二組ずつ残っていますが、より拍手の多かった方がプレゼントクイズ出場となります」

「では勝ち残っている六組のペアの方々、着替え室の方へ移動お願い致します」

 

「明久、後二つだ。頑張ってこい」

「うん……美波、行こう?」

「うんっ」

 なんか美波の機嫌がすごく良くなったな。

 ……そっか、もうすぐウェディングドレスが着れるからかな。

 これなら優勝しなくても良いな。美波との約束も果たせそうだ。

 

 

 

 

「…………一般客が増えてきた」

「んむ、そうじゃのぅ…家族連れとか、大会に関係なさそうな者も増えてきたのぅ」

「審査用に一般の客も入れてるんだろう、ほれ」

 雄二が指差した入り口のドアは開放されていた。

 

「あーあ、アタシもウェディングドレス着てみたかったなー」

「ボクも着たかったな……ムッツリーニ君?ボクにも着させてよ?」

「…………なっ、何故俺がっ…」

「ほら、お前ら。そろそろ明久たちが入場してくるぞ。ムッツリーニ、カメラの準備しておけよ」

「雄二よ、何をそんなにニヤけておるのじゃ?」

「来れば、判る」

 

 

 

 

「みなさま大変お待たせ致しました。ではこれより新郎新婦の入場です」

「先ほども御説明させて頂きましたが、お似合いのカップルだと思われた方は拍手をお願い致します」

「では、第一組目、吉井君・島田さんペア入場です」

 

 司会者の呼び掛けと共に、メンデルスゾーンの結婚行進曲が流れてきた。

 

 

 舞台裏で…………

 

 美波と僕は……それぞれタキシードとウェディングドレスを着て出番を待っていた。

 

 タキシードは白を基調としており、レンタルなのに身体に合わせて作られたんじゃないかと思うくらい

 フィットしていて、タイは普段学校で見る制服のとは違い、蝶ネクタイだった。

 

 ウェディングドレスは、しわ一つ無い純白のドレスで腰のところには左側にバラが3個ついていて

 スカートの裾は床に擦らない様になっている。

 頭には顔が良く見えるようにヴェールではなくティアラをつけていて、手にはブーケが一つ。

 

「ううっ、恥ずかしい……恥ずかしすぎるっ」

「何よ、アキ?いまさら怖気づいたの?」

 恥ずかしがる僕とすごく嬉しそうな笑顔の美波。

 

「だって……美波はすごく似合ってるから良いけど、僕は……」

「大丈夫よ、アキ。もっと自分に自信を持ちなさい」

「美波はすごく嬉しそうだね?」

「うん……だってウチの願いが叶うんだもの」

 そう言って嬉しそうに僕と腕を組む美波。

 

「アキ?行くわよ」

 僕の腕を引っ張るようにして歩き出す美波。

 

 結婚行進曲が流れる中、スモークがたかれている舞台の上に……

 会場中のみんなが僕と美波を見つめているのが判る。

 ううっ、恥ずかしい……

 

 何処かの家族連れの子供だろうか。

 

「おねえちゃんすごくかわいい」

「そうね、男の子も可愛くてかっこいいし」

 

 …………パチ

 ……パチパチ

 

 始まりは一つの拍手、そのうち二つ三つとすぐに数は増え

 会場中に響き渡る大きさとなった。

 

 美波は僕と組んでいる腕と反対側の腕を上げて拍手に応えている。

 

「ほらっ、アキもみんなの拍手に応えなさいよっ」

「ううっ、でも……恥ずかしくて」

「もぅ、男でしょ……今は花嫁だけど」

 

 今は美波がタキシードを着ていて、僕がウェディングドレスを着ている。

 美波はスタイルが良いから、何を着ても格好よく着こなせる。

 でも僕は男なのに……こんなひらひらした物なんか滅多に着る事は無いのに……

 誰だっ、こんな変な企画ばかり立てるのはっ!?

