戦紀絶唱《SIN》フォギア   作:星屑英雄

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雪の少女の呪縛は解かれた

決戦の火蓋は上がる

立ち上がるは、一人の(OTONA)

されど、巫女の欲望は加速する

巫女に立ち向かう青年

その陰に、狂気が迫る――――


22話 暴走

その場を静寂が包み込む。

 

「……なぜ、分かったのかしら?」

 

そう絞り出したのはフィーネだった。

 

「ああ、認めちまうんだな」

 

「だってそうでしょう。あなたは確信をもってここに来た? 違う?」

 

ああ、そうだ。俺があんたを犯人だと確信する理由は三つある。

 

「一つ、俺はある人に櫻井了子……つまり、あんたの有無を確認してもらっていた。

結果、俺とクリスが闘っている時やフィーネが出現している時はあんたが存在しないことがわかった」

 

クリスが息をのむ音が聞こえた。

 

「でも、これじゃ決定的とは言えない」

 

俺は話を続ける。

 

「そこで、二つ。二課のデータベースを全部洗い直してみた。櫻井了子、つまり、あんたの経歴を、な。そこにはいたって怪しいところはなかった……でも、一つだけ見落としがあったみたいだな。米国の方にあんたの情報があったよ。米国と言やあ、あんたが繋がっていたようなことを言っていただろう? まあ、不仲になったようで軽く教えてくれたよ……」

 

そう、今回俺がバクチだと言ったのは、米軍との交渉だ。

いや、交渉とも言えない幼稚なものだだったが、何とかなった。

 

「俺、米軍には知り合いが結構いてな。今回の事は、過激派の独断だったみたいだな?」

 

狙われている米軍に頼るのは、危険だと思ったが背に腹は代えられない。知り合いのつてで、米軍と取引した。

櫻井了子の情報と俺のギアの一部の交換を申し出たのだ。

 

……うーん、国際問題になったりしないかな。ま、まあフィーネがいる方が脅威となるはず……何とか、おとがめなしにならないかなぁ。

 

まあ、得られた情報も少なくはなかったのでリスクにはあっていたのだろう。さすがに、自国に関する情報、国の不利になるような情報はなかったが、櫻井了子の経歴は山ほど手に入った。フィーネとしてのデータまで教えてくれたのは、多分トカゲのしっぽきりだったのだろう。

フィーネが倒された後、自国はフィーネを見張ってました。別に、何もやましいことはありません。と、主張できるからな。

 

「そして、三つ目は……必要か?」

 

「いえ、いらないわ」

 

「それは結構」

 

……三つ目なんてないなんて言えない。いや、正確にはあるのだが言えない。

 

三つ、俺が原作を知っていたから……なんていうことは。

 

そこまで考えて、ふとフィーネの横にいるクリスの様子がおかしいと気がついた。

 

「クリス?」

 

俺は、クリスの名を呼ぶが返事が無い。

 

「ずっと騙してた、っていうのかよ。あたしだけじゃなく、みんな……」

 

ポツリとクリスはそう漏らし、そして、ギリッという、歯ぎしりの音がこちらまで飛んできた。

 

クリスは顔を上げ――――その怒りが爆発した。

 

「あんたは、あたしの逆さ鱗にふれた……あたしの命より大切な家族を傷つけた!! 絶対許さねぇ!!!!」

 

怒号(どごう)を上げ、一瞬で歌いギアを纏って銃口を向けるクリスだったが、フィーネは手錠を砂糖菓子を壊すように破壊すると銃を握るクリスの手首をつかみ捻り、そして、襟元をもう片一方の手でつかみ、背負い投げのようにして投げ飛ばす。

 

「なっ!?」

 

クリスは空中でやっと、自身が投げられたことを悟る。ここまで、一瞬のことだった。

背中から落ち、息が一瞬つまり咳き込むクリス。

何とか起き上がるとすぐに銃口を向け放とうとする。

 

しかし、それを見たフィーネは笑いながら、廃ビルの窓を割って部屋を飛び出した。

 

「てめ――――」

 

「――――待て、クリス……」

 

俺は飛び出していきそうなクリスを手で制する。

 

「なんだよっ!? 何で止める!?」

 

