Side一誠
ドタドタ!
「お帰りなさいませ旦那様。
門から戻られるとは珍しいですね?
おや?その子は一体?」
屋敷に戻って声をかけられる。
今更ではあるがこの人はうちの屋敷の専属執事のロイムさん。
スゥの執事であるレイムさんと冬夜の専属執事であるライムさんの末弟である。
彼は俺がゲートを使わずに帰ってきた事、それと抱えてきた少女を見て目を丸くする。
あ…慌てていて忘れてた。
ってこんな事している場合じゃねえ!
「ちょっとばかり複雑な事情があるんです。とにかくこの子の状態があまりにもよろしくないんだ。
とりあえずは俺のベッドに寝かせます。
詳しい事は後で皆に話ますのでロイムさんはこの子がゆっくり休められる様にそれとトリスさんに急ぎ面会の手筈をお願いします!」
「承知致しました!」
ロイムさんに準備をお願いし俺は急いで自室へ駆け上がる。
復元する世界を一度かけておいたとはいえ最早一刻の猶予もないのだ。
「『復元する多重世界』!」
少女えっと確かサナだったけ?をベッドに寝かせマホウを彼女にかける。
「う、は…」
デュアルダ・カーポをかけて中毒症状を完全に緩和させる。
彼女は症状の苦しみからようやく解放され眠る。
「ふう、これで彼女はもう大丈夫な筈だ。後は…」
彼女と冬夜が連れていったあの子がどうして犯罪に手を染める事でしか生きる事が出来なかったのかの原因を知る為国王様に冬夜と一緒に面会をしに行った。
「…ふむ、話はよく分かった。
だが罪は罪だ…といっても情状酌量の余地は十二分にあるな。
だから今回の事は罰金と厳重注意だけという事にしといてやろう」
王様が自転車の話をしようとしていたがそれ所ではないので此方の話を聞いてもらう。
彼はそう言う。
手厳しいな。
だが王様の優しさは感慨深い。
少額といっても少女達が払える訳はないので俺達が代わりに支払う。
「御慈悲を頂き感謝します。
それで彼女達の様な浮浪児が多いのは…」
「うむ、そこが解せぬのだよ…孤児院への支援予算金は充分に出している筈なのだが…」
話を続けると王様は顔をしかめつかせる。
やはり何かあるようだ。
「おい!」
「うおっ!?…」
王様が手をパチンと鳴らすと天井裏から白仮面のメイド二人が音も無く姿を現した。
冬夜は驚いているが俺はエスピオン部隊の人だという事が分かっていたので平然としている。
しかしラピスさんやセシルさんじゃないな。
仮面にある紋章の形が違うので彼女達ではない事は分かった。
ラピスさんが六角形、セシルさんが楕円形といった所だ。
今現れたこの二人は一人が五角形でもう一人が三角形だ。
「お呼びでございましょうか?」
「「んン?…」」
今物凄く悪寒のする声が聞こえた気が…嫌々気のせいだよな!?
メイド服着ている人なのに野太い声が聞こえる訳が…
「孤児院への基金管理は誰の担当だったかね?」
「確かセベク男爵だったかと…彼は此処数年何故か妙に羽振りが良いとの噂を耳にしています」
五角形の人がそう言う。
となるとソイツが明らかに怪しいな。
「分かった。彼の金の流れを徹底的に調査した後、横領の事実があれば直ちに拘束せよ!」
「は!」
五角形の人が王様の命を受け退出していく。
「今度は一誠殿の方であったな。
その少女は違法薬物の重度の中毒者だったという事だったな?」
「ええ、自ら進んでそれに手を染めてしまう様な子じゃないと俺は思います。
まだ治療を施してから目覚めてはおらず詳しい話は聞けていないので断定でしかありませんけど…」
「ふむ…マリアンノ、此処最近の違法薬物密売組織の行方は?」
「以前掴めておりませぬ…」
「…」
気のせいじゃなかった!
「と、トリスさんその人は…」
「ああ、マリアンノは…」
「あら!イイ男じゃない!」
「ヒイッ!?…」
「!?…」
今ので大体分かった。
この人完全にオカマさんじゃねえか!
俺達への視線が女性のソレとは明らかに違うし!
「…彼はこの通り女装癖のある者でな…」
「あら旦那様?私は心はいつでも乙女ですわよん!」
「…仕事の腕は確かだから大目に見てやってはくれないだろうか?…」
王様がげんなりとした表情でそう言う。
って迫られた事あるのかよ!
「話を戻そうか…して密売組織と関わった貴族の洗い出しの方は?」
「其方の方は既に。
恐らくアーベルド家の次男であるヒッツ子爵でしょう。
彼には良い噂を聞きませんから」
「何?…」
アーベルド家だと?
