バカとウチと恋心   作:mam

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バカとウチと恋心

 

 

 駅からちょっと歩くと美波が辺りを見回してから……

 

「アキ?」

「なに?…美波っ!?」

 美波がいきなり腕を組んできた。

 

「どっ、どうしたの、急に?」

「何警戒してるのよ?痛い事なんてしないわよ?」

 普段、美波に腕を取られると大体関節技だからなぁ。

 

「僕、また美波を怒らせるような事したのかなって……」

「今日のアキはちゃんと約束も守ってくれたし、ウチの事をどう思ってるのか教えてくれたし……」

 良く考えるとすごく恥ずかしい事を美波本人に言っちゃったんだっけ。

 なんだか顔が火照ってきたな。

 

「どうしたの、アキ?耳まで真っ赤よ?」

「えっと……その……」

 僕が言いよどんでいると

 

「ウチね、今日すごく嬉しい事がいっぱいあったのよ」

「ウェディングドレスを着れたから?」

「そうね、それも嬉しい事の一つだけど、着るだけだと半分……ううん、十分の一くらいかな?」

「十分の一?」

 それだけ聞くとあんまり嬉しそうな感じがしないな。

 あんなに頑張ったのになぁ。

 

「そうよ……ウェディングドレスって女の子にとって特別な服だけど……」

「うん」

「服を着る事より、誰の隣で着るかって事の方が大切なのよ」

「そっか、そう言う事か」

「わかってくれた?」

「うん」

 そうか、今日ウェディングドレスを着た美波の隣に居たのは……僕かっ!?

 

「ええっ!?」

「どうしたのよ、いきなり?」

「ごめんね、美波。僕が隣だったから今日は十分の一しか嬉しくなかったんだ」

 せっかくウェディングドレスを着れたのに、悪い事しちゃったな。

 

「なんでそうなるのよっ!?」

 いきなり肘関節を決められた……やっぱり関節技をかけられたじゃないか。

 

「痛ぁぁっ。みっ、美波?痛い事しないんじゃなかったのっ!?」

「アキが鈍感バカだから悪いんでしょっ!!」

「ごっ、ごめんなさいっ」

「もぅ……本当にアキは鈍いんだからっ」

 拗ねるように口を尖らせる美波。

 あ、でも関節技は解いてくれたみたいだ。

 

「何が悪かったか判らないの?」

「う……ごめんなさい」

「じゃあ、今日のお礼に教えてあげる」

 そう言うと、また腕を組んできて……

 

「今日一日こうやってアキがずっと隣に居てくれた事が嬉しかったのよ」

「ウェディングドレスを着てた時も?」

「もちろん、嬉しかったに決まってるじゃない」

「ええっ、僕で良かったのっ!?」

「また関節極められたいの?」

 大きな目でギロッと睨まれた。

 

「ごめんなさい」

「アキって何でそんなに自分に自信が持てないのかしらね?」

「自信と言うか……自慢じゃないけど僕は人に自慢できる所が無いからね」

「確かに自慢にはならないわね」

「う……」

 あらためて言われると……特に美波に言われるとショックが大きいな。

 

「ウチは……いつも誰かのために一生懸命で優しくてまっすぐ頑張ってるアキが大好きよ」

「えっ?」

「でっ、でも、アキってバカで鈍感でバカで単純でバカでおっちょこちょいで……」

 とりあえず僕がバカって事を強調したいのだろうか?

 

 美波が両手の人差し指を胸の前でちょんちょんと合わせながら

 

「あっ、あのね……アキは、その……うっ、ウチと……つっ、付き合いたいとか……」

 うん、それくらいお安い御用だ。

 

「うん、美波がそうしたいなら僕はいつでも良いよ」

「ほっ、ほんとっ、アキっ!?」

 ぱぁっと笑顔になる美波。

 

 ……つんつん。

 僕は美波と組んでる腕と反対の手で美波の頬を突っつく。

 

「美波のほっぺたって柔らかいね」

 肌はすべすべしててぷにぷにしてて面白いな。

 

「……アキ?何をしているの?」

 あれ?ぷるぷる震えだしたよ?

 

「美波が突っつき合いたいって言うから……」

「……ありがとう、ウチのわがまま聞いてくれて」

 

 ……ぷちゅっ、ぷちゅっ。

 いきなり視界が暗転したよ?

 

「わぁっ、アキの目って柔らかいのね」

「いだぁぁぁぁぁぁぁっ」

 ほっぺたと目だと全然釣り合わない気がするんですがっ!?

 

「可愛く言っても、すごく痛いよ?」

「アキって、なんでいつも肝心な所で明後日の方向に行っちゃうのかしらね?」

「?」

 美波は何を言ってるのだろう?

 

「アキっ!!」

「はっ、はいっ!」

 潰された目がまだ見えなくても美波の気迫が見えるようだ。

 

「アキでも判る様にしてあげるわ」

「ありがとう?」

 こんなに気合を入れて何をする気なのだろうか。

 

「今日からウチはこの写真を飾る事にするわ……これならアキにも判るわよね?」

「ごめん、美波……まだ目が痛くて開けられないんだ」

 この写真って何だろう?