「冷静になれ、そうでなければ簡単にあしらわれると思うぞ」

 

そう、何事も我武者羅に突っ込んでも勝てない。いや、まあ、ガチンコ勝負ならむしろそうするべきだが……

先程の背負い投げ……無茶苦茶綺麗だった。悔しいが、油断していたとはいえあのクリス相手に、だ。結構な力量があると見て間違いない。

 

そう考察していると俺のスマホが振動する。

 

ん? 電話だ……こんな時に……

 

「はい! こちら遊策!! 今、事件の犯人と交戦中です!! ご用件は!!」

 

そう応じながら、俺はクリスに目配せをして、ビルから飛び出し共にフィーネを追走する。

走って、フィーネを追いながら、電話からの声を聞く。

 

『何!? っく、こちらは飛行型のノイズが市街地で現れ、暴れているので向かってほしかったのだが……』

 

「わかりました!! そっちにクリスを向かわせます!!」

 

『そうか!! 捕らわれの姫を救出したか、よくやってくれた!!』

 

一瞬で状況を把握する風鳴司令。理解力すごいな……まあ、説明する手間が省けた。

 

「な!! あたしは、あの女に借りがある!! あたしがケリをつけなきゃ……」

 

クリスが抗議してくるが、俺は走りながらクリスにあるものを投げ渡す。

 

「アイツの相手は俺がする……お前には、これを響に届けてやってほしい」

 

危なげにそれを受け取り、少し驚くクリス。

 

「これは……あいつのガングニール……」

 

ジッと、俺はクリスの目を見る。

最後には根負けした様に、ため息をつき言うクリス。

 

「わかったよ……届けりゃいいんだろ!! でも、今更どの面下げてあえばいいんだよ……」

 

ガングニールを握りしめ、目を伏せる。

ここで俺が何を言っても無駄だと思う、でも一言だけ。

 

「あいつはきっと、お前を許してるぞ。……ああ、ついでにアイツガングニール持ったら無茶しそうだ。まだ病み上がりだから守ってやってくれ」

 

「わかった、んじゃ、お前も気をつけろよ……」

 

「まあ、頑張ってみるさ」

 

短く言って、クリスは俺のスマホを受け取り二課の指示を受けながら市街地の方に出ていく。

 

さて、スピードをあげますか!!

 

「ツッ……」

 

スピードを上げようと、力を込めた時、腹に鈍い痛みが走る。

無視して、スピードを上げフィーネを追いかけた。

 

 

 

 

クリスは遊策のスマホを耳に当てたまま疾走していた。

電話の相手、二課の風鳴司令に響の場所を叫ぶように効く。

 

「おっさん!! 響の奴はどこだ!!」

 

『もう、そっちに向かっている!!』

 

しばらく走っていると、司令の言葉通り、大きく手を振る響が見えてくる。

 

「クリスちゃん!!」

 

「見つけた……」

 

クリスはノイズ発生の場所を聞いた後、遊策のスマホを切り、響の前に降り立つとガングニールと遊策のスマホを渡し言う。

 

「あたしのしたことは消えない……ごめん。こんなことを言っても、許してもらえるとも思ってねぇし、許してもらおうと思ってない。あたしはそれだけの事を、しでかした……」

 

響に向かって、目を合わせる。響も、それに答え見つめ返す。

 

そして、クリスは決意を込めて言葉を出す。

 

「でも、今は!! あたしを信じて、あたしにお前を守らせてくれないか?」

 

「……大丈夫。クリスちゃんがしたことを、クリスちゃん自身は許せないかもしれない。でも、傷は消えるよ。痛みも消える。……だから、自分を許してあげて?」

 

そう言って、クリスに向かって手を差し出す響。

クリスは、それを取ろうか迷ったように手をさまよわせる。

 

「あ……」

 

クリスから声が漏れる。響がクリスの手を取ったためだ。ギュッと握りしめてきた手を、クリスは、今度は迷わず握り返す。

 

「行こう?」

 

「ああ、さっさと片付けて遊策の所に行くぞ!!」

 

クリスは言葉にうなずき言葉を返す、それを聞いた響は聖詠を口ずさみ始める。

 

「Balwisyall Nescell gungnir tron」

 

