リトルアーモリー ~戦場を駆ける女子高校生たち~    作:AEGIS

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第4話の続きです。
次回は4月19日(水)に更新予定です。


第4話 1に走って2で走る、3、4がなくて5で走る(2)

「あー、疲れた。これほんとに体力テストなの?」

 

 午前中の体力テストが終わり、1度教室に戻った私と雪は購買でパンを買った。そしてそのまま中庭に向かうとちょうど空いてるベンチがあったので、そこで昼食を取ることにした。

 

「なんで50m走を走った後に、銃持って走らなきゃいけないのよ!しかも100mよ、100m。距離まで伸びてるじゃん」

「班分けの基準で使うんでしょ。べつに1回走っただけならそこまで疲れないでしょ」

 

 雪の文句に答えながら袋を開け、メロンパンを口に入れた。口に入れたメロンパンの甘さが疲れた身体に染み渡った。

 

「だってM4重いじゃん、あんなの持って走るとか拷問でしょ」

「あれで拷問ならこれから毎日拷問以上の何かをすることになるね」

「・・・今からでも入りなおせる高校あるかな」

 

 まだ本格的な訓練も始まっていないのに、もう銃を持って走ることが嫌になっている様子だった。だけどそれは仕方のないことでもある。M4A1の重量は約2.7kg、2Lと720mlのペットボトルをそれぞれ1本ずつ持った時と同じ重さになる。ついこの前まで女子中学生だった私たちにその重量のものを持って動き回るのは大変なことなのだ。

 

「お金貯めて軽い銃買うしかないね、これはもう」

「射撃訓練以外は基本的に支給されたM4しか使えないけど」

「そこでその指摘をするのはNGだよ」

 

 そんな話をしている間に昼食を食べ終えた私たちは、教室に戻ろうと廊下を歩いていた。午後からも引き続き体力テストを行う予定だが、午後にやる種目を覚えていなかったので雪に聞いてみることにした。

 

「そう言えば後種目何やるか覚えてる?」

「体力テストの話?朝からずっと身体動かしているのに、体力テストの話が出来るなんて体力ヤバすぎるでしょ」

「少し気になったから聞いてみただけ。まぁ何が来ても全力でやるけどね」

「さすが優等生。確か午後は反復横跳び、上体起こし(腹筋)、あとは覚えてないけどたしか最後にヤバいのがあった気がする」

「ヤバいのってなんかあったっけ?覚えてないなぁ」

「いやあったはずだよ。あぁーあれなんだっけなぁ」

 

 雪は「うーん」と必死に思い出そうとしていた。確かに言われてみれば最後に何か走る系のテストが何か残っていた気がしてきた。すると雪は思い出したようでぱっと顔を上げた。

 

「思い出した!シャトルランだよ、シャトルラン!」

 

 シャトルランといえばたしか、2本引かれた線の間を音が鳴っている間に走るというのを繰り返す種目のはずだ。確かに最後にやる種目としてはきついかも知れないが、ヤバいというほどのものではない気がする。

 

「シャトルランかぁ。最後にやるのはきつそうだけど、ヤバそうではなくない?」

「えー、そうかなぁ。なんか聞いたときに普通のシャトルランじゃなかった気がしたんだけど、気にし過ぎただけかなぁ」

 

 雪はまだ少し気になっているようだったので、「シャトルランなら大丈夫だよ」というと納得した表情になった。

 この時、私たちは忘れていた。明日波高校が指定防衛校であるということを。

 

 

~同時刻:食堂にて~

 

「あの2人大丈夫かな?」

「あの2人って?」

「由奈さんと雪さん。今日1年は体力テストでしょ」

 

 私は同室になった後輩2人を気にしていたが、前に座っている咲のほうは全く気にしていない様子だった。

 

「あー体力テストかぁ。確かにここの体力テストはちょっと独特だけど、由奈ちゃんは体力ありそうだし、雪ちゃんは無理はしないだろうし、大丈夫じゃない?」

「確かに雪さんは無理しなさそうだけど、由奈さんの方が心配なの」

「心配するようなこと、あったっけ?」

 

 咲はなんのことかわからないといった表情で聞いてきた。まさかアレのことを忘れているのだろうか。忘れていたとなると朝のランニングもまさかいつもと同じペースで入っていたのだろうか。

 

「もしかして朝のランニング、由奈さんも同じペースでも走ったんじゃないでしょうね?」

「ん?ずっと私と同じペースで走っていたよ?いやー体力あるよね、ほんと」

 

 恐る恐る先に聞いてみると、一番聞きたくない回答が返ってきてしまった。前に座っている(バカ)は本気でアレのことを忘れていたらしい。

 

