「うーむ…」
「やっぱり品揃えが大分違うね」
公爵様からお礼と称して貴族御用達の店に自由に出入り可能になるメダルを贈られた事で行動範囲がグンと拡大しエルゼ達はショッピングを楽しみに行き、俺と冬夜はその店の一つ「ベルクト」という武器屋を訪れていた。
俺は武器を魔法(マホウ)で創造可能だから今の所は防具が主に欲しいんだよなあ。
「御客様、何かお探し物で?」
「えっと、何か良い防具があれば良いのですが?…」
「それならば此方とかは如何でしょうか?」
「どれどれ?…ファッ!?…」
「これは…」
店員が出してきたのは自分の持つ属性魔法の対ダメージの一切を無効化するというとんでもない特化系長物のコートだった。
その代わりに持ってない属性に対しては被ダメが二倍になってしまうらしいが…俺達にはそんなデメリットは無いに等しいな。
というか俺達以外にコレを買う物好きはそうそういないであろうが。
白と黒の二カラーがあるみたいだ。
「ン?コレは?…」
ふと別の商品に目がいった。
それはまるでロボットの装甲パーツの一部みたいな見た目のパープルカラーの脚型の武装だった。
「ああ、その商品はとあるツテから買い取りさせられ…いや入荷させて頂いた物でして…この通り奇妙な代物ですので売れ行きがですね…以前別タイプの物は売れたのですがね…」
「はあ…」
店員さんの本音は聞かなかった事にしておいてあげよう。
俺はその奇妙な武装にどうしてか一目惹かれたのだ。
「お買い上げありがとうございまーす!
又の御来店をー!」
結局、冬夜が白の、俺が黒のコートアーマー、脚型武装を購入させてもらった。
流石にコートの方は特化過ぎる商品で売れ行きが良くないらしく三割引きまでしてもらい、ほぼ一点物の武装については創造してもよかったのだが何処か懐かしさを感じた事、そして店に貢献しようと俺なりの評価額で購入させてもらった。
「お待たせ!」
買物を終え店を出たと同時にエルゼ達とも合流した。
「っと、小耳に挟んだ話題があるのでござるが昼食後に行ってみようではござらんか?」
八重がそんな事を言ってくる。
「む?」
「ええ、王都付近のに何やら旧王都が関係している古い遺跡ダンジョンがあるらしいのよ」
「という事は…」
「そ、依頼のついでにその遺跡を探検してお宝探しでもしない?!」
「「OK!」」
ちょっと予定外に使い過ぎたし丁度良いと思い、エルゼの提案に快く乗り、昼食後俺達は依頼ついでに王都付近の森にある遺跡を目指した。
~十五分後~
「そらあ!」
「これで全部か?」
「ええ、流石に多かったわね」
依頼の討伐目標であるデュラハン、途中でエンカウントした一角狼の群れを狩り終えて一息ついた後すぐにもうひとつの目的である遺跡に目を向けた。
どうやら地下に通じているようだ。
「「『サーチ/ング』!」」
俺と冬夜は探知魔法で探りを入れてみる。
「どうでしたか?」
「それらしい反応は無いな…」
「こっちもだ…」
がお宝と呼べる様な反応はひっかからなかった。
「…あ!それならもしかしたらイッセーさん達が宝だと認識出来ない物、例えば歴史的価値がある物に範囲を拡げてみてはどうでしょうか?」
「それだよ!」
「なら…『サーチング:歴史的遺物』…これは!…」
「「おお!?」」
リンゼの考えを聞き探知範囲を拡げるとそれらしき反応が見事にかかった…のだが…。
ジジ、ジジィ!…
「グッ!?…」
「「イッセー!?」」