ギアを纏った響はクリスと頷き合うと、飛行型のノイズが待つ場所へと駆け出した。

 

 

 

 

フィーネは、目的の地に降り立つ。そう、このリディアン音楽院に……

この場所の地下には、カ・ディンギルと言う砲台があるためだ。

 

さっそく、フィーネはリディアンの生徒たちを間引き、カ・ディンギルを起動させるため行動に移そうとする。

 

「さて、ついたか……」

 

「待ちな、了子」

 

フィーネを呼び止める声が聞こえる。

 

「あら?」

 

振り返り、声の方向を向くと、そこには――――

 

「俺もお前を疑い、情報を集めていた……まあ、出遅れてしまったがこれ以上はやらせんぞ」

 

そこには、風鳴司令――――いや、この場ではただの一人の漢、風鳴弦十郎として、フィーネの前に立ちはだかっていた。

フィーネは、少し砕けた様子になり言う。

 

「弦十郎くん、見逃してくれないかしら?」

 

「こちらに投降するのなら」

 

無論、逃す気はないようだった。

フィーネはため息をつき、雰囲気を全く違うものに変え言い放つ。

 

「なら、見せてあげるわ……ネフシュタンの力をね」

 

何か緑色のクスリが入ったピストル型の注射器を自身の首にあて、一気に差し込み、クスリを注入する。

すると、みるみるうちにフィーネの体から鎧のようなモノが突き出て来て、数秒もしないうちに黄金の鎧に身を包んだフィーネの姿が現れた。

 

「それは……ネフシュタンの鎧!! あの2年前のライブ会場で覚醒させようとして、失ったままになっていた完全聖遺物だとォ!?」

 

「そう、私が奪っていたのよ!! さあ、この鎧の力!! たっぷりと味わいなさい!!」

 

鎧に付いた二対の鞭のようなモノをしならせ、弦十郎に向かって放つ。

ただの人間にはこれで十分、そう思っていた。

 

しかし――――

 

「っふ!!」

 

鞭を掴み、鞭ごと繋がっているフィーネを引き寄せる。

 

「なっ!?」

 

とっさにフィーネはガードしたが、ガードなど関係ない。

拳が体にめり込んだ。

守りごと吹き飛ばされ、地面を転がる。

 

「ぐっ、は……?」

 

フィーネは自身がなぜ、地面に転がっているのかがわからないようだった。

軽く混乱しているフィーネをおいて、弦十郎は次の行動に映る。

 

「今のうちに生徒の避難を頼む」

 

「はっ、お任せを」

 

部下である緒川に生徒の避難を頼むと、自身はフィーネに向き直り宣言する。

 

「ここは俺を倒してから行ってもらおうか!!」

 

「ば、かな……出鱈目だ……」

 

フィーネもいつまでも寝ていられない、ゆっくりと立ち上がりつつ言う。

 

「映画見て飯食って寝る!! 男の鍛錬はそれで十分よォッ!!」

 

「くそ、お前!! 本当に人間か!!」

 

死闘が始まる。

 

 

 

 

俺はやっとフィーネがいる場所にたどり着いた。途中で見失い、かなり時間が経ってしまった。

 

「ここは、リディアン……? なんだか地形が変わっているようだけど……?」

 

そう言って、気づく。誰か、いや、自身の知っている人物が倒れ伏していることを。

 

「な……風鳴司令!! そんな、酷い怪我だ!!」

 

この人が怪我をするなんて……

最強は誰かと聞かれると、黄老師と並びたつような人なのに、一体誰が……いや、一人しかいない……

 

「フィーネ、お前の仕業か!!」

 

「まあ、そうね」

 

そう言いつつ、フィーネが現れる。

 

「この人がお前如きにやられるはずがない!! どんな卑怯な手を使ったッ!?」

 

「あら、私が『やめて!!』と言ったら、攻撃を止めてくれただけよ?」

 

そうか、つまり……

 

「あんたは、この人のやさしさにつけ込んだのかッ!! いい加減にしろよテメぇ!! ヒトのやさしさを利用しまくって、誰かを犠牲にしまくって!!」

 

