バカとウチと恋心   作:mam

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俺と翔子とウェディング体験

 

『それではいよいよ新婦のご登場です』

 

 心なしか音量の上がったBGMとアナウンスが流れ

 同時に会場の電気が全部消えた。

 スモークが足元に立ち込め

 否応なしに雰囲気が盛り上がる。

 

 確か前回は、あまりにも普段の翔子と違いすぎて

 その場の雰囲気に飲まれちまったが、今日は違う。

 今日こそ、あいつの勘違いをきちんと正してやらないと。

 

 …………翔子の顔を見るたびに思っているんだがな。

 

 

 カッ、カッと二つのスポットライトが暗闇を裂いた。

 

『本イベントのダブルヒロイン、霧島翔子さんと島田美波さんです!』

 

 アナウンスと同時に更に幾筋ものスポットライトが壇上の二点を照らし出す。

 暗闇から一転して眩しく輝き出す壇上。

 

 あまりの眩しさに少し目を瞑ってしまう。

 そして徐々に目が明るさに慣れてきて壇上を見ると……

 

 前の時もそうだったが、静かに佇んでいるアイツの姿は……

 幼い頃からの知り合いでも、同じ学校に通う同級生でもない

 今日初めて会った様な不思議な感じがする。

 

 会場の雰囲気のせいなのか、翔子の普段と違う格好のせいなのか

 良く判らないが心臓の鼓動がやけに早く感じる。

 喧嘩の時でもこんなに心臓が動く事なんて無かったのにな。

 

 

 そしてゆっくりと翔子がこちらに近付いて来て……

 

「……雄二……」

 ヴェールの下に表情を隠し、純白の衣装に身を包む幼馴染が

 俺を見上げている。

 

 胸元に掲げているブーケが所在なげに揺れた。

 

「……どう?……私、お嫁さんに、見えるかな……?」

 

 前と同じ台詞。

 よほどコイツの中では、こんな俺に相応しいお嫁さんになりたいのだろう。

 

「……ああ、大丈夫だ。三国一の花嫁だな」

 

 さすがに二回目だと少しは余裕があるな。

 嘘やおためごかしを言うつもりは無いから、まずまずの返事だな。

 

「……雄二……嬉しい……」

 翔子が俯き、ブーケに顔を伏せる。

 そしてそれ以上言葉を発する事もなく静かに……肩を震わせて泣いていた。

 

 ヴェールとブーケが邪魔で翔子の表情が見えない。

 

「……小さな頃からずっと……夢だった……」

 ある出来事がきっかけで抱かれた、コイツの俺への想い。

 

「……私と雄二、二人で結婚式を挙げること……」

 幼い頃の罪悪感と責任感からくる勘違いの筈なのに……

 

「……私一人だけじゃ、絶対に叶わない、小さな頃からの私の夢……」

 コイツはどうしてここまで強い気持ちを抱き続けられるのだろう。

 

 普段口数の少ない翔子が懸命に紡いだ言葉。

 

「……だから……本当に嬉しい……。他の誰でもなく、雄二と一緒にこうしていられることが……」

 

 ここまで言うと、その後は言葉も発せず静かに泣く翔子。

 

 場所が何処であろうと

 時間が何時であろうと

 俺のやる事はただ一つ。

 コイツの勘違いを正してやる事だ。

 

 俺は頭ではそう考えているのだが……

 また俺の口からは言葉が出てこない。

 やっと口を開くと……

 

「翔子。俺は……」

 

 どん……

 翔子が俺の言葉をさえぎる様に抱き付いてきた。

 

 思わず、両手を翔子の背中に回す。

 ……コイツの勘違いを正さないで手を組んでも良いのか?

 

 ふと、そんな事を考える。

 しかし……

 

 またコイツがどっか行ったら今度は探すのも待ってるのも面倒くせぇしな。

 仕方ない、コイツが何処にも行かないように抑えておくか。

 

 とりあえず理由を付けて俺は……

 

 翔子の背中に回した手を組んだ。

 

 

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