少女は大切なものを守るため、拳を握る
この愛の拳は大切なもののため
響く心は迷わない
おかしい、と俺こと小日向遊策はそう思った。
何がおかしいかと聞かれると、響だ。
最近、響が俺に構いに来ないのだ。昔は、アピールがうざいくらいにあったのに最近なくて寂し……じゃなくて、落ち着かない。
と、言うか、俺を避けてさえいるような気がしてやっぱり、寂し……じゃなくて、悲し……そうじゃなくて……いや、自分の気持ちを偽っててもしょうがない。寂しくて悲しいんだ、俺は。
なんで避けられるんだろうなァ……なんだか、無性に死にたくなってきた。
鬱ダ・siノウ。……なんかこう書くと、暁切歌ちゃんのカットイン技名みたいだよね。 うん、至極どうでもいい☆
まあ、死ぬのは響に真相を聞いてからにしよう、そうしよう。
廊下を歩く、響を見つけ声をかける。
「と、いう訳で、響~」
「わ!! お、お兄さん!? え、なに? どういう訳ですか?」
「そこはあんまり関係ない。……いや、何、俺を最近避けてるみたいだったからさ。何かあったんじゃないかなって。……それで、何かあったのか?」
あんまり、まどろっこしいのは好きじゃない。だからこそ、語尾を少し強め、ド直球に問い質す。
「あっ……ッ。……ごめん」
「あっ、おい! ちょ、待てよ!」
しかし、響は何かを言おうとしたが、口をつぐみ、そのまま駆け出して行ってしまう。
「はぁ……」
俺は家のソファーに腰を下ろし、ため息を吐いた。そこに、未来が現れ心配そうに近づいてくる。
「お兄ちゃん? どうしたの?」
「い、いや、響に避けられててさ……直接、なんでだって、聞いたんだがやっぱり逃げられちゃって……しかも、手に小さくない、傷があったし何か危ないことでもやってんじゃないかと思ってな。そうだ、未来、お前何か知らないか?」
「……さぁ? 私は、響じゃないし、それは分からないよ」
そう言って、手を後ろに持っていって、リボンをいじる未来。
……嘘だ。未来がこうやって意味もなくリボンをいじるときは、何か俺に隠し事をしている時だ。
「そうか……」
しかし、俺は言葉を濁し、それ以上追及することをしなかった。いや、出来なかった。
あの響の反応。それと、あまり隠しごとはしなかった未来が隠そうとするのだ。何か、俺が知ってはいけないことがあるのだろう。
「ま、いつまでも考えていてもしょうがないな。さあ~て、母さんたちは今日いないんだったな……俺が作ってやるよ!! 何が食べたい?」
そう考えた俺はあえて明るく振る舞い、この話題を流すことにした。
未来もホッとした表情で、「じゃあ、カレーが食べたいな」と、俺の意見に同調する。
「へへ、俺のカレーは絶品だぜ?」
「うん、知ってるよ。私はチキンカレーがいいな」
「おう、まかせとけ!!」
俺はエプロンをしつつ、袖まくりをして、未来のリクエストに答え、キッチンに入る。
俺は、野菜を切りつつ思う。
今は、まだ踏み込めない。きっと、いつか話してくれることを信じよう、と。
そこからは淡々と野菜を切る音だけがキッチンに響いていた。
『ねえ、本当にお兄ちゃん言わなくてよかったの?』
私のスマホから親友である小日向未来の心配そうな声が聞こえる。
「うん、だって巻き込めない。きっと、知ったら、お兄さんは自分から巻き込まれに来ちゃうと思うから……」
『響……』
そうだ、そうやって、私や未来や他の人を助けてくれた。だから、きっと今度も私のことを知ったら、来てしまうだろう。それでまた傷ついて、それでも、私達の前では笑うのだ。
だから……
「だから、今度は私が守るんだ。お兄さんが、もう傷つかなくていいように!! この力で、この拳で!!」
決意と共に、ギュッと、胸の前で揺れる赤いペンダントを私は握りしめた。
響が持っている赤いペンダントとは一体……?
次回もよろしくお願いします!!