はくのん「どうしてこうなった」   作:いあいあ!

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 あらすじにも書きましたが、単発打ち切りになる可能性もあリます。……とか言ってたら皆様から自分が思っている以上の評価を頂きました。ビビってます。いや、本当にありがとうございます。これからも皆様の期待に応えられるよう頑張ります。


 質問・間違い・その他もどんどんコメント下さい。うちのはくのんが×ボタンで跳ねて喜びます。
 それと期待されている方は申し訳ないのですが、金ピカとはくのんの恋愛要素とかは多分無いです。僕もそんな感じのコメディーを画策していたのですが、気が付いたらキャラが動き回っていてシリアスとも何ともつかないこんな感じになってました。あと1話から超理論乙な展開ですから注意してください。
 はくのんは出生が無価値、だけど魂を燃やして動くっていうのが売りだったような気がするんですが、それも間違えてぶっ壊しちゃいました。これに関してはマジですみません。クレームはコメントで(ゲス顔)
 ……コメントくれしか書いてねえじゃん!自重!


第1話 プロローグ、はくのんの十年ダイジェスト版

 言峰綺礼は、教会に持つ自身の部屋で、静かに最後の時を迎えていた。

 

 ……なるほど、神よ、結局自分は「解答」を得られず、志半ばで事切れる運命だったか、と少し残念に思う。

 衛宮切嗣に心臓を撃ち抜かれた時点で自分は死人であって、今の今まで生きていたこと自体がありえない奇跡だったことは、言峰自身がよく分かっていた。「解答」を得るために、様々な悪事の伏線を張り巡らせてきた自分だったが、いざ死ぬ時となると、案外「伏線」を回収できない事自体の方が残念である事に気づいた。……なるほど、努力が報われたかったのか、自分は。と一人で苦笑する。

 

 自分はこのまま眠るように死ぬ。これほど安らかな気分で逝けるのは、やはり今日までの日々が充実したものだったからだろう。

 

 

 あの日、聖杯がその姿を現した日。自分は、かの黄金のサーヴァントと共に瓦礫の中から一人の少女を発見した。……あのサーヴァントに言わせれば、「面白い存在だったから拾った」らしいが、自分としてはただのイレギュラー、すぐにあの場で殺してもよかったのだが……。

 しかし、あの生き物はそんな自分の予想を覆し、教会で引き取った後もなかなかに自分を愉しませてくれた。

 

 あんなモノが、清楚な修道女の皮をかぶっているのかと思うと、愉快でたまらない。

 

 今では確信できる。あれが生きる滑稽な人生は、きっとそれだけで見応えのあるものになるだろう、と。

 

 そんな少しの期待をこめて……言峰綺礼は、ゆっくりと瞳を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 欠けた夢を見る/自分という主観が消える(まざる)

 

 だからきっと、これは自分の記憶(モノ)ではない、と自覚した。

 

 

 

 

 

 瓦礫。爆炎。――呪い。

 

 

 

 その惨劇の中で佇む影が二つ。……ソレらは確かに人の形をしていたが、彼らは正しく人間ではない。

 

 

 死んだような目をした神父の男は、かつての仇敵だった男を追いかけることはしなかった。神父にとって、あれはもう価値のある人間ではなくなってしまった。――衛宮切嗣はおそらく延々と生き残った人間を探し続ける。奴は「死んだはずの自分」が生きている事には、言峰綺礼という事象には欠片も興味を抱いていない様子だった。

 

 言峰綺礼の心臓は衛宮切嗣によって打ち抜かれ、消し飛んだはずだった。つまりそこに存在するのは、彼の契約者を通じて、あるべき心臓の位置におぞましい死の呪いが流れ込んだという絡繰り。……死の呪いによって死を免れたというのはいかにも彼らしい皮肉だった。

 

 彼はその原因となったサーヴァントに再び視線をよこした。

 

 そこには黄金の男がいる。英雄王ギルガメッシュ。言峰綺礼の「師」こと遠坂時臣のサーヴァントだった、破格の英雄。――自分に唐突な「解答」のみを示し、苦悩する言峰綺礼を愉しみとすると言った男。

 

 しかしどうだろう。そんなギルガメッシュだが、また何かよからぬ事を企んでいるようだ。傲岸不遜の象徴である男は、爆炎の向こうに視線をよこし、今もまた厭らしい笑みを浮かべている。……此処は既に終わりきった場所、自分たち以外に残っているのは、既に死んだかこれから死ぬか、あと一人死んだような男(・・・・・・・)のみのはずだが。

 

「どうした、ギルガメッシュ。まさか今更、先の男に興味でも湧いたわけでもあるまい」

 

