『それではいよいよ新婦のご登場です』
心なしか音量の上がったBGMとアナウンスが流れ
同時に会場の電気が全部消えた。
スモークが足元に立ち込め
否応なしに雰囲気が盛り上がる。
うわぁ……ドキドキしちゃうな。
ちゃんと感想言えるか心配になってきたよ。
でも美波は見た目の感想じゃないって言ってたっけ。
……なんて考えていると
カッ、カッと二つのスポットライトが暗闇を裂いた。
『本イベントのダブルヒロイン、霧島翔子さんと島田美波さんです!』
アナウンスと同時に更に幾筋ものスポットライトが壇上の二点を照らし出す。
暗闇から一転して眩しく輝き出す壇上。
あまりの眩しさに少し目を瞑ってしまう。
そして徐々に目が明るさに慣れてきて壇上を見ると……
僕は……
一瞬なのか、長い時間なのかもわからないくらい
思考も…呼吸すら止まったかと思った。
ただ心臓の鼓動だけが早く、強くなるのが判る。
良く知ってるはずなのに……
一緒に授業を受けているのに……
なんども一緒に遊んでる筈なのに……
そこには……
僕が……見たことのない美波が居た。
唯一変わらないのはポニーテールくらいで
それも正面からだと少ししか見えない。
いつもの黄色いリボンではなく花をいくつもあしらった髪飾りが少し左側に垂れている。
シースルーのカーディガンみたいな物を着てて花をイメージしたレース編みになっている。
純白のドレスは皺一つなくスカートの裾は地面に付くか付かない位ぎりぎりだった。
手には、しずく型の色とりどりの花のブーケ。
そしてゆっくりと美波がこちらに近付いて来て……
「アキ……どうかな?……ウチ、へんじゃないかな?」
呟くように話し掛けてくる。
お化粧なのか頬が少し赤く見える。
でも目は……何かを期待しているような、怯えているような……
ドキドキしちゃって頭の中がごちゃごちゃになっちゃって……
言葉が出てこない。
きっと綺麗とか可愛いとかじゃ、何回言っても僕の今の気持ちは伝えられない。
美波をどう思っているか、か……本人に直接言うのは恥ずかしいんだけどな。
「やっぱり……へんなのかな」
美波の大きな目に涙が……
わわわ、こんな所で迷っている場合じゃない。
美波があんなに着たがってたウェディングドレス着れたんだし
やっぱり笑顔で居て欲しい。
僕が思ってることで美波が笑顔になってくれるかは判らないけど
このまま何も言わないで美波を泣かせるくらいなら……
「あの……その……全然へんじゃないし、すごく綺麗で可愛くて……」
美波が僕の顔を見て、僕の言う事を聞いてくれている。
「でも綺麗とか可愛いじゃ、僕の言いたいことが全然足りなくて……」
いざ言うとなると……しかも美波の顔を見ながらは……
次の言葉がなかなか出せずにいると……
「アキ……さっきのお願い、今使っても良い?」
「う、うん」
「ありがと…」
大きな目を潤ませ、上目遣いで僕を見上げながら……
「絶対笑ったり怒ったりしないから……アキがウチの事をどう思ってるのか知りたいの」
花嫁という見た目に似つかわしい、すごくしおらしい美波。
「アキ……」
「う、うん」
美波に促される様に……美波の肩をそっと抱いて
「僕にとって美波は、ありのままの自分で話が出来て、一緒に遊んでいると楽しくて、たまに見せるちょっとした仕草が可愛い、とても魅力的な女の子だよ」
あれ?笑顔になってくれない……
それどころか、さっきより泣きそうになってるんだけど……
僕、また何か、やらかしちゃったのかな!?
「えっと……美波?ごめん、僕また何か変な事……」
話しかける僕の言葉をさえぎるように美波が僕の唇に指を当てて
「バカね……本当にアキはバカで鈍感ね。すごく嬉しいに決まってるじゃない」
そう言うと僕の首に両手を回してきて……
美波の可愛い顔がすぐ近くにっ!?
「ウチ……ずっとアキの隣に居ても良いかな?」
あれ?……同じような台詞を聞いた気がする。
……そうか、肝試しの時だったっけ。
『ウチが、ずっとアンタの隣に居てあげるって言ったら……アキは受け入れてくれるの?』
あの時は美波が興奮してた気がするけど
僕が席の事と勘違いしてたからだったのか。
僕の今の素直な気持ちは……
「僕の方からお願いするよ……ずっと美波に隣に居て欲しいんだ」
美波と一緒に居るとドキドキもするし、気を失ったりもするけど
楽しくて、面白くて……すごく嬉しくて安心する。
「アキ……」
目を閉じる美波。
この状態って、ひょっとして……