バカとウチと恋心   作:mam

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バカとウチとお弁当
バカとウチとお弁当part01


 

 

「ふぁぁ」

 眠い…なんで連休のくせに学校があるんだろう。

 どうせ今日来ても明日からまたしばらく休みになるのに。

 

「アキっ、おはよっ」

「おはよう、美波」

「昨日はありがと。葉月もお礼言ってたわよ」

「どういたしまして、僕の方こそ楽しかったよ。ありがとう」

「ふふっ、ちゃんと言えるようになったのね」

 朝から美波の元気な笑顔。

 うん、眠気も吹っ飛んだ。

 

「美波のおかげだよ。これからもよろしくね」

「これからもって…ウチに一生教えて欲しいってこと?アキったら朝から積極的ね」

 朝から美波のテンション高いな。頬をほんのり染めて僕に拳を繰り出してくる。

 うん、僕も吹っ飛んだ。

 

「あっ、アキ!?ごめんね」

「大丈夫だよ。慣れてるからね」

 クラスメイトの女の子に吹っ飛ばされるのに慣れてるって…

 僕と同じ境遇の男子生徒が日本に何人居るか少し興味がある。

 

 

 

「「おはよう」」

 美波と二人そろって教室へ入る。

 

「しょっ、翔子…うぎゃぁぁぁぁぁぁ」

 霧島さんに抱き付かれてる雄二。

 雄二、日本の朝の挨拶は、うぎゃぁじゃなくておはようだよ。

 

「ご両人おはようなのじゃ」

 演劇で使う台本らしき物を手に挨拶してくれる秀吉。

 うんうん、今日も可愛い笑顔だ。

 

「ご両人って…木下ったら上手ね」

 美波が頬を染めて僕の腕を捻ってくる。

 女の子の恥らう姿ってこんなに痛いものなのか。

 

「…………おはよう」

 卓袱台の上で今日もカメラや盗聴器の整備に余念がないムッツリーニ。

 

 あれ?教室の中に居るのはこれだけ?

 たしか、このクラスは男女秀吉合わせて50人だったはず。

 

「他のみんなは?」

「さぁな、まだ見てないな」

 ぷすぷす煙を出しながら答える雄二。

 だから霧島さん朝からFクラスに来てるのか。

 

「姫路もまだ来ておらんのじゃ。明久、何か聞いておらぬか?」

「うーん、たしか姫路さんは僕と…」

 たしか一昨日、僕と一緒に帰ったとき、親戚の結婚式に出席するから学校休むって言ってたな。

「結婚式に出るって言ってたよ」

 

 なんでだろう。視界がいきなり暗くなったような…

 

「アキっ!!どういうことなのっ!?」

 美波に頚動脈を押さえられていた。

 

「瑞希と結婚ってどういうことっ!?」

 あれ?誤解なさってる?

 

「昨日のことはウチと葉月にお別れを言うためだったのっ!?」

 そんな気持ちも予定も全くございません。

 

「みっ、美波。ちょっと落ち着いて」

「落ち着いていられるわけないでしょっ!?」

 

 仮に、あくまでも万が一の話だけど僕と姫路さんが結婚するとして

 なんで美波がここまで取り乱すんだろう。

 

「うわぁぁぁぁぁん。ウチ、ファーストキスもあげたのにっ」

 

 泣き出しちゃった…こんな美波を見るのは珍しいな。

 泣きながら美波は僕の胸倉を掴んできて

 

「アキっ!!責任取りなさいっ!!」

「ほぇ?どっ、どうやって?」

「ウチをアキのお嫁さんにしてっ!!」

「ええっ!?僕もファーストキスだったから、おあいこってことだったんじゃ…」

 その程度のことで許されるとは僕も思ってなかったけど。

 

「判ったわ。アキのファーストキスはウチが責任取るっ!!」

「どうするの?」

「ウチがアキをお婿さんに貰ってあげるっ!!」

 

 それはどっちも同じだよ、美波。

 やっぱり葉月ちゃんと姉妹なんだなぁ。

 

「落ち着いて、美波」

「バカッバカッ、アキのバカッ」

 

 美波が僕の胸をポカポカ殴ってる…けど、いつもの迫力も威力も無い。

 美波って泣くと普通の女の子なみにパワーが落ちるのか。

 ……でも泣いている美波を見ると心臓が鷲掴みにされているように胸が痛い。

 

「あのね…僕は美波一人でも大変なのに他の人と結婚とか考えられないよ」

 それ以前に、まだ学生なのに結婚はありえないだろう…雄二じゃあるまいし。

 

 ピタッと美波が止まる。良かった、泣き止んでくれたみたいだ。

 あれ?なんか美波がもじもじしてる。そして頬を染めて潤んだ瞳で僕を見つめて…

 

「それって…ウチ以外の人とは結婚しないってことよね?」

 えっ!?なんでそうなるの!?