 そんな自分の言葉を無視し、黄金の男は勝手に瓦礫へと足を進める。いつもの気まぐれか、と神父は苦笑し、男についていった。

 

 サーヴァントはおもむろに歩みを止める。そして心底面白そうに、その顔を歪めた。 

 

 

 

「これは……?私はお前がこんなもの(・・・・・)に興味を抱くとは思ってもみなかったのだが」

「確かに貴様にしてみれば、この程度、興味を抱くに値せぬ『ちょっとした異常』にしか見えんだろうな。しかし決めたぞ綺礼。今からこれを(オレ)のものとする。世話は貴様がせよ」

「……本当にどういった嗜好なのだ、今日は」

 

 

 二人の視線の先にいるのは、見た目普通の女の子供だった。年齢は五歳程度だろうか。すやすやと眠っている。

 確かに異様だった。この炎と呪いの中でただ普通に眠っている。……だがしかしそれだけだ。衛宮切嗣が何らかの手段で守っただけ、というのが真っ先に浮かぶ発想で、興味を抱くほどの存在とは思えないのだが……?

 

「綺礼、こやつの左手を見てみろ」

「……」

 

 面倒だが仕方がない。やれやれ、と子供の左手を持ち上げ、観察する。

 

 

 そこに、三画の令呪があった。

 

 

「なに……?」

 

 だが、聖杯戦争の監督者としてよくよく観察してみると、いわゆる「令呪」とは形式が全く違うことに気づく。構造が理解できない。……ただの刺青などではないことは分かるのだが、これは「魔術」ではない、全く別のものである。

 

「ギルガメッシュ。なんだこれは。これが一体何なのか貴様は知っているのか」

「知らん。だがこやつの存在と相俟(あいま)って、非常に興味深いものではある。」

 

「綺礼、我が断言する。これは人間ではない」

 

 言峰綺礼は、じっと子供を見つめた。

 

 

 

 

 

 

 

 自分という主観に戻る。……今のは誰の夢だったのだろうか。

 

 今度は自分の記憶を辿る。今の自分を構成するもの、それを確認する。この世界での過程を、思い出す。

 

 

 

 

 

 

 ――両手首を上から吊るす鎖の音で目を覚ます/そんな自分を俯瞰している 。

 

                     かつての自分の夢を見る。 

 

 

 

 ……これはきっと「あの時」の回想だ。たしか、気が付いたら身長が縮み、地下牢のような場所に囚われていた――いや、それよりももっと真っ先に、思い出した事があったはず。

 

 

 記憶が断片のようによみがえる。

 

 校舎を襲う黒い影、アリーナ、BB、アルターエゴ、旧校舎の仲間たち、死んでいった彼ら、黒幕・「この世すべての欲」の体現。

 そして自分の相棒ギルガメッシュ、二人の「桜」の事を、鮮明に思い出した。

 

 ……そうだ、自分は、表の聖杯戦争に戻った後、ギルガメッシュと世界を旅した / 黒幕を倒した後、桜と現実世界で過ごした は……ず……?

 

 

 記憶が、二つある。

 

 

 いや、記憶が二つあるのではない。黒幕を倒した自分は、桜と一緒にあの門を潜り抜ける時に、失った可能性を垣間見たのだ。それがギルガメッシュと共に過ごす未来。

 それを見た自分は、この時こう願ったはずだ。「現実で、また、桜やみんなと一緒に過ごしたい」、と。

 

 

 そして、目が覚めると鎖に吊るされていた。その目の前に現われたのが、あの黄金の男。また会えた、とその時は安堵した。

 

 だが自分が出会った男は、「彼」とは別人だった。

 

 

 

 

 

「娘。貴様、我の事を知っていると言ったな。それのみならず、なんと我の契約者だったと!」

 

 そうだ。自分はこのサーヴァントと、あの電子の海を戦い抜いた。前にも同じように彼が記憶を失ってしまった事があったが、「本能」の彼も自分のために剣を取ってくれた。だから、今回も自分の事を理解してくれるはずだ……!

