リトルアーモリー ~戦場を駆ける女子高校生たち~ 作:AEGIS
「ーではこのあと小銃と拳銃を配りますー」
その瞬間、教室が驚きに包まれた。
指定防衛校に入学した以上、いつかは銃を渡される時が来るとはクラス全員わかっていた。しかし、入学式を1時間前に終えたばかりの新入生に渡されるとは誰も想像していなかったのだろう。
「静かに」
と言いながら先生は手を叩いた。雰囲気は硬いままだったが表情は私たちを落ち着かせるためか、少しやわらかいものとなっていた。
「他のクラスが先に受け取りに行っているので、あなたたちには先にこれから渡す小銃と拳銃の説明を行います」
先生はリモコンを手に持つと教室に備え付けられているモニターの電源を入れた。モニターが移るとそこには銃の画像が表示されていた。
「これは皆さんに配る小銃の画像です。名称はM4A1、5.56mmNATO弾を撃つことができる小銃です。特徴としては---」
先生はポインターで説明箇所を示しながら説明を進めた。
指定防衛校によって支給される小銃や拳銃は異なるが、明日波高校では全員一律で小銃はM4A1、拳銃は
「---これで説明は以上です。それでは銃を受け渡しする場所に移動するので皆さん付いてきてください」
先生の指示に従い、移動を開始した。廊下に出ると隣のクラスの生徒が銃を持っているのが目に入った。これから私もアレを受け取るのかと思い、期待と緊張で鼓動が大きくなったように感じた。そんな私の感覚なんて知りませんと言わんばかりに、話しかけたそうな顔をしている雪が私の方に向かってきた。
「まさかこんなに早く貰えるとはねー。緊張してる?」
「しゃべってると怒られるわよ」
「大丈夫だって。やっぱり緊張してる?してるよねっ?」
「そりゃ緊張してるかと聞かれれば、してると答えるけど」
そう答えると雪はにんまりと笑い、うんうんと頷いた。雪にとっては私が緊張しているのは当然だったようで「やっぱり」と勝手に納得してる様子だった。
「雪のほうこそ緊張してないの?」
「いや?多少はしてるけど別にそこまで緊張してないかな。貰えることわかってたし」
雪はあっけらかんと答えた。まぁそうだろうと思っていたが、改めて聞いて確認してみるとよく緊張しないものだなぁと感心した。
「由奈も私を見習えば緊張しなくなるよ」
「雪を見習ったら、周りから頭がおかしくなったのかって、心配されちゃうからダメ」
「それ、普通に私のこと貶してるよね」
そんな他愛もない会話を楽しんでいると、先頭を歩いていた先生が「武器保管庫1-2」と書かれた教室の前でとまった。私と雪は話すのをやめ、先生が話始めるのを待った。
「それではここで一人ずつ小銃と拳銃を支給していきます。出席番号1番の人から受取口に向かってください。受け取るときに自分の名前と学生番号を聞かれるので伝えてください。小銃と拳銃を受け取った人から教室に戻るように」
そういうと先生はドアを開け、「では中に入ってください。」と言った。教室に入ると中は1/3が待合スペース、2/3が保管場所というになっており、待合スペースと保管場所の間には鉄格子のようなもので区切られていた。そして鉄格子の真ん中に受け渡し口があり、そこには私と同じ制服を着た女性が立っていた。
「あそこで受け渡しを行います。1番の人、受け取りに行ってください」
先生の合図とともに銃の受け渡しが始まった。受け取る際の声が裏返ったり震えていたりと緊張しているのが伝わってきた。緊張が無くなったことを心の中で雪に感謝していると、いつの間にか私の順番になっていた。受け渡し口の前に行くと制服を着た女性が新しいM4A1を取り出していた。
「学生番号と名前をお願いします」
「学生番号20125、古城由奈です」
学生番号と名前を伝えると受け取り口の女性は名簿にチェックを入れ、M4A1とGLOCK17を差し出してきた。差し出された銃を手に取ると、考えていたより重さよりも、よりずっしりとした感触が伝わり、ついに本物の銃を手にしたんだと実感した。それが表情に出ていたのか、受け取り口の女性から「顔がニヤついてるぞ」と指摘された。私は恥ずかしくなり、その場から逃げるように武器保管庫を後にした。
