「くっ冬夜殿まさかお主も『アクセル』の使い手だったとは!…」
「あはは…」
ミスミドの国王、ジャムカ殿下に俺達は果し合いを申し込まれ仕方無く応じた。
それには重鎮達が何故か賛同してきたからである。
「少し痛い目に遭ってもらわないと」とか「これで殿下も少しは行動を慎まれると良いのだが…」とか言われていた。
もしかして殿下ってあまり政務は信用されてないのかよ?…
一戦目は冬夜がしたのだが直接的な魔法は禁止とのルールだったので…彼は無論スリップをかけて早々に退散しようとした。
殿下にそれは無しだー!と抗議され仕方無く真面目に再度戦った。
殿下が無属性魔法の一つ自身のスピードを上昇させる『アクセル』を使い恐るべき速さで剣撃を繰り出したが、冬夜も負けじとマルチプルとシャイニングジャベリンを発動。
だが殿下には見切られて剣撃が届こうとした瞬間、覚えたアクセルを発動し回避。
どうやら前に発動したシャイニングジャベリンはブラフだったようだ。
殿下はアクセルを使える者が他にもいる事に一瞬驚くが気を取り直しそこからはアクセル同士の鍔迫り合いとなった。
しばらくし冬夜がアクセルとブーストを併用し始め、それに対応し切れなかった殿下の木刀が弾かれ為彼の勝利が確定した。
「次は俺だな!冬夜その木刀をこっちに!」
「お、おうほれ!」
俺の番がきたので冬夜の使っていた木刀も扱い構える。
「ムッ!お主は二刀流で挑むか!『アクセル』!」
「そういう事です。アクセル!」
互いにスピードを上げぶつかり合う。
「ムウゥッ!?…中々やるではないか!」
「獣王殿下、貴方こそ俺の二刀撃を一本で防ぎ切ろうとは流石ですね!
ブースト!」
「ムッ!同じ手は喰わんぞ!」
「かかりましたね?」
ブーストをかけて一撃の体勢に踏み込んだのを見て殿下は構える。
だがそこで俺はニヤリとなる。
「【蒼王竜星連撃<シャイニングブルードラゴンバーストストリーム>】!!
せいやあああー!」
「な、なんだと!?…うおおおお!?…」
俺がゲームで見て模倣した技にアレンジをかけた奥義を繰り出す。
殿下はこれ程の怒涛の連撃が繰り出されるとは予想外だったのか驚愕していた。
遂には止まらぬ連撃に耐え切れず殿下の木刀は弾かれた。
「チェックメイトです!…」
「この儂が二回も敗北を決するとは…流石は神獣に認められた者達ということか…」
ちなみに重鎮達は「これで真面目に仕事に励んでくれる」と喜んでいた。
本当に王族って変な人多い気が…。
決闘後、俺達は宮殿に数日間滞在する事になり殿下主催のパーティーにお呼ばれした。
パーティー用ドレスを着飾ったエルゼ達はとても可愛く俺と冬夜はスマホで記念撮影した。
冬夜がフラッシュを焚きながらした為他の者達に警戒されてしまったが俺が魔法だと誤魔化した。
その際、殿下達にも焼き増しをお願いされてちょっとゲンナリしたのは別の話。
「ン?…」
「なんだアレ?…」
パーティーの最中、少し時間が空いたので宮殿を冬夜と二人で探索していると二階から何かが降りてきたかと思うと服の裾を引っ張ってきた。
『キュ!』
「く、熊のぬいぐるみ?」
「なんでこんな所に?」
それは熊のぬいぐるみだった。
もしかして自立して行動しているのか?