 

「っは!我との契約など、面白い冗談を言うな、小娘ごときが!……だが我は貴様の(かた)る妄言などに欠片の興味もない。貴様は『存在』が珍しい。ただそれだけよ。そうでなければ誰が貴様のような凡夫に一瞬たりとも付き合おうか。――身の程を弁えよ!」

 

 ……?それはどういう意味だろうか。それを言うなら、自分という存在こそありふれたものであって、彼が興味を示してくれたのは、自分の道化っぷりに対してではなかっただろうか。

 

「……なるほど。その顔、貴様自分がどういう存在か分かっていないな?ハ、滑稽ここに極まる。……いかん、我ながらどうかと思うが、もう飽きてきたぞ(・・・・・・)。それも貴様が言葉など喋るからだ」

 

 っ、そう、この男はこういう男だ。些細なことに気をかけている暇などない。「初対面の」自分の、薄っぺらい言葉なんてものはこの男には絶対に届かない。

 だが囚われている現状、自分にできることはせいぜい口先で戦う事ぐらいだ。それも間違えれば殺される……!一体どうすれば……

 

「戯れだ。貴様のとち狂った狂言など聞く価値すらないが、仮にも我のマスターだったとそこまで真剣に騙るのだ。

 これを耐えることが出来た暁には、貴様の戯言に付き合ってやらんこともない。……ま、せいぜい散り様で我を愉しませよ。貴様に意思など求めていない故な」

 

 そう言ってギルガメッシュが自分に突き出したのは、黄金の杯だった。その中に波打つのは、真っ黒な泥/呪い。

 

 死ね、死んでしまえ、と呪いの声が聞こえるほどの悪意を放っている。

 

 一目見ただけで理解できる。アレは人間という存在の天敵、精神がヒトという括りにある以上、一度触れれば決して逃れることのできない猛毒である……!この男は、これを自分に飲ませるつもりなのか……!?こればっかりはどうしても拒否したい!だが男の目は言っている。「拒否すれば殺す」、と。

 

 何という事だろう、生き残るためにはこれを飲み干すしかないようだ。だがこんなものを口にすれば確実に死んでしまう。

 

「何をもたもたしている。貴様の覚悟など知ったことか。……そうか、一人で飲めぬなら我が手伝ってやろう。感謝しろよ?」

 

 口に無理矢理、杯を押し当てられる。次に感じたのは口の中に広がる地獄のような熱。……岸波白野の意識は、ここで途切れた。

 

 

 

 

 

 

 始まりの刑罰は五種、……という呪いの声が聞こえる。

 

 岸波 白野 の自我が悪性情報により崩壊します、という誰かの声が聞こえる。……二つの声が混ざり混ざって、自分の意識が溶けて無くなっていく。

 

 

 様々な罪と泥と闇と悪意が回り周り続ける刑罰を与える/……対処法を検索しています。

 

私怨による罪、私欲による罪、無意識に被る罪、自意識を謳う罪、/を克服した存在「殺生院祈荒」の人格を参考に、

益を得る為に犯す。己を得るために犯す。徳を得るために犯す。

 

 

 

 ……理解した、この泥を被ったものは自己嫌悪で死んでいくのだろう。そしてそれが新しい呪いとなり、際限なく拡大していく。だめだ、こんなもの自分程度の人格では、抗いようがない/今思い出しても吐き気がする呪いだ――

 

 ――だけど、もう一つ聞こえる声は、誰のものだっただろうか。

 

 自分の為に■す汚い汚い汚いお前は汚い、/いいえ汚くなんかありません、

償え償えあらゆる罪状あらゆる被害者から自分の為に■す自分の為に■す自分の為に■す自分の為に■ す

 

 

 

 

 ――不意に、呪いの声が止んだ。

 

 岸波 白野 に浸食したこの世全ての悪 浄化のため「万色悠滞」発動。呪詛を全て「肯定」します。承認。呪詛の浄化作業に移ります、3%、7%、15%、35%、56%、77%、99%……浄化作業が完了しました。この世全ての悪 に対して若干の耐性を獲得。……意識を復帰します。

 

 

 ――そして、ああ、また人に助けてもらってばかりだ、と自分に呆れた。

 

 ありがとう、桜。

 

 

 

 ――いいえ、先輩こそ、こちらの私を見つけてあげてくださいね――

 

 そんな誰かの声を聴きながら、ゆっくりと目を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

「なんと、貴様、アレに打ち克ったというのか!……ええい、さっさと意識のない人形にでもなっておけばよかったものを、面倒な……

 まあよい。小娘、我が直々に貴様の名を尋ねてやる。身に余る誉れであることを忘れるなよ」

 

 いや、あれは絶対に自分の力ではなかった。……あの優しい声が、自分を助けてくれたのだ。でなければただの人間である自分があの呪いから逃れることなど出来なかった。心の中で、そんな誰かに改めて感謝を告げる。

 そして自覚する。ようやくこれで、自分はスタートラインに立つことが出来たのだ、と。

 

