Side一誠
翌日
「何?スピカさんが桜の事を知っているかもしれない?」
「はい、どうもその様で…」
「ふむ…」
信がそう告げてくる。
スピカさんは昨日助けたダークエルフの女性の事だ。
そういや信は桜がイーシェンで迷子になっている所に出会ったんだっけな。
魔王の直属護衛を担っている内の一つのフレンネル家出身の彼女と桜が知り合いだという事は桜はもしや…。
ならば早急に桜の記憶を取り戻させ、魔王国ぜノアスへと出向く必要性があるな。
是非共ローナと一緒に現在の元我が城の様子や他にもいるかもしれない我が配下の子孫にも会いたいしな。
という訳で桜とスピカさんを呼び出してリコールで桜の記憶を呼び起こす。
どうやら記憶を取り戻した桜とスピカさんの話によると桜の本名はファルネーゼ・ファルネウス。
魔王ファルネーゼ家の童の娘らしく、生まれてきた当初は何故か魔王の血筋の証である筈の「王角」が無く忌み子として存在自体を魔王家から抹消された。
どうやら人間である母親の血が色濃く出てしまった影響みたいだな。
だがそれは桜が10才の時に突然生え始めて魔王候補に挙げられてしまった。
どうやら桜の母親は彼女を魔王に即位させることを拒み自身も魔王の側室になる事を拒んでいたようだ。
その事態に慌てたのだろうか他の魔王候補…というか母親や腹心までもが慌て始めたらしい。
そういった小競り合いが起きたある日、桜とスピカさんは一緒に買物に出掛けていた所を仮面を付けた暗殺者集団の襲撃に遭い、スピカさんは命からがら桜…いやファルネウスを逃がしたらしい。
スピカさんはその後、やっとの思いで彼等の魔の手から逃れ必死に彼女を探したが発見出来ず…それが元となりフレンネル家を飛び出した。
その頃には信や俺達と出会い桜となったという事になる。
だが、ファルネーゼ家にはファルネウスの血塗れの千切られた片足らしき物が投げ込まれたらしく殺されてしまったと誤解しているみたいだ。
二度目の襲撃に遭って信が暴走したあのドサクサに紛れてか…やられた!…
記憶喪失になってしまったのはその襲撃に二度も遭ったから…恐らくユーロンの手の者に間違い無い…手引きしたのは恐らく他の魔王候補の腹心共か。
兎に角、桜も母や父親に会いたいだろうし事態を一刻も終息させねばいけないな。
冬夜にもこの事態を伝え俺達は魔王国へと足を運ぶ手筈を整えるとしようか。
「あ、あの…どうしてそこまでして下さるんですか?」
「困っている者がいたら手を差し伸べるのが国家の主導者の務めでしょ。
それに久し振りに見たい所もあるんだ」
「は、はあ…」
素朴な疑問を聞いてきたスピカさんに俺はそう返答する。
「魔王様…ぜノアスに行くの?」
「ああ、そうなるな」
「!?」
スピカさん達との話が終わってから伝えに行こうと思っていたら「魔王」の単語を耳にしたのかローナが入ってきて聞いてきたので答える。
一方、ローナの発言を聞いてスピカさんは俺を見て驚愕の表情をしていた。
あ、そういえば言ってなかったか。
改めて自己紹介するとスピカさんは二度驚くのだった。
後日、桜は冬夜からもらった名を偉く気に入っているらしく元のファルネウスに戻すことはなかった。
それとどうやって遠く離れたイーシェンにまで迷い込んだのかは彼女が魔力切れを起こすまで必死に「テレポート」の無属性魔法を使用していたからだった。
そうだな…
~魔王国ぜノアス~
翌日、リコールし終えていたのでゲートでぜノアスに赴いた。
「此処、懐かしい!…」
「あ!?…ファ、じゃなかった桜様!?…」
ぜノアスに着くと途端に懐かしさを感じたのか桜は駆け出す。
彼女の後をスピカさんが追っていくとある女性の姿を目にした。
「そ、其処に居るのは!…ファルネなのね?!」
「お母さん!…」
どうやら偶然ぜノアスの街に買い物に訪れていた女性が桜の母親だったのだ。
お互いの無事な姿を目にし一目散に駆け出し、再会に涙し熱い抱擁を交わし合っていた。
スピカさん、娘から俺達の事について聞いた母親、フィアナさんは驚きつつも感謝されファルネーゼ家へと招待されたのだが…
「お、奥様!お帰り早々に申し訳無いのですが魔王様が向かわれた万魔殿(パンデモニウム)が!…」
「なんですって!?…」
慌ただしく飛び出してきたメイドがフィアナさんにそう告げてくる。
「冬夜!」
「分かってる!」
「俺も行きます!」
持ち出してきた反応版を目にし万魔殿が出現したフレイズに襲われてしまっているのだろうと思った俺達は早急に援護に向かうのだった。