俺は激昂を押さえきれずにいた。気配を感じた。多分、緒川さんだろう。ちょうどいい……

 

「緒川さん、早く、司令を!!」

 

「……はい、ご武運を」

 

そう言って、風鳴司令を抱えて緒川さんはシェルターに戻っていった。

 

「怒髪天を突いたぜ!! 引導を渡してやる!!」

 

「やって見なさい!!」

 

両者は空中で激突した。

 

 

 

 

 

俺とフィーネはぶつかり合いながら、会話する。

 

「あんたを止める!!」

 

「もう遅いわ!! カ・ディンギルは起動する!! そして、私は月を破壊するのよ!!」

 

言われて、気付いた。この地鳴りの正体を。

そう、今地響きをあげながら、天を衝く砲台が姿を表そうとしていた。

 

俺は、フィーネの目的が理解できていなかった。

 

「なぜ月を……?」

 

疑問を口にすると、フィーネは律義に答えてくれる。

 

「ええ、月は人類から統一言語を奪い相互理解を妨げるバラルの呪詛の権化!! あれがあれば人類は相互理解をすることなどできやしない!! あれを破壊し、そして、私はあのお方の元に!!」

 

あのお方って誰だよ……

 

「そんなことのために!?」

 

「そんなこと!? 恋もしたことのないガキに、何がわかる!!」

 

確かに、俺は恋をしたことは無い。誰かを、狂おしい程愛しいと思ったことは無い……そういうことは、何もわからない。

でも、これだけは言える!!

 

「知らん!! でも、そのために誰かを犠牲にしていいわけねぇだろうが!! 誰かの幸せを奪っていい理由にはならないだろうがッ!!」

 

俺はいいながら、ジョブを放ち、フィーネが怯んだところに足、腕交互の連撃を加え、最後に大振りな一撃を加える。攻撃はクリティカルヒットし、鎧が破壊された。

 

「よし!! グガッ!?」

 

攻撃をヒットさせ、鎧を破壊したと思ったら、みるみるうちに鎧が治っていく。そして、攻撃を放ち油断したところに相手の鞭が叩きつけられてしまった。

 

「なっ、回復した!?」

 

ならば、回復するなら、回復を上回る速度で攻撃するだけだ!!

 

俺は立ち上がり、右ストレート、左ストレートと繰り出すがすべて避けられる。

フェイントを織り交ぜながら、攻撃するが全く当たらない……どうなっている!?

 

「もう、あなたの攻撃は届かないわ……」

 

「ぐ、ああああぁぁぁぁァァァァァァ!!!!」

 

エネルギーボールのようなモノを叩きつけられ、俺は地面を転がる。

立ち上がろうとした時、急接近してきたフィーネに、胴体を足蹴にされて立ち上がれない。

 

「全く、滑稽なものね……こうも上手くいくと」

 

「どういうことだ……?」

 

「米軍に私の情報があった、ねぇ? 私がそんなミスをする訳ないじゃない」

 

「なっ、まさか!? お前わざと米軍に情報を残したのか!?」

 

「そういう事、そして、クリスが裏切ることも想定内。だからこそ、フライトノイズ……飛行型のノイズを大量に配置したのよ」

 

「俺の行動を読んでいた……ってのかよ?」

 

すべて、フィーネの掌の上だったてことかよ!!

 

「ええ、研究対象の行動の割り出しくらい出来るほど、データは揃ってるわ」

 

そして、俺を地面に張り付けたまま続ける。

 

「貴方が、今、考えてること言ってあげましょうか? 脱出プランを3コほど考えてるわね。けど、全部押さえてあげるわ」

 

「なん……だと……?」

 

嘘だろ……?