「まさか、アレのこと忘れているんて。昨日のうちに警告しておくべきだったわ」

「アレって?なんかあったっけ?」

「シャトルランよ、シャトルラン。ここのシャトルランは特別仕様でしょ」

 

「あっ..」っと、声を出すと咲は手に持っていた箸を落とした。ようやく私の指摘により、自分がやらかしたことに気付いたらしい。

 

「け、けど、由奈ちゃんもヤバいと思ったらリタイアするかでしょ、たぶん・・・」

「だといいけど。けど由奈さんは自分からリタイアするタイプには見えないし、絶対自分からはしないでしょうね」

「なら、2回音についてけなくて強制リタイアになるでしょ。うん、きっとそうだよ」

「そうなることを祈るしかないか」

 

 とりあえず、今はどうすることもできないので心の中で由奈の無事を祈った。

 

 

 

「腕を下げるなー!銃を落とすつもりかぁー!」

 

 朝礼台の上に立っている先生はシャトルランをしている私たちの方を見ながら声を上げた。私は必至で落とさないよう、銃を抱えながら20mの往復を続けていた。

 体力テスト最後の科目は確かにシャトルランだった。しかし、普通のシャトルランとは違い、銃を持った状態でシャトルランをするのが明日波高校の伝統らしく、最後にやる種目としてはかなりハードだった。一応、音が鳴っている間に2回走り切れなかった場合は強制リタイアとなり、体調を考慮してか、自主リタイアも認められている。そのため、シャトルラン全体の半分が終わるころには走っていた生徒の半分以上がリタイアしていた。

 私は荒い息を吐き、必死に走っているとこちらを見ている雪の姿が目に入った。その表情はとても心配そうで、「無理するな」と訴えかけてくるようだった。確かに朝のランニングもかなりハイペースだったし、これまでの種目もかなり疲れるものが多かった。今リタイアしても何も問題はないのだが、ここまで来たら完走して気持ちよく終わりたい。

 

「あと10往復で終わりだよ、頑張って!」

 

 回数を数えてくれているペアのクラスメイトがそう教えてくれた。お礼を言おうとしたが、そんな余裕はなかった。とりあえず、頷いて返事だけ返し、「あと少し!」と気合を入れ直した。

 

 

 

「で、その結果がこれねぇ」

 

 なつ先輩はぐったりと壁に寄りかかっている私を見て呆れていた。気合を入れ直した後、無事にシャトルランをリタイアがすることなく完走することが出来た。しかし代償は大きく、誰かの手を借りないと動くのが難しいほど、疲労困憊していた。

 

「由奈ちゃん、ほんとごめん。私がアレのことを忘れていつも通りに走るから・・・」

「いや、先輩は全然悪くないですから。私が自己管理できなかった結果ですから」

「そうだぞー、反省しろー」

「雪は黙ってて」

 

 自分が悪いのに、咲先輩は私に謝ってくれた。そのことが申し訳なく、今後はなるべく無理をしないようにしようと心の中で宣言した。

 

「まぁ今回は雪さんの言う通り、反省して無理をしないようにすること。戦いになるってときに動けませんじゃ許されないからね」

「はい、もう無理はしないようにします。」

「よろしい、じゃあ夕食は弁当貰ってくるから」

「あ、ありがとうございます。お手数かけます」

「じゃあお弁当貰ってくるから部屋で一緒に食べようか。雪さん、一緒に取りに行ってくれる?」

「わかりました~。あ、私のことは、さん無しで読んでくれて大丈夫ですよ」

「私のことも由奈で大丈夫です」

「わかったよ、じゃあ雪いこうか」

 

 雪となつ先輩がお弁当にちょうどあかり先輩たちが戻ってきた。2人が私の様子を見て驚いていたので、もう一度今日何があったのか説明を始めた。

 

 

 朝6時前、昔は目覚まし時計をセットして起きていたが、今では勝手に目が醒めるようになっていた。いつも通り、まだ誰も起きていないので音をたてないようにベッドから出た。

 

「咲先輩、おはようございます。」

「え、由奈ちゃん!?何で起きてるの!?」

 

 驚きのあまり、少し大きな声が出てしまった。由奈すでに着替え、制服をも手織り、走りに行く用意は完ぺきだった。

 

「由奈ちゃんなんで起きてるの?走るの?」

「?だって昨日一緒に走るって言ったじゃないですか」

「いやいや、身体は大丈夫なの?」

「ぐっすり寝たので大丈夫です。みんなが起きる前にいきましょう」

 

 由奈は走るのは当然ですと言わんばかりに返事をしてきた。この表情はダメと言っても絶対についてくると感じた私は「昨日よりはペース落とすからね」と宣言をして、走る準備を始めた。




シャトルランは小学生の体力テストでやったことがありますが、最後まで残っていたことはありませんでした()
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