教室に戻り、席に座っていると雪が戻ってきた。雪はそのまま自分の席へ向かうと、M4A1を机の横についているガンラックに立てかけ、何事も無かったように座った。
絶対に話しかけてくると思っていた私は、話しかけてこないことに驚いたが、まぁそういうときもあるかと勝手に納得した。そうなると先生が戻ってくるまでやることも無いので私は机の上に置いてあった構内マップを見て待つことにした。
食堂の位置やトレーニングルームなど、よく行きそうな場所の確認をしていると、最後のクラスメイトと先生が教室に戻ってきた。私は構内マップから目を離し、先生の方を向いた。
「全員受け取りましたね。今配った銃はあなた達を守る術であり、あなた達がこの高校に在籍しているという証明であり、指定防衛校の生徒になった証です。ここにいる大半の生徒は3年間、その銃と共にこれからの生活を過ごすことになるでしょう。その銃を使いこなす事があなた達に与えられた大事な使命です。ですがそれはとても難しい事で、誓いこなすことが出来るのか不安な人もいるでしょう。ですがそれが出来なければ目の前で大事なものを失うことに繋がります。大事なものを失しなわないためにも、使いこなせるよう訓練に励んでください」
私は先生の言葉を聞き、入学することを決めた時に誓ったことを思い出した。それは今でも鮮明に覚えている。忘れられない過去の出来事。
あの時に誓った『もう二度と目の前で大切なものが失われないようにする』という言葉を。
「では今後の予定ですが、年間スケジュールの説明を行います。年間予定表を配るので一枚とって、後ろの人に回してください。それが終わって、明日の予定を伝えたら、今日の授業は終わるので、終わったらそれぞれの寮部屋に移動してください」
言い終えると先生は予定表を配り始めた。私は回ってきた予定表を一枚とり、後ろの席に回した。予定表を見てみると「学園祭」や「体育祭」といった普通の学校行事から、「夏季合同演習」「選抜射手大会」といった指定防衛校ならではの行事が記載されていた。
一通りの説明を終え、明日の予定が体力テストであること、部屋に行ったら銃の保管場所と整備のやり方を同室の先輩に教えてもうということが伝えられ、今日は終わった。
「そうそう、1つだけ、伝え忘れていたわ」
わざとらしく思い出したように言い、ニコっと笑った。
「今日渡した小銃と拳銃、毎日忘れずに持ってきてね。忘れるとクラスみんなで仲良く腕立て伏せやることになるから」
最後にサラッと恐ろしいことを言い残して先生は教室から出ていった。絶対に忘れないようにしようと心に誓い、寮に移動しようと立ち上がった。雪はどうするだろうとみてみると、雪も同じことを考えていたみたいで目が合った。とりあえず廊下に出ようと合図を送ると、雪はこくり、とうなずき教室をでた。私も廊下に出ると、雪はM4A1を抱きかかえるように持っていた。その姿はまるで大きなおもちゃを買ってもらった子供のように見えて少し笑ってしまった。
「なんで急に顔見て笑うのよ」
「なんでもない。寮に移動するんでしょ?込み合う前に移動しよ」
雪はじっと見つめていたが、私が歩き始めると雪も隣で歩き始めた。
「そーえば、由奈は寮何号室だった?」
「確か301号室だよ。」
「ほんと!?私も301号室なんだよー!これで3年間一緒のクラスで部屋だね!」
「えぇー、雪と3年間もずっと一緒かぁ。うるさそうだし、先生に頼んで部屋変えて貰おうかな」
と雪をからかってみると、雪はぷぅーと言う感じに頬を膨らませた。
「むー何よー、一人じゃ寂しいくせにー!私じゃ不満だって言うのー!」
「ふふっ、冗談よ。ごめん、ごめん。ほら機嫌直して」
私は雪の膨らませている頬をつつきながら謝った。
「まぁ分かってたから良いけど。あ、そいえば---」
私たちは銃を受け取りに行くときのような、他愛のない会話を楽しんでいた。
しかし、あの時にはなかった銃の重みが、消えていた緊張感を思い出させた。その緊張感は会話を続けても、消えることはなかった。
早速小銃と拳銃が渡されるというスパルタ指定防衛高校。
ちなみにグロックは17より19のほうが好きです。