あそこは確か凄く良い人達だったと思う。
公爵の位を貰ってから交流があったので良く覚えている。
その次男坊の事は名前を聞いた事があるだけで会った事は無かったが…いわゆる手のつけられない馬鹿息子といった所か。
ン?…そういえばアーベルド氏がその時言っていた事があったな。
「たった今思い出した事が」
「何?」
俺はその事を話す。
アーベルド氏が気に入っていたメイドさんが一人その次男坊によってクビにさせられていた事を。
「まさかその少女がアーベルド家をクビにさせられたメイドかもしれないと?」
「ええ、恐らくその馬鹿次男が密売組織から買った違法薬物を嫌がる彼女に無理矢理打ったのかもしれません…その後不始末を隠す為に彼女になんらかの罪を被せてクビにしたのでしょう。
依存性が物凄く高い薬物だったようなのでクビにさせられた後の彼女は自分の意思ではやめられず薬の為にスリを働いていたのかと…」
「…」
俺の推論を聞いて王様達は怒りの表情を浮かべていた。
それは俺も同じだ。
「マリアンノ、今すぐ警備に連絡!
ヒッツ子爵を今すぐ拘束し尋問せよ!」
「はっ!了解致しました!」
王様がマリアンノさんに命を下し彼は颯爽と退出していく。
これで良くなると良いのだが…
「あ!」
「ン?…」
マリアンノさんが去り際に何かを思い出したかのように言う。
「私、今日から貴方の専属メイドとして配属されるから。
待っててね!」
「ヘッ!?…」
俺に満面の笑みでそう彼は言ってきた。
嘘だろ!これから毎日あのオカマの世話を受ける事になるのかよ!?
「い…嫌あああああー!?~!?☆彡…」
「一誠殿!?しっかりしろおい!?」
俺はそれをうっかり想像してしまい声にもならない悲鳴を上げて気絶してしまった。
うう、悪夢だ…。
というか今迄のシリアスな雰囲気が台無しだ!
翌日
「…酷い!そんなの酷過ぎますわ!」
「そんな目に遭わせたソイツの事を一発いや百発ブン殴ってきても良いわよね?」
「拙者、刀を持つ手が震えているでござるよ…」
俺と冬夜は保護した少女、サナとレネについて話すとユフィナ達は皆怒りを露わにしていた。
というかそっちの子も女の子だったのか。
後、エルゼと八重は落ち着いてくれ。
件の馬鹿次男坊はあの後すぐに拘束され数十分の尋問の末にサナにしでかした事全てを自供した。
彼の犯行動機はアーベルド氏に対する逆恨みだった模様。
他に被害者がいなくて良かった。
「旦那様!少女が目を覚ましました!」
「本当か!?今すぐいく!」
サナがようやく目を覚ましてくれたと聞いて俺は冬夜にレネを呼ばせては彼女に話をしに向かった。
「此処は?…」
「サナちゃん!」
「れ、レネちゃん?」
「このお兄さん達が私達の事を助けてくれたんだ!」
「え?…」
サナは目覚めると周囲の状況が激変している事に驚く。
レネは嬉しさのあまり彼女に抱き着いていた。
「此処は俺の屋敷だ。
大丈夫、君をそんな目に遭わせた輩は既に拘束されているから。
そんなに怖がらなくてもいいしもう苦しむ事も無いんだ」
「…」
「アーベルドさんの事は覚えているか?」
「あ、はい…」
「アーベルド氏は君を再度雇用したいそうだ」
この事実を聞いたアーベルド氏も心底怒りを露わにしていた。
家族の温情をかけた事を酷く後悔していたようだ。
「レネちゃんはどうするの?…」
友達の事が気にかかるのか彼女には迷いがあるらしい。
「私なら冬夜お兄さんのお屋敷で働ける事になったよ!」
「そう…だったら私えっと…」
「兵藤一誠だ。イッセーと呼んでくれて構わない」
「い、イッセー様の所でどうか働かせて下さい!」
サナは思い切ったようにそう言ってきた。
「本当に良いのか?…アーベルド氏の事は…」
「一度会って話をつけてみます…ですから」
単純にレネと離れたくない気持ちもあるのだろう。
「分かった。俺も一緒に話をしてみるよ」
「本当ですか!?」
彼女は嬉しそうにそう言った。
後日、アーベルド氏に話をつけにいった。
彼は名残惜しそうだったがサナの一番の幸せを願ったのか俺の屋敷で働く事を受け入れてくれたのだった。
翌日
「ン?…あれはぽ、ポーラ!?どうして此処に!?」
「まさかミスミドから一人で此処までやって来たのか?!」
朝早く目が覚めて一階に降りようとするとある姿が目に入り思わず驚く。
「そんな訳ないでしょう」
「リーン!?君も来ていたのか」
「ええ、少し重要ともいえる話をしにね…」
「?それは一体…」
「貴方達、水晶みたいな魔獣と遭遇して戦い勝ったという噂を聞いたのだけど」
「!?ああ…それが何か?」
「ミスミドにもその魔獣が出たのよ」
「「なんだって!?」」
リーンが険しい表情でそう言ってきたので俺達は驚いた。
オカマさん…一体何処の福山なんだ…(すっとぼけ