 と、いうか、さっきまでの、ギルガメッシュに「理解してもらえるはずだ」とか思っていた自分を思いっきり殴りつけてやりたい。そんなわけあるか!一回彼が記憶をなくした時の事を勝手に参考にして、調子に乗ったようだ。……あれほど信頼を置き、置かれる関係になっても最後には生きるか死ぬかの問答だったのだ。もう一度会いたい、など思い上がりも甚だしい、というわけか。

 

 ――いいだろう、ならばこの男、ギルガメッシュとはそういう関係であるべきだと理解した。かつての自分ですら「愉しみ」、それ以上でもそれ以下でもなかった。ならば、一回は今の自分の人格を「いらない」と拒否した目の前の男とは、もっとシビアな関係になるかもしれない。

 それを理解した上で、今度こそ自分は、きちんとギルガメッシュと目を合わせた。

 

「名を、何と言う」

 

 ――岸波、白野です――

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――意識が覚醒する。長い夢を見ていたようだ。こちらの世界に来たばかりの時の夢。10年前の話。

 

 正直あの時が一番の生命の危機だったのではないかと今でも思う。「この世全ての悪」の末端、端っこの端っこ、それもコップ半分くらいを何とか克服した自分だったが、それでようやく何とかギルガメッシュに興味を持たれることに成功した。いや、興味を持たれるという意味では最初からみたいだったが、一応人格(の存在の自由)を認めてもらえた、貴重な試練(?)だった。ギルガメッシュはバケツ一杯ぐらい飲ませておけばよかったと後に言っていたが、慢心して頂いて本当に良かったと心から思う。

 

 体を伸ばし、意識を覚醒させようとしたが、どうやらまだ起床の時間には早いようだ。もう少しノスタルジー(?)に浸るとしよう。

 

 さて、気が付いたら居たこの世界の事だか、なんと秘匿されながらも「魔術」が普通に存在する世界だったのだ。自分の元いた世界では、魔術はアトラス院を除いて絶滅してしまったモノだったので、言峰店長……もとい神父、が拳に魔力を纏わせて修行しているのを見かけたときには、すごくテンションが上がってしまった(ピョンピョンした)。

 

 

 

 どうやら自分は、ムーンセルが持つ観測能力によって、「こういう場合もあるだろう」というIFの世界に飛ばされてしまったらしい。自分の願ったことは「現実で、また、桜やみんなと一緒に過ごしたい」、だったはず。一体「何が」その願いを叶えたのかは後々に分かることなのだが、とりあえずすぐに言峰神父に協力を仰いで、旧校舎のメンバーの所在を調べることにした。すると、なんとみんなちゃんとこの世界に存在していたのだ!

 

 西欧財閥は世界の覇権こそ握っていなかったものの、大企業として存在していた。レオは次期党首として期待されている有望株らしい。きっとユリウスもガードマンとして働いているだろう。いつかコンタクトを取りたいな、と思っている。

 

 ガトーは、知る人ぞ知る、ぶっ飛び破戒僧として世界中を回っているみたいだ。名前で調べたら普通にブログやってて超驚いた。当然お気に入りに登録済みである。自分は常連コメンターで、いつも彼の活動を楽しみにしている。最近はガイアの抑止力の研究にはまっているとか。

 

 ジナコはこっちでも廃人だった。相変わらずとある有名ゲームでスコア首位を独占しているらしい。自分はゲームはしないが、掲示板ではたまに話す程度の仲にはなったので、一応魔術師(ウィザード)だったこの身、特定姉貴と化して彼女のあらゆる発言から住所を特定済み、近々爆撃訪問する予定である。

 訪問を匂わせる発言をあらかじめしておいて、「はくのんなら歓迎~☆」との解答をいただいたので犯罪ではない。うん。たぶん。……どうせきょげんへきしてやがったんだろうが言質、もとい魚拓はとってあるので言い逃れは出来ないぜ!……いや、ゲス顔はしてないですよ。はい。

 

 ラニは、アトラス院、というところが怪しいと睨み、言峰神父の「教会」関係の仕事でついて行かせてもらった時、「ホムンクルスについて知りたい」と言ったら、案内役のお姉さんがすごい熱く語ってくれたのがきっかけで、知り合うことが出来た。何でもホムンクルスの中でもラニ型という完成型が出来たらしく、見てみたい、と言ったらなんと即座にラニ=Ⅷご本人登場であった。あまりに唐突な出会いに内心超ビビったのはいい思い出である。

 今ではメールで連絡しあう仲です。

 後で聞いたがあの案内役の人、半分くらい吸血鬼らしい。普通に案内していただいていたが、言峰神父のようなガチの「教会」の(かた)的にはいいんだろうか……?