 

「今の発言だと、そうとしか取れないよな」

 朝のホームルームが近くてAクラスに戻った霧島さんから解放された雄二がニヤニヤしながら言う。

「そうじゃな」

 いつもは可愛い笑顔の秀吉もニヤニヤしている。

「…………男らしい」

 普段は男なら誰でも嬉しい決定的瞬間を見た時しか笑顔を見せないムッツリーニが

 グッと親指を立てて、ニヤニヤしている。

 

「アキっ!!嬉しいっ!!」

「ぐはっ」

 

 さっきまでのいじらしかった美波とは打って変わって豪快な鯖折りをしてくれる。

 良かった。いつもの美波に戻ってくれて…やっぱり泣いている顔より笑顔の方が良いな。

 かなり痛いけど。

 

「島田。そろそろやめないと明久が折り畳み出来るようになるぞ」

「えっ?あっ、ごめんね。アキ」

 

 ちょうどそこへガラッと扉を開けて鉄人がやってきた。

 

「おはよう…と言っても今日は五人か。姫路は親戚の結婚式で今日は休みだ」

 

 ちらっと美波の方を見る。決まりが悪そうに下を向く美波。

 とりあえず誤解が解けたから良いかな。

 

「他の者は全員サボりだ。全く、このクラスは…」

 額に手を当てて、はあっとため息をつき

「朝から学校に休みの電話が掛かりまくって他の先生方にも迷惑が掛かってしまった」

 このクラスだけで44件も電話が掛かれば大変だったろう。

 

「連休が明けたら補習の時間を倍にしてやる」

 そして僕と雄二の方を見て

「特に吉井と坂本は念入りにしごいてやるからな」

 

「ちょっと待て鉄人。俺らは学校に来てるぞ」

「そうだよ鉄人。僕たちはちゃんと学校に来てるのに」

 

「ばか者。鉄人ではない。西村先生と呼べと言ってるだろう」

「代わりと言っては何だが今日は補習はしない。存分に明日からの休みを満喫しろ」

 

 そう言い残して鉄人は教室を去っていった。

 

「でも珍しいわね。いつもなら率先して悪いことしてるアンタたちなのに」

「このバカと一緒にされるとは心外だ」

「そうだよ美波。いつも先頭切ってバカやってるのは雄二なのに」

「はあ…どの口がそんなこと言うのかしら」

 

「まぁ補習があるの判ってても今日休みたくなる気持ちも判らんでもないがな」

「なんでさ、雄二?」

「連休明けたら普通に学校には来ないといけないだろ。でも今日休めばしばらく来なくて良い」

「そっか。どうせ学校に来れば、ほぼ毎日補習受けてるしね」

「そういうこった」

 

「じゃあ、なんでアンタたちは来てるのよ?」

 うん。美波の質問も、もっともだ。

 

「俺は目が覚めたら翔子がベッドの脇に立っていた…俺の鞄と手錠を持って」

 ガクガクと震えだす雄二。君の将来を考えると涙が止まらない。

 

「ワシは部活があるでの」

 さっき持ってた台本を手に笑顔の秀吉。演劇頑張ってるんだな。

 頑張ってる人はかっこいいと思う。なんて僕好みの性格と外見をしてるんだ。

 

「…………何があるか判らない」

 カメラを片手に、目を光らせてグッと親指を立てるムッツリーニ。

 何かあったら、その写真は買うよ。1ダースほど。

 

「アキは?」

「ん?僕は昨日美波と約束したからね」

「やっぱり昨日島田と出かけてたのか」

 しまった…昨日のことはみんなに秘密だったんだっけ!?

 

「いやいやいや…そっ、そうだ。けっ携帯で話したんだよっ」

「そっ、そうよ。昨日携帯でね、アキ」

 美波の顔が赤い…僕も赤くなってるかな。

 

「二人ともバレバレじゃぞ」

「…………(コクコク)」

「お前らが何処行って何してようが良いが約束って何だ?」

 雄二がニヤニヤしながら聞いてくる。

 くっ…この顔に話をするのは悔しいけど嘘を言っても仕方ない。

 

「昨日美波がお弁当作ってきてくれるって」

「そっ、そうよ。それだけよっ」

 美波は視線を逸らしながら言った。

 

「なんだ、それだけか」

 チッと舌打ちしながら雄二。

「別にいつものことじゃろう。隠し立てするほどでもあるまい」

 どこか残念そうな秀吉。

 

 そこへガラッと扉を開けて一時限目の先生がやってきた。

 

 そういえば美波のお弁当の話をすると大体やってくる螺旋双髪の人が来てないな。

 

 

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