でもクワガタがノーマルすら出ないという糞不均一アソートォ!
タートル「やあ!」
テメエの事だ亀え!
Side一誠
リーニエ王国への政治的介入に関する西方緊急招集会談から翌日
「それで…リーニエからの返答は?」
「各国がリーニエに抗議を入れたが知らぬ存ぜぬとの事だ…」
「そうですか…」
あくまでも向こうは奴隷を不法に所有している件についてシラを切るつもりみたいだな…。
まあいい、此方の予想の範疇ではあるからな。
今はリーニエの第一馬鹿王子と宰相の人間性を完全に見極め、腹に抱えている野心を暴き、そしてクラウド王子の母親であるエリア王妃様を救出する事が優先事項だ。
既にリコールでリーニエへの道はあるのでいつでも行ける準備は整っている。
ゲートをリーニエの街の裏路地へと開き、そこから徒歩で城へと俺達は向かう。
まずは俺達はインビジブルで姿を消しておき、クラウド王子にスゥとの婚約破棄の件を宰相に伝えてもらうか。
「只今戻りました兄上」
「む?戻っていたのかクラウド。
愚図のお前にしては珍しいじゃないか。
明日は雨かな?はははは!」
「「…」」
コイツが件のザブン王子か。
全身ラメだらけの金キラキンとか…うん、確かに完全に第一印象が馬鹿王子だ。
奴の背後には取り巻きであろう貴族の男達と顔を俯かせたメイドさんがいた。
彼女の首には「隷属化の首輪」が取り付けられていた。
アレを製作している大元締めがサンドラ王国だ。
いずれ潰さねばな!…
「それで先方の返答はどうした?勿論イイ返事を貰ってきた筈だよなぁ?」
威圧するように奴はクラウド王子に嫌味ったらしく言う。
「いえ…誠に残念ながら既にオルトリンデ嬢には御婚約者がおらっしゃられるとの事で縁談をお断りになられました」
「あ!?なんだって?…」
クラウド王子の言葉が余程信じられなかったのだろう。
更に嫌味を増していた。
「で、ですから縁談はお断りに…」
「この愚図の弟が!」
「ぐふっ!?…」
クラウド王子の言葉を途中で遮り奴は彼にグーパンを飛ばしてきた。
そしてとんでもない事を言い放つ。
「全く以て使えないなあお前は!
だったら侯爵嬢を攫ってくるとか少しは頭を使って考えろよ!
もう少しで奴隷に出来たんだからさ!」
「!」
此奴!…スゥを誘拐しようと計画していた挙句に彼女を奴隷にしようとしていただと!?…流石に許せないな!…
「あのガキ!パーティーで僕を見て笑いやがったんだよ!
たかが侯爵家の娘の分際の癖してなぁ!」
「まああんな悪趣味な恰好してたらそりゃあねー…」
エルゼがぼそっと口を開く。
幸い聞こえてはいない。
確かにそんな明らかに頭の悪い恰好していたら誰だって失笑するだろうが。
それにスゥはまだ幼いんだ。
そんな事も形容出来ないのかこの馬鹿王子は。
「チッ!…ハァー、相変わらず出来の悪い身内をもつと苦労が絶えないね。
それで侯爵令嬢の婚約者って何処の誰だ?」
吐き捨てる様に馬鹿はクラウド王子に尋ねる。
「ぶ、ブリュンヒルド公国双王陛下のお一人である一誠・ブリュンヒルド様にございますが…」
「ブリュンヒルド?ああ、あの最近出来たっていう双王制とかいう訳の分からん政策をとっている成り上がりのちっぽけな国か。
あんな小国に嫁いだ所で何ら得になりゃしないのにさ。
それに王は一人で良いのだ」
随分と勝手な事を言う馬鹿。
お前の様な馬鹿を止める為にあえてその政策をとった国は過去にも存在しているんだよ!
本当ならば今この場で奴を私刑に処してやりたい所なのだがぐっと我慢するしかない。
だが奴は更にとんでもない事を言い放った。
「そうだお前さ、ブリュンヒルドの噂流布してこいよ」
「どういう事でございましょうか?…」
「そうだな…ブリュンヒルドの双王は女癖が悪くて泣かされた女がたくさんいるってな!」
よし!…後で覚えておけよ此奴!