 次回の訪問時には、かの雪辱の「下着(ぱんつ) 履かせ ない」もとい「博士 パンツ ない」の謎に迫る予定。

 

 ……キアラに関しては、彼女の行方を調べることは出来なかった。彼女の流派、立川流自体が既に滅んでいる、とのことだったので、それ以上詮索のしようがなかったのだ。こちらの世界では、悪事を働いていないことを祈るしかない。

 

 さて、それ以外の、凛、シンジ、桜といった面々だが、彼らはなんのこの言峰教会とも関係が深い、有力な魔術の良家だったのだ!しかも現状、月海原学園ならぬ穂群原学園に通っていて(現在自分も通学している)、そこにはタイガーやら某新聞部部長やら会長やらが実在していて本当にびっくりした。……というか言峰店長だって明らかに神父服着てたし、元ネタはこの神父ご本人確定である。ムーンセルは絶対この可能性世界がお気に入りに違いない。

 

 

 さて、過去十年において、最重要の出来事とは何だったであろうか……?

 

 語るまでもない。間桐臓硯の滅殺である。

 

 私がこの世界のことについて調べ始めたとき、当然真っ先に確認したのが桜の存在である。確かシンジと同じ苗字を割り振られていたな、と調べたら、こっちの世界では本当に兄弟だったので驚いた。……が、言峰神父曰く、

 

「いや、あれは私の師、遠坂時臣の娘、つまりは凛の実の妹だな。……マキリと遠坂の協定で、マキリの養子となったが」

 

 ……とのこと。それならば、一度会ってみようと言峰神父に許可を取ろうとしたところ、不可能だな、とばっさり断られた。なぜか?と理由を問うと。

 

「間桐桜は虫の苗床にされている。間桐臓硯はアレを道具としか扱っていない」

 

 目の前が真っ赤になった。

 

 

 

 事の顛末に特筆すべきことはない。言峰神父の協力を仰ぎ(ギルガメッシュは当然の如く協力してくれなかった)、あの害虫の体を爆散して頂き、桜の心臓に寄生していた「本体」を浄化した。本体を浄化した後にもしつこくストックに逃げまくったようだが、すべてを浄化(洗礼詠唱ぐらいは習得済み)。敷地内すべてを結界で覆った後に行ったことなので、万が一にも逃げ延びたという事はない。

 

 そんなことより重要なのはアフターケアだった。当時桜は十歳、既に精神はぼろぼろになっていた。しかも彼女の魔力の性質「虚数」が事を更に厄介にしており、下手にそれが外部にばれればホルマリン漬け確定、という悲惨さ。……ここはなんのためらいもなく遠坂の門を叩き、一人で暮らしているという凛に相談する事に。教会の心理臨床の専門家の力も借りて、桜も最近になってようやく人間らしい心を取り戻せたようだ。シンジもつらい生活を送っていたようで、自分に出来ることは出来る範囲で何でもした。現在、凛、桜は一緒に暮らしており、シンジは一人で高級マンションに暮らしている。今では、あの屋敷だけが不気味に残っていて、言峰神父曰くあの老人がしつこく復活する手段を持ち合わせている可能性があるので、結界と見回りは欠かせないらしい。

 ……今でもあの忌々しい老人の事は出来る限り思い出したくない。本当に不愉快になる。

 

 

 

 次はこの十年間で把握した、自分の事について。

 

 なぜギルガメッシュは当初自分の存在を希少だとしたのか。……聞いて驚け(誰が?)、この体は、ムーンセル、もとい桜(月の方)の宿った欠片(かけら)で出来ていたのである!

 体は桜で出来ている……うへへ……

 

 どうやら月の裏側から出る時、自分がチラッと考えた願いを、桜が「ズル」と称して叶えてくれたのが原因のようなのだが、「現実で、また、桜やみんなと一緒に過ごしたい」、という願いが、あの世界では叶えられなかったらしく、どういうわけか別の可能性世界に飛んでしまった、とは桜談。そして最適とされたこの可能性世界には月にムーンセルが存在せず、そこに岸波白野を存在させるには、演算器としてのムーンセルの欠片が必要だった、という事だ。

 三年ほどかけて、魔術師(ウィザード)の能力をフルに活用し、ようやく自分の中のムーンセルの欠片に宿る桜とのコンタクトをとることが出来たのだが、その時になってやっと自分の特性(こと)について知ったのである。

 

 そして、ムーンセルは「人類外のテクノロジーによる」太陽系最古の「古代遺物(アーティファクト)」。しかもこの世界にはムーンセルは存在しない。……もう分かると思うが、ギルガメッシュが自分の「存在」を欲しがるのも無理は無いわけだ。彼が所有するのは過去・未来における人類の発明品。ムーンセルは彼の蔵の中には無い。きっとコレクター魂が滾ったのだろう。