「俺達にこの宮殿の何処かについてきて欲しいって言いたいんじゃないか?」
「た、多分そうだと思うけど…」
『キュー!』
俺達の考えを肯定するかのように二階へと歩き出すぬいぐるみ。
俺達は疑問に思いながらもついていく。
「此処か?」
ぬいぐるみはある一室の前で立ち止まる。
促されるままにドアを開ける。
其処には
「あら?…ポーラが珍しく人を連れてくるなんてね」
美しい羽根を背に広げた銀髪のツインテール少女が佇んでいた。
「君は一体?」
「私?私は妖精族の長、名はリーンよ。
この子。ポーラには面白そうな人がいたら連れてきてと命令しておいたけど…」
リーンと名乗った少女、妖精族の長らしい。
「私は貴方達より大分年上よ?これでも」
「ええ!?…」
リーンの言葉に冬夜がビックリする。
いやそりゃそうだろ、妖精族の長ならば俺達より十倍近く生きている筈だ。
「年?それなら600とうーん…12歳よ」
聞いてはいないのに言ってきたよこの人!
というか少しサバよんではいないか?
「何か失礼な事を考えているようだけど…まあ良いわ。
それで貴方達の方は何者?」
心を読まれた事に視線を逸らし俺達はそれぞれ自己紹介する。
「そう、話題の竜殺しって貴方達だったのね」
「ああ…それでそのポーラは一体どんな魔法で動いているんだ?」
今度は俺達がポーラについて聞く。
「あらよく気が付いたわね。そっちの子と違って貴方は察しがいいみたいね」
「生気は感じられなかったからね。
だから普通のぬいぐるみになんらかの魔法がかかっている事はすぐに分かったさ」
冬夜はポーラを召喚獣と思っていたみたいだが。
「ご名答よ。ポーラは私の無属性魔法『プログラム』で動いているの」
「何?」
現代魔法を扱う俺からしたら久し振りに聞く単語を耳にし思わず聞く。
「そうね、一つやってみせましょうか」
とリーンは部屋の隅にあった椅子をポーラに持ってこさせて手を翳し魔法をかける。
「『プログラム開始/移動:前方へ二m/発動条件:人が腰掛けた時/プログラム終了』」
「おお!?…」
「ほう!…」
かけ終わり彼女が腰掛けると椅子が一人でにゆっくりと動き始めた。
「アラ?…速度の指定をするのを忘れていたわね…まあ、こんな感じの魔法なんだけど…イッセーの方はあまり驚いていないようだけど?…」
「ああ、俺も一応ちょいと似た様な事は出来るからな。
それに冬夜だって使える筈だ」
「そうだね。ちょっとやってみるか!」
「え?」
俺達がそう言うとリーンは他の人と似た反応をする。
先程の椅子に冬夜が魔法をかけてみる。
「それじゃあ『プログラム開始/移動:後方へ人の歩く速度で五m/発動条件:人が腰掛けた時/プログラム終了』っと…リーン又座ってみてよ」
「え、ええ…」
冬夜に促されたリーンが再び座る。
すると椅子が人の歩幅の間隔で後方へ下がった。
成功だ。
「貴方達…もしや他にも魔法が使えたりするのかしら?」
リーンが驚愕した表情で聞いてくる。
「そうだ。知りうる限りの全ての属性魔法が使えるぜ」
「それにイッセーの場合はリカバリーの上位互換の固有魔法が使えるしな」
「『復元する多重世界』!」
俺は以前修復しないままであった水晶鹿の角を取り出し傷をデユアルダカーポで修復した。
リーンはそれに目を丸くする。
「!!…驚いたわ!治癒と物体の修繕の両方を兼ね備えた魔法なのね!…あ、貴方達、私の弟子になる気はないかしら?」
「無いな」
「遠慮しとく」
即答で申し出を断る。
「こ、コホン…仕方無いわね今の所はシャルロッテで我慢するわ…」
惜しそうにそんな事を言う。
ってシャルロッテさんの師匠ってこの子だったのかよ!