その反応を捉えた瞬間突然、ノイズの様なものが走ったかと思うと俺は激しい頭痛に襲われたのだ。
その痛みはほんの一瞬だけだったのだが皆に心配される。
「ああ、なんとか大丈夫だ…遺跡の最深部に反応を感じた…行ってみようぜ…」
「あ。ああ!…」
冬夜も同じ反応を捉えていたようだ。
「でも本当に大丈夫なの?…」
「ああ…」
「「…」」
エルゼ達に心配をこれ以上かけまいと俺は立ち上がる。
彼女達は何処か納得はしていない様子ではあった。
それにしても今、俺が感じた痛みは一体?…冬夜の方はなんともないみたいだったが。
突如生じた疑問に首を傾げるが気を取り直し遺跡の探索に入った。
「『炎よ爆ぜよ、紅蓮の爆発、エクスプロージョン』!」
あ、遺跡の入口は塞がってしまっていたのでリンゼが魔法で強引に開きました。
「『光よ来たれ、小さき照明、ライト』!」
リンゼの光魔法で遺跡地下周辺を照らしてもらい奥へ奥へと進んでいく。
「おっと此処で行き止まりか…」
「という事は此処が最深部の様だね」
其処には古代で使われていたであろう言語で描かれた石碑と何やら意味不明の物体があった。
あ、写真撮影っとこっと。
「ああ…ってン?リンゼのライトが…」
ふと異変に気が付いた俺はリンゼに問いかける。
「ふぇ?私は光魔法はそんなに得意ではないですけどそれでも二時間くらいは…ってアレ?…なんだか本当に小さく…」
「あ、消えちゃった…」
どうして?と首を傾げるリンゼ達だったが。
「「!?」」
突如、揺れを感じる。
その最中、冬夜が叫ぶ
「コイツだ!コイツが魔力を吸収して動き始めているんだ!」
「なんだって!?…」
冬夜が石碑と一緒にあった物体を指差した。
リンゼの魔力を吸ったであろう物体はコオロギの様な姿に変化していた。
だから突然のライト消失と揺れが起こったのか。
まさか俺が先程感じた頭痛の意味は…
「だったら今は此処から脱出するぞ!」
「分かった!ゲート!」
冬夜のゲートでなんとか崩壊寸前に遺跡から脱出する。
だがその直後…ドーン!
「何ッ!?…コイツは!…」
物凄いエネルギーの放出を感じ取り、そして先程の揺れよりも物凄い地響きが鳴り渡ったかと思うとあの物体が外に飛び出してきたのだ。
その影響のおかげで遺跡はすっかり木っ端微塵だ。
「う、嘘でしょ!?…」
「不味い!こっちに向かってきているでござるよ!」
「クッ!?…散開!」
謎の物体が此方に向かってくるのを見て慌てて回避する。
「あ、危っなぁー!…今度はこっちからお返しよ!」
「待つんだエルゼ!奴は…」
「ブーストォー!」
お返しとばかりにエルゼが俺の静止の前に物体に殴りかかりにいってしまう。
ガギン!
「!?な、なんて硬さなのよ!…」
物体には何のダメージも無いようだ。
!?不味いぞ!…
「エルゼ早く避けろ!」
「ヘッ?…あがっ!?…」
「お、お姉ちゃん!?」
俺の警告も虚しくエルゼは物体が繰り出してきた触手に貫かれてしまう。
「エルゼ!…クソッ!…冬夜!時間を稼いでくれ!」
「分かった!」
力無く空中落下してくるエルゼを危なげにキャッチし隠れられる場所に避難し急いで彼女に治癒魔法をかける。
「…はあはあ…」
「大丈夫かエルゼ!?」
「…イッセーの治療のおかげでなんとか…」
「良かった!…此処で休んで!後は俺達でなんとかする!」
「分かったわ…動けるまでに回復したら復帰するわ…」
エルゼの回復のなんとか間に合い安堵するが不安要素はまだ残っている。
彼女を安静にさせ俺は物体を捉える。
だがどうする?