 

 さて、ムーンセルの欠片で出来ている自分だが、状態(ステータス)はムーンセルのときの自分そのままを反映している。レベルは50、礼装はとりあえずコンプリート済み(赤原、アトラス込)、アイテムは補充不可だが自分と一定距離にあるサーヴァントには使用可能。コードキャストの適用範囲もこれと同じ、という事まで把握済みだ。

 

 

 

 そしてこれから先、最も重要なことが、この冬木の地で「聖杯戦争」が近々行われる予兆がある、という事。ご丁寧にこの可能性世界にまで聖杯戦争存在しなくてもいいじゃない、と心底思う。

 

 ここでの聖杯戦争は七組が行う乱戦方式。なんと言峰神父は前回の参加者だったらしい。……コードキャスト(物理)でサーヴァントを麻痺らせる時点でこの人ただ者じゃねえな、って思ってたけどやっぱりだよ!代行者というのは人外の集まりなんだろうか……。

 話を戻すと、この聖杯戦争は純粋な殺し合いではないのだが、やはりマスターを殺しておくのが常道とされているようで(どうしても血は流れるみたいだ)。そして我らが言峰教会はこの戦争の事後処理などを担当する監督役に就くのが役割である。

 

 さて、問題なのは、自分の左手には、別れの時にギルガメッシュに貰った令呪が三画ある、という事。しかしこれはこの冬木の地で行われるという聖杯戦争のものとは無関係、SE・RA・PH内のみで効果を発揮する限定品。なのだが、なぜか前回の聖杯戦争で泥を飲み干して受肉したというギルガメッシュとはラインを繋ぐことが出来る。月でギルガメッシュ本人に貰った令呪である、という事が関係しているのだろうか。

 

 そういうわけで、現状自分はギルガメッシュに程よい魔力タンク扱いされている(正式な契約ではない)。自分に魔力は皆無なのだが、ムーンセルの欠片により、レベル50相当のステータスが反映されるので悪くないとの事。

 

 コードキャストが使えるのだから、かなりズルではないのか、と当初思ったが、月での聖杯戦争と違い、ここではサーヴァントの後ろでマスターが突っ立っていたら真っ先に殺される。残念だがコードキャストの出番はあまりないだろう。

 

 というか、なぜギルガメッシュが受肉したのか、理由がよくわからないが、アレの性格上ルール違反でも今回の聖杯戦争で戦うことになるかもしれない。

 ……覚悟を決めなければならない。月での聖杯戦争のように、明確にルールが決まっているわけではない、本当のサバイバル、何でも有りの殺し合いに巻き込まれるかもしれないのだ。

 

 

 そんな未来に不安を感じつつも、そろそろ時間になったので、本格的に目を覚まし、制服に着替えて食堂に向かうと。

 

 

 

 

「おい。……今朝、言峰が死んだ」

 

 

 ギルガメッシュから、衝撃の言葉を浴びせられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鐘が鳴る。神父が祈りの言葉を捧げている。

 「言峰神父」は、近所では誠実な人格者として有名だったので、葬儀には結構な人数が集まった。その中には、遠坂凛、桜、そして見回すと、遠くにバゼット・フラガ・マクレミッツの姿がある。

 

 

「死んだのね、あの似非神父。……死にそうにない奴だ、って思ってたわ」

「……言峰さんとあなたは、私を助けてくれました。……何も返せなかった気がします」

 

 

 遠坂姉妹が声をかけてくれた。……本来ならば自分はあそこで祈りを捧げる側なのだ。精神的ショックが強いだろう、と判断されて、別の教会に手伝いを借りて、参列者の列に加えてもらった。

 二人の言葉には、明らかに自分への気遣いが混ざっている。普通の魔術師ならば、開口一番聖杯戦争の運営に関してでもおかしくない。

 

 ――ありがとう、大丈夫だよ。言峰さんだって分かってくれてるよ。

 

 三人そろって、地面の十字架を見つめる。……会話は、これ以上続かなかった。

 

 

 

 葬儀を終えた後は、教会の運営や、霊地の管理に関してなど、事務的な作業が続いた。どの方も親切で、労いの言葉をかけてくれた。バゼットさんも、この時自分を励ましてくれた。……彼女達もショックなはずなのに。こんな時に未熟な自分が恥ずかしかった。

 

 

 

「遅かったではないか」

 