「…そういえばイッセー、貴方と同じ様な魔法を扱う子が同族にいたんだけど…」
「何?」
聞き捨てならない事を聞いて俺は出ようとした足を止める。
「いつも絵ばかりを描く事に夢中になってた子なんだけど…」
「!?」
特徴を聞いた途端、俺は一瞬激しい頭痛に襲われた。
「ちょっと大丈夫なの!?…」
「ッ!…なんでもない…その子は一体どうしているんだ?」
「…ある日、突然妖精領に帰って来なくなってそのまま行方不明になってしまったわ…」
「なんだって!?…」
とても大切な何かを忘れてしまっている気がする…。
「誘拐されてしまったのかどうなのかは定かではないわ…けれど貴方は何か知っているの?」
「いや…なんだか懐かしくてそれでも忘れてしまっている気がしてならない…」
「そう…」
リーンが訝しげに問いかけてくるが俺はまともな答えを返す事が出来なかった。
翌日、俺達は王都の付近の森を訪れていた。
「一体どんな物を作られるんでしょうか?」
「アッと驚くと思う物だぜ!といっても上手く機能する物が作れるかどうかはまだ分からないけどな」
「楽しみですね!」
リンゼ達がキラキラした表情で俺と冬夜の武具作成を見ていた。
俺が用意した素材は此方!
水晶鹿の角、黑竜の皮、瑠璃に頼んで少しばかり採取させてもらった(本人はかなり痛みを我慢してた…すまん!)蒼竜素材、後は王都の店でまとめ買いした鉄や金、オリハルコン等の金属、ゴムだ。
水晶鹿の角に関しては数が足りていなかった為事前にエルゼに水晶鹿の出現場所を聞いてドロップ稼ぎして増えていた。
「よし!」
気合を入れてそれぞれの素材にモデリングをかけ作り変える。
水晶鹿の角は一部の内部フレーム・外装の二重フレームに、竜素材は皮を外装フレームに、爪を前下部、背部の外装に、金属をいくつもの配管とボディの骨組み、それとここからは少し長くなるので必要な部品と作り変えた。
これで第一段階は終了。
組んでひとまずの完成をさせる。
「こ、これは一体?…」
ひとまず完成した品を見てエルゼ達は目を丸くしていた。
だが喜ぶのはまだ早いぞ。
「『プログラム開始/移動最大速度時速120Km/発動条件:起動時に一定の魔力を注入し「発進」のキーワードを唱える/「変形」のキーワードで武装航行・通常走行モードへの変更/本体への魔力切れ、及び運転者の「停止」のキーワードで停止/プログラム終了』」
第二段階、プログラムの魔法で簡単な動作を組む。
後は最終段階、スマホをその物体に接続しプログラムの魔法では組み込めない、現代魔法のコードを扱い難しい動作を直接プログラミングした。
「完成だ!」
「?…もしかしてこれは乗物なのでござるか?」
「ご名答!試運転してみるからちょっと下がっててくれ」
そう、俺が作ったのは興味があった武器にもなるいわゆる武装バイクだ。
それも水晶鹿と竜の素材をふんだんに使ったVツインエンジン採用の魔力ENで動くオリジナリティー溢れとってもエコロジーな俺だけのカスタマイズ仕様だ。
名付けて「シャイニングブルーシュヴァルツドラグーン号」!
え、免許?…元の世界に戻ったら全力で真っ先に取得しますので見逃して下さい!
早速試運転を試みる為、エルゼ達を離れさせる。
「魔力注入完了。いざ!発進!」
ブロロロ!と気持ちの良いエンジン音が鳴り響く。
ハンドルを巧みに操作し無事森を一周してきた。
ふう、とりあえずのトライアルは成功のようだな。
又後日、追加のプログラムを思いついたら随時組み込もう。
「す、凄いですよイッセーさん!
こんな物を作れるなんて!」
「わ、私乗りたいんだけどいいかしら?!」
「私も!」
バイクの性能を目の当たりにしたエルゼ達が次々に乗ってみたいと言い出す。
「はは、コレの制御は結構難しいからまた何時かな…」
「「ええー!?」」
操作性を知っている俺だからこそ普通に操作出来るのだがそれを知らない彼女達を乗せるのは危険極まりないので断った。
彼女達も希望すれば免許取得をさせるべきだな。
一方の冬夜は「ブリュンヒルデ」と名付けた可変銃剣を作っていた。
俺よりもインパクトは大きく無かったがそれでも俺から見れば素晴らしいといわざるを得ない一級品物だった。