 

「これはすごい拍手ですね。まさに場内割れんばかりの拍手です」

「私も長い間この仕事をしていますが、これほどお似合いのカップルを見るのは滅多にありません」

 

 司会者がすごく嬉しい事を言ってくれてるのは判る。

 ただし僕と美波が普通にウェディングドレスとタキシードを着ている時に言ってもらえるなら……

 今、言われるのは悲しい以外のなにものでもない。

 

 ステージの下でフラッシュがやたらと眩しい。

 目を凝らしてみると……ムッツリーニが元気よく動き回っていた。

 さっきまで死に掛けていたくせに。

 

「…………明久、目線をこっちへ」

 右手にカメラを持ち、首からも二台ほどぶら下げている。

 それらを交換しながら僕の写真を撮っていた。

 配布も販売も認めないからね!?

 

「皆様有難う御座いました。第一組目、吉井君・島田さんペアでした」

 舞台袖でスタッフの人が手招きをしている。

 やっと、この恥ずかしさから開放されるのか……

 

 

 

 

 着替えが終わって、みんなのところに戻ると……

 

「吉井君、すごく可愛かったわ」

「一生に一度の晴れ舞台じゃったのぅ」

「吉井君は可愛いし、美波ちゃんもかっこよかったし、まさにお似合いの二人だったよ」

「……吉井と美波、すごく似合ってた」

 みんな……

 今は、その褒め言葉は僕の心に電動ドリルで穴を開けて

 さっきの激辛パフェを流し込んでいるようなものだよ。

 

「…………明久、ありがとう。この恩はきっと忘れない」

 グッと僕の両手を握り締めてくるムッツリーニ。

 僕は、いかなることがあっても写真の流出を防がなくては……

 と、考えていると

 

「明久、可愛かったぞ」

 ニヤニヤした顔で雄二が声をかけてきた。

 

「雄二っ!僕を騙したなっ!?」

「騙してなんかいない。俺は知ったら不幸になるとしか言ってないぞ?」

「なんで教えてくれなかったんだよっ!?」

「知った所でお前は出るのを止めるのか?」

「くっ……」

 確かに雄二の言うとおり何をやらされようと

 美波と約束した以上、僕に出場以外の選択肢は無かった。

 

「後はクイズだけだ。多分それも問題ないと思うがな」

「?」

 僕が頭に『?』を浮かべていると雄二は「頑張れよ」と言って行ってしまった。

 一人で、ぼんやりしていると……

 

「アキ?」

 僕の頬をつんつん、と指で突付きながら美波が話しかけてきた。

 

「あ、美波……」

「何、そんな変な顔してるのよ?」

「変って……僕って、そんなにおかしい顔してるかな」

 姉さんとか雄二、鉄人には、よくブサイクって言われるけど……

 自分では、それほど酷いとは思ってないんだけどなぁ。

 

「ウチは、それほど酷いとは思わないけど……ちょっと個性的?」

「僕ってそんなに個性的なのかな」

「そうね……顔立ち以上にアキって性格に特徴があるかもね」

「僕の特徴?」

「うん。アキの特徴って……バカ?」

 やっぱりそれが一番最初に来るのか……判っていた事だけどハッキリ言われるとショックだな。

 

「後は……鈍感でしょ。無鉄砲なところでしょ。おっちょこちょいでしょ……」

 僕の特徴って、ろくなものが無いな。

 ……なんだか悲しくなってくる。

 

「アキ?なんで泣いてるの?」

「ちょっと悲しくなってね」

「ほら、こっち向いて?」

 そう言って優しく僕の顔を拭いてくれる美波。

 やっぱり、なんだかんだ言っても美波は優しいな。

 

「でもね……ウチが一番好きなアキの特徴は優しいところよ」

 僕の顔を拭きながら優しい笑顔で言う美波。

 

「誰にでも……って言うのが欠点ね」

 美波が少し口を尖らす。

 僕より、今みたいに人の事を気遣って上げられる

 美波の方が優しいと思うんだけどな。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。