 教会に帰ってくると、ギルガメッシュが大人モードで優雅にワインを楽しんでいた。やはり、というか、彼はいつも通りだった。自分から見ても、二人の関係はこんなものなんだな、とは薄々感じていたが、彼の淡白さを目の当たりにすると、少し悲しくなった。

 

 一瞬、自分もこうして切り捨てられるのではないかという恐怖を感じた。……そんな自分に気が付いて、自分の事が嫌いになりそうになった。

 

 

「綺礼の奴め、せっかく我が与えた解答の『方程式』を得られぬまま死んだか。

 仕方あるまい、今日からは貴様のみを酒の肴にするとすしよう。……ハ、なんだ、あのような外道の死を本気で悲しんでいるのか?通常の感性で言うと、あれは『悪』にあたるはずだが?つくづく物好きな奴よな」

 

 ギルガメッシュの言葉が、あまり実感として頭に入ってこない。……言峰綺礼は、この世界で行き場のない自分を育ててくれた。十年間を経て、彼の存在は上司という枠組み以上のものになっていた。……考えれば考えるほど、岸波白野を喪失感が支配していく。

 

「はあ、そう目を潤ませるな。まったく、綺礼の奴に我が毒され過ぎたのか、貴様といるとどうにも調子が狂う。……奴がおらずとも我がいるではないか!安心せよ!はーっはっはっは!

 ……AUOジョークである。笑え」

 

 ……ほんの少しだけ気分が軽くなった。いつまでもメソメソしているな、という彼なりの喝と受け取っておく。

 

「……笑えと言ったのだがな。まあよい。

 さて、奴の死因は知っているな?」

 

 ――知っている。何度も本人から説明を受けた。

 自分はもう死に体であって、最後の時は刻一刻と迫っている、かつての聖杯戦争で心臓を失った言峰綺礼は、自身のサーヴァントの受肉を通じて奇跡的に生きながらえたに過ぎない、と。

 

「そうだ。よって綺礼が死んだ今、あの泥と縁を結び続ける理由はない。……喜べ。真に我との契約が果たされるのだぞ」

 

 

 ギルガメッシュはあの泥を浴びて受肉を果たし、言峰綺礼はそれを通じて生きながらえていた。泥を浴びて受肉した、ということは、この聖杯戦争のサーヴァントとしての枠組みから離れることはない。それが不愉快だ、とギルガメッシュは語っていた。

 そして、運の悪いことに、先の引継ぎで次の聖杯戦争の監督役は自分となる事が決定したのだ。

 ……つまり、自分は今から決定的なルール違反を犯す事になる。「聖杯戦争の監督者が、八人目のマスターとしてサーヴァントと契約を結ぶ」。

 もしも参加者のマスターに知られれば、全マスターから一度に殺害の対象にされかねない程の超弩級不正行為である。

 

 しかしこのサーヴァントは、自分との契約を大層楽しみにしていたようで(それはそれで、この十年で築けた信頼の証拠なので、とても嬉しいのだが)、もし断ったりすれば、マスターとかなんとか以前にまずギルガメッシュに殺される!

 

 『……いや、あなたと契約を結ぶことは出来ない』、という選択肢はDEAD END直行なのだ。

 

 どれだけ信頼関係を結んでも、彼の自尊心に傷をつけるような軽率な行為をすれば、いつでも自分は裁定の対象になりうる。……ギルガメッシュと十年間付き合って得た結論だった。

 

 当然、自分としては聖杯を求めるような動機は無い、というかあんな汚染され切った聖杯に願う事など存在しない。幸いうちのギルガメッシュさんが得意のジャイアニズムで聖杯を欲しがっているので、ついでに彼の蔵に封印する、というのがベストな方針だと思われる。

 もちろん最初は凛に助けを求めるのが確実、と考えていたのだが、

 

「たわけ。我が何を愉しみにしているのかも分からんのか。……元々我のものである聖杯を勝手に奪い合う、という事自体が許しがたい愚行であるが、殺し合いの産物として生まれる喜劇をもってそれを許しているのだ。故に出陣すれば勝利が確定してしまう我等は、然る時まで傍観者であるのが道理であろうよ。

 ――ああ、よい機会だ、今回の聖杯戦争をもって、貴様にも我流の『愉悦』を伝授するとしよう!貴様と共に観る喜劇は、それはそれは愉快だろうよ!」

 

 と、他のマスターとの共闘フラグは一瞬で折られてしまったのだ。

 気に入って頂いているのは光栄なんですが、どうやらこのサーヴァント、この時代での受肉を経て外道っぷりが上がっているらしい。……そしてそこに巻き込まれる自分。

 

