リトルアーモリー ~戦場を駆ける女子高校生たち~ 作:AEGIS
「ここが301号室」
私と雪は部屋の前で立っていた。話している間に目的の301号室にたどり着くことは出来た。しかし、私たちは一向に部屋のドアを開けようとはしなかった。
「ほら由奈、開けちゃいなよ。ここで止まってると邪魔になっちゃうし」
「いや、雪の方が近いし、雪が開けてよ」
すると雪はすすっと、後ろに下がった。入学式やら銃の受け渡しやらでは緊張しなかったくせにこのドアの先に入ることは緊張するらしい。
明日波高校の寮部屋は1年生から3年生、各学年2人計6名が共同で生活する。部屋のメンバーは普段の生活を共にするだけでなく、全学年合同訓練や突発的なパトロール任務などに対応するためのチームにもなる。
もし先輩ガチャに外れてしまった場合は灰色の学校生活が始まる。そのため、ここが今日一番の難所と言っても過言ではない。そして私も雪もこの難所に飛び込むのを躊躇い、部屋の前で譲り合うという奇妙な状況が発生していたのである。
「私より由奈の方が近いじゃん、由奈が開けてよ!」
「それは雪が下がったからでしょ!そんなに部屋に入りたいな雪が開けてくれればいいじゃない」
「わ、私は、だってほら。由奈の方がこの高校に入学するの楽しみにしてたっぽいし?私が開けるより由奈が開ける方が適任かなーって、仕方ないから私より先に入室する権利をあげる!」
「そんな権利いらないし!理由も意味わかんないし!」
部屋の前で言い争っていると部屋の扉が開き、怪訝そうな顔した女性が出てきた。女性は私たちに銃を渡してくれた女性だった。
「なーに部屋の前で騒いでいるのやら。扉開けておくから早く部屋に入ってきなさい」
女性はそれだけ言うと部屋の中に戻っていった。私たちは顔を見合わせた後、覚悟を決めて部屋の中に入った。
「おっ、ようやく入ってきたか。声が部屋まで聞こえていたよ」
部屋に入ると先程とは別の女性、いや先輩が銃を整備しながら声をかけてきた。私たちの声が聞こえてくれたから先輩はドアを開けてくれたのだろう。あの会話を聞かれていたと思うと恥ずかしくなってしまい、私と雪はうつ向いてしまった。
「なつ先輩、後ろの二人がさっきから部屋の前で騒いでた子たちですか?」
床に寝そべって雑誌を読んでいた先輩がニヤニヤ笑いながら聞いてきた。その様子を見ると全部のやり取りが聞こえていたらしい。なつ先輩と呼ばれた女性は「そうよ、まったく」と言いながらこちらを向いた。
「まぁとりあえず2人とも無事に入ってきたことだし、お互い自己紹介から始めましょうか。私は普通科3年の『
「なつの挨拶は硬いねー、私は普通科3年、『
「普通科2年、『
「うぅー、眠いのに・・・。普通科2年、『
先輩たちはそれぞれ自己紹介をしてくれた。どの先輩もいい人そうでホッとした。
「とりあえず私たちの簡単な自己紹介こんな感じでいいとして、お2二人さんにも自己紹介してもらおうか」
「は、はい!普通科1年、『古城 由奈』です。よろしくお願いします」
「同じく普通科1年、『|中村 雪』でーす、先輩方よろしくお願いしまーす!」
私は少し緊張したままだったが、雪のほうはもう緊張はなくなったようで、いつも通りの雰囲気で自己紹介していた。
「古城さんに中村さんね。中村さんのほうはまだ緊張してるかな?」
「まぁ、なつの見た目はごついから緊張しちゃうのも無理ないけどねー」
「あんたの銃は二度と整備しないわ」
「すみませんでした」
そのやり取りに笑ってしまい、私の緊張は無くなった。
「とりあえず咲の銃は整備しないということでいいとして、簡単な部屋の説明と2人の銃の整備をやろうか」
「ねぇ、冗談だよね?ホント謝るから勘弁してぇ!」
なつ先輩は咲先輩の悲痛な声を無視して私たちに部屋の説明を始めた。
「2人のベッドはこれね。2段ベッドになってるからどっちが上とか下とか決まってないから2人で話し合って決めて。んで、隣にロッカーは鍵がある方が銃のロッカー、もう片方は制服とか入れる普通のロッカー。んで真ん中にあるのがみんなで使うミーティングテーブル的なもの。とりあえず部屋の説明はこんな感じかな。なんかわかんない所とかあった?」
「大丈夫です、説明ありがとうございます」
「よし、なら整備始めよっか。あ、銃の整備用具は銃のロッカーに一式入ってるから。まぁ今回は私と咲の道具が出たままだからそれ使おうか。もちろん手伝ってくれるよね、咲センパイ?」
「喜んで手伝わせて頂きます!」
なつ先輩と咲先輩に教えてもらいながら私と雪は銃の整備を始めた。銃の整備はもちろん初めてだったが、先輩たちの教え方がとても上手く、あっという間に整備は終わった。
「よしこれで整備は終わりっと。もしわからない箇所があったらいつでも聞いて」
「手伝っていただき、ありがとうございました。とてもわかりやすかったです」
「ふふっ、ありがと。なつの方も終わってるみたいだし、少し早いけどご飯食べに行こうか。あ、銃はロッカーにしまってね」
ロッカーに銃をしまおうとしていると、雪が小声で話しかけてきた。
「怖い先輩じゃなくてよかったね」
「私だけじゃなくて雪もでしょ。開けていったとき少し下がったの気づいてたんだからね」
「気づいてたんだ。まぁあ終わったことだし、いいよね」
「おーい、なにコソコソと話をしてんだ。さっさと食堂いくぞー」
玄関には先輩たち4人が待っていた。「今行きます」と言い、銃をしまった。私と雪は部屋に入る前とは違い、軽い足取りで先輩たちが待っている玄関へ向かった。