Side一誠
「コレでよし!…かな?」
「だな」
俺達は機体の最終的な調整をようやく終えて一息つく。
「…」
「行くのか?サンドラに」
「ああ、先日持ち込まれてきた案件の事もあるしな」
その案件というのは我が国が友好を結んでいる大樹海の部族達の一部がサンドラ王国の軍に突然の襲撃を受けて半数が奴等の手に堕ちてしまったみたいなのだ。
それはもう戦争行為と捉えられる。
その返還を求める訴状の件も含めて俺はこれからサンドラへの殴り込みをかける算段である。
「冬夜お前は…」
「サンドラの件には手を出すな…だろ?」
「ああ…」
俺が言う前に冬夜は分かっていると告げてくる。
これは俺が解決すべき問題だ。
俺はそう己に言い聞かせながら準備に入った。
「魔王様…」
「ン?…なんだローナ?」
準備の最中ローナが何かを言いたそうに俺の傍へとよってくる。
「一つ…いや二つお願いがあるの…」
「言ってみてくれ」
「実はね…」
「!…」
俺はローナのお願いを聞いて驚いた。
一つ目は俺と共にサンドラへ赴き戦いたいとの事。
俺は危険だと言い聞かせるが彼女の揺るがない強い意志を感じて仕方無く了承した。
二つ目はサンドラでたった一人だけ出来た友達を救い出したいとの事だった。
それと同時に襲う事は無いと思われてたあの頭痛に再び襲われた。
思い…出した!…
もう一つの聖双剣の勇者の記憶に存在するもう一人の愛しい人との記憶を…彼女と共に掲げた理想を叶えられなかった記憶を…。
「分かった!」
俺がそう返答するとローナはパアっと輝いた表情になった。
俺はローナを連れてサンドラへとゲートを開き長き因縁の鎖に終止符を打つ為に赴いた。
「…」
俺はサンドラ王都キュレイの惨状を改めて目にしてサンドラ王への怒りを露わにしながらも目立つローナの姿を隠す為にローブを被せ歩を進めていた。
すると…
「奴隷がまた奪われたぞー!」
「!…」
白昼堂々王都のド真ん中で戻って来た誘拐されてきた奴隷を乗せた馬車が突如として現れた謎の人物に襲われた。
といっても手綱役に果物ナイフが投擲された程度のものであったがその隙に誘拐してきた奴隷達を数人奪われたようだ。
「行かなきゃ!…」
「お、おい?!…」
ローナは何かに気が付いたかの様に謎の人物を追おうとする。
俺も急いでその謎の人物の後を追って行った。
しばらくしてSide?
「はあはあ…大丈夫ですか?」
「う?…痛みが…」
「よかった!…では他の方にも綴らせて頂きますね」
現在は全く使われていない廃屋に今日も数人の奴隷さん達の奪還保護を終えて生来思い出した力で方々を癒していく。
私の名前はサフィア・ジャーバ・サンドラ、この国の第二王女です。
この国のやり方は間違っている…そう父上達に何度進言しても改善されない。
だからこそ私は裏で私のやり方でこの国のあり方を変えると息込んだものの…これでは何年掛かるか分からない…。
せめてあの方さえ…理想を共にしたあの方が居てくれさえいたら…そんな私の願いはしばらくして届くことになろうとはこの時思いもよらなかった。
Side一誠
「此処は!…」
謎の人物と奴隷達が逃げ込んだであろう街の一角の廃屋に手をかけようとすると…
「魔王様ちょっとだけ待って!…」
ローナがフードから少しだけ顔を出して静止してくる。
何事かと思えば彼女は懐から白紙とフェザーペンシーラを取り出して何かの絵を描き始める。
「出来た!…」
『ニャニャ』
「これなら!…お願いね!…」
「それならコイツも持っていてくれないか?」
『ニャー!』
しばらくしてローナが描き上げたのは可愛らしい白い子猫だった。
本来フェザーペンで命を描くのは極力禁じているのだが彼女なりの分かり易い生物を描いたんだろう。
ローナは白猫に指示し、俺もハクリガの一振りを咥えさせて廃屋へと入り込まして行った。
Sideサフィア
『ニャー』
「ん?…子猫さん?…でもどこか不思議な気が…!?」
奴隷さん達を匿いそろそろお城へと帰らなければと思っていると猫さんが何処からか入ってくる。
私はその猫を見て不思議な感覚を感じたのと同時に二度驚愕した。
その猫はまるで絵の様だったからだ。
こんな事が出来うるのは私にはたった一人の少女しか思い当たらなかった。
かつてこの国に連れて来られたあの子を…それにこの猫さんが咥えているのは!…
「嘘!?…」
私は猫さんが咥えていた物を遠き過去の私が担い手として覚醒したある方に託した代物だという事に気が付き涙が出そうになった。
その時、私の目の前に現れたのは…
Side一誠
「久し振りだな…サフィア」
「久し振り…!」
「あ、あ、あぁ!…」
やはり奴隷奪還の主犯の謎の人物はサフィアだったのか。
彼女はローナと俺の姿を目にして遂に堪え切れずにその場で泣き出していた。
周囲に居た奴隷にされた一部の人達が何事だと此方を見てくる。
「ああ…聖双剣の勇者様!この国を変える為にいらして下さったのですね!
ローナ様も本当に御無事でよかったです!…でもなんで御二人が御一緒に?…」
「それはな」
疑問を感じるサフィアにローナとの関係を包み隠さず話した。
「そうですか…」
「サフィア、改めて誓いましょう。
この一誠・アルーザス・ブリュンヒルド。
共に誓った理想成就の為に再びこの力を振るう事を約束しましょう!」
サフィアにハクリガを返して貰い、彼女の前で跪いて誓いを交わした。
「はい!…」
彼女は晴れた笑顔でそう微笑んだ。