 見てる方は楽しいだろうな……

 

「良い顔になってきたな。さあ、この契約をもって貴様と我の聖杯戦争が始まるのだ。我の方針は分かっているな?――雑種どもを完膚なきまで蹂躙するのだ……!」

 

 

 

 

 

 

 これがこの世界での岸波白野の顛末。

 おめでとう!岸波白野はルート限定の隠しボスとなった!というテロップ君が脳内を疾走する。

 

 

 全力で断りたいです……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、こうして第五次聖杯戦争の幕が上がるわけだが、その前にこの世界での岸波白野について更に注釈を加えなければならない。

 

 なぜ言峰綺礼が間桐臓硯の暗殺に協力したのか、岸波白野が監督役として選ばれたのか、若干の疑問が残っているが、それにも関連する問題である。

 

 結論から言ってしまえば、この世界に移動してきて早々、ムーンセルの欠片を核とした岸波白野に、この世全ての悪の末端が流し込まれた事が全ての原因になる。なんとなく理解は及んでいると思うが、不運なことに、仕組みとして「この世全ての悪」と「聖杯」なるものはひどく相性がいい。岸波白野の中に宿る「桜」は、「この世全ての悪」を、殺生院キアラの人格を参考にした対策を立て、自己嫌悪のよる自己破壊欲望を駆り立てるこれらの声を全て「肯定」、受け入れることで岸波白野という人格の死を回避した。

 

 つまりは何が言いたいのかというと。

 

 この瞬間、本人の意図に関係なく、「この世全ての欲」の性質を持ったプチ魔人が誕生してしまったのである!(デデドン!)

 ――この世全ての悪に対する救済者、つまりは「指揮者」のようなものだと考えて頂ければ結構(流石に直接「この世全ての悪」の本体に触れれば岸波白野の自意識など一瞬で押し流され、その性質のみが残る、という結果になるが)。

 

 故に桜の話を聞いてブチ切れた岸波白野の感情に呼応し、言峰綺礼の心臓がやばいことになったり(死期が早まった原因)、「教会」と「協会」の下っ端がお互いの上層部に彼女の性質が万が一にもバレることがないように、管轄が名目上、聖堂教会と魔術協会の両方となっている聖杯戦争の監督役を押し付けて、二大組織の下っ端同士で牽制かつ監視をし合うことにしたり、という事態になったのだ。

 

 ちなみに元凶のギルガメッシュは、後にこの事に気付いて「我の機転でさらに面白いものが出来た」と馬鹿笑い、更に岸波白野自身の人格もなんだかんだで気に入り、これは生涯我のモノだと勝手に決め込んだりと、全く反省している様子はない。

 

 

 まあ、こうして岸波白野は名実ともに裏ボス化したのだった。

 

 

 後にこの事実をギルガメッシュがさらっと言ってのけ、白野さんがぶっ倒れるのは、聖杯戦争が終結した後の話である――




 とりあえず設定ガバガバなので、苦し紛れにみなさんが疑問に思うだろう事を解説しようと思います。

 この金ピカ、受肉を経て欲望が強くなっているので、はくのんに対して「熟れたら性の悦びも教えてやろう」とか平気で考えてます。まあそれも凌辱とかではなく、彼にしてみれば立派な愛の証なのですが。

 はくのん50レべでのギルガメッシュのステータスは、
 筋力B 耐久C 敏捷C 魔力B 幸運B
 といったところです。型月やってる方は分かると思いますが、ステータス自体でも割と強い部類に入ります。

 コードキャストも考えたのですが、作中のような設定にしました。当然相手鯖にスタンはおろかダメージなんて与えられないし、赤原礼装やアトラスの悪魔もサーヴァントの近くじゃないと発動できないので、戦闘中はまず無理、ということに。それでも拠点とかで回復が瞬時にできる時点でチートだとは思いますが。

 はくのんが拾われた時期があそこなのは、言峰教会地下の犠牲者を無くすためです。あれがあってははくのんは決して教会コンビに心を許さないどころか、完全に敵対しますから。はくのん一人で彼らの魔力と、愉悦分をまかなっていたというわけです。

 カレンに関してですが、はくのんは当然カレンのことは知りませんし、「桜」も言峰の娘だなんて思ってもいないので、第五次中に登場することは無いと思います。

 「桜」に関してですが、「桜」ははくのんともはや一心同体レベルで、脳内会話もする必要がないくらいお互いのしたい事を理解しています。ありがとう、も勝手に伝わっちゃう、みたいな。暇なときに脳内会話しているようです。

 このぐらいでしょうか。本文&後書き長すぎますかね……?
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