さっきの出来事から推測するに奴は魔法を吸収する力を持っている事はまず間違い無い。
そもそもの力の根源が違う俺の現代魔法ならまだワンチャン勝機はあるかもしれないが…
なにより奴に直接的な魔法で挑むのは避けた方が良い。
まるで将棋やチェスみたいだな…ン?ならば!
「冬夜、奴の弱点に心当たりがある!
スリップをかけてみてくれ!」
「分かった!『スリップ』!」
俺の提案を受け冬夜がスリップを奴にかける。
すると奴は物の見事に転がり回っている。
「お!?…」
「やはりか!…皆、直接的な物でなければ魔法も奴に吸収される事無く通じるようだ!」
「それは真でござるか!」
「成程、ならこの魔法で!…『氷よ来たれ、大いなる氷塊、アイスロック』」
「!?」
リンゼが氷結魔法で巨大氷塊を奴の頭上に降らせ落とす。
これで確実にダメージは入った筈!…
「やったか!?」
おい馬鹿!その台詞は…
「イイッ!?…再生している!?…」
「そんな!?」
ほら言わんこっちゃない!
しかし、まさか再生能力まで持っているとは…ン?そうだ良い案を思い浮かんだぞ!
「冬夜、アレだ!あの物体の中にある球体を引きずり出してくれ!」
「!そうか!…『アポーツ』!」
ブン!冬夜のアポーツにより奴の体内にあった球体が彼の手元に渡る。
「イッセー、エルゼ!頼んだ!」
「よっし!どりゃあ!」
「ええ!なんとか回復したわよ!ブースト!いっけええー!」
冬夜が空高く放り投げた球体を回復し戦線復帰したエルゼの強烈なパンチと俺の脚部に装備した武装が貫いた。
「『ギィィィ!?……』」
球体が砕けた瞬間物体は支えを失ったかの様にドロドロに溶けて消えた。
「どうだコオロギ野郎!」
「流石ですね!でも良く気が付きましたよね…」
「ああ、奴の力の根源が何だったのかを思い出してな…」
「うん、イッセーの方も思い当たってたみたいだし予想が当たっていてよかったよ…」
「一時はどうなる事かと思ったぜ…」
この後、遺跡完全沈没&謎の物体事件の詳細を包み隠さず公爵様に報告する事にした。
ギルドだけでは流石に手に余ってしまう案件だと感じたからだ。
報告を聞き終えた公爵様に訊ねてみるとどうやら歴史資料がほとんど残されていないらしく歴史家の間でも本来の歴史のほとんどが判明出来ていないらしいのだ。
となると後は俺と冬夜が保存していた石碑の写真だけが頼りになるという事で公爵様に「ドローイング」の魔法でコピーした物を選別し後日渡す事にした。
それ迄の数日間は俺と冬夜は銀月やエルゼ達の頼みで訪れた先々で将棋とチェスの相手を散々させられゲシュタルト崩壊を起こしていた。
まさかあそこまでハマるとは…しばらく熱は続きそうだ…。
だがある日事件は起こる。
それはコピーし終えた写真を届けに二人で公爵家を訪れた時だった。
門の前までゲートで訪れると何やら慌ただしい様子で公爵様の乗った馬車が出てきた。
俺達の姿を見つけた公爵様は扉を開けて話しかけてきた。
「おお!一誠殿に冬夜殿も!いやはやこのタイミングでこれは正に天の助けか?!
早く一緒に馬車に乗って共に向かってはくれまいだろうか?」
「ちょ、ええ!?一体何があったんです?そんなに慌てたご様子で」
「まさか…ベルファスト王家で問題でも起きたんですか?」
「ああ、正に一誠殿の言う通りなのだが…」
思い当たり過ぎる質問をぶつけると公爵様は重い口を開いてこう告げてきた。
「実は兄上…国王陛下が毒を盛られて倒れられてしまったとの報告を受けたのだ…」
「「なっ!?…」」
予想以上の事態に俺達は絶句するしかなかった。