 オランウータン、チンパンジー、人間と来て次はどの動物に興味を持ったのだろうか。

 

「アキって本当にタイミングが悪いわね」

 僕の悪いと名の付くものシリーズに頭とか顔とか生活とかに続き、タイミングも追加されたようだ。

 

「もぅ……そういえば、アキはウチにずっと隣に居て欲しいって言ってくれたわよね?」

「うん」

「それって、アキがその……ウチと付き合いたいって……ことなの?」

「ええっ……そっ、そこまで高望みはしないんだけど……」

「じゃあ、なんなのよ?」

「えっと、一緒にお昼食べたり、一緒に帰ったり、たまに寄り道したり……」

「今までと何処が違うの?」

「……変わらないね」

 このまま変わらないってのは無理でも、ずっと美波と一緒に居れればなぁ。

 僕だけ変わらないでずっと二年生ってのも有り得るんだけど。

 

「はぁ……なんでこんなバカを好きになっちゃったのかな」

「あれ?美波って僕が好きなの?」

「そうよ、悪い?」

「ううん、僕も美波が好きだから嬉しいよ」

「そうなの?良かった、ウチの片思いじゃなくて」

「良かったね」

「アキもね」

 二人であっはっは、と楽しく笑う。

 そしてそのまま笑い続ける事しばし。

 

 

「「……ええっ!?」」

 

「あっ、あっ、アキっ、ほんとに、うっ、ウチの事っ!?」

「みっ、みっ、美波こそ、ほっ、ほんとに僕の事っ!?」

 

 美波の顔が赤いな。まるでトマトみたいだ。

 きっと僕も真っ赤だろう。

 

「あ、あの……アキは本当にウチの事……その……好きなの?」

 真っ赤な顔で聞いてくる美波。

 僕は美波の顔がまともに見れなくて視線を逸らしながら返事を……

 

「う、うん……美波も本当に僕の事を?」

「うん……ずっと……ずっと前から」

 

 美波が泣きながら僕の胸に抱きついてくる。

 仄かにシャンプーの良い匂いがして、目の前でポニーテールが揺れている。

 

「ほんとにほんとよね?」

「うん、本当だよ」

「お弁当が好きとかじゃないのよね?」

「うん、美波の事が好きだよ」

「アキの事だからメールみたいに間違えたとか言わないわよね?」

「僕は本当に美波が好きなんだ」

 

 しばらく美波は僕に抱き付いたまま泣いていた。

 そして泣き止んだ頃……

 

「美波?そろそろ帰ろう?」

「そうね……明日から学校もあるし」

「うん。補習もあるだろうから、ちょっと面倒くさいけどね」

「ダメよ、アキ。授業サボったりしたら……ずっとウチの隣に居てくれるんでしょ?」

「そっ、そうだね」

 あんまりサボってもいられないよね……美波と一緒に進級したいし。

 

「あ、そういえば……アキ?さっきの写真なんだけど」

「写真?」

 美波が歩きながら写真を選んでいる。

 

「うん、この写真。ウチのぬいぐるみの写真立てに入れようかなって」

 一枚の写真を見せてくれた。

 これって……美波と僕がキスしそうになってる写真っ!?

 ウェディング体験の最後の方で美波が僕の首に手を回してる写真だった。

 確かに僕と美波の顔がアップで写ってるけど……

 この角度って舞台のかなり上の方から撮らないとダメだろう。

 何処で写真を撮っていたんだ、あの男はっ!?

 

「これ……アキも家に飾ってくれる?」

 姉さんに見つかったら、たぶん即死だ……けど、美波のお願いなら断れないな。

 

「うん」

 姉さんに見つからないように偽装しておけば……

 いっそ姉さんの部屋に隠しといたほうが安全かもしれない。

 僕が毎日見れなくなるけど。

 

「ありがと……すごく嬉しい」

 満面の笑みの美波。

 この笑顔を見れるなら何でもお願い聞いてあげたくなるな。

 

 じっと写真を見ていた美波……歩くのが止まった。

 

「どうしたの、美波?」

 まだ写真を見ている美波に声を掛けると……

 

「アキ?」

「なに?」

「ウチ……二回もアキの事が好きって伝えたのよ?」

「ええっ!いつ?」

 そんな嬉しい事、覚えてない訳がないんだけど……

 

「もぅ……やっぱり判らないのね?」

「ごめんなさい」

「二度ある事は三度あるのよ……次はちゃんとアキから……伝えて?」

 そう言うと僕の首に両手を回して目を閉じる美波。

 これってやっぱり……今度はちゃんとお願い聞かないとダメかな。

 顔を近づけると……

 

 

 仄かにシャンプーの良い匂いがして……

 

 すぐ目の前には頬を染めた美波の顔があって……

 

 僕の唇を柔らかく温かい美波の唇に重ねた。

 

 

 

「ごめんね、美波。僕、一個言い忘れていた事があるんだ」

「なぁに、アキ?」

「美波の事をどう思っているかなんだけど……」

「うん」

「僕にとって美波は…………」

 

 

「世界中で誰よりも一番……魅力的な女の子だよ」

 

 




  【 バカとウチと恋心  完 】


色々と書けて大変面白かったです。
お付き合い頂きましてありがとうございました。
また近いうちに色々書きたいと思います。
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