自分や国だけでなく親友の冬夜までも馬鹿にされたのだ。
既に馬鹿に対する俺達の怒りは限界点を超えている。
「…」
流石にそれは良心が許さないと思ったのかクラウド王子も馬鹿王子に対して微かな怒りを見せていた。
「なんだぁ、その目はぁ!」
不味い!今度は又クラウド王子を蹴ろうとしたので止めようとした所、其処に別の人物が現れた。
「あら、ザブンどうしたの?」
「コイツがさ、侯爵令嬢との縁談を台無しにしやがったんだよ母上~!」
この女性が現リーニエ女王でこの馬鹿王子の母親か!
厚化粧といい、身に合わない派手なドレスで着飾っている事といい確かに親子だな。
「まあまあ可哀相に!ベルファストは馬鹿の国だから仕方無いわ。
滅びれば良いのにね」
「僕が国王になった暁にはあんな国痛い目に合わせてやるまでさ。
もう婚約なんてしなくても王位は継げるんだからさ」
「そうねえ、ワルダックに相談してみましょうか」
うん…この母親も極刑リストに載せた方が良さそうだ。
どうしてこうも他人を怒らせる天災が世の中に多いのだろうか…。
怒りを通り越して呆れが出てくるな…。
頭の悪い会話の後、馬鹿王子達は部屋を出ていった。
すぐにインビジブルを解いた俺はクラウド王子を回復させる。
「大丈夫ですか?」
「ええ、まあなんとか…」
後は…
「アポーツ」
先程の奴隷にされているメイドさんに付けられている隷属化の首輪をアポーツで取り除いてあげた。
「!?…首輪が取れてる!…」
突然の事にメイドさんは驚いていたがすぐに奴隷から解放された事に喜んでいた。
「よろしかったら貴方のお国迄お送り致しましょうか?」
「は、はいお願いします!」
どうやら彼女はリーフリース出身の娘で冬夜が送り届けに向かった。
その直後、ドタドタと慌てた様子で馬鹿王子が喚いていた。
俺達は慌てて再び姿を消す。
自分の奴隷であった彼女が突然いなくなった事に気付いたようだ。
「オイ、クラウド!僕の奴隷のメイドを知らないか?」
「存じ上げませんが?…」
「チッ!…」
クラウド王子にはシラを切らせる。
いないと分かった馬鹿王子は取り巻き達と共に城の階段を慌ただしく駆け登っていく。
スリップで奴等を転ばせようかと考えたがそこに…
「どうしたのかねザブン?」
「ワルダック!丁度よかった!僕の奴隷がいなくなったんだよ!」
黒服の如何にも感じの悪いおっさんが現れた。
彼奴がリーニエを狂わせている元凶の宰相か。
「戻れと命令は?」
「したけど戻ってこないんだよ!
首輪の不調じゃないの?」
「では殺してしまいなさい。
遺体は此方で処理しておきます。
奴隷などいくらでも調達出来るのだからな」
「ちぇっ!まだ遊び足りなかったのになあ!…」
馬鹿王子がワルダックに言われ命令を出した瞬間、俺の手にあった首輪が破裂した。
危なかったな…。
「おや、クラウド王子何時お戻りになられていたのです?
縁談は纏まったのですか?」
「い、いえ…」
ワルダックがクラウド王子に気が付き件の話をしてくる。
縁談が破談になったと分かった瞬間、その嫌味な顔は必要以上のデカイ態度を取っていた。
「ふんまあ良い。
ならばその内あなたにはパルーフ王国への使者として行ってもらいましょうか」
「パルーフへ?一体何の為に?…」
「和平を結ぶ為ですよ」
ニタニタ笑いながらそれだけ答えて御機嫌斜めの馬鹿王子を連れて宰相は別室へと向かっていった。
「一体どういう事なんでしょうか?…」
「はあ…」
「これってそういう事だよね?…」
戦争を仕掛けようとしているかもしれない奴が敵国と和平を結ぶ?
それにクラウド王子を使者として行かせるって事は何か良からぬ事を企んでいるな。
俺と戻ってきて話を聞いていた冬夜は宰相達の企みを暴く為に使い魔を召喚しインビジブルをかけ、追跡させる事にした。
そこである重大なとんでもない隠された真実が発覚する事になろうとは流石の俺達にも予想出来なかった。