 

「嘘だろって顔ね、そして、自分にわざわざなんで教えているかを考えているわね。教えてあげるわ……これが、最後の目的よ!!」

 

俺を足蹴にしたまま、何かピストル型の注射器のようなモノを取り出し、俺の首筋に当てる。

 

「さあ、ショ-タイムよ」

 

ドスッと、俺の首元に注射器の針が打ちこまれ、何か訳の分からないクスリのようなモノが俺の全身に巡る。

 

「ぐっ、あ……お前一体、何を俺に打った!?」

 

「ふふふ、直にわかるわ……」

 

ドクンッと、心臓が跳ねる。

 

なんだ、熱い……

 

「が!! あ、あああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァaaaaaaァァァァァァァァァァァァァアアアアァaaaaァァァァァァあああああああああぁぁぁぁぁギュぁぁぁァaaaaaaaaaaaaaaGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

ナニカ黒いものが俺の中に侵入してくる。

駄目だ、抗えない!! 自分が何を言っているのか、自分が叫んでいる事さえ分からない。

黒が俺の意識を押しつぶす。

 

「融合を加速させる融合促進剤。私とネフシュタンとの融合を早めるために開発したものだけど、融合症例に使った場合はどうなるのか……さあ、最終実験の始まりよぉ!!」

 

フィーネのあざ笑う声と、俺の絶叫がリディアンの空に響き渡った。

 

 

 

 

飛行型のノイズを殲滅した4人は、遊策とフィーネが闘っているはずのリディアンに向かっていた。

 

「はぁ、はぁ!!! 早く急がないと!! クリスちゃん!! 翼さん!! 奏さん!! 早く行かないと、お兄さんが!!」

 

そう言って、先頭をトップスピードで走るのは、響だ。その後ろを、翼、奏、少し遅れてクリスと追う。

 

「ああ、そうだな。しかし、立花!! お前はあまり動きすぎるな! 負傷している事には変わりないんだぞ!!」

 

「大丈夫!! へいき、へっちゃらです!! そんな事よりも、一人で戦っているお兄さんを早く助けないとっ!!」

 

「しかし……」

 

「まあまあ、コイツは言って聞くような玉じゃないさ。今は一刻も早くリディアンに着くために速度を上げるだけだ」

 

言いよどむ翼だったが、奏がおさえ全体で加速する。

 

「……」

 

無言であとに続くクリスを気にした三人は、口々に励ますようにクリスに向かって声をかける。

 

「クリスちゃんも!! もう、気にしなくていいから!! みんなでお兄さん助けよう!!」

 

「そうだぞ、雪音!! 理由と謝罪は聞いた。ならば、何を気にする必要がある?」

 

「元々そんなに気にしてねーって言ってんだろ? お前は両親を守ったんだ。胸を張れよ、誰にでも出来る事じゃないぞ?」

 

「お前ら……わりぃ、もう大丈夫だ。そうだな、遊策の奴にも謝らなきゃな……」

 

クリスは三人からの激励に答え、たまっていた涙を払い顔を上げる。

決戦の舞台はもうすぐそこだ。

 

 

 

 

「見えた!!」

 

響の言ったように、見えたは見えたのだが……

 

「ん? なんか、雰囲気おかしくねぇか? リディアンに、こんなに瓦礫があったか?」

 

クリスの疑問に答えるように、ナニカが咆える。

 

『BAOOOOooooooooooo!!!! GURrrrrrrrrUGAaaaaaaaaa!!!! GYAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!』

 

「な、なんだあれ?」

 

突然、空から降って来た、獣のようにも、人のようにも見える、ナニカが尻尾で何かを引きずってくる。

 

いや、よく見るとぐちゃぐちゃになっているが、人だ(・・)。つぶれた頭、引きちぎれた胴体、棒切れのような腕、そして片足しかない脚。しかし、不思議なことにその人は生きていた。

 

ナニカはその死体とも見えるものを放り投げ、視界に響たちを収めると次の獲物を見つけたというように笑う。

 

「な、なんだよ……これ? 遊策は? 遊策はどこに行ったんだよ? な、なぁ!! 先輩たち!! 響!!」

 

クリスは混乱したようにそう言ったが、響は黙っていた。

それが、何かを物語っているようで……

 

「……」

 

「ぐ、う……まさか……ここまでとは、な。ポテンシャルが高いと思っていたが……」

 

その死体ともとれるものが、そう声を上げる。

クリスはその声を嫌と言うほど知っていた。

 

「フィーネ……って、ことは……」

 

『GUuuuu、GAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!』

 

「あれが、遊策ってことかよ!!」

 

「お兄さん!!」

 

響の叫びもむなしく、獣と化した遊策は装者たちに襲い掛かかるのだった……

 

 

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