Side一誠
「ユーロンが戦争準備を始めている?」
「ええ…どうやら隣国のハノック王国に宣戦布告しているようです」
「それで開戦の理由は?」
「七千年前から占領されている土地をハノックから取り戻す…まあ最もらしい理由ですね…」
「あのアホ国は…」
前世の記憶を探りながら話を聞く。
はっきりいって七千、五千年前からユーロンが存在している事などあり得なかった。
あの地域は魔獣や一度目に起きたフレイズの襲来で使いものにならなくなっていたからだ。
だからユーロン側の主張は歪曲された嘘の歴史を振り翳し、真の狙いはハノックの資源といったところだろう。
どの道ユーロンが仕掛けようとしているのは只の侵略戦争に過ぎない。
この間またも偶然エンデと再会し彼からフレイズの大襲来が間近に迫っているとの話を聞いていたので俺達は頭を抱える。
只でさえ未だ出現場所を探る手段は無いのにあのアホ国に無益な戦争で動かれると余計に厄介迷惑極まりない。
「どうする?」
「どうするもなにも止めるさ。
確かウチの騎士団にもハノック出身の者がいた筈だからな。
ま、その前に下準備だ」
既にユーロン軍は進軍を開始しているとの事なので急がねばな!
「さあ、来れるものなら来てみやがれ」
すぐに件の騎士を呼び出しハノックへ転移。
ユーロン軍侵攻を防ぐ準備を終わらせた。
翌日、ハノックの小さな村クイントを拠点にしようとユーロン軍が侵攻してくるのが見えた。
俺達は予めスマホで録画しておいた声明映像を流す。
「『ユーロン軍に告ぐ!これより先は我がブリュンヒルドの領地である!
これ以上の侵入は我等に対する侵略行為とみなし相応の対応をさせてもらう!』」
「なんだと!?…こ、こんな事が!?…」
映像に出された書類を見たユーロン軍部隊長は驚く。
そう、俺は円滑に動けるようにハノックの国王と面会しユーロンとの戦争を回避させる為に一時的にクイント村をブリュンヒルドの土地として扱う契約を交わしておいたのだ。
「さてこれで向こうがどう來るかだが…」
「あんなのはハッタリだ!全軍進めー!」
…うん、安定の無視ですか。
だけど無駄だ!
「!?全軍止まれー!」
真っ先に突撃していったユーロン兵が突如として姿を消したので部隊長は慌てて静止させる。
「な、何が!?…」
「『尚この警告を無視した場合早急にお帰り願おうか』」
そう、俺達は魔法と『工房』を駆使しクイント村の入口に巨大な転送壁「ゲートウォール」を築き上げておいたのだ。
転送先は勿論ユーロンの王宮だ。
「ええい!あのような壁など壊してしまえばいい!…」
「『あ、忠告しておくけどアンタ達の目の前にある壁に魔法とか放たない方が良いよ?
全部ユーロンの王宮へと反射されてしまうからね』」
「何!?…」
悪足掻きに抵抗しようとしたので冬夜が忠告すると奴等は武器を下す。
流石に自分達の王宮に攻撃が返されると聞いては試そうだなんて思わないか。
だが解呪に長けた魔法使いがいるのか奴等は侵攻を諦めていないようだった。
なので…
「『さて、どうやらまだ諦めていないようだからこれは宣戦布告と受け取るがいいな?!』」
「な、なんだ!?…」
映像が終わるのを合図に村の中で見ていた俺達はユーロン軍のいるすぐ上空にゲートを発動。
そこからFG迎撃部隊を呼び出した。
当然ながら現れたFGに対し驚きを隠せないユーロン軍。
「『戦う気があるのなら我等ブリュンヒルド騎士団が相手となろう!』」
ブリュンヒルド騎士団長であるレインさんを筆頭に武器を構える。
「た、た、た、退却ー!」
当然ながら敵わないと悟ったユーロン軍は蜘蛛の子を散らすように撤退していった。
「『双王陛下ー陸路はこれで防げたかもしれないけど、多分アイツ等は海路も使ってくるんじゃないですかね?』」
副団長であるノルンさんが通信でそう言ってくる。
「大丈夫だ。
それも予め想定して冬夜が召喚したクラーケンと俺が召喚したソードフィッシュ十数匹に見張らせているから今頃ユーロン海軍は慌てふためいている頃だろうさ」
「『うわあ…凄い根回しの良さですね…』」
なんだかドン引かれたがこれでハノック侵攻は止まる筈だろう。